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公開番号
2024170138
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2024-12-06
出願番号
2023087142
出願日
2023-05-26
発明の名称
負極体及び負極体の製造方法
出願人
信越化学工業株式会社
代理人
個人
,
個人
,
個人
主分類
H01M
4/136 20100101AFI20241129BHJP(基本的電気素子)
要約
【課題】 優れた電池特性を維持しつつ、容量を大幅に増加可能であり、満充電時の膨張を抑制することのできる負極を有する負極体を提供する。
【解決手段】 表面が粗化された負極集電体と、該負極集電体上に設けられた負極活物質層と、該負極活物質層の表面にリチウムイオン伝導性を有するイオン伝導層とを含む負極を有するとともに、前記イオン伝導層に隣接して固体電解質層を有する負極体であって、前記負極活物質層は、リチウム、ケイ素及び酸素を含む化合物を有する負極活物質粒子を含み、前記負極活物質粒子はSiO
x1
Li
y1
で表すことができ、x1の値が0.8を超え1.2以下、y1の値が0.5以上3.4以下のものであることを特徴とする負極体。
【選択図】図1
特許請求の範囲
【請求項1】
表面が粗化された負極集電体と、
該負極集電体上に設けられた負極活物質層と、
該負極活物質層の表面にリチウムイオン伝導性を有するイオン伝導層と
を含む負極を有するとともに、前記イオン伝導層に隣接して固体電解質層を有する負極体であって、
前記負極活物質層は、リチウム、ケイ素及び酸素を含む化合物を有する負極活物質粒子を含み、前記負極活物質粒子はSiO
x1
Li
y1
で表すことができ、x1の値が0.8を超え1.2以下、y1の値が0.5以上3.4以下のものであることを特徴とする負極体。
続きを表示(約 1,100 文字)
【請求項2】
前記負極活物質層は、2層以上からなる多層構造を有しており、
前記負極活物質層は、前記負極活物質粒子を1次粒子として規定した場合、該1次粒子の集合体である2次粒子を形成するものであり、
該2次粒子同士は面内方向において分離した形態を持ち、
前記負極活物質層の充電前の厚みT1と満充電まで充電したときの厚みT2がT2/T1≦1.4の関係のものであることを特徴とする請求項1に記載の負極体。
【請求項3】
前記多層構造を有する負極活物質層の、該多層を構成する各層の間の少なくとも1つに、リチウムイオン伝導性を有する層間リチウムイオン伝導層を有するものであることを特徴とする請求項2に記載の負極体。
【請求項4】
前記負極活物質層は、Li
4
SiO
4
、Li
2
Si
2
O
5
、Li
2
SiO
3
及びLi
6
Si
2
O
7
の少なくともいずれか1つを含むものであることを特徴とする請求項1に記載の負極体。
【請求項5】
前記リチウムイオン伝導性を有するイオン伝導層は、Liの炭酸塩、Liのリン酸塩、Liのフッ化物、Alの炭酸塩、Alのリン酸塩、Alのフッ化物、シリル基を有する化合物、及び、多環芳香族炭化水素を含む炭素化物の少なくともいずれか一つからなるものであることを特徴とする請求項1に記載の負極体。
【請求項6】
前記負極活物質層の2次粒子は、平均して4つ以上の1次粒子からなるものであることを特徴とする請求項2に記載の負極体。
【請求項7】
前記固体電解質層は、硫化物系固体電解質からなるものであることを特徴とする請求項1に記載の負極体。
【請求項8】
前記硫化物系固体電解質は、リチウム、インジウム、硫黄及びリンの少なくともいずれか1つを有するものであることを特徴とする請求項7に記載の負極体。
【請求項9】
前記硫化物系固体電解質は、Li
2
S、P
2
S
5
、SiS
2
、LiI、LiBr、P
2
O
5
、Li
3
PO
4
及びGeS
2
の少なくともいずれか1つを有するものであることを特徴とする請求項7に記載の負極体。
【請求項10】
前記固体電解質層は、酸化物系固体電解質からなるものであることを特徴とする請求項1に記載の負極体。
(【請求項11】以降は省略されています)
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、負極体及び負極体の製造方法に関する。
続きを表示(約 2,400 文字)
【背景技術】
【0002】
近年、モバイル端末などに代表される小型の電子機器が広く普及しており、さらなる小型化、軽量化及び長寿命化が強く求められている。このような市場要求に対し、特に小型かつ軽量で高エネルギー密度を得ることが可能な二次電池の開発が進められている。この二次電池は、小型の電子機器に限らず、自動車などに代表される大型の電子機器、家屋などに代表される電力貯蔵システムへの適用も検討されている。
【0003】
その中でも、リチウムイオン二次電池は、小型かつ高容量化が行いやすく、また、鉛電池やニッケルカドミウム電池よりも高いエネルギー密度が得られるため、大いに期待されている。
【0004】
上記のリチウムイオン二次電池は、正極及び負極、並びにセパレータと共に電解液を備えており、負極は充放電反応に関わる負極活物質を含んでいる。
【0005】
この負極活物質としては、炭素系活物質が広く使用されている一方で、最近の市場要求から電池容量のさらなる向上が求められている。電池容量向上のために、負極活物質材としてケイ素を用いることが検討されている。なぜならば、ケイ素の理論容量(4199mAh/g)は黒鉛の理論容量(372mAh/g)よりも10倍以上大きいため、電池容量の大幅な向上を期待できるからである。負極活物質材としてのケイ素材の開発はケイ素単体だけではなく、合金や酸化物に代表される化合物などについても検討されている。また、活物質形状は、炭素系活物質では標準的な塗布型から、集電体に直接堆積する一体型まで検討されている。
【0006】
しかしながら、負極活物質としてケイ素を主原料として用いると、充放電時に負極活物質が膨張収縮するため、主に負極活物質表層近傍で割れやすくなる。また、活物質内部にイオン性物質が生成し、負極活物質が割れやすい物質となる。負極活物質表層が割れると、それによって新表面が生じ、活物質の反応面積が増加する。この時、新表面において電解液の分解反応が生じるとともに、新表面に電解液の分解物である被膜が形成されるため電解液が消費される。このためサイクル特性が低下しやすくなる。
【0007】
これまでに、電池初期効率やサイクル特性を向上させるために、ケイ素材を主材としたリチウムイオン二次電池用負極材料、電極構成についてさまざまな検討がなされている。
【0008】
具体的には、良好なサイクル特性や高い安全性を得る目的で、気相法を用いケイ素及びアモルファス二酸化ケイ素を同時に堆積させている(例えば特許文献1参照)。また、高い電池容量や安全性を得るために、ケイ素酸化物粒子の表層に炭素材(電子伝導材)を設けている(例えば特許文献2参照)。さらに、サイクル特性を改善するとともに高入出力特性を得るために、ケイ素及び酸素を含有する活物質を作製し、かつ、集電体近傍での酸素比率が高い活物質層を形成している(例えば特許文献3参照)。また、サイクル特性を向上させるために、ケイ素活物質中に酸素を含有させ、平均酸素含有量が40at%以下であり、かつ集電体に近い場所で酸素含有量が多くなるように形成している(例えば特許文献4参照)。
【0009】
また、初回充放電効率を改善するためにSi相、SiO
2
、MyO金属酸化物を含有するナノ複合体を用いている(例えば特許文献5参照)。また、サイクル特性改善のため、SiOx(0.8≦x≦1.5、粒径範囲=1μm~50μm)と炭素材を混合して高温焼成している(例えば特許文献6参照)。また、サイクル特性改善のために、負極活物質中におけるケイ素に対する酸素のモル比を0.1~1.2とし、活物質、集電体界面近傍におけるモル比の最大値、最小値との差が0.4以下となる範囲で活物質の制御を行っている(例えば特許文献7参照)。また、電池負荷特性を向上させるため、リチウムを含有した金属酸化物を用いている(例えば特許文献8参照)。また、サイクル特性を改善させるために、ケイ素材表層にシラン化合物などの疎水層を形成している(例えば特許文献9参照)。また、サイクル特性改善のため、酸化ケイ素を用い、その表層に黒鉛被膜を形成することで導電性を付与している(例えば特許文献10参照)。特許文献10において、黒鉛被膜に関するRAMANスペクトルから得られるシフト値に関して、1330cm-1及び1580cm-1にブロードなピークが現れるとともに、それらの強度比I1330/I1580が1.5<I1330/I1580<3となっている。また、高い電池容量、サイクル特性の改善のため、二酸化ケイ素中に分散されたケイ素微結晶相を有する粒子を用いている(例えば、特許文献11参照)。また、過充電、過放電特性を向上させるために、ケイ素と酸素の原子数比を1:y(0<y<2)に制御したケイ素酸化物を用いている(例えば特許文献12参照)。
【0010】
ケイ素酸化物を用いたリチウムイオン二次電池は、日立マクセルが2010年6月にナノシリコン複合体を採用したスマートフォン用の角形の二次電池の出荷を開始した(例えば、非特許文献1参照)。Hohlより提案されたケイ素酸化物はSi
0+
~Si
4+
の複合材であり様々な酸化状態を有する(非特許文献2参照)。またKapaklisは、ケイ素酸化物に熱負荷を与える事でSiとSiO
2
にわかれる、不均化構造を提案している(非特許文献3参照)。Miyachiらは不均化構造を有するケイ素酸化物のうち充放電に寄与するSiとSiO
2
に注目しており(非特許文献4参照)、Yamadaらはケイ素酸化物とLiの反応式を次のように提案している(非特許文献5参照)。
(【0011】以降は省略されています)
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