特許ウォッチ

公開番号2025103695
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-07-09
出願番号2023221264
出願日2023-12-27
発明の名称ジャイロセンサおよびジャイロセンサの制御方法
出願人株式会社デンソー,トヨタ自動車株式会社,株式会社ミライズテクノロジーズ
代理人弁理士法人ゆうあい特許事務所
主分類G01C 19/5726 20120101AFI20250702BHJP(測定;試験)
要約【課題】ジャイロセンサにおいて、振動子の駆動/検出の信号のゲイン影響を低減し、0点バイアス出力を最小化する。
【解決手段】ジャイロセンサは、振動子2と、振動子2と対向する複数の電極を有する実装基板3とによりなるセンサ部が、検出ゲイン比補正部106、駆動ゲイン比補正部153、バイアス誤差補正部160を有する制御部10により駆動制御される。振動子2の2つの振動軸をx軸、y軸として、検出ゲイン比補正部106は、センサ部からのx軸、y軸の振動の検出信号のゲイン比を補正し、駆動ゲイン比補正部153は、センサ部へのx軸、y軸の駆動信号のゲイン比を補正する。バイアス誤差補正部160は、検出ゲイン比、駆動ゲイン比の補正後、角速度演算部132が算出する角速度がゼロに最も近い値となる角度を演算し、当該角度を振動子2の振動の検出/駆動の方向に決定する。
【選択図】図7
特許請求の範囲【請求項１】
ジャイロセンサであって、
共振角周波数が異なる第一振動モードと第二振動モードとを有する振動子（２）と、
前記振動子と対向する複数の電極（５１）を有する実装基板（３）と、
前記振動子の駆動制御を実行する制御部（１０）と、を備え、
複数の前記電極に囲まれた領域の中心を通り、前記実装基板の厚み方向に沿った仮想直線を軸とする径方向であって、前記第一振動モードの振動方向に沿った方向をｘ軸とし、前記第二振動モードの振動方向に沿った方向をｙ軸として、
前記制御部は、
前記振動子を前記第一振動モードで共振駆動させるための第１の駆動信号の周波数制御を実行する第１のＰＬＬ（１４０）と、
前記振動子を前記第二振動モードで共振駆動させるための第２の駆動信号の周波数制御を実行する第２のＰＬＬ（１４１）と、
複数の前記電極のうち前記振動子の前記ｘ軸における振動を検出する第１の検出電極からの第１の検出信号のゲインと、複数の前記電極のうち前記振動子の前記ｙ軸における振動を検出する第２の検出電極からの第２の検出信号のゲインとの比である検出ゲイン比（Ｇ
ｐｘｙ
）の補正を行う検出ゲイン比補正部（１０６）と、
複数の前記電極のうち前記振動子を前記第一振動モードで振動させるための第１の駆動電極への前記第１の駆動信号のゲインと、複数の前記電極のうち前記振動子を前記第二振動モードで振動させるための第２の駆動電極への前記第２の駆動信号のゲインとの比である駆動ゲイン比（Ｇ
ｆｘｙ
）の補正を行う駆動ゲイン比補正部（１５３）と、
前記第１の検出信号と前記第１の駆動信号に基づく第１の復調出力（Ｖ
Ｘｉ１
、Ｖ
Ｘｑ１
）、および前記第１の検出信号と前記第２の駆動信号に基づく第２の復調出力（Ｖ
Ｘｉ２
、Ｖ
Ｘｑ２
）の演算を行う第１復調ブロック（１１０）と、
前記第２の検出信号と前記第１の駆動信号に基づく第３の復調出力（Ｖ
Ｙｉ１
、Ｖ
Ｙｑ１
）、および前記第２の検出信号と前記第２の駆動信号に基づく第４の復調出力（Ｖ
Ｙｉ２
、Ｖ
Ｙｑ２
）の演算を行う第２復調ブロック（１２０）と、
前記第１復調ブロックからの出力信号に基づいて、前記振動子の前記第一振動モードでの共振駆動における振幅を維持するための駆動出力の演算を行う第１のＡＧＣ（１３０）と、
前記第２復調ブロックからの出力信号に基づいて、前記振動子の前記第二振動モードでの共振振動における振幅を維持するための駆動出力の演算を行う第２のＡＧＣ（１３１）と、
外部から印加された角速度の演算を実行する角速度演算部（１３２）と、
前記検出ゲイン比および前記駆動ゲイン比の補正後に、前記角速度演算部が算出する角速度がゼロに最も近い値となる角度を演算し、当該角度を前記振動子の振動の検出方向および駆動方向として決定するバイアス誤差補正部（１６０）と、を有するジャイロセンサ。
続きを表示（約 1,000 文字）【請求項２】
前記検出ゲイン比補正部は、前記検出ゲイン比の逆数である１／Ｇ
ｐｘｙ
を含む行列を乗算し、前記検出ゲイン比を打ち消す行列演算を行う、請求項１に記載のジャイロセンサ。
【請求項３】
前記駆動ゲイン比補正部は、前記駆動ゲイン比の逆数である１／Ｇ
ｆｘｙ
を含む行列を乗算し、前記駆動ゲイン比を打ち消す行列演算を行う、請求項１または２に記載のジャイロセンサ。
【請求項４】
共振角周波数が異なる第一振動モードと第二振動モードとを有する振動子（２）が、前記振動子と対向する複数の電極（５１）を有する実装基板（３）に搭載されてなるジャイロセンサの制御方法であって、
２つのＰＬＬ（１４０、１４１）を用いて、前記振動子を前記第一振動モードおよび前記第二振動モードでの共振駆動を維持することと、
複数の前記電極に囲まれた領域の中心を通り、前記実装基板の厚み方向に沿った仮想直線を軸とする径方向であって、前記第一振動モードの振動方向に沿った方向をｘ軸とし、前記第二振動モードの振動方向に沿った方向をｙ軸として、複数の前記電極のうち前記振動子の前記ｘ軸における振動を検出する第１の検出電極からの第１の検出信号のゲインと、複数の前記電極のうち前記振動子の前記ｙ軸における振動を検出する第２の検出電極からの第２の検出信号のゲインとの比である検出ゲイン比（Ｇ
ｐｘｙ
）を演算して決定することと、
複数の前記電極のうち前記振動子を前記ｘ軸で振動させるための第１の駆動電極への第１の駆動信号のゲインと、複数の前記電極のうち前記振動子を前記ｙ軸で振動させるための第２の駆動電極への第２の駆動信号のゲインとの比である駆動ゲイン比（Ｇ
ｆｘｙ
）を演算して決定することと、
前記検出ゲイン比および前記駆動ゲイン比を決定した後、前記振動子の振動の検出方向および駆動方向を０°～３６０°の範囲で角度入力してスイープさせつつ、入力した角度ごとに角速度もしくは前記振動子を振動させるための駆動出力を算出し、前記角速度がゼロに最も近い値を指令値（θ
０
）として決定することと、
前記検出方向および前記駆動方向を前記指令値の角度に決定し、角速度の計測を行うことと、を含むジャイロセンサの制御方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【０００１】
本開示は、ジャイロセンサおよびジャイロセンサの制御方法に関する。
続きを表示（約 1,700 文字）【背景技術】
【０００２】
従来、共振角周波数が異なる２つの振動モードを有する振動子と、当該振動子を囲む複数の電極とを有し、電極の一部から振動子に静電気力を印加して共振モードで振動させ、外部から印加される角速度を検出するジャイロセンサが知られている。この種のジャイロセンサは、電極と振動子との間における静電容量に基づき、外部から印加された角速度に応じた信号を出力するが、角速度が印加されていない状態においてもゼロ点誤差による信号出力が存在する。以下、説明の簡便化のため、角速度が印加されていない状態におけるジャイロセンサからの信号出力を「０点バイアス出力」と称する。
【０００３】
０点バイアス出力の主要因は、振動子の非対称性に由来する成分であり、具体的には振動子の振動軸ｘ、ｙのＱ値の差Δ（１／τ）およびθ
τ
により生じることが知られている。０点バイアス出力は、以下の（１）式で表される。
【０００４】
０点バイアス出力＝（１／２η）Δ（１／τ）ｓｉｎ２θ
τ
・・・（１）
【０００５】
（１）式におけるηとはAngular gainと称される振動子の構造により決まる定数であり、τとは時定数であり、θ
τ
とは振動子のダンパ軸と振動子の駆動および振動の検出を行う電極に沿った電極軸とのなす角度である。
【０００６】
０点バイアス出力を低減可能なジャイロセンサとしては、例えば、非特許文献１に記載のものが挙げられる。非特許文献１に記載のジャイロセンサは、０点バイアス出力の成分であるΔ（１／τ）ｓｉｎ２θ
τ
をバイアスとして、バイアスがゼロとなるように、モードを減衰軸上に偏向させるMode Deflectionという方法を採用することで、０点バイアス出力を低減する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【０００７】
WANG, Peng, et al. Bias Thermal Stability Improvement of Mode-Matching MEMS Gyroscope Using Mode Deflection. Journal of Microelectromechanical Systems, 2022, 32.1: 1-3.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
しかし、上記のモードを減衰軸上に偏向させる、すなわちθ
τ
によるバイアス出力が一番小さい方向でジャイロ動作をさせた場合であっても、０点バイアス出力には残差が生じうる。振動子の駆動信号や振動の検出信号に、振動子の２つの振動軸間においてゲイン比が存在する場合には、０点バイアス出力に残差が生じ、０点バイアス出力を最小化することができない。例えば、振動子への駆動の指令を出した方向と実際の振動子の振動方向とが異なる状態、あるいは振動子の実際の振動角度と電圧値から読み取った振動角度とが異なる状態では、０点バイアス出力に残差が生じてしまう。
【０００９】
また、キャリブレーション等によりシステム上において（１）式で表される０点バイアス出力が０になるように数値補正することも考えられる。しかし、動作状態における温度変化や経時変化等の影響によって０点バイアス出力が変動しうるため、このような場合には、キャリブレーション等による０点バイアス出力の低減効果が薄れてしまう。また、この方法であっても、非特許文献１に記載の方法と同様に、検出信号や駆動信号で２つの振動軸間におけるゲイン比が存在する場合には対応することができない。
【００１０】
本開示は、上記の点に鑑み、振動子の駆動／検出の信号の２つの振動軸間のゲイン比影響を低減し、０点バイアス出力を最小化することが可能なジャイロセンサおよびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
（【００１１】以降は省略されています）

関連特許