TOP特許意匠商標
特許ウォッチ Twitter
公開番号2024122135
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-09-09
出願番号2023029502
出願日2023-02-28
発明の名称遺伝子分析方法、遺伝子分析用キット
出願人株式会社日立製作所
代理人弁理士法人平木国際特許事務所
主分類C12Q 1/6876 20180101AFI20240902BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】キャピラリー電気泳動のフラグメント解析による遺伝子変異の定量検出技術において、検出する遺伝子変異の標的数の増大とともに、隣接する遺伝子標的の蛍光信号が近づき、その蛍光信号の重なりが変異型遺伝子の定量性を損なわせることを回避する、遺伝子分析方法を提供する。
【解決手段】標的塩基配列を検出するための一塩基伸長反応用プライマーと、蛍光色素を有する一塩基伸長反応用の基質とを用いた一塩基伸長反応を行う工程、前記一塩基伸長反応の反応物を電気泳動に供する工程、前記電気泳動の移動度と前記蛍光色素の蛍光強度を測定し、前記蛍光強度に基づいて前記標的塩基配列の野生型と変異型を検出する工程を含む遺伝子分析方法である。前記一塩基伸長反応用プライマーは、2種以上の標的塩基配列を検出するために異なる塩基配列及び塩基長を有するプライマーを2種以上含む。
【選択図】図3
特許請求の範囲【請求項1】
標的塩基配列を検出するための一塩基伸長反応用プライマーと、
蛍光色素を有する一塩基伸長反応用の基質と
を用いた一塩基伸長反応を行なう工程、
前記一塩基伸長反応の反応物を電気泳動に供する工程、
前記電気泳動の移動度と前記蛍光色素の蛍光強度を測定し、前記蛍光強度に基づいて前記標的塩基配列の野生型と変異型を検出する工程
を含む遺伝子分析方法であって、
前記一塩基伸長反応用プライマーは、2種以上の標的塩基配列を検出するために異なる塩基配列及び塩基長を有するプライマーを2種以上含み、
前記蛍光色素を有する一塩基伸長反応用の基質は、異なる蛍光色素を有する2種以上の基質を含み、
前記蛍光強度を測定する際に電気泳動の移動度として隣接する前記一塩基伸長反応の反応物が由来する前記標的塩基配列について、第1の前記標的塩基配列の野生型の一塩基伸長反応によって取り込まれる基質の蛍光色素と、第2の前記標的塩基配列の変異型の一塩基伸長反応によって取り込まれる基質の蛍光色素とが異なるように、前記一塩基伸長反応用プライマー及び前記一塩基伸長反応用の基質の組み合わせが設計される
ことを特徴とする遺伝子分析方法。
続きを表示(約 1,400 文字)【請求項2】
前記蛍光強度を測定する際に電気泳動の移動度として隣接する前記一塩基伸長反応の反応物が由来する前記標的塩基配列について、第1の前記標的塩基配列の野生型及び変異型の一塩基伸長反応によって取り込まれる基質の蛍光色素と、第2の前記標的塩基配列の野生型及び変異型の一塩基伸長反応によって取り込まれる基質の蛍光色素とが異なるように、前記一塩基伸長反応用プライマー及び前記一塩基伸長反応用の基質の組み合わせが設計される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標的塩基配列の野生型と変異型を検出する工程が、前記蛍光強度の大きさに基づいて前記標的塩基配列の野生型と変異型の含有比を定量する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記野生型と変異型の含有比が定量される前記標的塩基配列を検出するための一塩基伸長反応用プライマーが、他の一塩基伸長反応用プライマーよりも短い塩基長を有するように設計される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記野生型に対する前記変異型の含有比が0.01%から10%の範囲である前記標的塩基配列について分析される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記2種以上の標的塩基配列が、20種類以上の標的塩基配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記標的塩基配列の変異型が複数種の変異型を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記蛍光強度を測定する際に電気泳動の移動度として隣接する前記一塩基伸長反応の反応物が由来する前記標的塩基配列について、前記標的塩基配列の野生型に対する変異型の含有比に応じて前記電気泳動の移動度の差を調整するように、前記一塩基伸長反応用プライマーが設計される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記野生型に対する前記変異型の含有比が0.01%から10%の範囲である第1の前記標的塩基配列について、第2の前記標的塩基配列を検出するための一塩基伸長反応用プライマーが、第1の前記標的塩基配列を検出するための一塩基伸長反応用プライマーと、電気泳動の移動度としての差が少なくとも4.46~3.16塩基となるように、前記一塩基伸長反応用プライマーが設計される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
標的塩基配列を検出するための一塩基伸長反応用プライマーと、
蛍光色素を有する一塩基伸長反応用の基質と
を用いた一塩基伸長反応を行なう工程、
前記一塩基伸長反応の反応物を電気泳動に供する工程、
前記電気泳動の移動度と前記蛍光色素の蛍光強度を測定し、前記蛍光強度に基づいて前記標的塩基配列の野生型と変異型を検出する工程
を含む遺伝子分析方法であって、
前記一塩基伸長反応用プライマーは、2種以上の標的塩基配列を検出するために異なる塩基配列及び塩基長を有するプライマーを2種以上含み、
前記蛍光色素を有する一塩基伸長反応用の基質は、異なる蛍光色素を有する2種以上の基質を含み、
前記蛍光強度を測定する際に電気泳動の移動度として隣接する前記一塩基伸長反応の反応物が由来する前記標的塩基配列について、前記標的塩基配列の野生型に対する変異型の含有比に応じて前記電気泳動の移動度の差を調整するように、前記一塩基伸長反応用プライマーが設計される
ことを特徴とする遺伝子分析方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動のフラグメント解析を利用する遺伝子分析方法、及びかかる方法に使用するための遺伝子分析用キットに関する。
続きを表示(約 3,200 文字)【背景技術】
【0002】
がん研究は近年急速に進展しており、遺伝子解析技術により腫瘍由来の遺伝子変異を検出することの重要性が増している。特に、血液中の腫瘍由来の遺伝子変異を検出して医療診断を行う検査はリキッドバイオプシーと呼ばれ、がんの早期診断や、術後の治療選択最適化、残存腫瘍のモニタリング等への応用が期待されている。バイオマーカーとなる腫瘍関連の遺伝子変異の探索では、現在、次世代シーケンサー(NGS;Next Generation Sequencer)を使って大規模かつ高速の解析が可能となり、リキッドバイオプシーで必要となる遺伝子変異の項目抽出が容易になりつつある。そのため、例えばがん診断においては、NGSでの網羅的分析の結果に基づいて特定された腫瘍由来の遺伝子変異を、コストや検出感度の観点でNGSよりも有利な遺伝子変異の検出技術で測定することによって、検査技術としての汎用性を上げる潮流下にある。
【0003】
NGSよりも低コストの遺伝子変異の検出技術として、電気泳動、例えばキャピラリー電気泳動(CE)を用いたフラグメント解析が一例として挙げられる。図1に示すように、標的とする遺伝子配列110ごとに、分子量(塩基長)の異なる選択的プライマー111を用いて電気泳動の移動度が変わるように設計し、ポリメラーゼ反応によって、遺伝子変異に対応する選択的プライマー111の3’末端位置に、4種の蛍光色素で修飾されたddNTP 112を一塩基伸長反応で付与する。ホルムアミド処理と熱変性で二本鎖DNAを一本鎖化し、3’末端の蛍光色素を蛍光検出することで遺伝子変異が特定される。例えば、肺がん患者の多くに見られる遺伝子変異EGFR L858Rを標的とすると、EGFR遺伝子の858番目の塩基がロイシン(L:C

G)からアルギニン(R:C

G)に変異し、野生型の一塩基伸長反応産物のみが存在する時に比べ、変異型の一塩基伸長反応産物が生成される時には、特定の電気泳動検出タイミング(電気泳動移動度)で、変異型を由来とした蛍光信号が観測されることになる。
【0004】
本手法を用いた非特許文献1においても、遺伝子変異EGFR L858Rの検出が示されている。この手法を活用して、標的となる腫瘍由来の遺伝子配列をマルチプレックスのポリメラーゼ連鎖反応(PCR;polymerase chain reaction)で選択的に濃縮した後に、13のがん遺伝子における120の既知の遺伝子変異を検出できることを示している。ただし、選択的プライマーを電気泳動で分離できる泳動長の上限は120塩基程度に制限されているため、1ラン当たりの同時検出数としては数種類であり、また、遺伝子変異を特定するための蛍光色素ごとで蛍光信号の強度は異なるため、定量性は担保されていない。また、非特許文献2においても、52種の一塩基多型検出を行う際に、1ランあたり29種と23種に分割して検出する工夫がなされている。
【0005】
同時検出できる遺伝子変異数に関しては、本発明者らが最近、選択的プライマーに鎖間架橋された二本鎖DNAを連結させ、電気泳動距離を120bp以上に安定的に伸ばすことで、これまで有効活用できなかった電気泳動領域を利用し、同時検出可能な遺伝子変異数を増やすことを可能にしている。さらに、少量の遺伝子変異を定量する方法としては、特許文献1において、例えば上記の一塩基伸長反応で遺伝子変異検出をする際に、伸長プライマー(選択的プライマー)に対する鎖停止試薬の濃度を変更することで、混合物中に低い頻度又はコピー数で存在する少量核酸種の検出限界を改善した、定量測定のアプローチが考案されている。以上のように、がんに由来する標的遺伝子に関して、多項目同時検出で、少量変異を定量的に測定できる分析方法がこれまでに開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
WO2016/172571(特表2018-512880号公報)
【非特許文献】
【0007】
Dias-Santagata, D. et al., EMBO Molecular Medicine 第2巻第146-158頁 (2010)
Sanchez, J. J. et al., Electrophoresis 第27巻第1713-1724頁 (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
がん診断技術の手法として、例えばキャピラリー電気泳動のフラグメント解析などの電気泳動を利用した方法により既知の遺伝子変異を検出する技術が考えられる。キャピラリー電気泳動を行なう装置の改良によりフラグメント解析が可能な塩基長幅が拡大するにつれて、反応産物の鎖長も長くすることができるため、検出できる遺伝子変異の標的数も増大する。標的遺伝子の数が多いほど遺伝子領域のカバレッジが高くなるため、がん診断の確度を高めることにも繋がる。その際、例えば解析可能な塩基長幅が500bpまで拡大し、検出遺伝子の標的数を100とすると、泳動度により区別するために一標的あたりに使用できる塩基長幅は5bpとなる。しかし、泳動したときの移動度として隣接する遺伝子標的を蛍光色素の標識で検出する場合に、その蛍光信号の重なりが変異型遺伝子の定量性を損なわせることに繋がってしまう、という課題がある。これまでの研究例のように最大でも20~30の標的遺伝子を1ランで測定する場合には起きえなかった蛍光強度の重なりが生じるため、その標的の並べ方(プライマーデザイン)に工夫が必要になる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで本発明者は鋭意検討を行った結果、電気泳動の移動度として隣接する遺伝子標的の野生型と変異型の標識蛍光色素を異なるものに設定し、蛍光信号の重なりを無くすことで変異型遺伝子の量を定量的に測定できることを見出した。さらに、定量したい変異型の存在割合に応じてプライマー塩基長(移動度)の長さを設定(デザイン)することで、より多くの項目をできる限り接近させて隣接したプライマーで検出することが可能であることを見出した。
【0010】
したがって、本発明は以下の態様を包含する:
[1]一態様において、本発明は、
標的塩基配列を検出するための一塩基伸長反応用プライマーと、
蛍光色素を有する一塩基伸長反応用の基質と
を用いた一塩基伸長反応を行なう工程、
前記一塩基伸長反応の反応物を電気泳動に供する工程、
前記電気泳動の移動度と前記蛍光色素の蛍光強度を測定し、前記蛍光強度に基づいて前記標的塩基配列の野生型と変異型を検出する工程
を含む遺伝子分析方法であって、
前記一塩基伸長反応用プライマーは、2種以上の標的塩基配列を検出するために異なる塩基配列及び塩基長を有するプライマーを2種以上含み、
前記蛍光色素を有する一塩基伸長反応用の基質は、異なる蛍光色素を有する2種以上の基質を含み、
前記蛍光強度を測定する際に電気泳動の移動度として隣接する前記一塩基伸長反応の反応物が由来する前記標的塩基配列について、第1の前記標的塩基配列の野生型の一塩基伸長反応によって取り込まれる基質の蛍光色素と、第2の前記標的塩基配列の変異型の一塩基伸長反応によって取り込まれる基質の蛍光色素とが異なるように、前記一塩基伸長反応用プライマー及び前記一塩基伸長反応用の基質の組み合わせが設計される
ことを特徴とする遺伝子分析方法を提供する。
(【0011】以降は省略されています)

この特許をJ-PlatPatで参照する
Flag Counter

関連特許

個人
菊川深蒸し茶わり
1か月前
池田食研株式会社
納豆菌発酵液
1か月前
杏林製薬株式会社
PCR用溶液
4か月前
東レ株式会社
RNAの検出方法
19日前
東洋紡株式会社
酵素の製造方法
1か月前
東レ株式会社
RNA溶液の製造方法
1か月前
豊田合成株式会社
細胞回収具
1か月前
長谷川香料株式会社
抗菌活性評価方法
1か月前
株式会社 資生堂
融解装置
25日前
株式会社日本バイオデータ
品質管理方法
20日前
杏林製薬株式会社
核酸検出用PCR溶液
4か月前
株式会社島津製作所
溶血試薬
3か月前
個人
アルコール飲料の味覚改良方法
28日前
国立大学法人大阪大学
組成物
2か月前
株式会社明治
細菌の検出方法
3か月前
テルモ株式会社
多段培養容器
2か月前
学校法人麻布獣医学園
ブタ心臓組織標本
3か月前
東洋紡株式会社
マウス組換え抗体の生産性向上
1か月前
株式会社シバタ
微生物培養用の交換装置
3か月前
個人
培養システム
3か月前
本田技研工業株式会社
培養装置
2か月前
東ソー株式会社
免疫グロブリン結合性タンパク質
3か月前
株式会社写真化学
菌体観察装置
5日前
株式会社豊田中央研究所
材料評価方法
2か月前
メルス ナムローゼ フェンノートシャップ
CLEC12AxCD3二重特異性抗体及び疾患の治療方法
1か月前
株式会社雷神の風
試料採取装置
14日前
東ソー株式会社
多能性幹細胞由来細胞集団の製造方法
3か月前
サッポロビール株式会社
アルコール飲料
4か月前
イチビキ株式会社
下痢・軟便の予防・軽減素材
3か月前
新東工業株式会社
培養装置
1か月前
長谷川香料株式会社
ビールテイスト飲料用香味改善剤
4か月前
テルモ株式会社
サンプリングキット
2か月前
本田技研工業株式会社
培養システム
2か月前
テルモ株式会社
サンプリングキット
2か月前
本田技研工業株式会社
藻類回収装置
2か月前
ヤマモリ株式会社
γ-アミノ酪酸含有発酵液の製造方法
2か月前
続きを見る