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公開番号2025166332
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-11-06
出願番号2024070272
出願日2024-04-24
発明の名称血液中の赤血球に結合したエンドトキシン測定のための試料作製法
出願人個人
代理人
主分類G01N 33/579 20060101AFI20251029BHJP(測定;試験)
要約【課題】敗血症は死亡率の高い疾患である。そのうちグラム陰性菌によるものは特に予後不良であり早期に診断し適切な治療を施す必要がある。敗血症を迅速に診断する手法としてエンドトキシンの検出が重要であるが、血液を対象としたエンドトキシンの検出法にはいまだ課題があるといっていい。
【解決手段】本発明では血液試料のうち特にこれまで特に留意されてこなかった赤血球をエンドトキシンの測定対象とし、それによって血液中全エンドトキシンの測定法を確立して、グラム陰性菌敗血症の診断に寄与する。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
ヒト赤血球を対象として用いるエンドトキシン測定用試料の作成法。
続きを表示(約 500 文字)【請求項2】
抗凝固剤を用いて採取した血液1容に対しておよそ20倍容の冷水を加えて細胞を溶解し、遠心分離機で約1500xg、10分間遠心分離し、えられた沈査を水で浮遊させてえる請求項1に記載のエンドトキシン測定の試料とする方法。
【請求項3】
抗凝固剤を用いて採取した血液を遠心分離機で約1500xg、10分間遠心分離し、血漿と沈査に分離し、血漿を吸引除去したのち沈査1容に対しておよそ20倍容の冷水を加えて細胞を溶解し、遠心分離機で約1500xg、10分間遠心分離し、えられた沈査を水で浮遊させてえる請求項1に記載のエンドトキシン測定の試料とする方法。
【請求項4】
抗凝固剤を用いて採取した血液を遠心分離機で約1500xg10分間遠心分離して血漿と沈査に分離し、血漿を吸引除去したのちその沈査を形成している白血球層と赤血球層のうち上層の白血球層を吸引除去して赤血球層1容に対しておよそ20倍の冷水を加えて細胞を溶解し、遠心分離機で約1500xg10分間遠心分離し、えられた沈査を水で浮遊させてえる請求項1に記載のエンドトキシン測定の試料とする方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、グラム陰性菌による菌血症の診断法の一つである血中エンドトキシン定量のための試料作製法に関する。
続きを表示(約 4,200 文字)【背景技術】
【0002】
敗血症はいったん重篤化するとその治療に難渋し、進歩した現代医療でも時に死に至る。現在日本では敗血症患者は年間30万人以上で、入院患者のうち敗血症で5万人以上が死亡すると報告されている(非特許文献1)。敗血症は、感染に対する制御不十分な生体反応に起因する生命に危機を及ぼす臓器障害と定義される(非特許文献2)。そのため感染症の兆候を早期に知ることが重要でそれによって重篤化を阻止する適切な治療を施すことができる。その方法として炎症性サイトカイン、プロカルシトニン検査などが従来からあり、最近ではプレセプシン検査などが開発されている。同時に、血中の細菌の存在を知ることは特に重要とされてきた。従来から直接血中の細菌の存否を検査する培養法があるが、時間を要する欠点があるし、陽性率は望んだものほど高くはない。
【0003】
エンドトキシン(endotoxin:内毒素)は、グラム陰性菌の外膜を構成する成分であり、その化学的本体はLPS (リポポリサッカライド:リポ多糖)である。エンドトキシンはグラム陰性菌感染症に随伴する敗血症、敗血症性ショックや、多臓器不全等の生命を脅かす病態を惹起する重要な細菌由来成分である。血液中のエンドトキシン量の測定はグラム陰性菌感染症の早期診断、治療において重要な情報を提供するとされている。
【0004】
現在、エンドトキシンの測定方法の主流はカブトガニの血球抽出液を用いたリムルステストである。カブトガニの血球抽出液中にはエンドトキシンと特異的に反応する「C因子経路」が存在する。「C因子経路」は、まず、エンドトキシンがC因子と強固に結合してC因子を活性化する。活性化C因子はB因子を活性化し、活性化B因子は前凝固酵素を凝固酵素にする。凝固酵素はコアギュローゲンを凝固蛋白質であるコアギュリンに変える。その結果、ゲル化がおこる。また、カブトガニの血球抽出液中には、C因子経路の他にもβ-D-グルカンによって誘導される「G因子経路」が存在する。真菌の細胞壁成分であるβ-D-グルカンはG因子を活性化し、活性化G因子はエンドトキシンの場合の活性化B因子と同様に前凝固酵素を凝固酵素にし、凝固酵素はコアギュローゲンを凝固蛋白質であるコアギュリンに変える。その結果、ゲル化がおこる。リムルステストは、判定又は測定方法の違いからゲル化転倒法(ゲル化法)、発色合成基質法(比色法)や、コアギュリンができるときに生じる濁度変化をとらえる比濁時間分析法(比濁法)等がある。また、生物発光法も考案された。最近は、エンドトキシンが最初に結合するC因子の遺伝子組み換え体を用いる手法も開発されている(非特許文献1,2)。また、遺伝子組み換えC因子やB因子や前凝固酵素の遺伝子組み換え体をも使用することが可能になってきた。さらにゲル化を電気化学的あるいは水晶発振子や質量変化で捉える方法も可能になってきた(非特許文献1,2,3)。現在本邦ではエンドトキシンに特異的な測定法が開発され、血液中のエンドトキシンを正確に測定することによりグラム陰性菌による敗血症の診断ができるようになり保険適用されている。さらにβ-D-グルカンの特異的な測定もできるようになり、深在性真菌症の迅速診断法として保険適用されている。
【0005】
血液中エンドトキシンをリムルステストで測定するには、血漿などに含まれるリムルステストの干渉因子を除去又は不活化する前処理ステップが必要である。血漿などに含まれるα2-plasmin inhibitor、antithrombin III、α1-antitrypsin等は、リムルステストの抑制因子であり、factor Xa、thrombin、trypsin等はリムルステストの亢進因子であり、血漿の前処理ステップによって不活化される。また、白血球の顆粒由来のエンドトキシン分解酵素(アシロキシアシルヒドロラーゼ)やエンドトキシン結合蛋白(CAP-18やBPI)も血漿中に存在している。リムルステストにおいてエンドトキシン測定を阻害するこれら因子は敗血症患者の血漿中に増加することが報告されている(非特許文献4)。
【0006】
以前に保険適用されていた発色合成基質法では、血漿を対象としてその前処理法として「過塩素酸法」が用いられた。この方法では、血漿に過塩素酸を加えて血漿蛋白質を変性沈殿させ遠心上清のエンドトキシンを測定するものである。しかしエンドトキシンの多くは血漿蛋白に結合しているので、エンドトキシンは蛋白質とともに共沈し、測定値が低値を示すことが指摘され、エンドトキシンを含む蛋白質の沈殿を可溶化して蛋白結合エンドトキシンをも測定できるようにした「新過塩素酸法」が考案された(非特許文献1、2)。
【0007】
現在本邦の保険適用の方法である比濁法では前処理ステップとして希釈加熱法が用いられている。「希釈加熱法」は、血液由来試料に水や緩衝液を加えて希釈した後、加熱によって干渉因子を不活化する方法であり、従来の過塩素酸を用いる方法のように試薬を必要とせず、水などで希釈したのちに加熱する操作で済む利点がある。試料の希釈は加熱による試料の凝固がおこらないようにする操作である。一般に血清や血漿を用いる場合は水で10倍希釈し、70℃、10分間加熱する。本邦で保険適用されている比濁法の前処理ステップでは、Triton X-100を0.02%に加えた水で希釈する(非特許文献1、2,特許文献1参照)。
【0008】
血液中のエンドトキシンはLBP(LPS binding protein:LPS結合蛋白質)と複合体を形成した後に、白血球に含まれる単球や顆粒球上の細胞表面抗原CD14と結合する。続いて、MD-2とTLR4(Toll-like receptor:Toll様受容体のひとつ)に会合する。その結果、エンドトキシン結合の情報が細胞内のシグナル伝達経路を介して核へと伝達され、TNFαやIL-6等の炎症性サイトカイン遺伝子の発現が誘導され、それら炎症性サイトカインが産生される(上記非特許文献1、2参照)。エンドトキシンはTLR4に特異的な結合するほかに、白血球表面の接着分子として知られているCD11/CD18に結合するか、スカベンジャーレセプターなどにも結合する。また、従来からエンドトキシンの疎水性部分と細胞膜の疎水性部位同士の結合も考えられてきた。白血球に結合したエンドトキシンは、速やかに細胞内に取り込まれることが報告されている(非特許文献5)。従って、血液中のエンドトキシンは、血漿中や血清中に存在するばかりでなく、エンドトキシンとして白血球の膜表面に結合した状態、あるいは白血球内に取り込まれた状態でも存在していると推定される。すなわち、血漿中に含まれるエンドトキシン量の測定のみでは血液中のエンドトキシン量を正確に定量しているとは言い難い。感染後、血液を採取するまでに一定時間を経過した場合には、むしろ白血球の膜表面に結合した状態、又は白血球内に取り込まれた状態のエンドトキシン量が優位になっている可能性がある。
すなわちエンドトキシンが白血球の膜表面に結合することでサイトカインの産生が誘導される結果敗血症性ショック等の症状等の病態が惹起されるので、白血球の膜表面に結合した状態のエンドトキシンや白血球内に取り込まれた状態のエンドトキシンの量を考慮しなければ病態との関連性を明確にすることはできない。また、エンドトキシンはグラム陰性菌の表層に存在し、菌を対象としてもエンドトキシンとして測定可能であることはこれまで確認してきた(非特許文献2)。すなわちグラム陰性菌表層のエンドトキシンも遊離したエンドトキシンと同様に白血球に認識されて結合している状態や細胞内に取り込まれていても細胞が破壊されればリムルステストで陽性を示すと考えられる。従って、血液検体の総エンドトキシン量を測定する場合には血漿中のみならず白血球結合状態のものや微生物自体のエンドトキシンも考慮されるべきである。
【0009】
これまで、本発明者らは白血球に結合するか内部に含まれるエンドトキシン(菌体の状態で存在するエンドトキシンも含めて)の測定方法を特許出願した(特許文献1)。この方法により白血球細胞の膜表面に結合したエンドトキシンや白血球内に取り込まれたエンドトキシン測定の意義について注目されるようになった。しかし、この方法では逆に従来の測定対象であった血漿中に含まれるエンドトキシンが除外されることになる。本発明者らは、その後白血球と血漿のエンドトキシンを同時に測定する方法を考案した。この方法では、血漿と白血球を別操作で採取して両者を混合して測定するが、遠心分離操作が必要でありかつ操作が煩雑であるという課題があった(特許文献2)。
【0010】
血液中の赤血球はエンドトキシン定量する際の前処理ステップによって溶血し、ヘモグロビンが比濁法や比色法などでの測定に阻害効果を示すので、赤血球はできるだけ除去する必要がある。血液から赤血球のみを分離するためには遠心分離機が用いられるが、同時にエンドトキシンの測定対象である白血球も沈降してしまう。そこで、発明者らは赤血球を凝集沈殿させて除き白血球に富んだ血漿をえてエンドトキシンの測定に供する方法を考案し特許申請した。最初にヒドロキシエチル澱粉を血液凝集剤(非特許文献6)として用いる方法を(特許文献3)、次に同様に血球凝集作用をもつデキストランを用い氷冷下で白血球に富んだ血漿をえる方法を考案した(特許文献4)。氷冷下で行うのは敗血症患者血液中のエンドトキシン不活化因子が温度依存性にエンドトキシンを不活化されると考えられるためである。なお、以下の記載では白血球に富んだ血漿を、LRPleukocyte-rich plasma(LRP)とした。ヒドロキシエチル澱粉を血液に適当量混ぜて室温に静置するか(特許文献3)やデキストランと血液を混ぜて氷冷下で静置すると(特許文献4)、これらのもつ赤血球凝集作用により、赤血球は沈降し上澄みにLRPをわずか約15ないし30分でえることができる。
(【0011】以降は省略されています)

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