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公開番号2025092316
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-06-19
出願番号2023220084
出願日2023-12-08
発明の名称水酸化アルミニウムを含む短繊維の製造方法
出願人個人
代理人
主分類D01F 9/08 20060101AFI20250612BHJP(天然または人造の糸または繊維;紡績)
要約【課題】塩化アルミニウム6水和物の加水分解で生成する水酸化アルミニウムの重合体[Al2(OH)6]mを自己組織化させることで、太さが精々0.1ミクロンメートル、アスペクト比は100以上の水酸化アルミニウムを含む短繊維を供給可能とする。
【解決手段】自己組織化して成長するオリゴペプチドの表面に水酸化アルミニウムの重合体[Al2(OH)6]mを順次析出させて、水酸化アルミニウムを含む短繊維を製造する。均一な太さの短繊維を得るために、当該自己組織化は固体表面上で開始させる。当該固体表面はFedors法で計算される25℃での溶解度パラメータが20(J・cm-3)0.5以上の水酸基を含む親水性の高分子とすることが好ましい。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
自己組織化して成長する羽毛ケラチン由来のオリゴペプチドの表面に、水酸化アルミニウムの重合体[Al

(OH)



を順次析出させて、太さが精々0.1ミクロンメートル、アスペクト比は100以上の水酸化アルミニウムを含む短繊維を製造する方法、及び、当該処理方法によって作られた水酸化アルミニウムを含む短繊維。
続きを表示(約 240 文字)【請求項2】
請求項1に記載の方法によって製造された当該短繊維が表面に固定されている高分子。
【請求項3】
請求項2に記載の当該高分子はFedors法で計算される25℃での溶解度パラメータが20(J・cm
-3

0.5
以上の水酸基を含む親水性の高分子であること。
【請求項4】
請求項2に記載の当該高分子がセルロース、ヘミセルロース、デンプン、カードラン、パラミロン、グルコマンナンのいずれかであること。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、水酸化アルミニウムを含む高アスペクト比のファイバー状の生成物の形成を、金属元素を含んだ有機金属化合物の液体に有機助剤を添加して粘性を最適化して紡糸することで可能とするのではなく、セルロース等の親水性高分子に必要な原料を液相で付与した後、熱処理することで極めて簡便に当該高分子表面に形成可能なことを発見したことに関する。
続きを表示(約 4,600 文字)【背景技術】
【0002】
水酸化アルミニウムを含む繊維はアルミナ繊維の製造原料(前駆体)として利用可能であるが、一般的なアルミナ繊維の前駆体の製法は、アルミニウム塩類の溶液等に有機重合体を加えて増粘し、これを機械的に繊維化して行われている(非特許文献1)。特許文献1では、有機金属化合物の液体にPVA(ポリビニルアルコール)を添加して紡糸を行っている。特許文献1で示されるように、通常の紡糸法で使用されるノズルの直径は0.1-0.5mmで、ノズル数は数百ホールであるため、安定な紡糸を行うためには、原料のクリーン化だけでなく、紡糸装置の清掃管理が極めて重要となり多くの労力を要する。さらに、太さがナノメートルスケールのアルミナ繊維の製造のための前駆体の供給は、従来の紡糸装置では達成できない。
【0003】
非特許文献2では、特殊な界面活性剤を用いて液胞を形成し、液胞内部において水酸化アルミニウムを生成させた後、液胞を破壊して、大きさ数ナノメートルの水酸化アルミニウムの微粒子を製造することに成功しているが、液胞の形状が球状のため、水酸化アルミニウムを含む高アスペクト比の短繊維を供給出来ない。
特許文献2では、塩化アルミニウム6水和物の加水分解で生成する水酸化アルミニウムの重合体[Al

(OH)



を種々の繊維表面に析出させることで、繊維表面のタンパクに対する水素結合性またはキレート錯体形成能を高め、結果、タンパク加水分解物で繊維を被覆することに成功している。ただし、この方法で析出する水酸化アルミニウムの重合体[Al

(OH)



の重合度mは、精々10程度であるため、繊維表面に析出した水酸化アルミニウム重合体を短繊維として扱うことは出来ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
寺田 浩之,特願2008―129409,アルミナ繊維の製造方法,繊維化装置,ブランケット及びブロック.
河原 豊,特願2022―147435,タンパク被覆加工糸.
【非特許文献】
【】
土屋通世,秋元久雄,軽金属,37巻,11号,762-765頁(1987),アルミナ繊維について.
Iskandar I.Yaacob,Suhas Bhandarkar,Arijit Bose,Journal of Materials Research,8巻,3号,573-577頁(1993),Synthesis of aluminum hydroxide nanoparticles in spontaneously generated vesicles.
河原豊,中島茂,繊維学会誌,48巻,12号,696-698(1992),絹糸の酵素精練における基質の影響.
河原豊,塩谷正俊,鞠谷雄士,高久明,繊維学会誌,51巻,1号,1-8(1995),タンニン定着処理による絹糸の構造の変化.
Yutaka Kawahara, Makoto Ikegami, Atsushi Nakayama, Yuichi Tsuda, Seiji Kenjo, Masaki Tsuji,繊維学会誌,65巻,11号,319-323(2009),Morphological studies on assembling behavior of oligopeptides obtained by dissolution of feather keratin with alkali.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水酸化アルミニウムを含む短繊維の製造において、有機金属化合物の液体に有機助剤を添加して粘性を最適化して紡糸することで生産可能とするのではなく、塩化アルミニウム6水和物の加水分解で生成する水酸化アルミニウムの重合体[Al

(OH)



を積極的に自己組織化させることで水酸化アルミニウムを含む短繊維の成形を可能とする。また、このとき成形される当該短繊維の太さは精々0.1ミクロンメートルとし、アスペクト比が100以上の短繊維を供給可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
水酸化アルミニウムの重合体[Al

(OH)



を積極的に自己組織化させるためには、当該重合体と相互作用して安定な表面を形成する補助材(テンプレート)が必要となる。非特許文献3では、塩化アルミニウムとセリシンタンパクの相互作用が示されている。非特許文献4では、アルミニウムイオンとフィブロインタンパクのチロシン側鎖との相互作用が示されている。これらのことから当該補助材には、セリンやチロシンを含むタンパクが好適と考えられる。一方、水酸化アルミニウムの重合体[Al

(OH)



は、塩化アルミニウム6水和物の加水分解で生成するため、テンプレート材料は水溶性のタンパクである必要がある。例えば、非特許文献5においては、羽毛由来の水溶性オリゴペプチドの自己組織化について報告しているが、そこで示されているタンパク加水分解物は、高い水溶性を示し、セリンやチロシンも含まれているため、好適なテンプレート材料といえる。つまり、自己組織化して成長するオリゴペプチドの表面に水酸化アルミニウムの重合体[Al

(OH)



が順次析出して行けば、オリゴペプチドの自己組織化とともに水酸化アルミニウムを含む繊維が形成されてゆくことになる。
【0007】
均一な太さの水酸化アルミニウムを含む繊維の形成のためには、オリゴペプチドの自己組織化によって順次形成される繊維同士の接合を回避する必要がある。つまり、相互に空間を取りながらオリゴペプチドの自己組織化を行う必要がある。したがって、流動場ではなく、オリゴペプチドの自己組織化は適当な固体表面上で開始される必要がある。そして、この様な固体表面とタンパクとの相互作用については、溶解度パラメータから考えて、相互に多少離れた値であった方が固体表面へのタンパクの殺到(被膜の形成)を避けるために重要であると考えられる。
Fedors法で羽毛ケラチンの25℃での溶解度パラメータを計算すると14.1(J・cm
-3

0.5
であった。当該固体表面はこの値から離れたもので検討する必要があるが、低めにとると疎水性が強まるため、さらに親水性が高く溶解度パラメータの大きな素材で検討することとした。セルロースの25℃での溶解度パラメータはFedors法で計算すると24.1(J・cm
-3

0.5
となるため、固体表面としてセルロースを用いることとした。セルロースと同様にグルコース分子がグリコシド結合した骨格を有する、例えば、ヘミセルロース、デンプン、カードラン、パラミロン、グルコマンナン、等でも同様の効果が期待できる。なお、塩化アルミニウム6水和物の加水分解では塩酸が生成し、グリコシド結合を加水分解するため、塩酸の中和処理が必須である。また、非特許文献2では水酸化ナトリウムの添加が水酸化アルミニウムの生成に好適であることが示されている。ただし、水酸化ナトリウムはオリゴペプチドを強く変性させる恐れがあるため、強塩基性の炭酸塩のうち、炭酸ナトリウムを用いることとした。なお、炭酸カリウムでも同様の効果が期待できる。
【0008】
均一な太さの水酸化アルミニウムを含む短繊維の形成のためには、反応環境の制御が重要である。一般にオリゴペプチドの自己組織化を促進するためには、水分の蒸発を伴う環境(乾燥)が好ましい。したがって、液相から気相に変化する環境がオリゴペプチドの自己組織化を促進して均一な太さの水酸化アルミニウムを含む短繊維の形成に適当であると判断した。鋭意検討した結果、2段階の工程からなるプロセスを発案し、本発明に至った。
第一段階では、基材となる高分子表面に高アスペクト比の水酸化アルミニウムを含むファイバー状の生成物の形成に必要な原料(オリゴペプチド、塩化アルミニウム6水和物、強塩基性の炭酸塩)を液相で供給する。
第二段階では、第一段階で処理を施された高分子を加熱処理する。処理温度は高分子あるいはオリゴペプチドの熱分解が開始する温度以下で行うことが望ましい。鋭意検討した結果、基材にセルロースを用いた場合では80℃~160℃の範囲とすることが最も望ましいことが分かった。
【発明の効果】
【0009】
当該発明によって製造される水酸化アルミニウムを含む短繊維は極めて細く(太さ0.1ミクロンメートル程度)、長さが10ミクロンメートル以上に達し、アスペクト比を100以上に高めることが可能である。水酸化アルミニウムを含むため、焼成すれば極細のアルミナ繊維の提供が可能となる。一方、当該短繊維はセルロース等の表面に固定された状態の複合体として生産されるため、移送が極めて容易で、必要に応じて物理的にセルロース表面から当該短繊維を分離して使用可能である。また、セルロース繊維を強化材とする複合材の開発において、当該発明の処理をセルロース表面に施すことで界面接着特性の改善が期待できる。さらに、当該短繊維が固定された不織布はフィルター機能が高められる。水酸化アルミニウムは、無機難燃剤として、ハロゲンフリー、低煙、無毒、等の特性を有しているため、可燃性のセルロースに本発明の処理を行えば、難燃性が要求される領域でのセルロース製品の利用拡大が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
第二段階の熱処理温度を130℃に設定して、高アスペクト比の水酸化アルミニウムを含むファイバー状の生成物を形成させたときのセルロース不織布表面の走査型電子顕微鏡写真(実施例1)。
第二段階の熱処理温度を140℃に設定して、セルロース不織布表面に水酸化アルミニウムを含むファイバー状の生成物を形成させたのち、透過法で当該不織布の広角X線回折を測定して得られた回折強度曲線。
第二段階の熱処理温度を100℃に設定して、セルロース不織布表面に水酸化アルミニウムを含むファイバー状の生成物を形成させたのち、全反射測定法(ATR法)によって当該不織布を測定して得られた赤外吸収スペクトル。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
(【0011】以降は省略されています)

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