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公開番号2025038879
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-03-19
出願番号2024141919
出願日2024-08-23
発明の名称カルシウム結晶類の結晶形態の分析方法
出願人国立大学法人大阪大学,ユーハ味覚糖株式会社
代理人個人,個人
主分類G01N 21/3581 20140101AFI20250312BHJP(測定;試験)
要約【課題】カルシウム結晶類に含まれる準安定相および安定相という結晶形態をより正確に判定することのできる結晶形態の分析方法を提供する。
【解決手段】分析対象のサンプルに対して、10THz以下の周波数帯域の光を照射し、分光分析を行うことによって、カルシウム結晶類に準安定相および安定相の少なくとも何れかが含まれているか否かを識別する。カルシウム結晶類は、例えば、リン酸カルシウム結晶であり、サンプルにリン酸八カルシウムが含まれている場合に、当該サンプルに含まれるリン酸カルシウム結晶を準安定相と判別し、サンプルにハイドロキシアパタイトが含まれている場合に、当該サンプルに含まれるリン酸カルシウム結晶を安定相と判別する。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
分析対象のサンプルに対して、10THz以下の周波数帯域の光を照射し、分光分析を行うことによって、
前記サンプルに含まれるカルシウム結晶類に準安定相および安定相の少なくとも何れかが含まれているか否かを識別する、カルシウム結晶類の結晶形態の分析方法。
続きを表示(約 480 文字)【請求項2】
前記カルシウム結晶類がリン酸カルシウム結晶であって、
前記サンプルにリン酸八カルシウムが含まれている場合に、当該サンプルに含まれるリン酸カルシウム結晶を前記準安定相と判別し、
前記サンプルにハイドロキシアパタイトが含まれている場合に、当該サンプルに含まれるリン酸カルシウム結晶を前記安定相と判別する、
請求項1に記載の分析方法。
【請求項3】
前記周波数帯域が、2THz以上9THz以下の範囲内である、請求項2に記載の分析方法。
【請求項4】
前記分光分析において、2.8THzの吸収ピークの有無を判別することを含む、
請求項2に記載の分析方法。
【請求項5】
前記分光分析において、7.1THzの吸収ピークの有無を確認することで、前記サンプルに前記準安定相よりも不安定な相が含まれているか否かを判別することをさらに含む、請求項2に記載の分析方法。
【請求項6】
前記サンプルが、生体由来の物体である、請求項1から5の何れか1項に記載の分析方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸カルシウム、シュウ酸カルシウムなどのカルシウム結晶類に含まれる準安定相および安定相という結晶形態を分析する方法に関する。
続きを表示(約 2,700 文字)【背景技術】
【0002】
リン酸カルシウム、シュウ酸カルシウムなどのカルシウム結晶類は、安定相(安定形とも呼ばれる)、準安定相(準安定形とも呼ばれる)などの形態で存在する。これらのカルシウム結晶類は、例えば、骨などの生体中の物体、および、結石、血管の石灰化(動脈硬化)などの生体内で形成される物体中に多く含まれることが知られている。
【0003】
例えば、リン酸カルシウムの場合、ACP(amorphous calcium phosphate)、DCPA(Dicalcium phosphate anhydride)、DCPD(Dicalcium phosphate dehydrate)、OCP(Octacalcium phosphate)、β-TCP(β-tricalcium phosphate)、α-TCP(α-tricalcium phosphate)、CDHA(Hydroxyapatite with calcium deficient)、HAp(Hydroxyapatite)、TTCP(TetCP)(Tetra calcium phosphate)、CPP(β-Ca pyrophosphate)、OAp(Oxyapatite)など複数の相が報告されている(非特許文献1参照)。このうち、生体内における骨や動脈硬化組織において、準安定相のOCP(Octacalcium phosphate)が結晶化初期に多く含まれ、これが脱水していくことで安定相のHAp(Hydroxyapatite)へと変化していく過程が重要であると着眼されている。
【0004】
なお、生体内においては、準安定相に含まれるOCP(Octacalcium phosphate、リン酸八カルシウム)は、その一部のカルシウムイオンがナトリウムイオンに置き換わった形態で含まれる。以下では、このような形態のOCPも含めて、単に「OCP」と呼ぶ。また、実際の生体内では、HAp(Hydroxyapatite、水酸アパタイト)は炭酸基を数%置換して含む炭酸アパタイトとして生体内に存在することが知られている(非特許文献2参照)。ここでは、これらを踏まえた上で、アパタイトの代表的な相としてHApを安定相として記載する。
【0005】
骨などの生体中の物体に含まれるリン酸カルシウム結晶は、その形成初期の段階では、準安定相であるOCPを多く含有し、時間の経過とともに(すなわち、骨が成熟するにしたがって)、OCPが減少して安定相であるHApが増加していくことが知られている。
【0006】
また、リン酸カルシウム結晶は、例えば、動脈硬化(血管石灰化)、尿路結石などの各種疾患の原因物質として、多くの研究者や医療関係者に注目されている。血管石灰化組織中のリン酸カルシウム結晶は、動脈硬化の形成初期にはOCPの形態で形成され、徐々にHApに変化して沈着することが知られている(非特許文献3参照)。
【0007】
このように、生体由来のサンプルに含まれるカルシウム結晶類の結晶の状態を分析することで、生体内の組織や生成物の状態(例えば、形成過程、成熟度など)を知ることができる。そのため、結晶状態の分析結果は、例えば、動物の発生過程に関する研究分野、動脈硬化、尿路結石などの各種疾患および病態の分析に関する医療分野などに有効利用できる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
特開2008-197081号公報
【非特許文献】
【0009】
Liga Berzina-Cimdina and Natalija Borodajenko, Research of Calcium Phosphates Using Fourier Transform Infrared Spectroscopy, Infrared Spectroscopy - Materials Science, Engineering and Technology, Published online 25, April, 2012, 123-148.
石川邦夫、「骨組成(炭酸アパタイト)人工骨 第46回(令和3年度)井上春成賞表彰技術」、産学連携ジャーナル、2022年1月25日
O. Gourgas, J. Marulanda, P. Zhang, M. Murshed, and M. Cerruti, Multidisciplinary approach to understand medial arterial calcification, Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology, 38 (2018) 363-372.
I.A. Karampas, C.G. Kontoyannis, Characterization of calcium phosphates mixtures, Vibrational Spectroscopy, 64 (2013) 126-133.
N. J. Crane, V. Popescu, M. D. Morris, P. Steenhuis, M. A. Ignelzi, Jr., Raman spectroscopic evidence for octacalcium phosphate and other transient mineral species deposited during intramembranous mineralization. Bone 39, 434-442 (2006).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来、リン酸カルシウム結晶の分析は、ラマン分光分析、近赤外・中赤外領域の赤外吸収分光分析、X線解析などの方法を用いて行われてきた(例えば、非特許文献4参照)。しかしながら、非特許文献4の方法を用いてリン酸カルシウム結晶の分光分析を行った場合、ラマン分光分析、近赤外・中赤外領域の赤外吸収分光分析、では、両者のスペクトルの類似性からHApとOCPとを判別することは困難である。X線解析を用いるとHApとOCPは区別することができるが、試料が粉末化されていないと明瞭な違いである4.7°の反射が得にくいなどの測定困難性がある(非特許文献4のFig.1-3など参照)。
(【0011】以降は省略されています)

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