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公開番号2025170374
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-11-18
出願番号2025141166,2021039308
出願日2025-08-27,2021-03-11
発明の名称細胞構造体及び細胞構造体の製造方法
出願人国立大学法人大阪大学,TOPPANホールディングス株式会社,京都府公立大学法人
代理人個人,個人,個人,個人
主分類C12Q 1/02 20060101AFI20251111BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】細胞間に血管網を有する細胞構造体及び細胞間に血管網を有する細胞構造体の製造方法を提供すること。
【解決手段】断片化された細胞外マトリックス成分及び細胞を含み、細胞間に血管網を有する細胞構造体であって、上記細胞が、少なくとも脂肪細胞及び血管内皮細胞を含む、細胞構造体。
【選択図】なし


特許請求の範囲【請求項1】
細胞構造体を用いた脂肪組織の代謝を阻害又は促進する薬剤の効果の評価方法であって、
前記細胞構造体が、断片化されたコラーゲン及び細胞を含み、
細胞間に血管網を有する細胞構造体であり、前記細胞が、少なくとも脂肪細胞及び血管内皮細胞を含み、
断片化されたコラーゲンが、平均長が5μm以上30μm以下である解繊コラーゲン成分を含む、方法。
続きを表示(約 1,100 文字)【請求項2】
解繊コラーゲン成分の平均長が、6.6μm~23μmである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
脂肪組織の代謝を阻害又は促進する薬剤を細胞構造体に投与する投与工程と、
前記薬剤を投与した細胞構造体における代謝の変化により、薬剤の効果を評価する評価工程と
を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記評価工程が、
グルコース及び/若しくは脂肪酸の取り込みの変化、並びに/又は
取り込まれたグルコース及び/若しくは脂肪酸の放出の変化
を指標として評価することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
細胞構造体を用いた脂肪組織の代謝を阻害又は促進する薬剤のスクリーニング方法であって、
前記細胞構造体が、断片化されたコラーゲン及び細胞を含み、
細胞間に血管網を有する細胞構造体であり、前記細胞が、少なくとも脂肪細胞及び血管内皮細胞を含み、
断片化されたコラーゲンが、平均長が5μm以上30μm以下である解繊コラーゲン成分を含む、
方法。
【請求項6】
解繊コラーゲン成分の平均長が、6.6μm~23μmである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
薬剤を投与した細胞構造体における代謝を測定する工程と、
薬剤を投与した細胞構造体における代謝を、薬剤を投与しなかった細胞構造体における代謝と比較し、薬剤を投与した細胞構造体における代謝が低い場合に、前記薬剤を脂肪組織の代謝を阻害する薬剤の候補物質として選択する工程と、を含むか、又は、
薬剤を投与した細胞構造体における代謝を測定する工程と、
薬剤を投与した細胞構造体における代謝を、薬剤を投与しなかった細胞構造体における代謝と比較し、薬剤を投与した細胞構造体における代謝が高い場合に、前記薬剤を脂肪組織の代謝を促進する薬剤の候補物質として選択する工程と、を含む、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
細胞構造体における代謝の比較が、グルコース及び/若しくは脂肪酸の取り込み、並びに/又は取り込まれたグルコース及び/若しくは脂肪酸の放出を指標として行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞構造体が、支持体と接着していない状態で塊状に集合した細胞構造体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
略球体状である、請求項9に記載の方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞構造体及び細胞構造体の製造方法、特に、細胞間に血管網を有する細胞構造体及び細胞間に血管網を有する細胞構造体の製造方法に関する。
続きを表示(約 5,300 文字)【背景技術】
【0002】
人工的に生体組織を模した構造体を作製する手法として、例えば、コラーゲンを含む被膜でコートされた細胞を三次元に配置して、三次元組織体を形成することを含む、三次元組織体を製造する方法(特許文献1)、細胞をカチオン性物質および細胞外マトリックス成分と混合して混合物を得て、得られた混合物から細胞を集めて、基材上に細胞集合体を形成することを含む、立体的細胞組織の製造方法(特許文献2)等が知られている。また、本発明者らは、細胞と断片化された外因性コラーゲンを接触させることで、比較的少ない細胞数で、厚さが1mm以上である、サイズが大きい三次元組織体を製造する方法(特許文献3)を提案している。これらのような三次元組織体は、実験動物の代替品、移植材料等としての利用が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
国際公開第2015/072164号
国際公開第2017/146124号
国際公開第2018/143286号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の三次元組織体の製造方法によれば、厚みのある三次元組織体を作製することができる。しかしながら、生体組織のように血管網が細胞間に形成されている脂肪組織を作製する方法については知られていなかった。
【0005】
そこで、本発明は、細胞間に血管網を有する細胞構造体及び細胞間に血管網を有する細胞構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、例えば以下の各発明に関する。
〔1〕 断片化された細胞外マトリックス成分及び細胞を含み、
細胞間に血管網を有する細胞構造体であって、
上記細胞が、少なくとも脂肪細胞及び血管内皮細胞を含む、細胞構造体。
〔2〕 上記血管網が、上記脂肪細胞間に形成されている〔1〕に記載の細胞構造体。
〔3〕 上記脂肪細胞が、成熟脂肪細胞を含む、〔1〕又は〔2〕に記載の細胞構造体。
〔4〕 上記断片化された細胞外マトリックス成分の平均長が、100nm以上400μm以下である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の細胞構造体。
〔5〕 細胞構造体における細胞外マトリックス成分含有率が、上記細胞構造体の乾燥重量を基準として0.01~90質量%である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の細胞構造体。
〔6〕 上記断片化された細胞外マトリックス成分が、コラーゲンを含む、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の細胞構造体。
〔7〕 フィブリンをさらに含む、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の細胞構造体。
〔8〕 移植用である、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の細胞構造体。
〔9〕 断片化された細胞外マトリックス成分と細胞とを接触させる接触工程であって、細胞が、(i)少なくとも脂肪細胞、幹細胞及び血管内皮細胞を含むか、又は(ii)少なくとも脂肪幹細胞及び血管内皮細胞を含む工程と、
断片化された細胞外マトリックスが接触した細胞を培養する培養工程と
を含む、細胞間に血管網を有する細胞構造体の製造方法。
〔10〕 上記細胞が、脂肪細胞、脂肪幹細胞及び血管内皮細胞を含む、〔9〕に記載の方法。
〔11〕 上記脂肪細胞が、成熟脂肪細胞を含む、〔9〕又は〔10〕に記載の方法。
〔12〕 上記接触工程における上記断片化された細胞外マトリックス成分の量が、1.0×10

cellsの細胞に対して、0.1~100mgである、〔9〕~〔11〕のいずれかに記載の方法。
〔13〕 上記接触工程おける幹細胞と血管内皮細胞の細胞数の比が、100/1~1/100である、〔9〕~〔12〕のいずれかに記載の方法。
〔14〕 上記断片化された細胞外マトリックス成分が、コラーゲンを含む、〔9〕~〔13〕のいずれかに記載の方法。
〔15〕 上記接触工程、又は上記接触工程後かつ培養工程前に、フィブリノゲンを添加することをさらに含む、〔9〕~〔14〕のいずれかに記載の方法。
〔16〕 〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の細胞構造体を移植物として有する、非ヒトモデル動物。
〔17〕 〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の細胞構造体を非ヒト動物に移植することを含む、非ヒトモデル動物の製造方法。
〔18〕 〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の細胞構造体を動物に移植することを含む、血管構造を有する細胞構造体の移植方法。
〔19〕 断片化された細胞外マトリックス成分及び細胞を含み、
細胞間に血管網を有し、
支持体と接着していない状態で塊状に集合した細胞構造体であって、
上記細胞が、少なくとも脂肪細胞及び血管内皮細胞を含む、細胞構造体。
〔20〕 略球体状である、〔19〕に記載の細胞構造体。
〔21〕 断片化された細胞外マトリックス成分と細胞とを接触させる接触工程であって、細胞が、(i)少なくとも脂肪細胞、幹細胞及び血管内皮細胞を含むか、又は(ii)少なくとも脂肪幹細胞及び血管内皮細胞を含む工程と、
断片化された細胞外マトリックスが接触した細胞を培養する培養工程と
を含み、
上記培養工程が、上記断片化された細胞外マトリックスが接触した細胞を支持体に接着しない状態で培養することを含む、細胞間に血管網を有する細胞構造体の製造方法。
〔22〕 上記培養工程が、支持体から上記断片化された細胞外マトリックスが接触した細胞を引き離すことを含む、〔21〕に記載の方法。
〔23〕 〔19〕又は〔20〕に記載の細胞構造体を複数含み、上記血管網が、複数の細胞構造体間で接続している、細胞組織。
〔24〕 複数の〔19〕又は〔20〕に記載の細胞構造体を浮遊培養することを含む、細胞組織の製造方法。
〔25〕 複数の〔19〕又は〔20〕に記載の細胞構造体を非ヒト動物に移植することを含む、非ヒトモデル動物の製造方法。
〔26〕 細胞構造体を非ヒト動物に移植した後、30日以上生育することを含む、〔25〕に記載の方法。
〔27〕 細胞構造体を非ヒト動物に移植した後、90日以上生育することを含む、〔26〕に記載の方法。
〔28〕 〔1〕~〔8〕、〔19〕及び〔20〕のいずれかに記載の細胞構造体を用いた脂肪組織の代謝を阻害又は促進する薬剤の効果の評価方法。
〔29〕 脂肪組織の代謝を阻害又は促進する薬剤を細胞構造体に投与する投与工程と、
上記薬剤を投与した細胞構造体における代謝の変化により、薬剤の効果を評価する評価工程と
を含む、〔28〕に記載の方法。
〔30〕 上記評価工程が、
グルコース及び/若しくは脂肪酸の取り込みの変化、並びに/又は
取り込まれたグルコース及び/若しくは脂肪酸の放出の変化
を指標として評価することを含む、〔29〕に記載の方法。
〔31〕 〔1〕~〔8〕、〔19〕及び〔20〕のいずれかに記載の細胞構造体を用いた脂肪組織の代謝を阻害又は促進する薬剤のスクリーニング方法。
〔32〕 薬剤を投与した細胞構造体における代謝を測定する工程と、
薬剤を投与した細胞構造体における代謝を、薬剤を投与しなかった細胞構造体における代謝と比較し、薬剤を投与した細胞構造体における代謝が低い場合に、上記薬剤を脂肪組織の代謝を阻害する薬剤の候補物質として選択する工程と、を含むか、又は、
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、細胞間に血管網を有する細胞構造体を簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
ペリリピン染色及びCD31染色による、(a)生体組織及び(b)試験例2の細胞構造体の観察結果を示す写真である。
試験例2の細胞構造体における血管の分岐の数を生体組織における血管の分岐の数と比較したグラフである。
ペリリピン染色及びCD31染色による、試験例3の細胞構造体の観察結果を示す写真である。
CD31染色による、試験例4の細胞構造体の観察結果を示す写真である。
CD31染色による、試験例5の細胞構造体の観察結果を示す写真である。
ペリリピン染色及びCD31染色による、試験例6の細胞構造体の観察結果を示す写真である。
試験例7の概要を示す図である。左の液滴中の円は成熟脂肪細胞を、白い菱形はADSCを、グレーの短棒はHUVECをそれぞれ示す。
ナイルレッド染色及びCD31染色による、試験例7の血管網を有する細胞ボールの蛍光観察結果を示す写真である。(b)は、(a)の細胞ボールの一つをさらに拡大したものである。
CD31染色による、血管網を有する細胞ボールの観察結果を示す写真である。
試験例7の方法で作製した細胞ボールについて、7日間培養した後の平均直径(n=12 細胞ボール/量)を示すグラフである。
ナイルレッド染色及びCD31染色による、試験例8の方法で作製した細胞組織の蛍光観察結果を示す写真((a)、(b)は一部拡大写真)及びプレート上の凝集した細胞ボールを明視野で観察した写真である(c)。
ペリリピン染色及びDAPI染色による、試験例9の移植箇所から30日後に採取した組織の蛍光観察結果を示す写真である。A:SFTはヒトの太もも(生体組織)から脂肪吸引により得られた脂肪組織を移植した箇所から採取した組織、C:3DVFTは試験例9の(1)の細胞ボールを移植した箇所から採取した組織をそれぞれ示す。図12の上段は明視野で観察した結果、中央段はペリリピン染色による結果、下段はDAPI染色の結果を示す。
CD31染色及びDAPI染色による、試験例9の移植箇所から90日後に採取した組織の蛍光観察結果を示す写真である。A:SFTはヒトの太もも(生体組織)から脂肪吸引により得られた脂肪組織を移植した箇所から採取した組織、C:3DVFTは試験例9の(1)の細胞ボールを移植した箇所から採取した組織をそれぞれ示す。図13の上段は明視野で観察した結果、中央段はCD31染色による結果、下段はDAPI染色の結果を示す。
インキュベート後10分、30分、60分、120分、150分の時点における細胞構造体の蛍光観察結果を示す写真である。
形成7日目及び14日目の血管内皮細胞を含む細胞構造体(b)及び血管内皮細胞を含まない組織体(a)における60分後の蛍光強度の比較を示す。Col IはコラーゲンI型を用いて作製されたsCMFを使用したことを意味し、Col I+IIIはコラーゲンI型及びIII型の混合物を用いて作製されたsCMFを使用したことを意味する。
血管内皮細胞を含まない組織体をインキュベートしてから20分、45分、70分、90分、135分の時点における蛍光強度の比較を示す。
(a)のグラフは、試験例11における、血管内皮細胞を含まない組織体をインキュベートしてから20分、45分、70分及び90分の時点における蛍光強度(グルコース取り込み量)の比較を示す。(b)のグラフは本試験例12における、血管内皮細胞を含まない組織体をインキュベートしてから5分、30分及び60分の時点における蛍光強度(脂肪酸取り込み量)の比較を示す。
血管内皮細胞を含む細胞構造体(b)及び血管内皮細胞を含まない組織体(a)をそれぞれインキュベートしてから0分、5分、30分、60分の時点における蛍光強度の比較を示す。
2度目のインキュベート後のグルコースの放出量(a)、及び脂肪酸の放出量(b)の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
[細胞構造体]
本実施形態に係る細胞構造体は、断片化された細胞外マトリックス成分と、少なくとも脂肪細胞及び血管内皮細胞を含む細胞とを含み、細胞間に血管網を有する。
(【0011】以降は省略されています)

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