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公開番号2025103782
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-07-09
出願番号2023221408
出願日2023-12-27
発明の名称多層膜、光学部材、および多層膜の製造方法
出願人キヤノンオプトロン株式会社
代理人個人,個人,個人,個人
主分類G02B 1/115 20150101AFI20250702BHJP(光学)
要約【課題】光の反射率を低減させるために、表面の低屈折率層の膜厚を特定の厚さ以上にした場合にも、表面で光触媒反応による自己浄化機能が充分に発現し、また暗所において親水性を長期間維持できる多層膜を提供すること。
【解決手段】酸化セリウムを含有する層が、立方晶系多結晶構造および柱状構造を含む酸化セリウムを含有し、酸化セリウムを含有する層の膜厚が、85nm以上800nm以下であり、酸化セリウムを含有する層全体を領域(A)とし、領域(A)における酸化セリウムの酸素欠損率を酸素欠損率(VA)とするとき、酸素欠損率(VA)が、0.05%以上10%以下であり、酸化ケイ素を含有する層またはフッ化マグネシウムを含有する層の膜厚が、50nm以上240nm以下であり、波長500nmの光に対する低屈折率層を含有する層の屈折率が、1.65以下である、ことを特徴とする多層膜である。
【選択図】図1A
特許請求の範囲【請求項1】
酸化セリウムを含有する層と、前記酸化セリウムを含有する層の上に直接あるいは他の層を介して、低屈折率層とを有し、
前記低屈折率層は、酸化ケイ素を含有する層またはフッ化マグネシウムを含有する層を有し、
前記酸化セリウムを含有する層が、立方晶系多結晶構造および柱状構造を含む酸化セリウムを含有し、
前記酸化セリウムを含有する層の膜厚が、85nm以上800nm以下であり、
前記酸化セリウムを含有する層全体を領域(A)とし、前記領域(A)における酸化セリウムの酸素欠損率を酸素欠損率(V

)とするとき、前記酸素欠損率(V

)が、0.05%以上10%以下であり、
前記低屈折率層の膜厚が、50nm以上240nm以下であり、
波長500nmの光に対する、前記低屈折率層の屈折率が、1.65以下である、ことを特徴とする多層膜。
続きを表示(約 1,600 文字)【請求項2】
前記酸素欠損率(V

)が、0.05%以上0.6%以下である、請求項1に記載の多層膜。
【請求項3】
前記酸素欠損率(V

)が、0.1%以上0.3%以下である、請求項1に記載の多層膜。
【請求項4】
前記酸化セリウムを含有する層と前記低屈折率層との界面から8nm以下の範囲にある、酸化セリウムを含有する層の領域を領域(B)とし、前記領域(B)における酸化セリウムの酸素欠損率を酸素欠損率(V

)とするとき、前記酸素欠損率(V

)が、0.5%以上30%以下である、請求項1に記載の多層膜。
【請求項5】
前記酸素欠損率(V

)が、0.05%以上10%以下であって、
前記酸素欠損率(V

)が、0.5%以上30%以下であって、
前記領域(A)のうち、前記領域(B)を除いた領域を領域(C)とし、前記領域(C)における酸化セリウムの酸素欠損率を酸素欠損率(V

)とするとき、前記酸素欠損率(V

)が、0%以上10%以下であり、
前記酸素欠損率(V

)が、前記酸素欠損率(V

)より大きい、請求項4に記載の多層膜。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の多層膜を有する、光学部材。
【請求項7】
基材の上に直接あるいは他の層を介して、酸化セリウムを含有する層を真空蒸着法により形成する工程(A)と、
前記酸化セリウムを含有する層の上に直接あるいは他の層を介して、低屈折率層を真空蒸着法により形成する工程(B)と
を含み、
前記低屈折率層は、酸化ケイ素を含有する層またはフッ化マグネシウムを含有する層を有し、
前記酸化セリウムを含有する層が、立方晶系多結晶構造および柱状構造を含む酸化セリウムを含有し、
前記酸化セリウムを含有する層の膜厚が、85nm以上800nm以下とし、
前記酸化セリウムを含有する層全体を領域(A)とし、前記領域(A)における酸化セリウムの酸素欠損率を酸素欠損率(V

)とするとき、前記酸素欠損率(V

)が、0.05%以上10%以下であり、
前記低屈折率層の膜厚が、50nm以上240nm以下である、ことを特徴とする多層膜の製造方法。
【請求項8】
前記酸化セリウムを含有する層と、前記低屈折率層との界面から、8nm以下の範囲にある酸化セリウムを含有する層の領域を領域(B)とし、前記領域(B)における酸化セリウムの酸素欠損率を酸素欠損率(V

)とするとき、前記酸素欠損率(V

)が、0.5%以上30%以下であり、
前記領域(A)のうち、前記領域(B)を除いた領域を領域(C)とし、前記領域(C)における酸化セリウムの酸素欠損率を酸素欠損率(V

)とするとき、前記酸素欠損率(V

)が、0%以上10%以下であり、
前記酸素欠損率(V

)が、前記酸素欠損率(V

)より大きい、請求項7に記載の多層膜の製造方法。
【請求項9】
前記工程(A)の前に、あらかじめ雰囲気の水分子の分圧と酸素分子の分圧との合計値が、2×10
-2
Pa以下であり、
前記領域(B)の成膜中の水分子の分圧と酸素種の分圧との合計値が、平均で2×10
-2
Pa以下である、請求項7または8に記載の多層膜の製造方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本開示は、自己浄化性および親水性に優れた多層膜、該多層膜を有する光学部材、ならびに該多層膜の製造方法に関する。
続きを表示(約 1,800 文字)【背景技術】
【0002】
光学レンズ、ミラー、光学フィルターのような光学部材は、光の透過率や反射率を増加または低減させるために、無機材料により形成された膜を有している。無機材料により形成された膜は、一般的に成膜直後の時点では表面自由エネルギーが高いため、親水性が高い。しかしながら、自己反応や人あるいは環境由来の汚れが付着することにより、比較的短時間で表面自由エネルギーが低下し、親水性が低下する。
【0003】
例えば自動車に使用される光学製品、防犯カメラ、メガネレンズなどの屋外で使用する光学製品やこれらの保護カバーの表面の親水性が低下している状態で、水滴が付着すると、視界が悪化する場合があり、上記光学製品や保護カバーの機能が十分発揮できない恐れがある。
【0004】
前述の課題を解決する手段として、結晶性の二酸化チタン薄膜上に二酸化ケイ素薄膜を形成した親水膜が利用される(特許文献1、特許文献2、非特許文献1)。結晶性二酸化チタンの表面に近紫外光を照射すると、光触媒機能により活性酸素が生成し、生成した活性酸素が親水膜の表面の有機物を分解する。結果として、親水膜の親水性が回復し、降雨により汚れが洗い流され、自己浄化される。また、二酸化チタンの上に二酸化ケイ素を配置することで、光照射を停止しても、二酸化チタンのみの薄膜のように短時間で疎水化することはなく、暗所でも1~2週間程度は親水性が継続することが知られている。
【0005】
しかしながら、特許文献1の表2に記載のように、結晶性の二酸化チタン薄膜上に形成した二酸化ケイ素薄膜が50nmに満たない場合、二酸化チタンの屈折率が大きいため、反射率が増大し、透過率が低下するという課題がある。そのため反射率が大きくなっても支障のない車載用ドアミラーなどには適用できても、反射防止膜を備えたレンズのような光学部材には適さないという課題がある。
また、結晶性の二酸化チタン薄膜上に形成した表面の二酸化ケイ素薄膜が50nm以上である場合、光触媒反応による自己浄化機能が充分に発現しない課題がある。加えて、暗所での親水性維持性能が、結晶性二酸化チタンのみの場合に比べると改善されるものの、十分ではない課題がある。
【0006】
また、特許文献2の実施例や非特許文献1に記載のように、結晶性二酸化チタン層を光触媒として使用する場合、二酸化チタンからなる薄膜を結晶化するために、薄膜や該薄膜を上に設けた基材を高温に加熱しなければならない場合があり、耐熱性の低い樹脂製基材が使用できない課題がある。一部のウェットプロセスによる二酸化チタンの成膜は、高温加熱を要しない。しかしながら、ウェットプロセスを用いた場合は、1nm単位の細かな膜厚制御、均一な膜厚を有する薄膜の形成、および平板などの単純な形状の基材以外の基材の上への成膜が難しく、また、コーティング液の保存期間が短いなどの固有の課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
特開2000-053449号公報
特開平09-057912号公報
【非特許文献】
【0008】
K.Miyashita,et al, Journal of the Ceramic Society of Japan 110 [5] 450-454 (2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
光学部材への応用を考慮すると、光学部材表面の低屈折率層を反射防止膜として設計することが可能なように、低屈折率層の膜厚を厚くした場合においても、光触媒反応による自己浄化機能が充分に発現する多層膜が望まれている。また、暗所で親水性を維持する期間がより長い多層膜が望まれている。
【0010】
本開示の目的は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、光の反射率を低減させるために、表面の低屈折率層の膜厚を特定の厚さ以上にした場合にも、表面で光触媒反応による自己浄化機能が充分に発現し、また暗所において親水性を長期間維持できる多層膜を提供することである。本開示の目的は、上記多層膜を有する光学部材を提供することである。また、本開示の目的は、上記多層膜の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
(【0011】以降は省略されています)

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