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公開番号2024172749
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-12-12
出願番号2023090680
出願日2023-06-01
発明の名称核燃料未臨界計測システムおよび核燃料未臨界計測方法
出願人株式会社東芝,東芝エネルギーシステムズ株式会社
代理人弁理士法人東京国際特許事務所
主分類G21C 17/06 20060101AFI20241205BHJP(核物理;核工学)
要約【課題】事前情報が少ない核燃料の核分裂反応に影響を与える体系の最大実効増倍率を評価して核燃料の臨界管理を行うことができる核燃料未臨界計測技術を提供する。
【解決手段】核燃料未臨界計測システム1は、核燃料の核分裂反応に影響を与える体系に関する複数の条件のそれぞれに対応した放射線検出器2の計測値を事前に評価する計測値評価部20と、複数の条件のそれぞれに対応した中性子増倍率を事前に評価する増倍率評価部21と、計測値評価部20で評価した計測値の結果と増倍率評価部21で評価した中性子増倍率の結果とを対応付け、計測値から実効増倍率を導出する評価関数を作成する評価関数作成部22と、放射線検出器2で実際に計測した計測値を集積する計測値集積部23と、計測値集積部23で集積した計測値と評価関数から実効増倍率を計算して体系の未臨界度を評価する未臨界評価部24とを備える。
【選択図】図2
特許請求の範囲【請求項1】
計測対象となる核燃料を通過する放射線または前記核燃料から放射される放射線の少なくとも一方を計測する放射線検出器と、
前記核燃料の核分裂反応に影響を与える体系に関する複数の条件のそれぞれに対応した前記放射線検出器の計測値を事前に評価する計測値評価部と、
前記複数の条件のそれぞれに対応した中性子増倍率を事前に評価する増倍率評価部と、
前記計測値評価部で評価した前記計測値の結果と前記増倍率評価部で評価した前記中性子増倍率の結果とを対応付け、前記計測値から実効増倍率を導出する評価関数を作成する評価関数作成部と、
前記放射線検出器で実際に計測した前記計測値を集積する計測値集積部と、
前記計測値集積部で集積した前記計測値と前記評価関数から前記実効増倍率を計算して前記体系の未臨界度を評価する未臨界評価部と、
を備える、
核燃料未臨界計測システム。
続きを表示(約 1,700 文字)【請求項2】
前記核燃料を通過する放射線は、前記核燃料を収納する収納容器を通過する放射線であり、
前記計測値評価部で事前に評価する前記放射線検出器の前記計測値は、前記収納容器の内部で前記体系に関する前記複数の条件のそれぞれに対応した前記放射線検出器の前記計測値である、
請求項1に記載の核燃料未臨界計測システム。
【請求項3】
前記放射線検出器は、ミュオンを計測し、かつ前記核燃料を挟んで互いに向かい合う位置に設けられた少なくとも1組のミュオン軌跡検出器である、
請求項1または請求項2に記載の核燃料未臨界計測システム。
【請求項4】
前記計測値評価部は、
前記体系をシミュレーションモデルとして再現し、
前記核燃料の含有量、組成、形状を変更した前記体系に関する前記複数の条件を設定し、
前記複数の条件のそれぞれに対応した前記放射線検出器の前記計測値を計算し、前記計測値の解析結果を作成する、
請求項1または請求項2に記載の核燃料未臨界計測システム。
【請求項5】
前記増倍率評価部は、
前記核燃料の組成および形状に関する前記体系であり、基準組成の通常体系、前記基準組成に対して減速材を追加した減速材体系を含む評価用体系を作成し、
前記評価用体系に対する無限増倍率または前記実効増倍率の少なくとも一方を計算する、
請求項1または請求項2に記載の核燃料未臨界計測システム。
【請求項6】
前記増倍率評価部は、
前記体系をシミュレーションモデルとして再現し、
前記核燃料の含有量、組成、形状を変更した前記体系に関する前記複数の条件を設定し、
前記複数の条件のそれぞれに対応する前記体系であり、基準組成の通常体系、前記基準組成に対して減速材を追加した減速材体系、前記基準組成に対して前記減速材を追加したものが複数隣接して形成される無限体系のそれぞれの前記実効増倍率を計算し、前記実効増倍率の解析結果を作成する、
請求項1または請求項2に記載の核燃料未臨界計測システム。
【請求項7】
前記評価関数作成部は、
前記計測値評価部で評価した核燃料含有量に対する前記計測値の結果と、前記増倍率評価部で評価した前記核燃料含有量に対する前記中性子増倍率の結果とから、前記計測値と前記実効増倍率の関係を示す評価式を作成し、
前記計測値集積部で集積した前記計測値を前記実効増倍率に変換する前記評価関数を作成する、
請求項1または請求項2に記載の核燃料未臨界計測システム。
【請求項8】
前記未臨界評価部は、
前記計測値集積部で集積した前記計測値と、前記評価関数作成部で作成した前記評価関数を用いて、
前記計測値を前記評価関数に入力することで前記実効増倍率を出力し、
出力された前記実効増倍率が、基準値を超える場合に前記核燃料が臨界であると判定し、前記基準値を下回る場合に前記核燃料が未臨界であると判定する、
請求項1または請求項2に記載の核燃料未臨界計測システム。
【請求項9】
前記計測値評価部と前記増倍率評価部と前記評価関数作成部の少なくとも1つは、
前記体系をシミュレーションモデルとして再現し、
前記シミュレーションモデルで前記核燃料を非均質形状に設定し、
前記計測値の解析結果と前記実効増倍率の解析結果と前記評価関数の少なくとも1つを作成する、
請求項1または請求項2に記載の核燃料未臨界計測システム。
【請求項10】
前記計測値評価部と前記増倍率評価部と前記評価関数作成部の少なくとも1つは、
前記体系をシミュレーションモデルとして再現し、
前記シミュレーションモデルで前記核燃料とその他の構造物を含有物質として設定し、
前記計測値の解析結果と前記実効増倍率の解析結果と前記評価関数の少なくとも1つを作成する、
請求項1または請求項2に記載の核燃料未臨界計測システム。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、核燃料未臨界計測技術に関する。
続きを表示(約 1,700 文字)【背景技術】
【0002】
ウランなどの核燃料は、核セキュリティの観点から国際的な取り扱いが厳しく管理されている。特に、核燃料は、その臨界性に応じた臨界管理が必要となる。核燃料の臨界管理を行う上で核燃料を含む体系の中性子増倍率を把握することが重要である。中性子増倍率とは、燃料を含む体系内で単位時間あたりに消滅する中性子数に対して、生成する中性子数の比率を示した値である。特に、有限な体系においては、生成した中性子のうち一定数が体系の外に漏れる効果を考慮した実効的な中性子増倍率を実効増倍率(keff)として取り扱う。体系のkeffが1となるとき、その体系は臨界であるとされるが、一般的に、臨界管理上は一定の裕度を含めてkeffが0.98または0.95以下などの制限値を設定し、体系中に中性子減速材が含まれる条件と反射体で覆われる条件などの臨界管理上の厳しい条件下においても、この制限値を超えることがないように管理が行われる。
【0003】
原子炉では、運転時に実際に臨界状態となるため炉内の中性子数の時間的な変動から、中性子増倍率を実際に計測することができる。一方、核燃料の保管時には臨界状態となっていないため、その体系が持つ増倍率を計測することは困難である。
【0004】
核燃料を保管する場合には、その体系が臨界とならないように臨界管理を行う必要がある。空気中に貯蔵されている核燃料の場合、周囲に中性子減速材がないため、臨界となる可能性は極めて低いが、臨界管理上は、通常状態で未臨界であるだけでなく、その体系に想定され得る最大の反応度が加わった場合でも、臨界とならない事を担保する必要がある。
【0005】
空気中に保管されている燃料の場合、現実的に想定される危険な事象は、体系が水没することにより体系内が減速材で満たされ、さらに体系の周囲が反射体に覆われることである。
【0006】
したがって、燃料の管理においては、核燃料そのものの増倍率だけでなく、核燃料を含む体系に減速材が追加されるような臨界管理上の厳しい条件での増倍率を評価する必要がある。
【0007】
現実的な計測条件においては、保管されている燃料に減速材を加えて臨界状態に近づけるような計測は、安全性の観点から実施することはできない。したがって、一般的な未臨界性の評価では、その体系をシミュレーション上に再現した上で、減速材を加えた条件での増倍率を評価する方法がとられる。しかしながら、燃料の組成と形状が未知の場合には適切なシミュレーションを行うことができない。
【0008】
既存の核燃料の未臨界度を計測する方法としては、燃料から放射されるガンマ線または中性子を計測する方法が知られている。しかしながら、従来の方法では、核燃料の形状と初期組成が既知の条件を前提として、計測した値から燃焼度を推定した上で未臨界度を判定する方法であるため、燃料に関する事前情報が不足している場合に適用することは困難であった。
【0009】
また、核燃料を含む物質を非破壊で計測する有効な方法として、宇宙線ミュオンを用いた非破壊計測方法が提案されている。ミュオン散乱法は、物質に入射するミュオンの軌跡と、物質を通過したミュオンの軌跡を計測し、その軌跡変化をミュオン散乱値として計測する方法である。
【0010】
ミュオン軌跡検出器としては、電離ガスを用いたドリフトチューブ検出器を積層させた装置、マルチチャンネルのシンチレーション検出器を積層させたものが用いられる。ミュオンは、高い透過力を持ち、計測対象に入射したミュオンの多くが物質内を通過する。ここで、ミュオンは、物質の組成および形状に応じて多重クーロン散乱を生じる。ミュオン散乱の散乱角θ

は、以下の数式1に示される。ここで、物質の原子番号に固有の放射長X

に依存して散乱角θ

が変化する。
(【0011】以降は省略されています)

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