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公開番号2024165419
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-11-28
出願番号2023081605
出願日2023-05-17
発明の名称状態量計測装置、状態量計測方法及び状態量計測プログラム
出願人鹿島建設株式会社
代理人個人,個人,個人,個人
主分類G01D 5/353 20060101AFI20241121BHJP(測定;試験)
要約【課題】光ファイバケーブルを利用してえる計測状態量の正確性、信頼性をさらに高める。
【解決手段】状態量計測装置は、第nのレイリー状態量を算出するとともに、第nのブリルアン状態量を算出する要素状態量算出部422と、第nのレイリー差分状態量を算出するとともに、第nのブリルアン差分状態量を算出する差分状態量算出部423と、第nの評価値を算出する評価値算出部424と、積上げ状態量を算出する積上げ状態量算出部425と、を備える。積上げ状態量算出部425は、第nの評価値を用いて第n-1の積上げ状態量に第nのレイリー差分状態量を加算する動作と、第n-1の積上げ状態量に第nのブリルアン差分状態量を加算する動作と、のいずれかを選択する。
【選択図】図2
特許請求の範囲【請求項1】
計測対象物に設けられる光ファイバケーブルと、前記光ファイバケーブルに計測光を入射する光源部と、前記光源部が入射した計測光に応じた後方散乱光に関する光強度情報を得る受光部と、を有し、前記計測対象物におけるひずみ又は温度を示す計測状態量を得る状態量計測装置であって、
第nの光強度情報(nは1以上の整数)を取得する動作によって得た第nの前記光強度情報に含まれたレイリー後方散乱光に基づく情報を利用して第nのレイリー状態量を算出するとともに、第nの前記光強度情報に含まれたブリルアン後方散乱光に基づく情報を利用して第nのブリルアン状態量を算出する要素状態量算出部と、
第nの前記レイリー状態量から第n-1の前記レイリー状態量へ変化したときの変化量である第nのレイリー差分状態量を算出するとともに、第nの前記ブリルアン状態量から第n-1の前記ブリルアン状態量に変化したときの変化量である第nのブリルアン差分状態量を算出する差分状態量算出部と、
第nの前記光強度情報に含まれたレイリー後方散乱光に基づく情報と、基準となる前記光強度情報に含まれた前記レイリー後方散乱光を示す情報と、の相対的な関係を示す第nの評価値を算出する評価値算出部と、
第1の前記光強度情報を取得する動作から第nの前記光強度情報を取得する動作までに前記計測対象物における前記状態量の変化を示す値である前記計測状態量を算出する積上げ状態量算出部と、を備え、
前記積上げ状態量算出部は、第nの前記評価値を用いて第n-1の前記積上げ状態量に第nの前記レイリー差分状態量を加算する動作と、第n-1の前記積上げ状態量に第nの前記ブリルアン差分状態量を加算する動作と、のいずれかを選択する、状態量計測装置。
続きを表示(約 4,300 文字)【請求項2】
前記要素状態量算出部は、前記レイリー状態量として、所定レイリー状態量及び都度レイリー状態量を算出し、前記所定レイリー状態量は、第n-kの前記光強度情報(kは2以上の整数)に含まれた前記レイリー後方散乱光を基準として得たものであり、前記都度レイリー状態量は、第n-1の前記光強度情報に含まれた前記レイリー後方散乱光を基準として得たものであり、
前記差分状態量算出部は、前記レイリー差分状態量として、所定レイリー差分状態量及び都度レイリー差分状態量を算出し、前記所定レイリー差分状態量は、第nの前記所定レイリー状態量から第n-1の前記所定レイリー状態量を減算して得られるものであり、前記都度レイリー差分状態量は、第nの前記都度レイリー状態量から第n-1の前記都度レイリー状態量を減算して得られるものであり、
前記評価値算出部は、前記評価値として、所定評価値及び都度評価値を算出し、前記所定評価値は、第nの前記光強度情報に含まれた前記レイリー後方散乱光を示す情報と、基準となる前記光強度情報に含まれた前記レイリー後方散乱光を示す情報として、第n-kの前記光強度情報に含まれた前記レイリー後方散乱光を示す情報を用いて得たものであり、前記都度評価値は、第nの前記光強度情報に含まれた前記レイリー後方散乱光を示す情報と、基準となる前記光強度情報に含まれた前記レイリー後方散乱光を示す情報として、第n-1の前記光強度情報に含まれた前記レイリー後方散乱光を示す情報を用いて得たものであり、
前記積上げ状態量算出部は、第nの前記所定評価値及び第nの前記都度評価値を用いて、第n-1の前記積上げ状態量に第nの前記所定レイリー差分状態量を加算する動作と、第n-1の前記積上げ状態量に第nの前記都度レイリー差分状態量を加算する動作と、第n-1の前記積上げ状態量に第nの前記ブリルアン差分状態量を加算する動作と、のいずれかを選択する、請求項1に記載の状態量計測装置。
【請求項3】
前記要素状態量算出部は、前記レイリー状態量として、所定レイリー状態量及び都度レイリー状態量を算出し、前記所定レイリー状態量は、第n-kの前記光強度情報(kは2以上の整数)に含まれた前記レイリー後方散乱光を基準として得たものであり、前記都度レイリー状態量は、第n-1の前記光強度情報に含まれた前記レイリー後方散乱光を基準として得たものであり、
前記差分状態量算出部は、前記レイリー差分状態量として、所定レイリー差分状態量及び都度レイリー差分状態量を算出し、前記所定レイリー差分状態量は、第nの前記所定レイリー状態量から第n-1の前記所定レイリー状態量を減算して得られるものであり、前記都度レイリー差分状態量は、第nの前記都度レイリー状態量から第n-1の前記都度レイリー状態量を減算して得られるものであり、
前記評価値算出部は、前記評価値として所定評価値及び都度評価値を算出し、前記所定評価値は、第nの前記光強度情報に含まれた前記レイリー後方散乱光を示す情報と、基準となる前記光強度情報に含まれた前記レイリー後方散乱光を示す情報として、第n-kの前記光強度情報に含まれた前記レイリー後方散乱光を示す情報を用いて得たものであり、前記都度評価値は、第nの前記光強度情報に含まれた前記レイリー後方散乱光を示す情報と、基準となる前記光強度情報に含まれた前記レイリー後方散乱光を示す情報として、第n-1の前記光強度情報に含まれた前記レイリー後方散乱光を示す情報を用いて得たものであり、
前記積上げ状態量算出部は、第nの前記所定評価値、第nの前記都度評価値及び第nのブリルアン状態量を用いて、第n-1の前記積上げ状態量に第nの前記所定レイリー差分状態量を加算する動作と、第n-1の前記積上げ状態量に第nの前記都度レイリー差分状態量を加算する動作と、第n-1の前記積上げ状態量に第nの前記ブリルアン差分状態量を加算する動作と、第n-1の前記積上げ状態量に補間演算によって得る第nの補正ブリルアン差分状態量を加算する動作と、のいずれかを選択する、請求項1に記載の状態量計測装置。
【請求項4】
前記要素状態量算出部は、前記レイリー状態量として、所定レイリー状態量及び都度レイリー状態量を算出し、前記所定レイリー状態量は、第n-kの前記光強度情報(kは2以上の整数)に含まれた前記レイリー後方散乱光を基準として得たものであり、前記都度レイリー状態量は、第n-1の前記光強度情報に含まれた前記レイリー後方散乱光を基準として得たものであり、
前記差分状態量算出部は、前記レイリー差分状態量として、平均所定レイリー差分状態量及び平均都度レイリー差分状態量を算出するともに前記ブリルアン差分状態量として平均ブリルアン差分状態量を算出し、前記平均所定レイリー差分状態量は、前記光ファイバに設定された複数の計測点ごとに得た第nの前記所定レイリー状態量と第n-1の前記所定レイリー状態量との差分の平均値であり、前記平均都度レイリー差分状態量は、前記光ファイバに設定された複数の計測点ごとに得た第nの前記都度レイリー状態量と第n-1の前記都度レイリー状態量との差分の平均値であり、前記平均ブリルアン差分状態量は、前記光ファイバに設定された複数の計測点ごとに得た第nの前記ブリルアン差分状態量の平均値であり、
前記評価値算出部は、前記評価値として、所定評価値及び都度評価値を算出し、前記所定評価値は、第nの前記光強度情報に含まれた前記レイリー後方散乱光を示す情報と、基準となる前記光強度情報に含まれた前記レイリー後方散乱光を示す情報として、第n-kの前記光強度情報に含まれた前記レイリー後方散乱光を示す情報を用いて得たものであり、前記都度評価値は、第nの前記光強度情報に含まれた前記レイリー後方散乱光を示す情報と、基準となる前記光強度情報に含まれた前記レイリー後方散乱光を示す情報として、第n-1の前記光強度情報に含まれた前記レイリー後方散乱光を示す情報を用いて得たものであり、
前記積上げ状態量算出部は、第nの前記所定評価値及び第nの前記都度評価値を用いて、第n-1の平均積上げ状態量に第nの前記平均所定レイリー差分状態量を加算する動作と、第n-1の前記平均積上げ状態量に第nの前記平均都度レイリー差分状態量を加算する動作と、第n-1の前記平均積上げ状態量に第nの前記平均ブリルアン差分状態量を加算する動作と、のいずれかを選択する、請求項1に記載の状態量計測装置。
【請求項5】
計測対象物に設けられる光ファイバケーブルと、前記光ファイバケーブルに計測光を入射する光源部と、前記光源部が入射した計測光に応じた後方散乱光に関する光強度情報を得る受光部と、を有する状態量計測装置を用いて、前記計測対象物におけるひずみ又は温度を示す計測状態量を得る状態量計測方法であって、
第nの光強度情報(nは1以上の整数)を取得する動作によって得た第nの前記光強度情報に含まれたレイリー後方散乱光に基づく情報を利用して第nのレイリー状態量を算出するとともに、第nの前記光強度情報に含まれたブリルアン後方散乱光に基づく情報を利用して第nのブリルアン状態量を算出するステップと、
第nの前記レイリー状態量から第n-1の前記レイリー状態量へ変化したときの変化量である第nのレイリー差分状態量を算出するとともに、第nの前記ブリルアン状態量から第n-1の前記ブリルアン状態量に変化したときの変化量である第nのブリルアン差分状態量を算出するステップと、
第nの前記光強度情報に含まれたレイリー後方散乱光に基づく情報と、基準となる前記光強度情報に含まれた前記レイリー後方散乱光を示す情報と、の相対的な関係を示す第nの評価値を算出するステップと、
第1の前記光強度情報を取得する動作から第nの前記光強度情報を取得する動作までに前記計測対象物における前記状態量の変化を示す値である前記計測状態量を算出するステップと、を有し、
前記計測状態量を算出するステップは、第nの前記評価値を用いて第n-1の前記積上げ状態量に第nの前記レイリー差分状態量を加算する動作と、第n-1の前記積上げ状態量に第nの前記ブリルアン差分状態量を加算する動作と、のいずれかを選択する、状態量計測方法。
【請求項6】
計測対象物に設けられる光ファイバケーブルと、前記光ファイバケーブルに計測光を入射する光源部と、前記光源部が入射した計測光に応じた後方散乱光に関する光強度情報を得る受光部と、を有する状態量計測装置を用いて、前記計測対象物におけるひずみ又は温度を示す計測状態量を得る状態量計測プログラムであって、
コンピュータを、
第nの光強度情報(nは1以上の整数)を取得する動作によって得た第nの前記光強度情報に含まれたレイリー後方散乱光に基づく情報を利用して第nのレイリー状態量を算出するとともに、第nの前記光強度情報に含まれたブリルアン後方散乱光に基づく情報を利用して第nのブリルアン状態量を算出する要素状態量算出部、
第nの前記レイリー状態量から第n-1の前記レイリー状態量へ変化したときの変化量である第nのレイリー差分状態量を算出するとともに、第nの前記ブリルアン状態量から第n-1の前記ブリルアン状態量に変化したときの変化量である第nのブリルアン差分状態量を算出する差分状態量算出部、
第nの前記光強度情報に含まれたレイリー後方散乱光に基づく情報と、基準となる前記光強度情報に含まれた前記レイリー後方散乱光を示す情報と、の相対的な関係を示す第nの評価値を算出する評価値算出部、及び、
第1の前記光強度情報を取得する動作から第nの前記光強度情報を取得する動作までに前記計測対象物における前記状態量の変化を示す値である前記計測状態量を算出する積上げ状態量算出部、として機能させ、
前記積上げ状態量算出部は、第nの前記評価値を用いて第n-1の前記積上げ状態量に第nの前記レイリー差分状態量を加算する動作と、第n-1の前記積上げ状態量に第nの前記ブリルアン差分状態量を加算する動作と、のいずれかを選択する、状態量計測プログラム。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、状態量計測装置、状態量計測方法及び状態量計測プログラムに関する。
続きを表示(約 2,000 文字)【背景技術】
【0002】
光ファイバケーブルを用いて計測対象物の状態量を計測する技術が知られている。計測対象物の状態を示す量として、ひずみや温度が例示できる。ひずみの変化や温度の変化が生じた光ファイバケーブルに計測光を入射すると、ひずみの変化や温度の変化が生じた位置において散乱光が生じる。散乱光には、いくつかの態様がある。
【0003】
散乱光のひとつに、レイリー後方散乱光がある。レイリー後方散乱光をスペクトル解析すると、レイリースペクトルと称される情報を得ることができる。計測によって得たレイリースペクトルを基準となるレイリースペクトルとを比較することによって、基準となるレイリースペクトルから計測によって得たレイリースペクトルの間における相互相関のピーク周波数を得ることができる。この相互相関のピーク周波数は、ひずみの変化量や温度の変化量に対応する。従って、ピーク周波数に変換係数を乗ずることによりひずみや温度を評価することができる(特許文献1参照)。
【0004】
レイリー後方散乱光を用いる計測では、基準となるレイリースペクトルを逐次更新しながらひずみや温度を評価することがある。一例として、基準となるレイリースペクトルとして、24時間ごとに更新されるレイリースペクトルを採用することがある。別の例として、基準となるレイリースペクトルとして、前回の計測によって得たレイリースペクトルを採用することもある。基準となるレイリースペクトルと計測によって得たレイリースペクトルとを用いて算出した値を積上げることにより、ひずみや温度を得ることができる。
【0005】
光ファイバケーブルの内部で生じる散乱光には、上記のレイリー後方散乱光の他に、ブリルアン後方散乱光がある。ブリルアン後方散乱光をスペクトル解析すると、ブリルアンスペクトルを得ることができる。光ファイバケーブルに生じるひずみの変化や温度の変化に応じて、山状のブリルアンスペクトルにおけるピーク周波数がシフトする。初期ピーク周波数に対する周波数のシフト量に変換係数を乗ずることによってひずみや温度を評価することができる(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
特許第4441624号
特許第6647420号
特開2021-196239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
レイリー後方散乱光を用いた計測は、計測誤差が小さいという特徴を有する。例えば、状態量がひずみである場合、計測誤差は±1μ程度である。しかし、基準となるレイリースペクトルと計測によって得たレイリースペクトルとの差異が大きくなる(掃引周波数:300GHzの場合において概ねひずみは300μ以上)と、相互相関が不良となって評価することができない。一方、ブリルアン後方散乱光を用いた計測は、計測誤差が比較的大きい。例えば、状態量がひずみである場合、計測誤差は±50μ程度である。しかし、ブリルアンスペクトルのピーク周波数が掃引周波数の範囲に属すればひずみや温度の評価が可能である。例えば、ブリルアン後方散乱光を用いたひずみの計測では、±40000μ程度の大きなひずみの評価も可能である。
【0008】
そこで、ひずみや温度の変化量の大きさに応じて、レイリー後方散乱光を用いた計測とブリルアン後方散乱光を用いた計測とを使い分けることが考えられる。例えば、構造物のモニタリングに光ファイバによる計測を適用することを想定する。日変動や季節変動等の緩慢なひずみの変化や温度の変化に対しては、計測精度の高いレイリ―計測の結果を採用する。一方、地震などの外力の変化に起因して、大きなひずみの変化が想定される場合には、大ひずみでも計測可能なブリルアン計測を採用する。各位置の計測点においてレイリー計測とブリルアン計測のどちらを採用するべきかは計測されるタイミングによって変わってくる。
【0009】
特許文献3は、光ファイバケーブルを利用したひずみ計測の正確性、信頼性を高める技術を開示する。特許文献3に開示されたひずみ計測装置、ひずみ計測方法及びひずみ計測プログラムは、本件発明者らによるものである。特許文献3は、レイリー計測を短時間でn回の計測を行い、それらの差分を閾値にレイリーによる計測結果とブリルアンによる計測結果を切り替える手法を開示する。
【0010】
しかし、当該技術分野では、光ファイバケーブルを利用したひずみや温度に例示される状態量の正確性及び信頼性をさらに高めることが望まれていた。
(【0011】以降は省略されています)

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