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公開番号2024101518
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-07-29
出願番号2023115312
出願日2023-07-13
発明の名称マイクロ流路チップ及びその製造方法
出願人TOPPANホールディングス株式会社
代理人個人,個人
主分類B81B 1/00 20060101AFI20240722BHJP(マイクロ構造技術)
要約【課題】流路を画定する樹脂層と蓋材との界面に存在する微小な隙間が少ないマイクロ流路チップを提供する。
【解決手段】マイクロ流路チップは、基板10と、基板10上に設けられて流路3を画定する隔壁層20と、隔壁層20の基板10に接する面とは反対側の面に設けられた蓋材30と、を備える。蓋材30は樹脂材料で構成され、ナノインデンテーション法によって測定された樹脂材料の複合弾性率は1.68MPa以上44.3MPa以下である。
【選択図】図2
特許請求の範囲【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられて流路を画定する隔壁層と、
前記隔壁層の前記基板に接する面とは反対側の面に設けられた蓋材と、を備え、
前記蓋材が樹脂材料で構成され、ナノインデンテーション法によって測定された前記樹脂材料の複合弾性率が1.68MPa以上44.3MPa以下であるマイクロ流路チップ。
続きを表示(約 1,200 文字)【請求項2】
基板と、
前記基板上に設けられて流路を画定する隔壁層と、
前記隔壁層の前記基板に接する面とは反対側の面に設けられた蓋材と、を備え、
前記蓋材が樹脂材料で構成され、ナノインデンテーション法によって測定された前記樹脂材料の硬さが0.12MPa以上1.94MPa以下であるマイクロ流路チップ。
【請求項3】
ナノインデンテーション法によって測定された前記樹脂材料の応力緩和度が10%以上19%以下である請求項1に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項4】
ナノインデンテーション法によって測定された前記樹脂材料の応力緩和度が10%以上19%以下である請求項2に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項5】
前記樹脂材料がポリジメチルシロキサン、シリコーンゴム、ポリウレタン、及びポリ塩化ビニルのうちの少なくとも1種を含有する請求項1~4のいずれか一項に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項6】
前記隔壁層は、紫外光領域である190nm以上400nm以下の波長の光に対して感光性を有する感光性樹脂で構成されている請求項1~4のいずれか一項に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項7】
基板上に感光性樹脂を塗工する塗工工程と、
塗工した前記感光性樹脂を露光する露光工程と、
露光した前記感光性樹脂を現像及び洗浄し、前記基板上において流路を画定する隔壁層を形成する現像工程と、
前記隔壁層の前記基板に接する面とは反対側の面に蓋材を接合する接合工程と、
を有し、
前記蓋材が樹脂材料で構成され、ナノインデンテーション法によって測定された前記樹脂材料の複合弾性率が1.68MPa以上44.3MPa以下であるマイクロ流路チップの製造方法。
【請求項8】
基板上に感光性樹脂を塗工する塗工工程と、
塗工した前記感光性樹脂を露光する露光工程と、
露光した前記感光性樹脂を現像及び洗浄し、前記基板上において流路を画定する隔壁層を形成する現像工程と、
前記隔壁層の前記基板に接する面とは反対側の面に蓋材を接合する接合工程と、
を有し、
前記蓋材が樹脂材料で構成され、ナノインデンテーション法によって測定された前記樹脂材料の硬さが0.12MPa以上1.94MPa以下であるマイクロ流路チップの製造方法。
【請求項9】
ナノインデンテーション法によって測定された前記樹脂材料の応力緩和度が10%以上19%以下である請求項7に記載のマイクロ流路チップの製造方法。
【請求項10】
ナノインデンテーション法によって測定された前記樹脂材料の応力緩和度が10%以上19%以下である請求項8に記載のマイクロ流路チップの製造方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロ流路チップ及びその製造方法に関する。
続きを表示(約 2,500 文字)【背景技術】
【0002】
近年、リソプロセスや厚膜プロセス技術を応用して微細な反応場を形成し、数μLから数nL単位のサンプルでの検査を可能とする技術が提案されている。このような微細な反応場を利用した技術をμ-TAS(Micro Total Analysis System)という。μ-TASは、遺伝子検査、染色体検査、細胞検査、医薬品開発などの領域や、バイオ技術、環境中の微量な物質検査、農作物等の飼育環境の調査、農作物の遺伝子検査などに応用される。μ-TAS技術の導入により、自動化、高速化、高精度化、低コスト、迅速性、環境インパクトの低減など、大きな効果を得られる。
μ-TASでは、多くの場合、基板上に形成されたマイクロメートルサイズの流路(マイクロ流路、マイクロチャンネル)が利用され、このような基板は、チップ、マイクロチップ、マイクロ流路チップ、マイクロ流体チップ、マイクロ流体デバイス、マイクロ流路デバイスなどと呼ばれる。
【0003】
従来、こうしたマイクロ流路チップは、射出成形、モールド成形、切削加工、エッチングなどの技術を用いて作製されていた。また、マイクロ流路チップの基板としては、製造が容易であり、光学的な検出も可能であることから、主にガラス基板が用いられている。一方で、軽量でありながらガラス基板に比べて破損しにくく且つ安価な樹脂材料を用いたマイクロ流路チップの開発も進められている。樹脂材料を用いたマイクロ流路チップの製造方法としては、流路パターンを有する樹脂製基板を主にフォトリソグラフィーによって成形し、それに蓋材を接合してマイクロ流路チップを作製する方法がある。この方法によれば、従来技術では困難な側面もあった微細な流路パターンの形成も可能である。
【0004】
また、マイクロ流路チップの基板と蓋材を貼り合わせる方法としては、数μmから数十μmの厚さの接着剤(粘着剤、シール剤、両面テープ、粘着テープなどを含む)によって接着する方法が比較的一般的である(例えば特許文献1を参照)。ただし、接着剤を用いて貼り合わせた場合は、マイクロ流路チップの用途によっては、接着剤の成分の溶出や検査における視認性が問題となることもある。そのため、接着剤を用いることなく、熱プレス機や超音波溶着機などを用いた圧着(例えば特許文献2を参照)や、大気圧又はその近傍の圧力下においてプロセスガスをプラズマ化し、基板と蓋材の表面を改質して接合する方法も提案されている(例えば特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開2003-60127号公報
特開2002-139419号公報
特開2011-104886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マイクロ流路チップを製造するに際して、流路パターンを形成した樹脂層を有する基板と蓋材とを、接着剤を用いずに貼り合わせると、樹脂層と蓋材との界面に微小な隙間が形成される不具合が生じる場合がある。微小な隙間が形成される原因は、樹脂層の表面に存在するnmオーダーからμmオーダーの凹凸であると考えられる。すなわち、樹脂層の表面には、表面粗さの元となる微小な凹凸や、僅かな突起が存在するので、接着剤を用いずに蓋材を貼り合わせると、樹脂層と蓋材との界面に上記凹凸や上記突起に起因する微小な隙間が生じることとなる。この微小な隙間の大きさは、流路の製造方法や樹脂層を構成する材料の種類に依存するものの、当然ながら完全にゼロにすることはできない。
【0007】
樹脂層と蓋材との界面に微小な隙間が存在すると、そこから液漏れが生じたり、微小な隙間が気泡溜まりとなったり、微小な隙間によって流体(多くの場合は何らかの検体)の滞留や乱流が生じたり、安定した流速や内圧が得られなくなったりする。そのため、マイクロ流路チップとしての機能や性能が低下してしまうおそれがある。
また、流路の設計にもよるが、隙間が存在する領域が大きい場合は、隣接する流路と隙間が繋がってしまうため、流体(検体)コンタミが生じるおそれがあり、最悪の場合は、隙間を起点として隙間が存在する領域がさらに広がり、流体(検体)がマイクロ流路チップから外部に漏れ出してしまうことになる。マイクロ流路チップで取り扱われる流体の多くは、菌、ウィルス、病原体を有する体液(血液など)、又は、それらへの効果を検査するための抗菌薬などであるため、バイオセーフティの観点からも、流体のチップ外部への漏出は大きな問題である。
【0008】
このような微小な隙間がマイクロ流路チップに存在した場合は、マイクロ流路チップの製造時の検査において不良品と判定されるので、製造歩留まりを著しく低下させる要因となる。また、仮に検査で検出できなかった場合には、上述したような不良品となってしまうおそれがある。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、流路を画定する樹脂層と蓋材との界面に存在する微小な隙間が少ないマイクロ流路チップ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係るマイクロ流路チップは、基板と、基板上に設けられて流路を画定する隔壁層と、隔壁層の基板に接する面とは反対側の面に設けられた蓋材と、を備え、蓋材が樹脂材料で構成され、ナノインデンテーション法によって測定された樹脂材料の複合弾性率が1.68MPa以上44.3MPa以下であることを要旨とする。
【0010】
本発明の別の態様に係るマイクロ流路チップは、基板と、基板上に設けられて流路を画定する隔壁層と、隔壁層の基板に接する面とは反対側の面に設けられた蓋材と、を備え、蓋材が樹脂材料で構成され、ナノインデンテーション法によって測定された樹脂材料の硬さが0.12MPa以上1.94MPa以下であることを要旨とする。
(【0011】以降は省略されています)

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