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公開番号
2025113089
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2025-08-01
出願番号
2024016709
出願日
2024-01-19
発明の名称
シュウ酸カルシウム1水和物の結晶の蓄積を低減した完全に黄葉するクワの葉
出願人
個人
代理人
主分類
A01G
17/00 20060101AFI20250725BHJP(農業;林業;畜産;狩猟;捕獲;漁業)
要約
【課題】安全安心な食品の提供を行う視点から、食中毒の関連が危惧されるシュウ酸カルシウム1水和物の結晶の含有が十分に抑えられたクワの葉を提供可能とする栽培技術の開発を行う。また、クワの葉を完全に黄葉可能とし、フラボノイド系色素の含有を高める。
【解決手段】クワはC3植物であり、光合成は特に光阻害を受けやすいことから,葉の角度などの受光態勢が植物群落としての光合成能力に重大な影響を及ぼすため、葉身傾斜角度を考えた栽培環境(剪定、植栽密度等)の整備、適切な遮光管理による光合成量の調整、土壌管理のための石灰の限界までの使用削減を鋭意検討した結果、本発明に至った。
【選択図】図1、図6
特許請求の範囲
【請求項1】
黄変前のクワ科クワ属の樹木の葉のうち、葉組織のX線回折を測定した際に、観測されるシュウ酸カルシウム1水和物の結晶の回折ピーク強度の最大値が痕跡程度(trace level)に低下している葉。
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【請求項2】
請求項1に記載の葉のうち、黄葉した段階であっても、葉組織のX線回折を測定した際に、観測されるシュウ酸カルシウム1水和物の結晶の回折ピーク強度において、当該回折ピーク強度の最大値(a)が当該ピークを観測した葉組織の回折ピーク強度の最大値(b)に対して20%以下となる葉。
【請求項3】
請求項1に記載の葉のうち、葉の全体が黄葉して当該葉の色濃度K/Sの平均値が9以上となる葉。
【請求項4】
請求項1~3に記載の葉がカラヤマグワ系に分類されるクワ科クワ属の樹木の葉であること。
【請求項5】
請求項1~3に記載の葉がカラヤマグワ系に分類されるクワ科クワ属の樹木の品種「はやてさかり」の葉であること。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、新たな土壌・肥料管理方法によって、養蚕や製茶原料に用いるクワの木の葉のシュウ酸カルシウム1水和物結晶の蓄積をほぼ完全に抑えることが可能であることを発見したことに関する。同時に、新たな土壌・肥料管理方法に基いてクワの木の葉を黄葉させた時、葉全体が黄葉して葉の色濃度がイチョウの葉の色濃度にまで高められることを発見したことに関する。
続きを表示(約 6,500 文字)
【背景技術】
【0002】
養蚕業だけでなく、クワ(Morus alba L.)から採取される葉は、フラボノイド(morusin, kuwanon A),トリテルペン(α-amyrin acetate)を含み、漢方でも重用され、解熱,鎮咳,糖尿病による口渇改善作用があるとされてきた。近年、クワの葉エキスにはβアミロイドの形成抑制とともに、βアミロイドが誘導する海馬神経細胞死を抑制することが報告され、クワの葉から遊離するフラボノイド類にはβアミロイド形成を抑制する効果が確認されている(非特許文献1)。さらに、クワの樹液に含まれる1-デオキシノジリマイシン(DNJ)のもつα-グルコシダーゼ阻害作用(非特許文献1)が注目され、いわゆる“やせ薬”的な視点も含めてクワの葉を製茶した商品が、健康志向の老人だけでなく若者にまで浸透しつつある。DNJの熱安定性については、100℃-121℃程度と報告があり(非特許文献2,3)、クワの葉を製茶する際、DNJを変質することなく利用できると思われる。DNJの他に、クワの葉から遊離するγ-アミノ酪酸の血圧降下作用(非特許文献4)やアルギニンの疲労軽減作用(非特許文献5)が注目されてきた。
【0003】
クワの代謝に注目したとき、他の植物には見られない特徴がある。それは生長とともに炭酸カルシウムを葉の上面表層の巨細胞に蓄積することである(非特許文献6)。一方、葉では光合成が行われるため、光合成で作られる糖類からD-マンノース/L-ガラクトース経路でアスコルビン酸が合成される(非特許文献7).アスコルビン酸は分解されてシュウ酸とトレオニンになる。また、光合成で産生するグリコール酸もシュウ酸となる(非特許文献8,9).したがって、クワの場合、根から葉に輸送されるカルシウムイオンは、巨細胞に炭酸カルシウムとして蓄積される他、光合成から生成したシュウ酸と結合してシュウ酸カルシウムを産生し、葉に蓄積されることになる。実際にクワの葉からシュウ酸カルシウムを検出している(非特許文献10)。シュウ酸カルシウム1水和物の結晶は葉の生体組織内に針状の結晶となって貯蔵される(非特許文献11)。
【0004】
シュウ酸カルシウム1水和物の結晶を含む食品を摂取した場合、シュウ酸カルシウム1水和物の結晶は針状をしており(消化器の内膜を刺す恐れがある)、また、水溶性(8.8ppm(25℃),11.8ppm(100℃))を示し(非特許文献12)、胃酸のpHは1を示す強酸であるため(非特許文献13)、シュウ酸カルシウムは胃で分解されてシュウ酸となる可能性がある。したがって、多量にシュウ酸カルシウム1水和物の結晶を含む食品を摂取した場合、中毒の発症リスクがある。実際に内閣府食品安全委員会のホームページ(非特許文献14)において、香港衛生署衛生防護センターのシュウ酸カルシウム結晶との関連が疑われる食中毒事案(2016年9月20日)について公表されている.
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
勝部拓矢,杉山万里,小山朗夫,蚕糸・昆虫バイオテック,80巻,1号,19-27頁(2011),クワの健康機能性研究の最前線.
Kang-Sun Ryu,Heui-Sam Lee,Kee-Young Kim,Mi-Ja Kim,Pil-Don Kang,International Journal of Industrial Entomology,27巻,2号,277-281頁(2013),Heat stability and glucose-lowering effect of 1-deoxynojirimycin from silkworm(Bombyx mori)extract powder.
Kazuhisa Yatsunami,Kohji Murata,Tsutomu Kamei,Food and Nutrition Science,2巻,87-89頁(2011),1-Deoxynojirimycin content and alfa-glucosidase inhibitory activity and heat stability of 1-deoxynojirimycin in silkworm powder.
町井博明,日本蚕糸学雑誌,59巻,5号,381-382(1990),桑葉中のγ-アミノ酪酸含量について.
I-Fan Chen,Huey-June Wu,Chung-Yu Chen,Kuei-Ming Chou,Chen-Kang Chang,Journal of the International Society of Sports Nutrition,13巻,28号(2016),Branched-chain amino acids,arginine,citrulline alleviate central fatigue after 3simulated matches in taekwondo athletes:a randomized controlled trial.
Yukio Sugimura,Ikuro Nitta,Yohji Morita,Sumiyo Ishikawa,Tomoyo Mori,Eiji Kotani,Toshiharu Furusawa,日本蚕糸学雑誌,67巻,6号,445-451頁(1998),Microscopic detection of calcium deposited in idioblasts of mulberry leaves.
石川孝博,ビタミン,94巻,438-442頁(2020),植物のアスコルビン酸生合成研究の現状.
Foyer Christine Helen著,「Photosynthesis」(Cell Biology Monographs),John Wiley and Sons出版,全頁219,(1984),198-211頁,Photorespiration.
Kazumi Saito,Junko Ohmoto,Norio Kuriha,Phytochemistry,44巻,5号,805-809頁(1997),Incorporation of ▲18▼O into oxalic, L-threonic and L-tartaric acids during cleavage of L-ascorbic and 5-keto-D-gluconic acids in plants.
H.Katayama,Y.Fujibayashi,S.Nagaoka,Y.Sugimura,Protoplasma,231巻,245-248頁(2007),Cell wall sheath surrounding calcium oxalate crystals in mulberry idioblasts.
石井裕子,電子顕微鏡,25巻,3号,145-151頁(1990),植物中のシュウ酸カルシウムの結晶化学.
石井裕子,日本化学会誌,1991巻,1号,63-70頁(1991),植物細胞中の3種類のシュウ酸カルシウム水和物の動態.
阿部一啓,生物物理,59巻,2号,073-078頁(2019),胃の中が強い酸性になる仕組み.
https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu04560650360#:~:text=%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%82%A6%E9%85%B8%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0%E9%87%9D%E7%8A%B6%E7%B5%90%E6%99%B6%E3%82%92%E5%90%AB%E3%82%80%E6%A4%8D%E7%89%A9%E3%82%92,%E3%81%AE%E8%85%AB%E3%82%8C%E7%AD%89%E3%81%A7%E3%81%82%E3%82%8B%E3%80%82
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
栽培土壌管理において、従来の毎晩秋にクワの木1本当たり(約10平方メートル)に対して、例えば、苦土石灰を1-2kg散布する栽培方法では、クワの葉に対しての過剰なシュウ酸カルシウム1水和物の結晶の蓄積が危惧される。多量にシュウ酸カルシウム1水和物の結晶が蓄積されたクワの葉を使用して製茶した場合、揉み工程において葉の組織からシュウ酸カルシウム1水和物の結晶が遊離して当該組織の表面に露出したり、シュウ酸カルシウム1水和物の結晶が水分で溶解して当該組織の表面で針状の結晶を再生したりする恐れがある。一方、古くから飲用されてきたチャ(Camellia sinensis)の木の葉ではクワの葉で生じる様な著しいカルシウムの輸送は行われないために、シュウ酸カルシウム1水和物の結晶の形成は殆ど認められない。安全安心な食品の提供を行う視点から、食品としてクワの葉を利用するためには、クワの葉のシュウ酸カルシウム1水和物の結晶の蓄積を抑える栽培技術の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
クワはC3植物であり、光合成は特に光阻害を受けやすいことから,葉の角度などの受光態勢が植物群落としての光合成能力に重大な影響を及ぼすため、葉身傾斜角度を考えた栽培環境(剪定、植栽密度等)の整備、適切な遮光管理による光合成量の調整、土壌管理のための石灰の限界までの使用削減を鋭意検討した結果、本発明に至った。
【発明の効果】
【0008】
実施例1に示すように、10月中旬の養蚕作業を終える時期において、かつ、黄葉が始まる前の段階におけるクワの葉についてシュウ酸カルシウム1水和物の結晶をX線回折測定で探査しても、図1に示すように、シュウ酸カルシウム1水和物の結晶の回折ピークを殆ど確認することが出来なかった。黄葉させた11月中旬の段階であっても、図2に示すように、観測されたシュウ酸カルシウム1水和物の結晶の最大回折ピーク強度(矢印a)は、当該回折ピークが生じた葉肉組織の最大ピーク強度(矢印b)に比較して15%=(100×a/b)に過ぎず、極小さなものであった。
通常の栽培法では、比較例1の図3に示すように、10月中旬のクワの葉についてX線回折測定を行うと、顕著なシュウ酸カルシウム1水和物の結晶の回折ピークを観測した。この様な性質をもつクワの葉を製茶すると、製茶過程での水分の蒸発と葉の乾燥・収縮を通じて、クワの葉に含有される有機物・無機物の遊離や濃縮が発生する。シュウ酸カルシウム1水和物の結晶に着目すれば、揉み工程において葉の組織からシュウ酸カルシウム1水和物の結晶が遊離して製品の茶葉の表面に付着したり、シュウ酸カルシウム1水和物の結晶が水分で溶解して製品の茶葉の表面で針状の結晶を再生したりする恐れがある。市販のクワ葉の茶葉についてX線回折測定を行うと、比較例2の図4に示すように、製茶工程における成分濃縮効果に対応した著しいシュウ酸カルシウム1水和物の結晶の含有濃度の増加を示す当該結晶の回折ピークの増大を確認した。
比較例2で使用した市販のクワの葉茶の茶葉を茶こしに入れ、お茶にして飲用した場合、比較例3の図5に示すように、飲用して2時間ほど経過すると、ヒスタミンなどのケミカルメジエーターの分泌が血管内で生じ、痒みを伴う発疹が全身に生じはじめ、さらに発熱も生じ、緊急治療を受診することになった。シュウ酸カルシウム結晶との関連が疑われる食中毒と思われた。
本発明のクワの葉では黄葉前の段階でシュウ酸カルシウム1水和物の結晶をほとんど含まないため、緑色の段階で摘み取ったクワ葉を製茶して提供しても、少なくともシュウ酸カルシウム1水和物の結晶に関連する食中毒の発生は回避できる。
一方、本発明の栽培法でクワの葉を黄葉させた場合、実施例3の図6に示すように、その葉の色濃度は十分に黄葉したイチョウ葉と同程度であった。色濃度のピークが生じる光の波長が異なるため、発色の原因となっている色素の構造や組成に違いのあることが分かるが、本発明のクワ葉のフラボノイド系色素の含量はイチョウ葉に匹敵する可能性があると推測され、このフラボノイド系色素を活用した製品の提供が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
2023年10月17日に採取したカラヤマグワ系の品種「はやてさかり」の葉脈部位および葉肉部位の広角X線回折強度曲線(冷蔵保存試料を、2023年10月19日に測定した)。参考としてシュウ酸カルシウム1水和物の結晶の回折角度位置を●で示す。
2023年11月12日に採取したカラヤマグワ系の品種「はやてさかり」の葉脈部位および葉肉部位の広角X線回折強度曲線(冷蔵保存試料を、2023年11月21日に測定した)。矢印aは、シュウ酸カルシウム1水和物の結晶の最大ピーク強度を示す。矢印bは、シュウ酸カルシウム1水和物の最大ピーク強度が観測された葉肉部位の最大ピーク強度を示す。参考としてシュウ酸カルシウム1水和物の結晶の回折角度位置を●で示す。
2023年10月6日に採取したカラヤマグワ系の品種「一ノ瀬」の葉脈部位および葉肉部位の広角X線回折強度曲線(冷蔵保存試料を、2023年10月11日に測定した)。矢印aは、シュウ酸カルシウム1水和物の結晶の最大ピーク強度を示す。矢印bは、シュウ酸カルシウム1水和物の結晶の最大ピーク強度が観測された葉脈部位の最大ピーク強度を示す。参考としてシュウ酸カルシウム1水和物の結晶の回折角度位置を●で示す。
市販のクワ葉茶(クワ葉100%)の葉脈部位および葉肉部位の広角X線回折強度曲線。矢印aは、シュウ酸カルシウム1水和物の結晶の最大ピーク強度を示す。矢印bは、シュウ酸カルシウム1水和物の結晶の最大ピーク強度が観測された葉脈部位の最大ピーク強度を示す。参考としてシュウ酸カルシウム1水和物の結晶の回折角度位置を●で示す。
2023年6月25日、21時過ぎに撮影した膝の裏側の発疹の様子を示す写真。
2023年12月3日に採取し冷蔵保存して、2023年12月4日に測色した、新たな栽培方法に基いて成長し、葉全体が完全に黄葉したカラヤマグワ系の品種「はやてさかり」の葉の色濃度K/Sの光波長依存性。並びに、2023年12月4日に完全に黄葉し落葉していたイチョウ葉について測定した色濃度K/Sの光波長依存性。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0010】
新たな栽培方法に基いて成長したカラヤマグワ系の品種「はやてさかり」の葉を2023年10月17日に採取し、冷蔵保存して、2023年10月19日に、葉の葉脈部位と葉肉部位の広角X線回折測定を行ったところ、図1に示す回折強度曲線を各々の部位で観測した。シュウ酸カルシウム1水和物の結晶ピークに一致した回折ピークは痕跡程度(trace level)で殆ど観測できなかった。
【実施例】
(【0011】以降は省略されています)
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