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公開番号2025030034
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-03-07
出願番号2023134987
出願日2023-08-22
発明の名称バルブタイミング調整システム
出願人株式会社デンソー
代理人個人,個人,個人,個人,個人
主分類F01L 1/356 20060101AFI20250228BHJP(機械または機関一般;機関設備一般;蒸気機関)
要約【課題】作動油が高粘度であっても位相ロック機構を解除しやすくしつつ、位相ロック機構の解除後にハウジングとベーンロータとの相対回転位相の実位相が目標位相をオーバーシュートすることを抑制する。
【解決手段】バルブタイミング調整システムは、バルブタイミング調整装置(1)、位相ロック機構(2)、油圧制御弁(3)、電磁駆動部(4)、電子制御装置(5)、を備える。電子制御装置は、相対回転位相の実位相と目標位相とに基づいて、電磁駆動部に印加する電流の目標電流を調整するフィードバック制御を実行し、相対回転位相を保持する際には電磁駆動部に印加する電流を保持電流に制御し、ロックピン(50)を嵌合凹部(51)から抜け出させる際、電磁駆動部へ保持電流より大きい目標電流を所定時間印加する初動制御を実行した後、初動制御で印加した電流より小さく且つ0より大きい電流から次第に電流を増加させる徐変制御を実行する。
【選択図】 図1
特許請求の範囲【請求項1】
内燃機関(6)の駆動軸(7)から従動軸(8、9)にトルクが伝達されるトルク伝達系統に設けられ、前記従動軸の回転により開閉駆動される吸気バルブ(14)または排気バルブ(15)の開閉タイミングを調整するバルブタイミング調整システムにおいて、
前記駆動軸と共に回転するハウジング(20)と、前記ハウジングの内側に形成された油圧室を進角油圧室(40)および遅角油圧室(41)に仕切り前記従動軸と共に回転するベーンロータ(30)とを有し、前記進角油圧室および前記遅角油圧室に供給される油圧により前記ハウジングと前記ベーンロータとの相対回転位相が制御されるバルブタイミング調整装置(1)と、
前記ベーンロータに形成された収容穴(39)に往復移動可能に設けられたロックピン(50)と、前記ベーンロータと前記ハウジングとが所定の位相にあるときに前記ロックピンの先端が嵌合可能なように前記ハウジングに形成された嵌合凹部(51)と、前記進角油圧室および前記遅角油圧室の少なくとも一方に連通し前記ロックピンが前記嵌合凹部から抜け出す方向に前記ロックピンに対して油圧を印加する解除油圧室(52)とを有する位相ロック機構(2)と、
前記進角油圧室および前記遅角油圧室にそれぞれ油路(37、38)を経由して連通する複数のポート(710、720)を有するスリーブ(70)と、前記スリーブの内側に往復移動可能に設けられて軸方向の位置の変化により複数の前記ポートの開口面積を調整可能なスプール(90)とを有し、前記進角油圧室および前記遅角油圧室への作動油の油圧および供給量を制御する油圧制御弁(3)と、
電流の印加量に応じて駆動して前記スプールに荷重を印加し、前記スプールの軸方向の位置を変化させることの可能な電磁駆動部(4)と、
前記電磁駆動部に印加する電流を制御する電子制御装置(5)と、を備え、
前記電子制御装置は、前記相対回転位相を目標位相に制御すべく前記相対回転位相の実位相と前記目標位相とに基づいて、前記電磁駆動部に印加する電流の目標電流を調整するフィードバック制御を実行し、前記相対回転位相を保持する際には前記電磁駆動部に印加する電流を保持電流に制御し、前記ロックピンの先端が前記嵌合凹部に嵌合した状態から前記ロックピンを前記嵌合凹部から抜け出させる際、前記電磁駆動部へ前記保持電流より大きい前記目標電流を所定時間印加して前記スプールを初期位置から移動させる初動制御を実行した後、前記初動制御で印加した電流より小さく且つ0より大きい電流から次第に電流を増加しつつ前記電磁駆動部へ電流を印加することで前記ロックピンを前記嵌合凹部から抜け出させる徐変制御を実行する、バルブタイミング調整システム。
続きを表示(約 390 文字)【請求項2】
前記電子制御装置は、前記電磁駆動部に印加可能な最大電流の60~80%の範囲で前記目標電流を調整する、請求項1に記載のバルブタイミング調整システム。
【請求項3】
前記電子制御装置は、PWM制御により前記電磁駆動部に印加する電流を制御し、前記PWM制御によりデューティ比30~50%の範囲で前記目標電流を調整する、請求項1又は2に記載のバルブタイミング調整システム。
【請求項4】
前記電子制御装置は、前記ロックピンの先端が前記嵌合凹部に嵌合した状態から前記ロックピンを前記嵌合凹部から抜け出させる際、前記相対回転位相の前記実位相と前記ロックピンを前記嵌合凹部から抜け出させた後に想定される前記目標位相とに基づいて、前記初動制御において前記電磁駆動部へ印加する前記目標電流を算出する、請求項1又は2に記載のバルブタイミング調整システム。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のバルブの開閉タイミングを調整するバルブタイミング調整システムに関する。
続きを表示(約 3,500 文字)【背景技術】
【0002】
例えば、バルブタイミング調整装置、位相ロック機構、流体圧制御装置および電子制御装置などを備えるバルブタイミング調整システムがある(特許文献1参照)。バルブタイミング調整装置は、内燃機関の駆動軸と共に回転するハウジングと、そのハウジングの内側に形成された油圧室を進角油圧室および遅角油圧室に仕切り、バルブを駆動する従動軸と共に回転するベーンロータとを有している。位相ロック機構は、ベーンロータに形成された収容穴に往復移動可能に設けられたロックピンが、ハウジングに形成された嵌合凹部に嵌合することで、ベーンロータとハウジングとの相対回転をロックする構成である。流体圧制御装置は、スプールおよびスリーブを有する油圧制御弁と、スプールを軸方向に移動させる電磁駆動部とを備え、バルブタイミング調整装置の油圧室に作動油の油圧を供給するものである。
【0003】
電子制御装置は、PWM制御により電磁駆動部に印加する電流をデューティ比で制御する。そして、電子制御装置は、位相ロック機構を解除する際、電磁駆動部へデューティ比100%で電流を所定時間印加してスプールを初期位置から移動させる初動制御を実行した後、初動制御で印加した電流より小さく且つ0より大きい電流から次第に電流を増加しつつ電磁駆動部へ電流を印加することでロックピンを嵌合凹部から抜け出させる徐変制御を実行する。特許文献1によれば、初動制御により、電磁駆動部からスプールに大きな荷重を瞬間的に印加することで、作動油が高粘度であっても、スプールを初期位置から確実に動かし、スプールを摺動しやすい状態に変えることが可能であるとしている。そのため、特許文献1によれば、初動制御に続く徐変制御により、電流印加量の増加に追従するようにスプールを徐々に移動させることができ、位相ロック機構を確実に解除できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開2023-20247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載のバルブタイミング調整システムでは、進角油圧室と、ロックピンを嵌合凹部から抜け出させる油圧を印加する解除油圧室とが連通している。そして、位相ロック機構を解除する際、初動制御において、電磁駆動部へデューティ比100%で電流を印加している。このため、初動制御を実行した際に、解除油圧室及び進角油圧室の油圧が過剰に高くなるおそれがある。したがって、ロックピンが嵌合凹部から抜けた後に、ハウジングとベーンロータとの相対回転位相の変化速度が過剰に高くなり、ハウジングとベーンロータとの相対回転位相の実位相が目標位相をオーバーシュートするおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、バルブタイミング調整システムにおいて、作動油が高粘度であっても位相ロック機構を解除しやすくしつつ、位相ロック機構の解除後にハウジングとベーンロータとの相対回転位相の実位相が目標位相をオーバーシュートすることを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の手段は、
内燃機関(6)の駆動軸(7)から従動軸(8、9)にトルクが伝達されるトルク伝達系統に設けられ、前記従動軸の回転により開閉駆動される吸気バルブ(14)または排気バルブ(15)の開閉タイミングを調整するバルブタイミング調整システムにおいて、
前記駆動軸と共に回転するハウジング(20)と、前記ハウジングの内側に形成された油圧室を進角油圧室(40)および遅角油圧室(41)に仕切り前記従動軸と共に回転するベーンロータ(30)とを有し、前記進角油圧室および前記遅角油圧室に供給される油圧により前記ハウジングと前記ベーンロータとの相対回転位相が制御されるバルブタイミング調整装置(1)と、
前記ベーンロータに形成された収容穴(39)に往復移動可能に設けられたロックピン(50)と、前記ベーンロータと前記ハウジングとが所定の位相にあるときに前記ロックピンの先端が嵌合可能なように前記ハウジングに形成された嵌合凹部(51)と、前記進角油圧室および前記遅角油圧室の少なくとも一方に連通し前記ロックピンが前記嵌合凹部から抜け出す方向に前記ロックピンに対して油圧を印加する解除油圧室(52)とを有する位相ロック機構(2)と、
前記進角油圧室および前記遅角油圧室にそれぞれ油路(37、38)を経由して連通する複数のポート(710、720)を有するスリーブ(70)と、前記スリーブの内側に往復移動可能に設けられて軸方向の位置の変化により複数の前記ポートの開口面積を調整可能なスプール(90)とを有し、前記進角油圧室および前記遅角油圧室への作動油の油圧および供給量を制御する油圧制御弁(3)と、
電流の印加量に応じて駆動して前記スプールに荷重を印加し、前記スプールの軸方向の位置を変化させることの可能な電磁駆動部(4)と、
前記電磁駆動部に印加する電流を制御する電子制御装置(5)と、を備え、
前記電子制御装置は、前記相対回転位相を目標位相に制御すべく前記相対回転位相の実位相と前記目標位相とに基づいて、前記電磁駆動部に印加する電流の目標電流を調整するフィードバック制御を実行し、前記相対回転位相を保持する際には前記電磁駆動部に印加する電流を保持電流に制御し、前記ロックピンの先端が前記嵌合凹部に嵌合した状態から前記ロックピンを前記嵌合凹部から抜け出させる際、前記電磁駆動部へ前記保持電流より大きい前記目標電流を所定時間印加して前記スプールを初期位置から移動させる初動制御を実行した後、前記初動制御で印加した電流より小さく且つ0より大きい電流から次第に電流を増加しつつ前記電磁駆動部へ電流を印加することで前記ロックピンを前記嵌合凹部から抜け出させる徐変制御を実行する。
【0008】
上記構成によれば、前記電子制御装置は、前記相対回転位相を目標位相に制御すべく前記相対回転位相の実位相と前記目標位相とに基づいて、前記電磁駆動部に印加する電流の目標電流を調整するフィードバック制御を実行する。このため、前記相対回転位相を目標位相に制御する際には、前記スプールの軸方向の位置が目標電流に応じて変化させられ、前記スプールの軸方向の位置の変化により前記進角油圧室および前記遅角油圧室への作動油の油圧および供給量が制御される。そして、前記相対回転位相を保持する際には、前記電磁駆動部に印加される電流が保持電流に制御される。
【0009】
ここで、位相ロック機構において、解除油圧室は、前記進角油圧室および前記遅角油圧室の少なくとも一方に連通している。このため、解除油圧室に油圧を印加すると、解除油圧室に連通した例えば進角油圧室にも油圧が印加される。したがって、前記ロックピンを前記嵌合凹部から抜け出させる際に、解除油圧室に過剰に高い油圧を印加すると、進角室の油圧が目標電流に応じた油圧より過剰に高くなる。その結果、ロックピンが嵌合凹部から抜けた後に、前記相対回転位相の変化速度が過剰に高くなり、前記相対回転位相の実位相が目標位相をオーバーシュートするおそれがある。
【0010】
この点、前記電子制御装置は、前記ロックピンの先端が前記嵌合凹部に嵌合した状態から前記ロックピンを前記嵌合凹部から抜け出させる際、前記電磁駆動部へ前記保持電流より大きい前記目標電流を所定時間印加して前記スプールを初期位置から移動させる初動制御を実行する。このため、初動制御により、電磁駆動部からスプールに保持電流より大きい目標電流に応じた荷重を瞬間的に印加することで、作動油が高粘度であっても、スプールを初期位置から動かすことができ、スプールを摺動しやすい状態に変えることが可能である。そして、初動制御に続く徐変制御により、電流印加量の増加に追従するようにスプールを徐々に移動させることができ、位相ロック機構を解除しやすくすることができる。しかも、初動制御において、相対回転位相を目標位相に制御する際の目標電流を電磁駆動部に印加するため、ロックピンが嵌合凹部から抜けた後に、前記相対回転位相の実位相が目標位相をオーバーシュートすることを抑制することができる。
(【0011】以降は省略されています)

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