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公開番号2024022702
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-02-21
出願番号2020216173
出願日2020-12-25
発明の名称ヒト抗SARS-CoV2ウイルス抗体
出願人国立大学法人 東京大学,国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所,国立大学法人群馬大学,独立行政法人国立病院機構
代理人個人,個人
主分類C07K 16/10 20060101AFI20240214BHJP(有機化学)
要約【課題】SARS-CoV2ウイルスの感染による生体内におけるSARS-CoV2ウイルスの増幅を抑制し、あるいはSARS-CoV2ウイルスの感染を中和し、SARS-CoV2ウイルスへの感染の治療のために使用することができる、組換え抗体または組換え抗体誘導体、あるいはそのような抗体を1または複数種類含む医薬組成物を提供する。
【解決手段】SARS-CoV2ウイルスを構成するスパイクタンパク質に対して結合性を有し、SARS-CoV2ウイルスの感染を中和する作用を有する、血液由来成分を含まない、抗体または抗体誘導体を提供する。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
SARS-CoV2ウイルスを構成するスパイクタンパク質に対して結合性を有し、SARS-CoV2ウイルスの感染を中和する作用を有する、血液由来成分を含まない、抗体または抗体誘導体。
続きを表示(約 1,500 文字)【請求項2】
抗体がヒト抗体である、請求項1に記載の抗体または抗体誘導体。
【請求項3】
遺伝子組換えにより製造される、請求項1または2に記載の抗体または抗体誘導体。
【請求項4】
抗体誘導体が、ヒト化抗体、キメラ抗体、多価抗体、および多重特異性抗体から選択されるヒト型抗体改変体またはその機能的断片から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体または抗体誘導体。
【請求項5】
機能的断片が、F(ab')2である、請求項4に記載の抗体または抗体誘導体。
【請求項6】
重鎖の相補性決定領域、CDR1(GFTFRNYA、SEQ ID NO: 1)、CDR2(IWYDGSNK、SEQ ID NO: 2)、CDR3(ARDQGFGDNYYYYGMDV、SEQ ID NO: 3)を含み、
軽鎖の相補性決定領域、CDR1(ALPKEY、SEQ ID NO: 4)、CDR2(KDS、SEQ ID NO: 5)、CDR3(QLADSSMHYVV、SEQ ID NO: 6)を含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載の抗体または抗体誘導体。
【請求項7】
重鎖可変領域VHドメインが、SEQ ID NO: 7のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO: 7のアミノ酸配列のうち、CDR1(SEQ ID NO: 1)、CDR2(SEQ ID NO: 2)、およびCDR3(SEQ ID NO: 3)以外の部分において1または数個のアミノ酸の置換、挿入、または欠失を含むアミノ酸配列を含む、
請求項1~6のいずれか1項に記載の抗体または抗体誘導体。
【請求項8】
軽鎖可変領域VLドメインが、SEQ ID NO: 8のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO: 8のアミノ酸配列のうち、CDR1(SEQ ID NO: 4)、CDR2(SEQ ID NO: 5)、およびCDR3(SEQ ID NO: 6)以外の部分において1または数個のアミノ酸の置換、挿入、または欠失を含むアミノ酸配列を含む、
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体または抗体誘導体。
【請求項9】
重鎖が、SEQ ID NO: 9のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO: 9のアミノ酸配列のうち、CDR1(SEQ ID NO: 1)、CDR2(SEQ ID NO: 2)、およびCDR3(SEQ ID NO: 3)以外の部分において1または数個のアミノ酸の置換、挿入、または欠失を含むアミノ酸配列を含む、
請求項1~8のいずれか1項に記載の抗体または抗体誘導体。
【請求項10】
軽鎖が、
SEQ ID NO: 10のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO: 10のアミノ酸配列のうち、CDR1(SEQ ID NO: 4)、CDR2(SEQ ID NO: 5)、およびCDR3(SEQ ID NO: 6)以外の部分において1または数個のアミノ酸の置換、挿入、または欠失を含むアミノ酸配列、または
SEQ ID NO: 11のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO: 11のアミノ酸配列のうち、CDR1(SEQ ID NO: 4)、CDR2(SEQ ID NO: 5)、およびCDR3(SEQ ID NO: 6)以外の部分において1または数個のアミノ酸の置換、挿入、または欠失を含むアミノ酸配列、
を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の抗体または抗体誘導体。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、SARS-CoV2ウイルス感染に感染した個体中で、当該ウイルスの感染を中和するための組換え抗体または組換え抗体誘導体、あるいはそのような抗体を含むSARS-CoV2ウイルスの感染を中和するための医薬組成物を提供することに関する。
続きを表示(約 2,200 文字)【背景技術】
【0002】
2019年から2020年にかけて新型コロナウイルス、SARS-CoV2ウイルスの感染による新型コロナウイルス感染症COVID-19が確認されてからこれまで、日本国内において、195,880人の感染者、うち2,873人の死亡者、アメリカ合衆国において、17,655,591人の感染者、うち316,159人の死亡者、全世界まで広げると、76,288,108人の感染者、うち1,685,650人の死亡者という統計になっている(2020年12月20日現在の厚労省公式発表による)。
【0003】
SARS-CoV2は、(1)ヒトの細胞表面のレセプターを通して細胞内に侵入し、(2)ウイルス遺伝子由来の酵素(ヒトには存在しないRNAポリメラーゼ)を用いて複製し、(3)ヒトの細胞内でタンパク質や酵素を作って増殖し、(4)細胞外に出て他の正常な細胞に広がる、というサイクルを繰り返すことで、感染個体内で増幅される。また、重症化すると、サイトカインストームと呼ばれる過剰な免疫反応を起こしたり、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)という重度の呼吸不全を起こしたりすることが知られている。
【0004】
SARS-CoV2ウイルスに対してすでに使用が承認されている抗ウイルス薬や現在も開発が進められている抗ウイルス薬の多くは、このウイルスの(1)侵入、(2)複製、(3)増殖、(4)拡散の過程のいずれかをターゲットとしている。
【0005】
例えば、レムデシビルは、もともとはエボラ出血熱の治療薬として開発中であった抗ウイルス薬であるが、RNAポリメラーゼを阻害し、ウイルスの複製を抑制する効果が期待され、既に米国と欧州、アジアでSARS-CoV2感染に対する使用が緊急的に承認された(非特許文献1)。しかしながら、2020年後半に報告された世界保健機関(WHO)とその関係協力機関が実施している臨床試験の中間結果には、致死率などの改善効果は実証されておらず、また、副作用の可能性や医療現場の負担の問題があるとされている。
【0006】
また、アビガンは、もともと、新型インフルエンザに対して承認された抗ウイルス薬であり、RNAポリメラーゼを阻害し、ウイルスの複製を抑制する効果が期待される薬剤である。この薬剤は、副作用として、催奇形性(女性・男性ともに、内服した際に胎児に悪影響を及ぼす可能性がある)等が明らかになっており、使用に際して制限があったが、2020年後半において、日本では有効性や安全性の検証が進められているが(非特許文献2)、明確な有効性が認められないという報告も出されている。
【0007】
抗ウイルス薬以外には、COVID-19の重症例における肺炎の症状の緩和を目的とした薬の適用も検討されており、デキサメタゾンやアクテムラなどが有望視されている。しかしこれらの薬はSARS-CoV2感染を阻止するために使用するものではなく、対症療法的に使用されるものと考えられている。
【0008】
一方、SARS-CoV2ウイルスに対するワクチンの開発も進んできており、すでに一部で承認申請まで行われる段階まで来ている。SARS-CoV2ウイルスは、スパイクタンパク質が細胞のACE2受容体に結合して細胞に感染し、細胞外から消えるため、このスパイクタンパク質のACE2結合部位を認識する抗体は、感染の中和能を発揮できる場合が多いと考えられている。しかしながら、SARS-CoV2ウイルス感染からの回復者の血液中に存在するSARS-CoV2ウイルスに対する抗体を測定した結果、多くの回復者において、回復後数か月以内に血液中からIgG抗体が消失しているという報告もあり(非特許文献3)、ワクチンの効果が持続的なものかについては議論があるところである。
【0009】
これらの開発とは異なる治療方法の開発の流れとして、2020年3月ころから、中国、シンガポール、韓国、米国で少数の患者に回復期血漿の投与が行われ、有効性が示唆されたことが報告されてきた。同じ考え方に基づいて、日本においても、COVID-19回復者血漿を用いた治療についての安全性と有効性の検討が始まっている(非特許文献4)。このような、SARS-CoV2ウイルス感染からの回復期患者から採取される血清または血漿を利用する血清療法または血漿療法は、SARS-CoV2ウイルスに感染後、回復した患者から提供された血液から、血清または血漿を調製して、SARS-CoV2ウイルスに感染した患者に投与するという古典的な治療法である。SARS-CoV2ウイルス感染から回復した患者の血中には、SARS-CoV2ウイルスの感染を阻害する抗体(中和抗体)が存在するという前提に立った治療法である。
【0010】
しかしながら、血清療法や血漿療法を採用するためには、SARS-CoV2ウイルスに感染後、回復した患者から提供された血液が必要であり、血液原料の不足から安定供給の問題が生じており、また血液製剤に特有な安全性の問題が存在している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
(【0011】以降は省略されています)

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