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公開番号2024144863
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-10-15
出願番号2023057013
出願日2023-03-31
発明の名称電極材料の製造方法
出願人国立大学法人九州大学
代理人個人,個人
主分類H01M 4/88 20060101AFI20241004BHJP(基本的電気素子)
要約【課題】メソポーラスカーボン(MC)の細孔外表面及び細孔内表面に電子伝導性酸化物を固着させることができる電極材料の製造方法を提供する。
【解決手段】以下の工程(1)~(4)を含む電極材料の製造方法。(1):MCと無水アルコールとを接触させ、細孔内に無水アルコールが導入されたMCを含む分散液を得る工程。(2):無水アルコールを導入したMCを含む分散液と前記電子伝導性酸化物のスズアルコキシド溶液と水/アルコール溶媒とを混合して得られた混合溶液から溶媒を留去させ、MCにスズアルコキシドの加水分解物が固着した乾燥物を得る工程。(3):得られた乾燥物を熱処理し、MCの細孔内表面及び細孔外表面に電子伝導性酸化物が固着した多孔質複合担体を得る工程。(4):得られた多孔質複合担体と電極触媒前駆体を含む溶液を均一になるまで混合した後に溶媒を留去して得られた乾燥物を不活性ガス雰囲気で熱処理する工程。
【選択図】図8
特許請求の範囲【請求項1】
メソポーラスカーボン及び前記メソポーラスカーボンの細孔内表面及び細孔外表面に固着した酸化スズを主体とする電子伝導性酸化物からなる多孔質複合担体と、前記多孔質複合担体に担持された電極触媒粒子と、を含む電極材料の製造方法であって、以下の工程(1)~(4)を含む製造方法。
工程(1):メソポーラスカーボンと無水アルコールとを接触させ、細孔内に無水アルコールが導入されたメソポーラスカーボンを含む分散液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた無水アルコールを導入したメソポーラスカーボンを含む分散液と、前記電子伝導性酸化物のスズアルコキシドを含むスズアルコキシド溶液と、水/アルコール溶媒とを混合して混合溶液を得た後に、当該混合溶液から溶媒を留去させ、前記メソポーラスカーボンの細孔内表面及び細孔外表面にスズアルコキシドの加水分解物が固着した乾燥物を得る工程
工程(3):工程(2)で得られた乾燥物を熱処理し、前記メソポーラスカーボンの細孔内表面及び細孔外表面に電子伝導性酸化物が固着した多孔質複合担体を得る工程
工程(4):工程(3)で得られた多孔質複合担体と電極触媒前駆体を含む溶液を均一になるまで混合した後に、溶媒を留去して得られた乾燥物を不活性ガス雰囲気で熱処理する工程
続きを表示(約 490 文字)【請求項2】
工程(1)において、無水アルコールがメタノール、エタノール、n-プロパノール及びイソプロパノールから選択される1種以上である請求項1に記載の電極材料の製造方法。
【請求項3】
工程(2)において、前記メソポーラスカーボンの細孔内表面及び細孔外表面にスズアルコキシドの加水分解物が固着した乾燥物を得た後に、得られた乾燥物をニオブアルコキシド溶液に分散した後に溶媒を留去させて乾燥物を得る、請求項1に記載の電極材料の製造方法。
【請求項4】
工程(2)において、前記混合溶液における水及びアルコール(前記分散液中の無水アルコール分含む)の合計100体積%における水の割合が、0.1体積%以上10体積%以下である請求項1から3のいずれかに記載の電極材料の製造方法。
【請求項5】
工程(3)において、熱処理温度が、350℃以上650℃以下である請求項1に記載の電極材料の製造方法。
【請求項6】
工程(4)において、前記電極触媒前駆体が、貴金属アセチルアセトナートである請求項1に記載の電極材料の製造方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用電極に好適な電極材料の製造方法に関する。
続きを表示(約 2,000 文字)【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池(PEFC)は、これを動力源とする燃料電池自動車(FCV)が既に市販され、今後トラックやバス、船舶などへの用途拡大と普及展開が期待されている。PEFCは、一般的に、固体高分子電解質膜の両面に一対の電極を配置させた膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly(MEA))を、ガス流路が形成されたセパレータで挟持した構造を有する。燃料電池用電極(特にはPEFC用電極)は、一般に、電極触媒活性を有する電極材料及び高分子電解質からなる電極触媒層と、ガス通気性と電子伝導性を兼ね備えたガス拡散層とから構成される。
【0003】
現在普及しているPEFC用電極材料として、炭素系担体に電極触媒微粒子(典型的にはPt又はPt合金微粒子)を分散させて担持した電極材料が用いられている。
【0004】
一方、PEFCの電解質膜は酸性(pH=0~3)であるため、PEFCの電極材料は酸性雰囲気下で使用されることになる。また、通常運転しているときのセル電圧は0.4~1.0Vであるが、起動停止時にはセル電圧が1.5Vまで上昇することが知られている。このようなPEFCの運転条件でのカソード及びアノードの状態は、カソードにおいては担体である炭素系材料が二酸化炭素(CO
2
)として分解する領域である。そのため、カソードでは、炭素担体が電気化学的に酸化されてCO
2
に分解する反応が起こり、結果として炭素担体が腐食されて(カーボン腐食)、触媒活性成分であるPt粒子の凝集・脱落等を引き起し、燃料電池の性能低下の要因となる。また、カソードだけでなく、アノードにおいても運転初期などに燃料ガスが不足すると、その部分での電圧低下、あるいは濃度分極が生じて局部的に通常と反対の電位となり、炭素の電気化学的酸化分解反応が起こることがある。
【0005】
上述した炭素担体の腐食の問題に対し、PEFC作動条件(強酸性、高電位)で熱力学的に安定な電子伝導性酸化物(SnO
2
、TiO
2
等)を使用した電極材料が報告されている(特許文献1,2)。このような電極材料では、金属酸化物に由来する優れた耐久性が得られる。
【0006】
また、近年、メソポーラスカーボンを触媒担体の骨格にし、メソポーラスカーボンの細孔(メソ孔)内に、Pt微粒子を担持した電極材料が注目されている(例えば、特許文献3、4)。メソポーラスカーボンは、導電性に優れ、ガス拡散もしやすく、且つ高表面積を有するため、これを固体高分子形燃料電池の電極触媒の担体として使用すると、優れた発電性能を有する電極を得ることができる。
【0007】
特許文献1,2での電子伝導性酸化物の担持(固着)方法は、有機溶媒に溶かした前駆体にアンモニア水または純水を滴下して電子伝導性酸化物を得る手法であるが、これらの方法では、反応速度が速く制御が困難であるため、生成した電子伝導性酸化物の一次粒子サイズが大きくなり(10nm以上)、一次粒子が凝集した状態でカーボン担体に担持(固着)されてしまう。そのため、特に当該電子伝導性酸化物の担持(固着)方法は、メソポーラスカーボンに適用しようとしても、メソポーラスカーボンのメソ孔内に電子伝導性酸化物を均一に担持(固着)させることは極めて困難であると考えられていた。
【0008】
一方、本発明者等は特許文献5においてメソポーラスカーボンと電子伝導性酸化物前駆体のアルコキシド化合物とを非水有機溶媒中で均一になるまで混合した後に、溶媒を留去して乾燥させて得られた乾燥物を、水蒸気による加水分解を行うことによって、電子伝導性酸化物前駆体を分解し、次いで熱処理を行うことでメソポーラスカーボン表面に電子伝導性酸化物を固着させる工程を含む燃料電池用電極材料の製造方法を報告している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
特許第5322110号公報
特許第6598159号公報
特許第6969996号公報
特許第6931808号公報
特願2022-141541号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献5で開示したメソポーラスカーボンの細孔に電子伝導性酸化物前駆体を導入した後に、水蒸気を導入して加水分解を行う方法では、メソポーラスカーボンの細孔内部に電子伝導性酸化物を確実に形成できるが、生産性の面では改善の余地があった。
(【0011】以降は省略されています)

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