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公開番号
2025017305
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2025-02-05
出願番号
2024070961
出願日
2024-04-09
発明の名称
繭及び中の個体へのダメージを抑える方法及びそれを可能とする保存技術及びそれを利用した製糸方法及びそれによる製品
出願人
個人
代理人
主分類
D01B
7/00 20060101AFI20250129BHJP(天然または人造の糸または繊維;紡績)
要約
【課題】繭のタンパク質あるいは繭の中の個体へのダメージを抑え、あるいは繭の中の個体を殺すことなく煮繭・繰糸すること、及びそれを可能とする保存技術、及びそれを利用して製糸する方法、及びそれにより得られる製品を提供する。
【解決手段】通常、繭を生糸とする際に行われている長時間にわたる高温の煮繭の方法ではなく、繭を高温にさらさない、あるいは高温にさらすのを短時間とした煮繭とすること、繰糸しやすくする液につける、あるいは浮かす方法とその時間を調整すること、繭の煮繭と保存を同時にすること、繭を低温にしてから短時間の高温につける、あるいは浮かすこと、繭の水没・液没を防ぐこと等により、繭のタンパク質へのダメージを抑えること、繭の中の個体へのダメージを抑えること、繭の中の個体を殺すことなく繭を繰糸すること等の少なくとも1つが実施できることがわかった。
【選択図】図9
特許請求の範囲
【請求項1】
繭を繰糸しやすくする際、43℃以上、より好ましくは60℃以上の高温の液体、例えばお湯、煮繭液、あるいは繰糸しやすくする液などにつけた後に、繭を空気中に取り出す、あるいは液に浮かせて繭の中の高温となった空気が縮むのを待つことにより、繭の中に入る液を減らすことで、高温の液体や、液体の成分、空気不足等の影響を防ぎ、繭の中の幼虫あるいは蛹あるいは成虫へのダメージを抑えること、繭への着色を控えめにすること、独特のにおいの発生・拡散を控えめにすることの少なくとも1つを実現して繭を繰糸する方法、あるいは繰糸できる繭、真綿、紬あるいは紙の原料の繊維にする方法。
続きを表示(約 3,100 文字)
【請求項2】
繭、例えば生繭、あるいは冷凍した生繭、あるいは冷蔵保存した生繭、あるいは乾燥させた生繭、あるいは乾繭などを液体、例えば、煮繭液、あるいは繰糸しやすくする液体、あるいは水、アルカリ剤、界面活性剤、酵素等の少なくとも1つを含む60℃未満の液体などにつける、あるいは浮かすことで、あるいは60℃未満の複数の温度の液体などにつける、あるいは浮かすことを組み合わせることで、60℃以上の煮繭をせずに、繭タンパク質へのダメージを抑えること、繭タンパク質の変性を抑えること、繭の中の幼虫あるいは蛹あるいは成虫へのダメージを抑えること、繭への着色を控えめにすること、独特のにおいの発生・拡散を控えめにすることの少なくとも1つを実現して繭を繰糸する方法、あるいは繰糸できる繭、真綿、紬あるいは紙の原料の繊維にする方法。
【請求項3】
繰糸しやすい繭にする工程において、繭をアルカリ剤、界面活性剤、酵素
等の少なくとも1つを含む溶液中につける、あるいは浮かせる工程を含めることで、60℃以上の温度にさらされたとしても、繭タンパク質へのダメージを抑えること、繭タンパク質の変性を抑えること、繭の中の幼虫あるいは蛹あるいは成虫へのダメージを抑えること、繭への着色を控えめにすること、独特のにおいの発生・拡散を控えめにすることの少なくとも1つを実現して繭を繰糸する方法、あるいは繰糸できる繭、真綿、紬あるいは紙の原料の繊維にする方法。
【請求項4】
繭を水あるいはアルカリ剤、界面活性剤、酵素等の少なくとも1つを含む60℃以下の気体あるいは液体につける、あるいは浮かせる工程と、繭を水あるいはアルカリ剤、界面活性剤、酵素等の少なくとも1つを含む42℃をこえる気体あるいは液体につける、あるいは浮かせる工程を組み合わせることで、あるいは、それに加えてその両方を、あるいは少なくてもどちらかを繰り返し実施することで、繭タンパク質へのダメージを抑えること、繭タンパク質の変性を抑えること、繭の中の幼虫あるいは蛹あるいは成虫へのダメージを抑えること、繭への着色を控えめにすること、独特のにおいの発生・拡散を控えめにすることの少なくとも1つを実現して繭を繰糸する方法、あるいは繰糸できる繭、真綿、紬あるいは紙の原料の繊維にする方法。
【請求項5】
繭、例えば煮繭により繰糸しやすくなった繭を、水あるいは、溶液に浮かせて繰糸すること、繭の中に液体が入った場合はその液体を減らしてから繰糸すること、液没・水没しない高さの液体につけて繰糸すること、液体につけたとしても液没・水没を防ぐよう人間が支えて、あるいは液没・水没を防ぐよう機械・器具、例えば支える網などを用いて繰糸すること、液没・水没しそうになった繭や中の幼虫あるいは蛹あるいは成虫を移動させること、液没・水没を防ぐよう手動で、あるいは機械・器具で繭の位置を調整すること、繭を液体につけることなく繰糸すること、繰糸後の繭及び繭の中の蛹などの個体や脱皮殻、汚れた物質、混入した汚染繭を繰糸する液体から取り出すこと、繭の中の蛹などの個体を液没・水没しない位置に移動させることの少なくとも1つを実施することで、繭の中の個体、例えば蛹、あるいは汚れやにおいの原因となる物質の液没・水没を防ぎやすくし、繭タンパク質へのダメージを抑えること、繭の中の幼虫あるいは蛹あるいは成虫へのダメージを抑えること、繭への着色を控えめにすること、煮た繭の独特のにおいの発生・拡散を控えめにすることの少なくとも1つを可能とする方法、及びそれらの方法を少なくとも1つを利用して繭を繰糸する方法、あるいは繰糸できる繭、真綿、紬あるいは紙の原料の繊維にする方法。
【請求項6】
繭、例えば煮繭により繰糸しやすくなった繭を水以外、あるいは水以外のものを含む液体、例えばグリセリン、油などにつけたまま、あるいは、液体につけたあと、液体から取り出して繰糸する方法、あるいはその液体による効果を付与することと繰糸を同時に行う方法、あるいはその液体による効果を付与することと繰糸を同時に行いつつ、中の個体にもその効果を付与する方法、あるいはその液体による効果を付与することと繰糸を同時に行いつつ、繭タンパク質へのダメージを抑えること、繭の中の幼虫あるいは蛹あるいは成虫へのダメージを抑えることの少なくとも1つを実現して繭を繰糸する方法、あるいは繰糸できる繭、真綿、紬あるいは紙の原料の繊維にする方法。
【請求項7】
繭から生糸をつくる際、あるいはセリシンを取り出す際、あるいは生糸を加工などの処理をする際、それらの工程で使用する液に、グリセリン及び油の少なくとも1つを含ませることで、あるいは、それらの工程に追加して、グリセリン及び油の少なくとも1つを含む液で処理することで、糸の特徴や風合いの異なる繊維、真綿、生糸、あるいは広義での糸とする方法、より好ましくは、それらの方法を、繭タンパク質へのダメージを抑えること、繭の中の幼虫あるいは蛹あるいは成虫へのダメージを抑えることの少なくとも1つを実現して行う方法。
【請求項8】
繰糸しやすい繭にする工程のどこかで、繭を水あるいはアルカリ剤、界面活性剤、酵素等の少なくとも1つを含む43℃以上、より好ましくは60℃~100℃の気体あるいは液体中につけて、あるいは浮かせて短時間で取り出すことで、繭の中が高温にならないよう、あるいは高温が続かないようにし、場合によっては、この操作を同じ温度で繰り返すことで、あるいはこの範囲内の異なる温度にて繰り返すことで、繭タンパク質へのダメージを抑えること、繭タンパク質の変性を抑えること、繭の中の幼虫あるいは蛹あるいは成虫へのダメージを抑えること、繭への着色を控えめにすること、独特のにおいの発生・拡散を控えめにすることの少なくとも1つを実現して繭を繰糸する方法、あるいは繰糸できる繭、真綿、紬あるいは紙の原料の繊維にする方法。
【請求項9】
繭を水あるいはアルカリ剤、界面活性剤、酵素等の少なくとも1つを含む43℃以上、より好ましくは60~100℃の気体あるいは液体中につけて、あるいは浮かせて短時間で取り出すことと、繭を水あるいはアルカリ剤、界面活性剤、酵素等の少なくとも1つを含む50℃以下、より好ましくは42℃以下の液体あるいは蒸気、より好ましくは1.5%以上の高濃度のアルカリ剤を少なくとも含む溶液につけることを組み合わせることで、あるいは、それに加えてその両方を、あるいは少なくてもどちらかを繰り返し実施することで、繭タンパク質へのダメージを抑えること、繭タンパク質の変性を抑えること、繭の中の幼虫あるいは蛹あるいは成虫へのダメージを抑えること、繭への着色を控えめにすること、独特のにおいの発生・拡散を控えめにすることの少なくとも1つを実現して繭を繰糸する方法、あるいは繰糸できる繭、真綿、紬あるいは紙の原料の繊維にする方法。
【請求項10】
繭を高濃度の塩溶液で処理するのではなく、繰糸しやすくなる液、例えば煮繭液中につけて、あるいは浮かせて、冷蔵保存、あるいは低温、例えば20℃未満で保存することで、保存と繰糸しやすくする工程を同時に行う方法、あるいは、液につけずに繭のまま保存、例えば冷蔵保存し、保存の途中から繰糸しやすい液につけて低温、例えば20℃未満で保存と繰糸しやすくする工程を同時に行う方法。
(【請求項11】以降は省略されています)
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、繭のタンパク質あるいは繭の中の個体(幼虫あるいは蛹あるいは成虫)へのダメージを抑えて、あるいは繭の中の個体を殺すことなく煮繭・繰糸する技術に関する。より具体的には低温において繭のタンパク質を変性させることなく、繭から糸を引き出す技術、あるいは高温にさらしたとしても、繭の中の個体へのダメージを抑えて、あるいは煮繭による独特のにおいの発生・拡散を控えめにし、着色を抑え、あるいは個体を生存させたまま繭から糸を引き出す技術に関する。
続きを表示(約 8,900 文字)
【背景技術】
【0002】
通常、上蔟して8~10日に収穫された蚕の繭はそのままでは、中の蛹が成体となり、繭に穴をあけて外に出てくる。このように穴があくと繰糸することは難しい。そのため、収穫された繭は、冷蔵・冷凍したり、熱を加えたりして蛹を殺さなければならない。さらに、長い間貯蔵する場合には、カビがはえることがないように乾燥させることが一般に行われている。したがって、繰糸する際に、繭の中の蛹はすでに死んでいる。中の蛹が生きているままの生繭を煮繭・繰糸に使用することもできるが、製糸工場などで煮繭の際、高温に数分~数十分さらされることにより、中の蛹が死んでしまう。また、このような生繭は高温に長時間されされることで蛹を構成していたタンパク質・窒素化合物・その他の物質を含んだ体液が出てきて繭を汚染することがある。さらに、煮繭によって発生する独特のにおいが苦手な人が存在する。
【0003】
製糸工場等において、繭から生糸にする際の煮繭は通常、進行式煮繭機が用いられる。その際、蒸気及び沸点に近い高温水と低温水を組み合わせた処理により、繭腔内へ蒸気や湯の出し入れを行う。これにより、繭層セリシン(繭糸の周りを覆っている水溶性タンパク質)が膨潤柔和され、繭からの繭糸の解れが良くなる。繰糸では、約90℃熱水の中の繭から稲穂の穂先を利用して繭から糸口を出す索緒を行い、そして、繰糸を行う。このような煮繭の操作は蚕に大きなダメージを与え、蚕を殺してしまう。昨今のエシカルの観点、倫理的な観点から、このような製糸方法を見つめ直すことも大切である。
【0004】
教育現場において、繭からの糸取りは日本の歴史と伝統を学ぶ上からも、小学校や高等学校の生物で行われることがある。通常80~100℃程度の湯などの中で数分間繭を煮た後に、液体の温度を下げることで、繭の中に湯が入るようにする。その後、索緒を行い、糸口を出し、繰糸を行う。このときに使用する繭は、乾燥させた繭を使うことが多いが、自分たちで蛹から育てた繭(生繭)や購入した生繭を使用することもできる。いずれにしても、中の蛹が死んでしまい、糸の恵みと、昆虫の命について考えさられることになる。命を奪ってしまうことに対して、心を痛める生徒・児童も少なからずいるのが現状であった。さらに、煮繭によって発生する独特のにおいが苦手な生徒・児童もいる。
【0005】
また、このような従来の製糸方法では、繭のタンパク質は高温により変性する。その結果、絹の染色性や織物の風合いが損なわれる。また、外来タンパク質を含有するカイコ繭を生糸とする際は、その外来タンパク質が変性してしまう。このような背景から外来のものも含め、繭のタンパク質が変性することなく繭を生糸とする技術が求められている。そこで、真空浸透する方法や飽和食塩水に長時間つける方法等が発明されている(例えば特許文献1、特許文献2)。さらに、ペットボトルや注射器、アルカリ剤の応用により、高額な機械が必要なく、高等学校等の教育現場であっても外来タンパク質等を変性させることなく繭を繰糸することが可能となった(特許文献3、非特許献1)。しかしながら、繭の中の個体へのダメージがある、あるいは繭の中の個体が死んでいることに変わりはなかった。
【0006】
なお、本発明の先行技術文献を以下に示す。
特許第5292548号
特開2016-079535
特許第7004254号
枦勝・小島 桂:高温にさらすことなく蛍光シルク繭を繰糸する方法及びその教育実践.生物教育64(2)、133-139(2023)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みて、商用目的のみならず、生徒や児童などが繰糸を行う際、蛹が死んでしまうことで悩んだり、トラウマになったりさせたくない。生徒や児童などが中の蛹を殺さない状態で糸取りを行うことで、純粋に昆虫との共存や、昆虫からの恵みを感じてもらいたい。エシカルの考えを取り入れ、昆虫にも倫理的な配慮を行った繰糸を実施したい、また、繭の保存の仕方の改良により、そのような繰糸を繭の収繭の時期だけでなく、できるだけ長い期間実施したい、それに加えて、蛹のまま死んでしまった繭なども含め、高温の長時間にわたる煮繭による糸への着色を極力抑えたい、また煮繭による独特なにおいの発生を抑えたいという思いから鋭意研究を行った。本発明の課題は、繭タンパク質、あるいは繭の中の個体(幼虫あるいは蛹あるいは成虫)へのダメージを抑えて、あるいは繭への着色を抑えて、あるいは煮繭による独特のにおいの発生・拡散を控えめにし、あるいは繭の中の個体を殺すことなく繰糸する方法、及びこの方法を用いた生糸等の製品とする方法、及びこの方法を可能とする繭の保存技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するに当たり、温度、試薬、処理時間等を変えて、さまざまな煮繭方法を試みた。また、繭の中の幼虫や蛹が死なないように空気を確保する方法、繰糸中あるいは繰糸後に繭(の中の蛹など)液没・水没を防ぐ方法、繭の保存温度や保存条件、保存するための試薬等を、さまざまな方法で試みた。その結果、本発明者は、繭あるいは繭の中の個体(幼虫あるいは蛹あるいは成虫)へのダメージを抑えて、あるいは繭への着色を抑えて、あるいは煮繭による独特のにおいの発生・拡散を控えめにし、あるいは中の個体を殺すことなく繭を繰糸し、生糸とすること、及びこの方法を可能とする繭の保存技術を見出した。本発明はこのような知見に基づくものあり、次の〔1〕~〔18〕を提供する。
〔1〕繭を繰糸しやすくする際、43℃以上、より好ましくは60℃以上の高温の液体、例えばお湯、煮繭液、あるいは繰糸しやすくする液などにつけた後に、繭を空気中に取り出す、あるいは液に浮かせて繭の中の高温となった空気が縮むのを待つことにより、繭の中に入る液を減らすことで、高温の液体や、液体の成分、空気不足等の影響を防ぎ、繭の中の幼虫あるいは蛹あるいは成虫へのダメージを抑えること、繭への着色を控えめにすること、独特のにおいの発生・拡散を控えめにすることの少なくとも1つを実現して繭を繰糸する方法、あるいは繰糸できる繭、真綿、紬あるいは紙の原料の繊維にする方法。
〔2〕繭、例えば生繭、あるいは冷凍した生繭、あるいは冷蔵保存した生繭、あるいは乾燥させた生繭、あるいは乾繭などを液体、例えば、煮繭液、あるいは繰糸しやすくする液体、あるいは水、アルカリ剤、界面活性剤、酵素等の少なくとも1つを含む60℃未満の液体などにつける、あるいは浮かすことで、あるいは60℃未満の複数の温度の液体などにつける、あるいは浮かすことを組み合わせることで、60℃以上の煮繭をせずに、繭タンパク質へのダメージを抑えること、繭タンパク質の変性を抑えること、繭の中の幼虫あるいは蛹あるいは成虫へのダメージを抑えること、繭への着色を控えめにすること、独特のにおいの発生・拡散を控えめにすることの少なくとも1つを実現して繭を繰糸する方法、あるいは繰糸できる繭、真綿、紬あるいは紙の原料の繊維にする方法。
〔3〕繰糸しやすい繭にする工程において、繭をアルカリ剤、界面活性剤、酵素等の少なくとも1つを含む溶液中につける、あるいは浮かせる工程を含めることで、60℃以上の温度にさらされたとしても、繭タンパク質へのダメージを抑えること、繭タンパク質の変性を抑えること、繭の中の幼虫あるいは蛹あるいは成虫へのダメージを抑えること、繭への着色を控えめにすること、独特のにおいの発生・拡散を控えめにすることの少なくとも1つを実現して繭を繰糸する方法、あるいは繰糸できる繭、真綿、紬あるいは紙の原料の繊維にする方法。
〔4〕繭を水あるいはアルカリ剤、界面活性剤、酵素等の少なくとも1つを含む60℃以下の気体あるいは液体につける、あるいは浮かせる工程と、繭を水あるいはアルカリ剤、界面活性剤、酵素等の少なくとも1つを含む42℃をこえる気体あるいは液体につける、あるいは浮かせる工程を組み合わせることで、あるいは、それに加えてその両方を、あるいは少なくてもどちらかを繰り返し実施することで、繭タンパク質へのダメージを抑えること、繭タンパク質の変性を抑えること、繭の中の幼虫あるいは蛹あるいは成虫へのダメージを抑えること、繭への着色を控えめにすること、独特のにおいの発生・拡散を控えめにすることの少なくとも1つを実現して繭を繰糸する方法、あるいは繰糸できる繭、真綿、紬あるいは紙の原料の繊維にする方法。
〔5〕繭、例えば煮繭により繰糸しやすくなった繭を、水あるいは、溶液に浮かせて繰糸すること、繭の中に液体が入った場合はその液体を減らしてから繰糸すること、液没・水没しない高さの液体につけて繰糸すること、液体につけたとしても液没・水没を防ぐよう人間が支えて、あるいは液没・水没を防ぐよう機械・器具、例えば支える網などを用いて繰糸すること、液没・水没しそうになった繭や中の幼虫あるいは蛹あるいは成虫を移動させること、液没・水没を防ぐよう手動で、あるいは機械・器具で繭の位置を調整すること、繭を液体につけることなく繰糸すること、繰糸後の繭及び繭の中の蛹などの個体や脱皮殻、汚れた物質、混入した汚染繭を繰糸する液体から取り出すこと、繭の中の蛹などの個体を液没・水没しない位置に移動させることの少なくとも1つを実施することで、繭の中の個体、例えば蛹、あるいは汚れやにおいの原因となる物質の液没・水没を防ぎやすくし、繭タンパク質へのダメージを抑えること、繭の中の幼虫あるいは蛹あるいは成虫へのダメージを抑えること、繭への着色を控えめにすること、煮た繭の独特のにおいの発生・拡散を控えめにすることの少なくとも1つを可能とする方法、及びそれらの方法を少なくとも1つを利用して繭を繰糸する方法、あるいは繰糸できる繭、真綿、紬あるいは紙の原料の繊維にする方法。
〔6〕繭、例えば煮繭により繰糸しやすくなった繭を水以外、あるいは水以外のものを含む液体、例えばグリセリン、油などにつけたまま、あるいは、液体につけたあと、液体から取り出して繰糸する方法、あるいはその液体による効果を付与することと繰糸を同時に行う方法、あるいはその液体による効果を付与することと繰糸を同時に行いつつ、中の個体にもその効果を付与する方法、あるいはその液体による効果を付与することと繰糸を同時に行いつつ、繭タンパク質へのダメージを抑えること、繭の中の幼虫あるいは蛹あるいは成虫へのダメージを抑えることの少なくとも1つを実現して繭を繰糸する方法、あるいは繰糸できる繭、真綿、紬あるいは紙の原料の繊維にする方法。
〔7〕繭から生糸をつくる際、あるいはセリシンを取り出す際、あるいは生糸を加工などの処理をする際、それらの工程で使用する液に、グリセリン及び油の少なくとも1つを含ませることで、あるいは、それらの工程に追加して、グリセリン及び油の少なくとも1つを含む液で処理することで、糸の特徴や風合いの異なる繊維、真綿、生糸、あるいは広義での糸とする方法、より好ましくは、それらの方法を、繭タンパク質へのダメージを抑えること、繭の中の幼虫あるいは蛹あるいは成虫へのダメージを抑えることの少なくとも1つを実現して行う方法。
〔8〕繰糸しやすい繭にする工程のどこかで、繭を水あるいはアルカリ剤、界面活性剤、酵素等の少なくとも1つを含む43℃以上、より好ましくは60℃~100℃の気体あるいは液体中につけて、あるいは浮かせて短時間で取り出すことで、繭の中が高温にならないよう、あるいは高温が続かないようにし、場合によっては、この操作を同じ温度で繰り返すことで、あるいはこの範囲内の異なる温度にて繰り返すことで、繭タンパク質へのダメージを抑えること、繭タンパク質の変性を抑えること、繭の中の幼虫あるいは蛹あるいは成虫へのダメージを抑えること、繭への着色を控えめにすること、独特のにおいの発生・拡散を控えめにすることの少なくとも1つを実現して繭を繰糸する方法、あるいは繰糸できる繭、真綿、紬あるいは紙の原料の繊維にする方法。
〔9〕繭を水あるいはアルカリ剤、界面活性剤、酵素等の少なくとも1つを含む43℃以上、より好ましくは60~100℃の気体あるいは液体中につけて、あるいは浮かせて短時間で取り出すことと、繭を水あるいはアルカリ剤、界面活性剤、酵素等の少なくとも1つを含む50℃以下、より好ましくは42℃以下の液体あるいは蒸気、より好ましくは1.5%以上の高濃度のアルカリ剤を少なくとも含む溶液につけることを組み合わせることで、あるいは、それに加えてその両方を、あるいは少なくてもどちらかを繰り返し実施することで、繭タンパク質へのダメージを抑えること、繭タンパク質の変性を抑えること、繭の中の幼虫あるいは蛹あるいは成虫へのダメージを抑えること、繭への着色を控えめにすること、独特のにおいの発生・拡散を控えめにすることの少なくとも1つを実現して繭を繰糸する方法、あるいは繰糸できる繭、真綿、紬あるいは紙の原料の繊維にする方法。
〔10〕繭を高濃度の塩溶液で処理するのではなく、繰糸しやすくなる液、例えば煮繭液中につけて、あるいは浮かせて、冷蔵保存、あるいは低温、例えば20℃未満で保存することで、保存と繰糸しやすくする工程を同時に行う方法、あるいは、液につけずに繭のまま保存、例えば冷蔵保存し、保存の途中から繰糸しやすい液につけて低温、例えば20℃未満で保存と繰糸しやすくする工程を同時に行う方法。
〔11〕繭を低温、例えば20℃未満で処理することで、その後、繭を室温以上、あるいは20℃以上、より好ましくは50℃以上、さらにより好ましくは70℃以上の気体あるいは液体中につけた、あるいは浮かせた際、繭の中が急激に高温になること防いだり、低温により繭の中の個体の活動量、あるいは呼吸量を減らし、高温の影響を軽減させたりすることで、繭タンパク質へのダメージを抑えること、繭タンパク質の変性を抑えること、繭の中の幼虫あるいは蛹あるいは成虫へのダメージを抑えること、繭への着色を控えめにすること、独特のにおいの発生・拡散を控えめにすることの少なくとも1つを実現して繭を繰糸する方法、あるいは繰糸できる繭、真綿、紬あるいは紙の原料の繊維にする方法。
〔12〕繭を繰糸しやすくなる液、例えば煮繭液につけて、あるいは浮かせて、冷蔵保存、あるいは低温、例えば20℃未満で処理する工程と、繭を室温以上、あるいは20℃以上、より好ましくは50℃以上、さらにより好ましくは70℃以上の気体あるいは液体につける、あるいは浮かせる工程を組み合わせることで、あるいは、それに加えてその両方を、あるいは少なくてもどちらかを繰り返し実施することで、繭タンパク質へのダメージを抑えること、繭タンパク質の変性を抑えること、繭の中の幼虫あるいは蛹あるいは成虫へのダメージを抑えること、繭への着色を控えめにすること、独特のにおいの発生・拡散を控えめにすることの少なくとも1つを実現して繭を繰糸する方法、あるいは繰糸できる繭、真綿、紬あるいは紙の原料の繊維にする方法。
〔13〕繭を繰糸しやすくする際に、繭をそのまま、より好ましくは繭を液体の中に入れて、あるいは浮かせて低温に入れること、例えば室温よりも低い温度、より好ましくは20℃未満に設定したインキュベーター、あるいは冷蔵庫、あるいは冷凍庫に入れることで、繰糸の操作、繰糸しやすくする操作、例えば煮繭の熱による、繭タンパク質へのダメージを抑えること、繭タンパク質の変性を抑えること、繭の中の幼虫あるいは蛹あるいは成虫へのダメージを抑えること、煮繭による着色を控えめにすること、煮繭による独特のにおいの発生・拡散を控えめにすることの少なくとも1つを実現して繭を繰糸する方法、あるいは繰糸できる繭、真綿、紬あるいは紙の原料の繊維にする方法。
〔14〕複数のアルカリ剤を組み合わせることにより、繰糸しやすい繭とする方法。
〔15〕繭を繰糸しやすくなる液、例えば煮繭液につけて、あるいは浮かせて、冷凍保存、例えば0℃未満で処理する工程と、解凍する工程、繭を室温以上、あるいは20℃以上、より好ましくは50℃以上、さらにより好ましくは70℃以上の気体あるいは液体につける、あるいは浮かせる工程の全て、あるいは一部を組み合わせることで、繭タンパク質へのダメージを抑えること、繭タンパク質の変性を抑えること、繭の中の幼虫あるいは蛹あるいは成虫へのダメージを抑えること、独特のにおいの発生・拡散を控えめにすることの少なくとも1つを実現して繭を繰糸する方法、あるいは繰糸できる繭、真綿、紬あるいは紙の原料の繊維にする方法。
〔16〕〔1〕~〔15〕を組み合わせて、あるいは〔1〕~〔15〕の少なくとも一つを利用して、繭の中の幼虫あるいは蛹あるいは成虫を殺すことなく繰糸する方法、あるいは繰糸できる繭、真綿、紬糸あるいは紙の原料の繊維、生糸にする方法、あるいは殺すことなく繰糸した幼虫あるいは蛹ありいは成虫を水で洗ってから、または水で洗わずそのまま室温や各種の温度条件で幼虫あるいは蛹あるいは成虫を観察すること、幼虫や蛹の場合は成虫にすること、成虫を交尾させること、メスの卵を観察すること、その卵を発生させることの少なくとも1つを実施する方法。
〔17〕〔1〕~〔16〕の少なくとも1つを自動化した機械、あるいは〔1〕~〔16〕の少なくとも1つを利用した糸取りキット、紙作製キット、学習教材、あるいは〔1〕~〔16〕の少なくとも1つを利用して得られる繭、蛹、幼虫、成虫、色素、繭タンパク質、紙、生糸、練糸、その繊維、生糸あるいは練糸から得られる製品。
〔18〕〔1〕~〔17〕の少なくとも1つを利用して教育あるいは説明を行う方法、あるいは〔1〕~〔17〕の少なくとも1つを利用して繭タンパク質へのダメージを抑えること、繭の遺伝子改変により発現したタンパク質を含め、繭のタンパク質の変性を抑えること、繭の中の幼虫あるいは蛹あるいは成虫へのダメージを抑えること、独特のにおいの発生・拡散を控えめにすること、薄繭などの繰糸に適さない繭を取り除くこと、煮繭や繰糸中における蛹の色などによる繭の着色を少なくすることの少なくとも1つを実現する方法、およびそれらを利用して繭を繰糸する方法。
【発明の効果】
【0009】
カイコの繭を従来の煮繭の方法で製糸すると、繭のタンパク質、あるいは遺伝子改変カイコにおいて発現したタンパク質を含む繭が変性してしまうという問題があった。煮繭によっては、中の蛹が高温に長時間されされることで蛹を構成していたタンパク質・窒素化合物・その他の物質を含んだ体液が出てきて繭を汚染することもあった。さらに、繭の中には蛹あるいは幼虫あるいは成虫だけでなく、脱皮殻があり、場合によっては煮繭前から汚れた繭が混入することもあるため、長時間の煮繭によって独特のにおいが多量に発生し、拡散していた。また、従来の煮繭では、繭の中の個体(幼虫あるいは蛹あるいは成虫)が死んでしまうことにより、倫理的な問題が発生すること、子ども(大人も同様である)がカイコの命を奪ったことに対して悩んでしまうという問題が発生していた。本発明により、繭あるいは繭のタンパク質へのダメージが少ない、繭の中の個体へのダメージが少ない、繭への着色を抑えられる、煮繭による独特のにおいの発生・拡散を控えめにする、繭の中の個体を殺すことがないといったことの少なくとも一つを実現できる繰糸が可能となった。特に、繭の中の個体を殺さないことは、倫理的な問題を解決することができ、よりエシカルなファッションとなる製品を送り出すことが可能となった。このような製品は、エシカルな行動を心掛ける人はもちろん、動物などの命を尊重するヴィーガンの立場の人の製品購入の選択肢にもなりえるはずである。さらに、教育現場においては、子どもたちが、煮繭・繰糸の際にカイコの命を奪ったことで自責の念をいだいたり、命を奪うことで悩んだりすることをなくすことができる。本発明により未来を担う子どもたちが、笑顔で煮繭・繰糸を体験できる可能性が高まった。また、長時間の煮繭によって発生する独特のにおいにより、気分や体調をこわす子どもたちや大人を減らすことができる可能性が高まった。さらに、この方法を可能とする保存技術を開発したことにより、長い期間この繰糸を実施することが可能となった。
【0010】
また、本発明により、煮繭の工程、あるいはその一部を低温などの保存の際に同時に行うことができ、従来の煮繭の工程の一部、あるいは全てを省略することができ、繭を低温などで保存したあとに、一から煮繭から行う従来の工程よりもエネルギー消費が少なく、環境に優しい生糸をつくることが可能となった。グリーン購入の観点から、品質や価格だけでなく環境のことを考え、環境負荷ができるだけ小さい製品を、環境負荷の低減に努める事業者から優先して購入する動きが出てきている。本発明は、環境負荷を低減させる発明であり、環境負荷が少ない糸などの製品を世の中に出すことが可能となった。
【発明を実施するための形態】
(【0011】以降は省略されています)
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