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公開番号2024179404
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-12-26
出願番号2023098230
出願日2023-06-15
発明の名称MEMS素子、MEMS素子の製造方法、およびMEMS素子の剛性を制御する方法
出願人国立研究開発法人物質・材料研究機構
代理人個人
主分類B81B 3/00 20060101AFI20241219BHJP(マイクロ構造技術)
要約【課題】高い圧縮強度を有し、かつ、薄膜状態において初期応力を制御可能な材料を用いてMEMS素子の剛性を制御する方法、並びに、そのようにして剛性が制御されたMEMS素子およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の一実施形態に係るMEMS素子は、少なくとも1種類の遷移金属M1を含有する窒化物または炭窒化物からなる第1の薄膜と、少なくとも1種類の遷移金属M2を含有する窒化物または炭窒化物からなる第2の薄膜と、これらに挟まれたサスペンデッド構造体を備える。本実施形態に係るMEMS素子の製造方法は、サスペンデッド構造体を備えるMEMS素子用基体を準備することと、当該サスペンデッド構造体の一方の面に上記第1の薄膜を形成することと、当該サスペンデッド構造体のもう一方の面に上記第2の薄膜を形成することを包含する。上記第1の薄膜の組成と上記第2の薄膜の組成は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【選択図】図8
特許請求の範囲【請求項1】
少なくとも1種類の遷移金属M1を含有する窒化物または炭窒化物からなる第1の薄膜と、少なくとも1種類の遷移金属M2を含有する窒化物または炭窒化物からなる第2の薄膜と、これらに挟まれたサスペンデッド構造体とを備え、前記第1の薄膜を構成する窒化物または炭窒化物の組成と前記第2の薄膜を構成する窒化物または炭窒化物の組成は同じであるかまたは異なることを特徴とするMEMS素子。
続きを表示(約 1,000 文字)【請求項2】
前記第1の薄膜の初期応力は、前記第2の薄膜のそれと同じであることを特徴とする請求項1に記載のMEMS素子。
【請求項3】
前記第1の薄膜の初期応力は、前記第2の薄膜のそれよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のMEMS素子。
【請求項4】
前記第1の薄膜の初期応力は、前記第2の薄膜のそれよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のMEMS素子。
【請求項5】
前記第1の薄膜および前記第2の薄膜は、それぞれ、1種類の遷移金属を含有する窒化物または炭窒化物、1種類の遷移金属とII族元素またはIII族元素との合金を含有する窒化物、または、2種類以上の遷移金属の合金を含有する窒化物からなる薄膜、あるいは、これらのうちの2種類以上の薄膜が積層してなる積層膜であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のMEMS素子。
【請求項6】
前記第1の薄膜および前記第2の薄膜は、それぞれ、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、銅(Cu)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、エルビウム(Er)、ウラン(U)、およびプルトニウム(Pu)からなる群より選択される1種類の遷移金属を含有する窒化物または炭窒化物からなることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のMEMS素子。
【請求項7】
前記第1の薄膜が窒化チタン(TiN)からなり、前記第2の薄膜が窒化チタン(TiN)からなり、前記MEMS素子の剛性は、-1000N/m~1000N/mの範囲内であることを特徴とする請求項6に記載のMEMS素子。
【請求項8】
前記MEMS素子の剛性は、実質的にゼロであることを特徴とする請求項7に記載のMEMS素子。
【請求項9】
前記サスペンデッド構造体が座屈状態であることを特徴とする請求項7に記載のMEMS素子。
【請求項10】
前記第1の薄膜上に感応膜をさらに備えることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載のMEMS素子。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS素子、MEMS素子の製造方法、およびMEMS素子の剛性を制御する方法に関し、特に、少なくとも1種類の遷移金属を含有する窒化物または炭窒化物からなる薄膜の初期応力によって剛性が制御されたMEMS素子、そのようなMEMS素子の製造方法、および上記薄膜の初期応力によってMEMS素子の剛性を制御する方法に関する。
続きを表示(約 4,100 文字)【背景技術】
【0002】
微小電気機械システム(MEMS)において、構造体の剛性は、デバイスの性能に影響を及ぼす主要な要因の一つである。ここで、MEMS素子(MEMSデバイスとも呼ばれる。)の剛性という場合、広義には、当該素子(デバイス)全体の剛性を意味し得るが、本明細書では、文脈に応じて、当該素子(デバイス)を構成する構造体の剛性が意図されること、より具体的には、当該素子(デバイス)の主たる機能を発揮するために必要な部分(要部)を構成する構造体の剛性が意図されることが理解される。
【0003】
MEMSデバイスの剛性は、局所的な応力を導入することで制御することができる。例えば、引張応力は構造体を硬化させ、圧縮応力は構造体を軟化させる。こうした局所応力は、以下に挙げるような能動的または受動的な方法で導入することができる。
【0004】
能動的な方法としては、静電気、電熱、圧電などの様々な物理的機構を介して構造体に内部応力を発生させる方法が挙げられる(非特許文献1参照)。これらの方法は、応力を制御するために精巧な回路設計や構造設計を必要とするため、適用範囲が狭く、設計や製造にかかるコストも高くなる。
【0005】
受動的な方法としては、構造体を薄膜構造とする、あるいは、構造体に薄膜を適用することにより、薄膜が持つ初期応力(prestress)を利用して構造体に局所応力を発生させる方法が挙げられる。例えば、圧縮応力が加わった二酸化シリコンなどの薄膜材料は、座屈した梁や膜の作製に利用されている(非特許文献2、3参照)。このような薄膜初期応力を利用する方法は、比較的安価であり、広範に適用可能な剛性制御法である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
M L C de Laat et al., A review on in situ stiffness adjustment methods in MEMS, J. Micromech. Microeng., 26(2016) 063001.
Ruize Xu et al., Buckled MEMS Beams for Energy Harvesting from Low Frequency Vibrations, Research, Vol. 2019, Article ID: 1087946.
B. Haelg, On a nonvolatile memory cell based on micro-electro-mechanics, IEEE Proc. 1990, 172.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の薄膜初期応力を用いた従来のアプローチは、対象の構造体の剛性を調整しにくいという点が大きな弱点である。第一に、従来使用されてきた薄膜材料は機械的強度が低いため、効率的な剛性制御に必要な高い応力に耐えることができない。第二に、従来使用されてきた薄膜材料では、確立された成膜プロセスにおいて、その初期応力を制御するための有効なプロトコルが存在しない。
【0008】
本発明の目的は、高い圧縮強度を有し、かつ、薄膜状態において初期応力を制御可能な材料を用いてMEMS素子の剛性を制御する方法、並びに、そのようにして剛性が制御されたMEMS素子およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の特徴は、以下のとおりである。
【0010】
[1] 少なくとも1種類の遷移金属M1を含有する窒化物または炭窒化物からなる第1の薄膜と、少なくとも1種類の遷移金属M2を含有する窒化物または炭窒化物からなる第2の薄膜と、これらに挟まれたサスペンデッド構造体とを備え、前記第1の薄膜を構成する窒化物または炭窒化物の組成と前記第2の薄膜を構成する窒化物または炭窒化物の組成は同じであるかまたは異なることを特徴とするMEMS素子。
[2] 前記第1の薄膜の初期応力は、前記第2の薄膜のそれと同じであることを特徴とする[1]に記載のMEMS素子。
[3] 前記第1の薄膜の初期応力は、前記第2の薄膜のそれよりも小さいことを特徴とする[1]に記載のMEMS素子。
[4] 前記第1の薄膜の初期応力は、前記第2の薄膜のそれよりも大きいことを特徴とする[1]に記載のMEMS素子。
[5] 前記第1の薄膜および前記第2の薄膜は、それぞれ、1種類の遷移金属を含有する窒化物または炭窒化物、1種類の遷移金属とII族元素またはIII族元素との合金を含有する窒化物、または、2種類以上の遷移金属の合金を含有する窒化物からなる薄膜、あるいは、これらのうちの2種類以上の薄膜が積層してなる積層膜であることを特徴とする[1]~[4]のいずれかに記載のMEMS素子。
[6] 前記第1の薄膜および前記第2の薄膜は、それぞれ、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、銅(Cu)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、エルビウム(Er)、ウラン(U)、およびプルトニウム(Pu)からなる群より選択される1種類の遷移金属を含有する窒化物または炭窒化物からなることを特徴とする[1]~[5]のいずれかに記載のMEMS素子。
[7] 前記第1の薄膜が窒化チタン(TiN)からなり、前記第2の薄膜が窒化チタン(TiN)からなり、前記MEMS素子の剛性は、-1000N/m~1000N/mの範囲内であることを特徴とする[6]に記載のMEMS素子。
[8] 前記MEMS素子の剛性は、実質的にゼロであることを特徴とする[7]に記載のMEMS素子。
[9] 前記サスペンデッド構造体が座屈状態であることを特徴とする[7]に記載のMEMS素子。
[10] 前記第1の薄膜上に感応膜をさらに備えることを特徴とする[1]~[9]のいずれかに記載のMEMS素子。
[11] 前記第2の薄膜上に感応膜をさらに備えることを特徴とする[10]に記載のMEMS素子。
[12] サスペンデッド構造体を備えるMEMS素子用基体を準備し、前記サスペンデッド構造体の剛性を測定することと、前記サスペンデッド構造体の一方の面に少なくとも1種類の遷移金属M1を含有する窒化物または炭窒化物からなる第1の薄膜を形成することと、前記サスペンデッド構造体のもう一方の面に少なくとも1種類の遷移金属M2を含有する窒化物または炭窒化物からなる第2の薄膜を形成することと、前記第1の薄膜および前記第2の薄膜の初期応力を測定することと、前記第1の薄膜および前記第2の薄膜を備えたサスペンデッド構造体の剛性を測定することを包含し、前記第1の薄膜を構成する窒化物または炭窒化物の組成と前記第2の薄膜を構成する窒化物または炭窒化物の組成は同じであるかまたは異なることを特徴とするMEMS素子の剛性を制御する方法。
[13] 前記第1の薄膜および前記第2の薄膜を、マグネトロンスパッタリング法によって形成することを特徴とする[12]に記載の方法。
[14] 前記MEMS素子用基体を準備する前または後に、前工程を行うことをさらに包含し、前記前工程は、前記サスペンデッド構造体と同じ材料で作製された基体を準備し、前記基体に対して1以上の成膜条件で前記第1の薄膜または前記第2の薄膜を形成し、前記第1の薄膜および前記第2の薄膜の初期応力を測定し、得られた結果から、前記サスペンデッド構造体の剛性と、前記第1の薄膜および前記第2の薄膜の初期応力との関係を一定の形式で表現することを包含することを特徴とする[12]または[13]に記載の方法。
[15] 前記第1の薄膜および前記第2の薄膜は、それぞれ、1種類の遷移金属を含有する窒化物または炭窒化物、1種類の遷移金属とII族元素またはIII族元素との合金を含有する窒化物、または、2種類以上の遷移金属の合金を含有する窒化物からなる薄膜、あるいは、これらのうちの2種類以上の薄膜が積層してなる積層膜であることを特徴とする[12]~[14]のいずれかに記載の方法。
[16] 前記第1の薄膜および前記第2の薄膜は、それぞれ、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、銅(Cu)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、エルビウム(Er)、ウラン(U)、およびプルトニウム(Pu)からなる群より選択される1種類の遷移金属を含有する窒化物または炭窒化物からなることを特徴とする[12]~[15]のいずれかに記載の方法。
[17] 少なくとも前記第1の薄膜および前記第2の薄膜を形成した後に、付加的な工程を行うことをさらに包含し、前記付加的な工程は、付加的な構成要素が感応膜である場合において、前記第1の薄膜上および/または前記第2の薄膜上に、任意の感応膜材料を含む感応膜を形成することを包含することを特徴とする[12]~[16]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
(【0011】以降は省略されています)

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