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公開番号2024106212
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-08-07
出願番号2023010406
出願日2023-01-26
発明の名称高耐候性熱処理木材とその製造方法
出願人富山県,株式会社長谷川興産
代理人個人
主分類B27K 3/22 20060101AFI20240731BHJP(木材または類似の材料の加工または保存;釘打ち機またはステープル打ち機一般)
要約【課題】熱処理による防腐性と寸法安定性、及び薬剤による防腐・防蟻性を併せ持ち、退色し難く、耐候性に優れた高耐候性熱処理木材とその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】木材中のヘミセルロースが熱処理により分解・変性され、内部の水酸基が疎水化された状態であり、保存処理剤が木材の表面から内部に浸透している。保存処理剤は銅化合物を含むものである。密閉タンク内に無垢の未処理木材本体12を収容し、密閉タンク内を減圧する減圧処理を行い、次に密閉タンク内に水蒸気を導入して昇温する熱処理を行い、次に注入処理を行って保存処理剤を浸透させる。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
木材中のヘミセルロースが熱処理により分解・変性され、内部の水酸基が疎水化された状態であり、且つ保存処理剤が前記木材の表面から内部に浸透していることを特徴とする高耐候性熱処理木材。
続きを表示(約 340 文字)【請求項2】
前記木材の表面の色が暗褐色である請求項1記載の高耐候性熱処理木材。
【請求項3】
前記木材の種類はスギであり、前記保存処理剤は銅化合物を含む保存処理剤である請求項1記載の高耐候性熱処理木材。
【請求項4】
密閉タンク内に無垢の未処理木材本体を収容し、前記密閉タンク内を減圧する減圧処理を行い、次に前記密閉タンク内に水蒸気を導入して昇温する熱処理を行い、木材中のヘミセルロースを分解・変性し、内部の水酸基が疎水化された状態にし、この後保存処理剤を浸透させることを特徴とする高耐候性熱処理木材の製造方法。
【請求項5】
前記木材の熱処理の温度は、190~220℃である請求項4記載の高耐候性熱処理木材の製造方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
この発明は、木材に熱処理を施した高耐候性熱処理木材とその製造方法に関する。
続きを表示(約 2,200 文字)【背景技術】
【0002】
丸太から製材した無垢の木材に、水蒸気等による熱処理を施し、防腐性と寸法安定性を向上させた熱処理木材がある。このような熱処理木材は、含水率が低く、また木材中のヘミセルロースが熱処理により分解・変性された状態であり、木材の性質が変化している。またヘミセルロースの分解産物がリグニン等の他の成分と反応して濃い色の着色物質を生じ、落ち着いた暗褐色を呈する。スギに熱処理を行うと、特有の心材・辺材間のコントラストを落ち着かせ、全体を暗褐色に調色することができる。しかしながら、熱処理木材を屋外に施工した事例では、上記のような着色物質は太陽光等の紫外線により分解され、その分解に起因して色に変化が生じ、屋外では比較的短期間で退色して灰白色に変色する。
【0003】
従来、このような熱処理木材の屋外使用時の紫外線による変色を抑制する方法が考えられている。例えば、特許文献1に開示されている熱処理木材の製造方法は、密閉空間内に無垢材である被処理木材を収容して、密閉空間の内圧を50kPa以下に維持する減圧処理工程と、減圧処理工程により酸素含有量が低下した被処理木材を収容する密閉空間に過熱水蒸気を導入して、被処理木材を170℃以上の温度に加熱する加熱水蒸気処理工程と、該加熱水蒸気処理工程後の被処理木材に対して変色促進処理を施す変色促進工程とを含む。変色促進工程は、被処理木材に、塩素系又は酸素系の酸化剤を含む液を塗布した後、加熱又は紫外線の照射を行う。この熱処理木材の製造方法によれば、着色物質の分解に伴う被処理木材の変色を促進させることにより、被処理木材の経年変化を強制的に生じさせ、使用時の光による経年変色を抑制することができる。
【0004】
一方、無垢の木材に、木材保存剤による保存処理を施した処理木材がある。一般的な処理方法としては、保存処理剤を水または有機溶剤に溶解した液体に木材を浸漬し、密閉容器内で圧力を加えることによって、保存処理剤成分を木材中へ浸透させる加圧注入処理が、JISA9002木質材料の加圧式保存処理方法として制定されている。使用する保存処理剤は、例えば銅化合物と塩化ベンザルコニウム、またはジデシルジメチルアンモニウムクロリドを配合したACQ(Alkaline Copper Quaternary)、銅化合物にシプロコナゾールを配合したCUAZなどである。この保存処理木材は、防腐性やシロアリの食害を防ぐ防蟻性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開2016-30404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記背景技術の場合、特許文献1の熱処理木材は、熱処理した木材を強制的に灰白色に退色させるものであり、熱処理した木材の暗褐色の色合いを生かすことができない。また、この熱処理木材は防蟻性が不十分であり、防蟻性の改善が求められている。一方、一般的な保存処理木材は、防腐性と防蟻性は得られるが、熱処理木材のような寸法安定性の向上は得られない。また、保存処理剤として銅化合物を含むACQやCUAZを使用する場合は木材が緑色に変化し、人工的な違和感を受ける。
【0007】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、熱処理による防腐性と寸法安定性、及び薬剤による防腐・防蟻性を併せ持ち、退色し難く耐候性に優れた高耐候性熱処理木材とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、木材中のヘミセルロースが熱処理により分解・変性され、内部の水酸基が疎水化された状態であり、且つ保存処理剤が前記木材の表面から内部に浸透している高耐候性高耐候性熱処理木材である。前記木材の表面の色が暗褐色であり、18か月経過しても退色しない耐候性を有する。前記木材の種類はスギであり、前記保存処理剤はACQ又はCUAZ等の銅化合物を含む保存処理剤である。
【0009】
また本発明は、密閉タンク内に無垢の未処理木材本体を収容し、前記密閉タンク内を減圧する減圧処理を行い、次に前記密閉タンク内に水蒸気を導入して昇温する熱処理を行い、炭化しない程度であって、木材中のヘミセルロースを分解・変性し、内部の水酸基が疎水化された状態にし、この後保存処理剤を浸透させることを特徴とする高耐候性高耐候性熱処理木材の製造方法である。前記木材の熱処理の温度は、190~220℃が好ましいものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の高耐候性熱処理木材とその製造方法は、熱処理した木材の特長である防腐性と寸法安定性、及び保存処理剤により処理した木材の特長である防蟻性を併せ持ち、なおかつ熱処理した木材特有の暗褐色の色合いが長期間維持され、紫外線の影響を受け退色することがない。木材の種類がスギの場合、熱処理した木材特有の暗褐色がスギ特有の心材・辺材間のコントラストを落ち着かせ、全体を暗褐色に調色することができ、調色した状態を長期間維持することができる。
【図面の簡単な説明】
(【0011】以降は省略されています)

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