発明の詳細な説明【技術分野】 【0001】 本開示は、冷凍機および熱交換器に関する。 続きを表示(約 2,700 文字)【背景技術】 【0002】 これまで振動流における熱交換器設計については、通常の定常流における設計と同様の手法が用いられてきた。ただ、定常流と振動流では熱伝達率が異なるため、振動流での実験により層流、乱流条件下で熱伝達率を決定するNu(ヌセルト数)が実験的に示され、実験式として明示されてきた。また熱交換器に求められる構成要件として、伝熱表面積を大きくすること、粘性抵抗の小さい熱交換器形態が求められてきた。熱交換器の形態として、メッシュやランダムファイバーなどを使用する複雑系熱交換器と断面が矩形や丸穴の一様な流路を有する一様流路型熱交換器である。前者は、伝熱表面積を大きくとることができるメリットがあるが、粘性抵抗が高くなるというデメリットがある。後者は、伝熱面積は複雑流路系ほど大きく取れないが、粘性抵抗が小さくなるというメリットがある。 【0003】 文献1には、パルスチューブ冷凍機における低温側および高温側の熱交換器として複雑流路系の銅メッシュを用いた構成が開示されている。文献2には、パルスチューブ冷凍機の高温側熱交換器として一様流路系のスリット形状が開示され、文献3には、パルスチューブ冷凍機の低温側熱交換器としてスリット形状が開示されている。さらに文献4には、パルスチューブ冷凍機の高温側熱交換器に銅メッシュを用いたものが開示されている。 【先行技術文献】 【非特許文献】 【0004】 Lewis MA, Taylor RP, Bradley PE, Garaway I, Radebaugh R. Pulse tube cryocooler for rapid cooldown of a superconducting magnet. Cryocoolers 15 2009:167-76. Ki T, Jeong S. Optimal design of the pulse tube refrigerator with slit-type heat exchangers. Cryogenics (Guildf)., vol. 50, 2010, p. 608-14. Pang X, Dai W, Wang X, Vanapalli S, Luo E. Experimental study of the influence of cold heat exchanger geometry on the performance of a co-axial pulse tube cooler. Cryogenics (Guildf) 2016;78:78-82. Y. Yasukawa, N. Matsumoto, Y. Ueda, “Experimental Study on the Effect of Aftercooler Configuration on the Performance of Pulse Tube Cryocoolers, Cryogenics, Vol. 121, 2022, 103408 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 パルスチューブ冷凍機の高温側熱交換器を図11に示す。この熱交換器は熱交換器本体と外管(ケーシング)から構成され、内部のガス(通常ヘリウムガス)と熱交換器本体間で熱伝達により熱交換し、その伝熱部材である熱交換器本体から外管(ケーシング)へ熱伝導で伝熱する。外管と熱交換器本体間は通常、部材間を熱的に接合する必要がある。内部のガスの熱は最終的に外管部材の外側から水冷や空冷により放熱するしくみである。文献1では、熱交換器本体に銅メッシュを用いており、銅メッシュと外側の伝熱部材である銅リングとの間を熱拡散接合して、この間で熱抵抗が発生しない工夫をしている。また、文献4では銅メッシュに銀メッキを施し、外側の伝熱部材である銅リングとの間では銀メッキを融解させて銀ロウ付けと同様の効果を期待して施工している。文献2および3では熱交換器本体として外管と一体型となったスリット形状のものを用いている。 【0006】 文献1の技術では、低温側、高温側熱交換器本体として銅メッシュを用いている。このパルスチューブ冷凍機は熱交換器の性能が十分ではなく(その他偏流による影響もあるが)、設計通りの冷凍機性能には達していない。また、文献4における、銅メッシュ型の熱交換器において、銅メッシュ型は多孔体型より冷凍機性能が劣る結果となっている。 【0007】 一方で、文献2、3および文献4の一部の技術では、スリット型、丸穴多孔体型の熱交換器が用いられている。文献2、3ではパルスチューブ冷凍機として冷凍機性能は所望の性能を達成したとしている。文献4の熱交換器の違いによる冷凍機性能の比較を図12として示す。この図において、横軸は音響パワー、縦軸は低温端無負荷到達温度である。多孔体型、バンドル型(何れも一様流型)の熱交換器の方が銅メッシュ型より低温端達温度が低く、冷凍機性能として高いことを示している。 【0008】 文献4には、通常の定常流での伝熱特性と振動流における伝熱特性が示されている。それによると、定常流では複雑流路系熱交換器の方が伝熱特性は良いが、振動流では反対に一様流路系熱交換器を組込んだ冷凍機の方が冷凍機特性は良くなるという結果が示されている。通常、銅メッシュ型のような複雑流路系は、比表面積を大きくでき、熱伝達率も高い。図9には、文献4の元データとなるデータを示す。振動流における定格運転時において、熱伝達率およびNuは先行研究による実験式を使用して計算した結果である。銅メッシュ型において、熱伝達率は他2つの10倍以上であり、比表面積も数倍以上と大きい。 【0009】 したがって、一般的には振動流での伝熱特性においても、銅メッシュ型の熱交換器を備えた冷凍機の冷凍機性能が良いと考えられる。しかし、実際にはそのような結果にはならなかった。これは、文献4で述べられているように、熱交換器内部の温度分布が一様ではなく、熱交換器の一部が蓄冷器とあたかも同様な熱的振る舞いをすることにより生じた結果であると考えられる。 【0010】 本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、冷凍機の熱交換器の2つのパラメータをある範囲に選定することにより、高い冷凍機性能を有する冷凍機を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 (【0011】以降は省略されています) この特許をJ-PlatPatで参照する