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公開番号2025048746
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-04-03
出願番号2024129967
出願日2024-08-06
発明の名称部材
出願人TOTO株式会社
代理人個人,個人,個人,個人
主分類C09D 5/16 20060101AFI20250326BHJP(染料;ペイント;つや出し剤;天然樹脂;接着剤;他に分類されない組成物;他に分類されない材料の応用)
要約【課題】アルカリに長時間曝されても、良好なアルカリ耐久性、親水性ならびに親水基固有の機能性(例えば、アニオン性であれば水垢清掃性)の双方を発揮し続けることが可能な部材の提供。
【解決手段】金属酸化物を含む基材3と、基材3の表面に形成された疎水性の第2機能部2と、第2機能部に結合され、その表面に形成されてなる親水性の第1機能部1とを備える部材であって、前記第1機能部は、XPS測定により得られる、硫黄原子(S)、リン原子(P)、窒素原子(N)および酸素原子(O)からなる群から選択される1種以上の原子を含んでおり、かつ、XPS深さ方向分析により得られるかつスパッタ時間が50秒以上1400秒以下であり、かつ、第2機能部は、XPS深さ方向分析により得られる、C-C結合に帰属される炭素原子の割合(%)が88%以上であり、かつ、スパッタ時間が105秒以上360秒以下である、部材。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
金属酸化物を含む基材と、
当該基材の表面に形成された第2機能部と、
当該第2機能部に結合されてなり、硫黄原子(S)、リン原子(P)、窒素原子(N)および酸素原子(O)からなる群から選択される1種以上の原子を含む第1機能部と
を備える部材であって、
当該部材の最表面は、前記第1機能部の最表面であり、
前記部材は、その表面を、アルゴンスパッタを併用したX線光電子分光法(XPS)により深さ方向に分析したとき、下記要件(I)、(II)および(III):
(I)下記条件1に従って前記部材をその表面からアルゴンスパッタを開始し(0秒)、前記第1機能部が下記要件Aを満たすことにより消失したとみなされる時点(t

秒)までのスパッタ時間T

(t

-0)が、50秒以上1400秒以下であり;
(II)前記第1機能部が下記要件Aを満たすことにより消失したとみなされる時点において、下記条件2に従ってXPSスキャン分析を行い、C1sの測定範囲における279.0eVから292.0eVまでの範囲をピーク分離して得られる、C-C結合に帰属される炭素原子(284.8eV)のピーク面積強度と、C-O結合に帰属される炭素原子(287.1eV)のピーク面積強度と、O=C-O結合に帰属される炭素原子(289.2eV)のピーク面積強度との合計に対する、C-C結合に帰属される炭素原子(284.8eV)のピーク面積強度の割合が88%以上100%以下であり;
(III)下記条件1に従って前記第2機能部をその表面からアルゴンスパッタし、前記第2機能部が下記要件Bを満たすことにより消失したとみなされる時点(t

秒)までのスパッタ時間T

(t

-t

)が、105秒以上360秒以下である;
を満たし、
前記条件1は、
X線条件:単色化AlKα線、30W、12kV
分析領域:200μmφ
中和銃条件:0.1V、200μA
光電子取り出し角:90°
Time Per Step:10ms
Sweep:2回
Pass energy:200eV
Surveyエネルギー範囲(ステップサイズ):0eV-1350eV(0.1eV)
不活性ガス種:Ar
スパッタ電圧:200V
スパッタ範囲:2mm×2mm
スパッタサイクル:5秒
であり、
前記要件Aは、
C1sピークを284.8eVとしてチャージ補正した後に、特定した元素に基づくピークに対してShirley法でバックグラウンドを除去した後にピーク面積強度を算出し、データ解析ソフトウェアに予め設定されている装置固有の感度係数で除算する解析処理を行い、検出された全原子を母数とした、硫黄原子、窒素原子およびリン原子それぞれの原子濃度が1.0atm%以下、かつ基材に含まれる酸化物由来の酸素原子濃度を除いた酸素原子濃度が6.0atm%以下になること
であり、
前記条件2は、
X線条件:単色化AlKα線、30W、12kV
分析領域:200μmφ
中和銃条件:0.1V、200μA
光電子取り出し角:90°
Time Per Step:50ms
Sweep:5回
Pass energy:55eV
分析元素(エネルギー範囲、ステップサイズ):C1s(279.0eV-292.0e
V、0.05eV)
不活性ガス種:Ar
であり、
前記要件Bは、
C1sピークを284.8eVとしてチャージ補正した後に、特定した元素に基づくピークに対してShirley法でバックグラウンドを除去した後にピーク面積強度を算出し、データ解析ソフトウェアに予め設定されている装置固有の感度係数で除算する解析処理を行い、検出された全原子を母数とした炭素原子濃度が2.5atm%以下になること
である
ことを特徴とする、部材。
続きを表示(約 1,300 文字)【請求項2】
前記第1機能部のスパッタ時間T1が50秒以上1400秒であり、かつ前記第2機能部のスパッタ時間T2が、130秒以上360秒以下である、請求項1に記載の部材。
【請求項3】
前記第1機能部のスパッタ時間T1が85秒以上1400秒であり、かつ前記第2機能部のスパッタ時間T2が、130秒以上360秒以下である、請求項1に記載の部材。
【請求項4】
前記第1機能部のスパッタ時間T1が95秒以上1400秒であり、かつ前記第2機能部のスパッタ時間T2が、130秒以上360秒以下である、請求項1に記載の部材。
【請求項5】
前記基材は、母材と、当該基材の表面側に金属酸化物を含む領域とを備えてなる、請求項1に記載の部材。
【請求項6】
前記領域は、基材の表面側に備えられた金属酸化物からなる層である、請求項5に記載の部材。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の部材を製造する方法であって、当該方法は、
(a)基材を用意する工程と、
(b)前記基材の表面に、第2機能部を形成するための組成物を適用し、第2機能部を形成する工程であって、ここで
前記組成物は、化合物Aと化合物A’とを含み、
前記化合物Aは、アルキル基と、当該アルキル基の一端側に金属酸化物と結合し得る官能基と、当該アルキル基の他端側に結合性官能基とを有し、
前記化合物A’は、アルキル基と、当該アルキル基の一端側に金属酸化物と結合し得る官能基とを有し、当該アルキル基の他端側に結合性官能基を有さず、
前記化合物Aおよび前記化合物A’が有するアルキル基は、その炭素数が11を超える
ことを特徴とする、工程と、
(c)前記第2機能部の表面に、前記結合性官能基と反応可能な反応性官能基と、親水性基とを有する化合物Bを含む組成物を適用し、第1機能部を形成する工程と
を少なくとも含む、方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の部材を製造する方法であって、当該方法は、
(a)基材を用意する工程と、
(b’)前記基材の表面に、第2機能部を形成するための組成物を適用し、第2機能部を形成する工程であって、ここで
前記組成物は、アルキル基と、当該アルキル基の一端側に金属酸化物と結合し得る官能基と、当該アルキル基の他端側に結合性官能基とを有する化合物A’を含み、
前記化合物A’が有するアルキル基は、炭素数が18以上である
ことを特徴とする、工程と、
(c)前記第2機能部の表面に、前記結合性官能基と反応可能な反応性官能基と、親水性基とを有する化合物Bを含む組成物を適用し、第1機能部を形成する工程と
を少なくとも含む、方法。
【請求項9】
前記金属酸化物と結合し得る官能基は、加水分解性シリル基であり、前記結合性官能基は、2-ブロモ-2-メチルプロパン酸基である、請求項7または8に記載の方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物を含む基材の表面を処理して得られる部材、詳細には、アルカリ環境下で親水基の機能を長期間保持可能な当該部材に関する。
続きを表示(約 3,200 文字)【背景技術】
【0002】
様々な基材の表面を、目的とする部材の用途に応じて処理し、当該表面に所望の機能が付与された部材を得る技術が広く知られている。例えば、水まわりで用いられる部材(水まわり部材)の表面には水が付着しやすい。水まわり部材の表面に付着した水が乾燥することで、当該表面に、水道水に含まれる成分であるシリカやカルシウムを含んだ水垢が形成される。また、水まわり部材の表面には、タンパク質や皮脂、カビ、細菌、ウイルス等の微生物などの汚れも付着しやすい。水まわり部材の表面への水垢や汚れの付着を防止し(防汚性)、また当該表面からの水垢や汚れの除去性(清掃性)を高めるために、水まわり部材の基材の表面を所望の性質を有する層または膜で被覆し、改質する技術が知られている。
【0003】
このような技術として、例えば、特開2016-020461号公報(特許文献1)には、陶器の表面を、ラジカル反応性官能基を含有するシランカップリング剤(具体的には、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン)によって処理して疎水性のプライマー層を形成し、このプライマー層に、ラジカル反応性官能基とスルホン酸基のアルカリ金属塩を含有する親水性化合物を含む塗料組成物を塗布することで、陶器表面に疎水性プライマー層を介して親水性塗膜を形成したことが記載されている。特許文献1によれば、得られた親水性塗膜は、耐久性(段落0083)および洗浄性(汚れ除去性、段落0084~0085)が良好であったとされている。
【0004】
高分子論文集, Vol. 70, No. 8, pp. 419-431 (Aug., 2013)(非特許文献1)には、医療用部材又は生体適合性部材への適用を目的とし、基板(シリコン基板、シリカ粒子、金薄膜)の表面をシランカップリング剤(具体的には、11-(2-ブロモ-2-メチル)プロピオニルオキシ)ウンデシルトリクロロシラン)によって処理して疎水性の単分子膜を形成し、この疎水性単分子膜上にベタインポリマーブラシ層(バイオメディカル表面)を作製したことが記載されている。
【0005】
高分子, Vol. 69, No. 8, pp. 402-431 (Aug., 2020) (非特許文献2)には、ポリアニオンとポリカチオンの電解質ポリマーブラシ間の静電引力相互作用を利用した基材同士の接着や、双性イオンを有するポリマーブラシの親水性やサイズ排除効果によるフジツボの幼生などの生物汚損の抑制効果について記載されている。表面機能化の有用なツールとして期待されている一方で、工業的な活用事例がほとんどない主な理由として、光や熱による酸化分解や水中での加水分解などによるポリマーブラシの劣化を防ぐことが難しいと記載されている。
【0006】
特開2022-088296号公報(特許文献2)には、基板の表面に、疎水性領域、機能性領域、およびプローブ分子がこの順序で連結された鎖状構造分子を備えたバイオセンサーが記載されている。特許文献2の[実施例]には、シリコン基板の表面に(2-ブロモ-2-メチル)プロピオニルオキシプロピルトリメトキシシランからなる疎水性の単分子膜を、又は、金基板の表面にα-ブロモブチレート-11-ウンデカンチオールからなる疎水性の単分子膜を、結合性官能基を含む疎水性の単分子膜として形成し、この疎水性単分子膜上にポリ(tert-ブチルメタクリレート)(PtBMA)層を形成し、その後PtBMA層を塩酸で処理することにより、基板上に疎水性単分子膜を介して疎水性ポリマーブラシ層(PtBMA)と親水性ポリマーブラシ層(PtBMA-COOH)の二層構造を形成したことが記載されている。特許文献2によれば、疎水性ポリマーブラシ層によって低分子物質の基板への移動を阻止し、親水性ポリマーブラシ層によって非特異的な生体高分子の吸着を阻止するとされている(段落0013、0016)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
特開2016-020461号公報
特開2022-088296号公報
【非特許文献】
【0008】
高分子論文集, Vol. 70, No. 8, pp. 419-431 (Aug., 2013)
高分子, Vol. 69, No. 8, pp. 402-431 (Aug., 2020)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一部の水まわり部材は、アルカリ性洗剤の使用などによって、アルカリ環境に長時間曝される。本発明者らは、金属酸化物を含む基材(以下、単に「基材」ということもある)の表面に、疎水基を含む超薄膜を介して、親水基を含む超薄膜(疎水基を含む超薄膜と親水基を含む超薄膜を合わせて「機能性の超薄膜」という。)が設けられた部材であって、疎水基を含む超薄膜を構成する疎水基の炭素数が少なく、又は疎水基を含む超薄膜における疎水基を含む分子の存在割合が低い、すなわち疎水基を含む超薄膜の密度が低い、従来の又は現存する部材は、これをアルカリ環境下で使用すると、親水基を含む超薄膜との親和性により親水基を含む超薄膜にひきつけられたアルカリ成分が、疎水基を含む超薄膜を容易に透過し、疎水基を含む超薄膜と基材との結合部を構成する成分や、基材の表面を構成する成分の加水分解を誘発し、その結果、親水基を含む超薄膜を構成する分子、疎水基を含む超薄膜を構成する分子、および親水基を含む超薄膜と疎水基を含む超薄膜の界面のリンカーよりも優先的に、基材と疎水基を含む超薄膜の界面の結合部が破壊され、さらには基材からの疎水基を含む超薄膜の剥離に起因して、機能性の超薄膜ごと消失してしまう、つまり水まわり部材がその機能を喪失してしまうという新規な課題を見出した。
【0010】
そして、本発明者らは、疎水基を含む超薄膜に対するアルカリ成分の透過性の程度が、当該膜の膜厚および/または密度に密接に関連していることを見出し、確認した。さらに、親水基を含む超薄膜の量が一定範囲の量以下である場合、疎水基を含む超薄膜が残存していても、親水性を喪失してしまうという新規な課題も見出し、確認した。つまり、機能性の超薄膜のアルカリ耐性の向上には、親水基を含む超薄膜の膜厚が一定範囲以上であることおよび疎水基を含む超薄膜の膜厚および/または密度が一定範囲以上であることの両方が必要であることを見出し、確認した。さらに、親水基を含む超薄膜の膜厚および疎水基を含む超薄膜の膜厚および/または密度が、完成品である部材を、X線光電子分光法(XPS)測定とArイオンを使用したスパッタリングとの併用による深さ方向分析により得られる、親水基を含む超薄膜および疎水基を含む超薄膜のスパッタ時間と密接に関連していることを見出し、上述した課題を解決するための親水基を含む超薄膜の膜厚および疎水基を含む超薄膜の疎水性の至適範囲を、上記スパッタ時間を指標として定量化することに成功した。このようにして、金属酸化物を含む基材の表面に疎水基を含む超薄膜と親水基を含む超薄膜とからなる機能性の超薄膜が設けられてなる部材であって、アルカリ環境に長時間曝されても、
良好なアルカリ耐久性、良好な親水性および親水基固有の機能性(例えば、親水基がアニオン性であれば水垢清掃性)を発揮し続けることが可能な当該部材の新規な構成を見出した。本発明は、これらの知見に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
(【0011】以降は省略されています)

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