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公開番号2024160031
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-11-11
出願番号2023075000
出願日2023-04-28
発明の名称水素量検出装置及び水素量検出方法
出願人国立大学法人北海道大学
代理人個人,個人
主分類G01N 27/416 20060101AFI20241031BHJP(測定;試験)
要約【課題】 水素量をその場測定をすることが可能な水素量検出装置及び水素量検出方法を提供する。
【解決手段】
水素量検出装置100は、試料Sの水素侵入面において吸着する水素量に相関する第1信号を出力する第1検出素子1と、試料S内に侵入しない水素量に相関する第2信号を出力する第2検出素子2と、試料Sを透過して水素引出面に到達した水素量に応じた第3信号を出力する第3検出素子3とを備えている。制御装置5は、第1検出素子1、第2検出素子2、及び、第3検出素子3から、それぞれ出力された第1信号、第2信号及び第3信号に基づいて、試料S内の水素量に対応する値を求める。
【選択図】 図1
特許請求の範囲【請求項1】
試料の水素侵入面において吸着する水素量に相関する第1信号を出力する第1検出素子と、
前記試料内に侵入しない水素量に相関する第2信号を出力する第2検出素子と、
前記試料を透過して前記試料の水素引出面に到達した水素量に応じた第3信号を出力する第3検出素子と、
前記第1検出素子、前記第2検出素子及び前記第3検出素子から、それぞれ出力された第1信号、第2信号及び第3信号に基づいて、前記試料内の水素量に対応する値を求める制御装置と、
を備える水素量検出装置。
続きを表示(約 1,600 文字)【請求項2】
前記第1検出素子及び前記第2検出素子を含み、水素を含む流体の導入口及び排出口を有する第1セルと、
前記第3検出素子を含み、前記試料を介して前記第1セルに隣接する第2セルと、
を備える、
請求項1に記載の水素量検出装置。
【請求項3】
前記第1検出素子は、
前記水素侵入面を第1作用電極とした場合、前記第1作用電極との間に、前記第1信号として第1電流(Ie)が流れる第1対電極と、
前記第1作用電極との間に第1電圧(V1)が与えられる第1参照電極と、
を備え、
前記第2検出素子は、
前記第1対電極との間に、前記第2信号として第2電流(Id)が流れる検出電極を備え、前記検出電極と前記参照電極との間には第2電圧(V2)が与えられ、
前記第3検出素子は、
前記水素引出面を第2作用電極とした場合、前記第2作用電極との間に、前記第3信号として第3電流(Iw)が流れる第2対電極と、
前記第2作用電極との間に第3電圧(V3)が与えられる第2参照電極と、
を備える、
請求項2に記載の水素量検出装置。
【請求項4】
前記試料の厚み方向をZ軸とし、Z軸に垂直な方向をX軸、Z軸及びX軸の双方に垂直な方向をY軸とする三次元直交座標系を設定した場合、
前記第1セルは、XY平面内において、同心円状に形成された第1流路及び第2流路を備え、前記第1流路は、前記第2流路の外側に位置し、
前記第1セル内の流体流路は、前記導入口から供給された流体が、前記第1流路内を前記試料の方向に進行して、前記試料の前記水素侵入面に到達した後、前記第2流路内を通って、前記排出口に至るように設定されている、
請求項3に記載の水素量検出装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記第1電流(Ie)、前記第2電流(Id)、前記第3電流(Iw)に基づいて、前記第1電流に相関する値から、前記第2電流に相関する値、及び、前記第3電流に相関する値を減じ、減じた値の時間積分値を求めることにより、前記試料内の水素量に対応する値を求める、
請求項3に記載の水素量検出装置。
【請求項6】
前記第2電流(Id)に相関する値は、前記第2電流(Id)を、前記検出電極における水素検出効率(ηd)で除した値である、
請求項5に記載の水素量検出装置。
【請求項7】
前記水素量検出装置を第1の水素量検出装置とし、
前記第1の水素量検出装置と同一の構造を備えた第2の水素量検出装置を更に備え、
前記第2の水素量検出装置は、
その試料として、前記検出電極と同一の材料からなる基準試料を用い、
その制御装置は、前記第2の水素量検出装置における第1電流(Ie)に対する第2電流(Id)の比率(Id/Ie)を前記水素検出効率(ηd)として求め、
前記第1の水素量検出装置の前記制御装置は、
前記第2の水素量検出装置において求められた水素検出効率(ηd)を用いて、前記試料内の水素量に対応する値を求める、
請求項6に記載の水素量検出装置。
【請求項8】
第1検出素子により試料の水素侵入面において吸着する水素量に相関する第1信号を出力する工程と、
第2検出素子により前記試料内に侵入しない水素量に相関する第2信号を出力する工程と、
第3検出素子により前記試料を透過して前記試料の水素引出面に到達した水素量に応じた第3信号を出力する工程と、第1検出素子、第2検出素子及び第3検出素子から、それぞれ出力された第1信号、第2信号及び第3信号に基づいて、前記試料内の水素量に対応する値を求める工程と、
を備える水素量検出方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本開示は、水素量検出装置及び水素量検出方法に関する。
続きを表示(約 3,000 文字)【背景技術】
【0002】
鋼材(金属)を大気腐食環境内に配置した場合、鋼材を化学処理した場合、或いは、鋼材を水素ガス環境内に配置した場合、鋼材表面に水素が吸着する。鋼材表面に吸着した水素の一部は、鋼材内に侵入して拡散し、転位や欠陥などのトラップサイトに捕捉され、鋼材内に蓄積される。捕捉された水素により、鋼材の水素脆化が生じる場合がある。例えば、橋梁におけるボルトの腐食、自動車における各種部品の腐食により、鋼材中に水素が導入される。また、軽くて強度の高い高強度鋼においては、水素脆化が生じやすいことが知られている。鋼材内の水素量検出技術は、新しい鋼材の開発、品質改良、既存の鋼材の状態測定などに役立てることができる。
【0003】
金属中の水素挙動を観察する技術として、「Devanathan-Stachurski」セルを用いた電気化学的水素透過試験が知られている(非特許文献1)。この技術では、試料を2つの電気化学セルで挟み、水素侵入面のカソード電流に対する水素引出面のアノード反応の時間応答から、金属の拡散に影響するパラメータを解析(類推)している。また、金属内の転位や欠陥などのトラップサイトに水素が捕捉されると、金属内の水素拡散に影響を与えることが知られている(非特許文献2)。その他の水素検出技術として、昇温脱離法が知られている。昇温脱離法では、材料中の水素の結合エネルギーが温度依存性を示すことを利用して温度上昇により脱離する水素量を求めている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
M. A. V.Devanathan, Z. Stachurski, “Theadsorption and diffusion of electrolytic hydrogen in palladium”, Proc. R. Soc. (London), A, 270 (1962) 90-102.
A. McNabb, P. K. Foster, "A newanalysis of the diffusion of hydrogen in iron and ferritic steels", Trans. Metall. Soc.AIME, 227 (1963) 618-627.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の方法では、鋼材等の試料内の水素量をその場測定することができない。水素量をその場測定することが可能な水素量検出装置及び水素量検出方法を提供することが期待されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の水素量検出装置は、試料の水素侵入面において吸着する水素量に相関する第1信号を出力する第1検出素子と、試料内に侵入しない水素量に相関する第2信号を出力する第2検出素子と、試料を透過して試料の水素引出面に到達した水素量に応じた第3信号を出力する第3検出素子と、第1検出素子、第2検出素子及び第3検出素子から、それぞれ出力された第1信号、第2信号及び第3信号に基づいて、試料内の水素量に対応する値を求める制御装置とを備えている。
【0007】
第1検出素子により検出される、水素侵入面において吸着した水素量のうち、試料内に侵入しなかった水素量の一部は、第2検出素子により検出され、試料を透過した水素量は、第3検出素子により検出することができる。試料内に残留する水素量に相関する水素量は、第1検出素子の出力から、水素検出効率を考慮した第2検出素子の出力と、第3検出素子の出力を減じた値に相関することになる。水素量を求める場合に、各種の補正演算を行うこともできる。すなわち、制御装置は、第1信号、第2信号及び第3信号に基づいて、試料内の水素量(に対応する値)を求めることができる。したがって、試料内の水素量をその場測定することができる。
【0008】
本開示の水素量検出方法は、第1検出素子により試料の水素侵入面において吸着する水素量に相関する第1信号を出力する工程と、第2検出素子により試料内に侵入しない水素量に相関する第2信号を出力する工程と、第3検出素子により試料を透過して試料の水素引出面に到達した水素量に応じた第3信号を出力する工程と、第1検出素子、第2検出素子及び第3検出素子から、それぞれ出力された第1信号、第2信号及び第3信号に基づいて、試料内の水素量に対応する値を求める工程とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
水素量検出装置及び水素量検出方法によれば、水素量をその場測定をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1は、水素量検出装置のブロック図である。
図2は、水素量検出装置の検出素子を説明するための図である。
図3は、水素量検出装置における電気化学反応について説明するための図である。
図4は、水素量検出装置における検出構造の縦断面構成を示す図である。
図5は、図4に示した検出構造の水平断面図である。
図6は、試料板に基準試料(白金)を使って水素検出効率を確認する場合の、時間t(s)と、第1電流Ie(μA)、第2電流Id(μA)、水素検出効率ηdとの関係を示すグラフである。
図7は、試料板に鋼材を使って水素量測定を行う場合の、時間t(ks)と、第1電流Ie(μA)、第2電流Id(μA)、第3電流Iw(μA)との関係を示すグラフである。
図8は、時間t(ks)と試料内水素量n

(nmol)との関係を示すグラフである。
図9は、板厚の違いによる時間t(ks)と試料内水素量n

(nmol)との関係を示すグラフである。
図10は、試料の板厚d(μm)と試料内水素量n

(nmol)との関係を示すグラフである。
図11は、時間t(s)と試料内水素勾配G

(mol m
-1
)との関係を示すグラフである。
図12は、時間t(s)と侵入最表面水素量n

(mol)との関係を示すグラフである。
図13は、試料の硬さの違いによる時間t(ks)と試料内水素量n

(nmol)との関係を示すグラフである。
図14は、時間t(s)と侵入最表面水素量n

(mol)との関係を示すグラフである。
図15は、水素侵入面の電位の違いによる時間t(ks)と、試料内水素量(μmol)、試料内水素量の時間微分(nmol s
-1
)との関係を示すグラフである。
図16は、複数の検出構造を備えた水素量検出装置のブロック図である。
図17は、水素量検出装置を組み込んだ各種装置を示す図(図17(A)、図17(B)、図17(C)、図17(D)、図17(E))である。
【発明を実施するための形態】
(【0011】以降は省略されています)

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