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公開番号2025166366
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-11-06
出願番号2024070341
出願日2024-04-24
発明の名称浮体式洋上風力発電施設の施工方法
出願人東亜建設工業株式会社,株式会社タダノインフラソリューションズ
代理人清流国際弁理士法人,個人,個人,清流国際弁理士法人
主分類F03D 13/25 20160101AFI20251029BHJP(液体用機械または機関;風力原動機,ばね原動機,重力原動機;他類に属さない機械動力または反動推進力を発生するもの)
要約【課題】岸壁に浮体式洋上風力発電施設の搭載拠点を整備しなくとも、設置対象海域に係留した浮体の喫水が20m以下の浮体式洋上風力発電施設を効率的に施工できる方法を提供する。
【解決手段】水深が8m以上20m以下の海域に水上構造物10を仮設し、水上構造物10に設けたクレーン設置領域Caにリングリフトクレーン20を設置し、水上構造物10に設けた仮置領域Taに風力発電装置3の組立部品を仮置きしておき、水上構造物10に隣接した海域に複数の作業エリアAを設けて、リングリフトクレーン20を使用して、作業エリアAの海底SBに着底させている浮体2に対して、仮置領域Taに仮置きされている組立部品を設置して、浮体2上に風力発電装置3が構築された組立体9を組立てる組立作業を行い、それに並行して、組立作業を先行して終えた別の作業エリアAでは組立体9に対して付加作業を行う。
【選択図】図12
特許請求の範囲【請求項1】
設置対象海域において係留される浮体と、前記浮体上に立設された風力発電装置とを有して、前記浮体を前記設置対象海域に係留した状態で、水面から前記浮体の下端までの喫水が20m以下となる浮体式洋上風力発電施設の施工方法であって、
水深が8m以上20m以下の海域に仮設の水上構造物を構築して、
前記水上構造物に、リングリフトクレーンを構成する平面視で環状の基礎架台とその基礎架台上に配置されるクレーン本体とを設置したクレーン設置領域と、前記風力発電装置を構成する組立部品を仮置きする仮置領域とを設けて、前記水上構造物に隣接した海域には前記浮体を着底させる複数の作業エリアを設け、
前記仮置領域に複数組の前記組立部品を仮置きしておき、
前記リングリフトクレーンを使用して、前記作業エリアの海底に着底させている前記浮体に対して、前記仮置領域に仮置きされている一組の前記組立部品を設置して、前記浮体上に前記風力発電装置が構築された組立体を組立てる組立作業を行い、
前記組立作業を終えた前記作業エリアでは前記組立体に対して調整作業を含む付加作業を行い、前記組立作業を終えた前記作業エリアとは別の前記作業エリアでは、その作業エリアの海底に着底させている前記浮体に対して前記リングリフトクレーンを使用して前記組立作業を行い、
前記付加作業を終えた前記組立体は順次、前記設置対象海域まで海上輸送し、前記設置対象海域においてその前記組立体を係留することを特徴とする浮体式洋上風力発電施設の施工方法。
続きを表示(約 710 文字)【請求項2】
前記水上構造物として、桟橋または浮体式構造物を構築する請求項1に記載の浮体式洋上風力発電施設の施工方法。
【請求項3】
前記水上構造物が平面視で後端側の幅よりも前端側の幅が狭い先細りした形状であり、前記水上構造物の前記前端側に前記クレーン設置領域を設け、前記水上構造物の前記後端側に前記仮置領域を設ける請求項1または2に記載の浮体式洋上風力発電施設の施工方法。
【請求項4】
前記クレーン設置領域の前方の海域に2箇所の前記作業エリアを設け、前記クレーン設置領域の両側方の海域にそれぞれ1箇所の前記作業エリアを設ける請求項3に記載の浮体式洋上風力発電施設の施工方法。
【請求項5】
前記水上構造物を構築する作業では、前記クレーン設置領域を構築する海域に平面視で円環状のケーソンを配設して環状の基礎構造を構築し、その基礎構造の上に前記基礎架台を設置する請求項1または2に記載の浮体式洋上風力発電施設の施工方法。
【請求項6】
前記水上構造物を構築する作業では、前記クレーン設置領域を構築する海域に複数の鋼管矢板を平面視で環状に配設して環状の基礎構造を構築し、その基礎構造の上に前記基礎架台を設置する請求項1または2に記載の浮体式洋上風力発電施設の施工方法。
【請求項7】
前記リングリフトクレーンにより前記別の作業エリアで前記浮体に対して前記組立作業を行っているときに、それに並行して、前記組立作業を先行して終えた前記作業エリアにおいて前記組立体に対する前記付加作業を行う請求項1または2に記載の浮体式洋上風力発電施設の施工方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、浮体式洋上風力発電施設の施工方法に関し、さらに詳しくは、岸壁に浮体式洋上風力発電施設の搭載拠点(基地港湾)を整備しなくとも、設置対象海域に係留した状態での浮体の喫水が20m以下の浮体式洋上風力発電施設を効率的に施工できる浮体式洋上風力発電施設の施工方法に関するものである。
続きを表示(約 3,400 文字)【背景技術】
【0002】
海域に係留される浮体の上に風力発電装置を立設した構造の浮体式洋上風力発電施設は、浮体の構造毎に、スパー型、セミサブ型、TLP(テンションレグプラットフォーム)型、バージ(鉄、コンクリートまたはハイブリッド製)型に分類されている。例えば、スパー型の浮体式洋上風力発電施設は、高さが50m~100m程度の柱形状のスパー型浮体の大部分を潜水させた状態とし、その1本の巨大なスパー型浮体の上に風力発電装置を立設している(例えば、特許文献1参照)。設置対象海域に係留した状態でのスパー型の浮体の喫水は50m~100m程度である。一方で、スパー型以外のセミサブ型、TLP型、バージ型の浮体式洋上風力発電施設では、浮体を半潜水状態で海上に浮かべた状態とし、設置対象海域に係留した状態でのセミサブ型の浮体、TLP型の浮体、バージ型の浮体の喫水はそれぞれ、20m以下である。具体的には、例えば、セミサブ型の浮体式洋上風力発電施設では、高さが20m~40m程度の複数のコラムとコラムどうしを連結する連結体(所謂、フーチング部材等)とを有するセミサブ型の浮体を半潜水状態で海上に浮かべた状態とし、浮体の1ヶ所のコラム上に風力発電装置を立設している。
【0003】
一般的なスパー型の浮体式洋上風力発電装置の施工方法では、岸壁などの陸上においてスパー型の浮体と風力発電装置を構成するタワーとを横に倒した状態で接続し、スパー型の浮体とタワーの一体物をそのまま横に倒した状態で半潜水台船に積み込み、水深が100m以上の海域まで運搬する。そして、水深が100m以上の海域でスパー型の浮体とタワーの一体物を進水させ、スパー型の浮体のバラスト水の調整を行うことで、横に倒していた一体物を起こして立てた状態にする。その後、立てた状態の一体物を設置対象海域まで曳航し、水深が100m以上の設置対象海域において一体物を係留する。次いで、固定式起重機船を使用してタワーの上部にナセルハブを設置して、ナセルハブにブレードを設置することで、スパー型の浮体式洋上風力発電装置の立設が完了する。
【0004】
特許文献1に記載の発明では、タワーの中途に屈曲部を設けている点と、陸上でタワーに風車(ナセルハブおよびブレード)を設置する点で一般的な施工方法とは異なるが、特許文献1に記載の発明においても、スパー型の浮体(基礎)と風力発電装置のタワーの一体物を陸上で組み立てている。
【0005】
浮体式洋上風力発電施設を構成する浮体と風力発電装置はサイズが非常に大きく重量も非常に大きい。それ故、浮体とタワーの一体物を、陸上で長距離輸送することは困難である。そのため、一般的な施工方法や特許文献1に記載の発明のように、浮体とタワーの組立体(一体物)を陸上で組立てる場合には、岸壁などの陸地に、浮体と風力発電装置の組立部品を搭載するスペースを確保することや、組立体の組立作業を行うスペースを確保して組立体を直接海上に進水させる必要がある。しかし、一般的な岸壁では多くの場合、地盤が組立体の荷重に耐え得る強度を有していない。そのため、浮体式洋上風力発電施設の搭載拠点を岸壁に整備するには、岸壁やエプロンに対して地耐力を向上させる地盤改良工事などの大規模な工事が必要となり、比較的多くのコストや労力や時間を要するという問題がある。特に、陸上で複数の組立体を組立てる場合には、岸壁に浮体式洋上風力発電施設の搭載拠点としての広大なスペースを確保することが困難な場合もある。
【0006】
また、スパー型の浮体式洋上風力発電施設の一般的な施工方法では、水深が100m以上の海域で横に倒していたスパー型の浮体とタワーの一体物を起こして立てた状態にする作業が必要となる。特許文献1に記載の構築方法においても、ヒンジ開閉手段によってタワーのヒンジから後方の部分とスパー型の浮体(基礎)を横倒しの状態から直立状態に変化させる必要がある。それ故、従来提案されている施工方法では、海上において高度で煩雑な作業が必要になるという問題もある。このように、従来提案されている施工方法には様々な問題があり、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
特開2012-202250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、岸壁に浮体式洋上風力発電施設の搭載拠点を整備しなくとも、設置対象海域に係留した状態での浮体の喫水が20m以下の浮体式洋上風力発電施設を効率的に施工できる浮体式洋上風力発電施設の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明の浮体式洋上風力発電施設の施工方法は、設置対象海域において係留される浮体と、前記浮体上に立設された風力発電装置とを有して、前記浮体を前記設置対象海域に係留した状態で、水面から前記浮体の下端までの喫水が20m以下となる浮体式洋上風力発電施設の施工方法であって、水深が8m以上20m以下の海域に仮設の水上構造物を構築して、前記水上構造物に、リングリフトクレーンを構成する平面視で環状の基礎架台とその基礎架台上に配置されるクレーン本体とを設置したクレーン設置領域と、前記風力発電装置を構成する組立部品を仮置きする仮置領域とを設けて、前記水上構造物に隣接した海域には前記浮体を着底させる複数の作業エリアを設け、前記仮置領域に複数組の前記組立部品を仮置きしておき、前記リングリフトクレーンを使用して、前記作業エリアの海底に着底させている前記浮体に対して、前記仮置領域に仮置きされている一組の前記組立部品を設置して、前記浮体上に前記風力発電装置が構築された組立体を組立てる組立作業を行い、前記組立作業を終えた前記作業エリアでは前記組立体に対して調整作業を含む付加作業を行い、前記組立作業を終えた前記作業エリアとは別の前記作業エリアでは、その作業エリアの海底に着底させている前記浮体に対して前記リングリフトクレーンを使用して前記組立作業を行い、前記付加作業を終えた前記組立体は順次、前記設置対象海域まで海上輸送し、前記設置対象海域においてその前記組立体を係留することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、水深が8m以上20m以下の比較的浅い海域に仮設の水上構造物を構築することで、水上構造物の構築に要するコストや労力や時間は比較的少なく、水上構造物に隣接した海域に設けた作業エリアに浮体を容易に着底させることが可能になる。水上構造物に設けたクレーン設置領域にリングリフトクレーンを設置し、仮置領域に風力発電装置の複数組の組立部品を仮置きすることで、岸壁に大型のクレーンを設置する領域や風力発電装置の組立部品をまとめて仮置きする領域を設けた広大な浮体式洋上風力発電施設の搭載拠点を整備する必要がなくなる。さらに、水上構造物に設置した波浪の影響を受けないリングリフトクレーンを使用して、水上構造物上に仮置きされている風力発電装置の組立部品を、作業エリアの海底に着底している浮体に設置することで、組立体の組立作業を非常に安定した状態で効率的に行うことができる。組立作業を終えた作業エリアでは組立体に対して調整作業を含む付加作業を行い、組立作業を終えた作業エリアとは別の作業エリアでは、その作業エリアの海底に着底させている浮体に対してリングリフトクレーンを使用して組立作業を行うことで、組立作業と付加作業をそれぞれ別々の場所で並行して行うことが可能になる。付加作業を終えた組立体は設置対象海域まで海上輸送し、設置対象海域において組立体を係留するだけで浮体式洋上風力発電施設の施工が完了する。それ故、岸壁に広大な浮体式洋上風力発電施設の搭載拠点を整備しなくとも、設置対象海域に係留した状態での浮体の喫水が20m以下の浮体式洋上風力発電施設(スパー型を除くその他の型の浮体式洋上風力発電施設)を効率的に施工できる。
【図面の簡単な説明】
(【0011】以降は省略されています)

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