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公開番号
2025164700
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2025-10-30
出願番号
2025038826
出願日
2025-03-11
発明の名称
捕捉抗体及びそれを用いる抗原の検出方法
出願人
花王株式会社
代理人
弁理士法人アルガ特許事務所
主分類
C07K
16/46 20060101AFI20251023BHJP(有機化学)
要約
【課題】単一ドメイン抗体を用いて抗原を高感度で検出可能にするための捕捉抗体、及びそれを用いる抗原の検出方法を提供する。
【解決手段】単一ドメイン抗体を用いた抗原検出方法において用いる捕捉抗体であって、2つ以上の単一ドメイン抗体がスペーサーを介して直列に連結された単一ドメイン抗体の多量体であり、該スペーサーが5~30アミノ酸長のペプチドで、分子動力学シミュレーションにより算出される該ペプチドの両末端間距離のCV値であるペプチド両末端間距離の標準偏差/ペプチド両末端間距離の積算平均値が0.3以下である、捕捉抗体。
【選択図】なし
特許請求の範囲
【請求項1】
単一ドメイン抗体を用いた抗原検出方法において用いる捕捉抗体であって、2つ以上の単一ドメイン抗体がスペーサーを介して直列に連結された単一ドメイン抗体の多量体であり、該スペーサーが5~30アミノ酸長のペプチドで、分子動力学シミュレーションにより算出される該ペプチドの両末端間距離のCV値であるペプチド両末端間距離の標準偏差/ペプチド両末端間距離の積算平均値が0.3以下である、捕捉抗体。
続きを表示(約 980 文字)
【請求項2】
CV値が0.13以下である、請求項1に記載の捕捉抗体。
【請求項3】
分子動力学シミュレーションにより算出される該ペプチドの両末端間距離の積算平均値が10Å以上70Å以下である、請求項1に記載の捕捉抗体。
【請求項4】
分子動力学シミュレーションにより算出される該ペプチドの両末端間距離の積算平均値が20Å以上70Å以下である、請求項1に記載の捕捉抗体。
【請求項5】
前記スペーサーがヘリックス構造をとるペプチドである、請求項1に記載の捕捉抗体。
【請求項6】
ヘリックス構造をとるペプチドが(EAAR)
n
〔nは2~7の整数を示す。〕、(EAAK)
n
〔nは2~7の整数を示す。〕、(EAAAR)
n
〔nは1~6の整数を示す。〕、(EAAAK)
n
〔nは1~6の整数を示す。〕、(EEEERRRR)
n
〔nは1~3の整数を示す。〕、又は(EEEEKKKK)
n
〔nは1~3の整数を示す。〕で示されるアミノ酸配列からなるペプチドである、請求項5に記載の捕捉抗体。
【請求項7】
前記スペーサーが構成アミノ酸中にプロリンを25%以上含有するペプチドである、請求項1に記載の捕捉抗体。
【請求項8】
構成アミノ酸中にプロリンを25%以上含有するペプチドがP
n
〔nは5~30の整数を示す〕;(XP)
m
若しくは(PX)
n
〔m、nは独立して5~15の整数を示し、Xは任意のアミノ酸残基を示す。〕又はその組み合わせ;EPKTPKPQS又はEPKTPKPQSGS、で示されるアミノ酸配列からなるペプチドである、請求項7に記載の捕捉抗体。
【請求項9】
前記スペーサーがGGGGS又はGGGGSEAAAKで示されるアミノ酸配列からなるペプチドである、請求項1に記載の捕捉抗体。
【請求項10】
単一ドメイン抗体の多量体が同一の抗原に対して結合活性を示す1種類以上の単一ドメイン抗体の多量体である、請求項1に記載の捕捉抗体。
(【請求項11】以降は省略されています)
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一ドメイン抗体を含む捕捉抗体及びそれを用いる抗原の検出方法に関する。
続きを表示(約 2,500 文字)
【背景技術】
【0002】
VHH(Variable domain of heavy chain of heavy chain antibody)はラクダ科動物が有する重鎖抗体の可変部ドメインからのみなる単一ドメイン抗体である。その他の単一ドメイン抗体としては、サメが有する重鎖抗体の可変ドメインであるVNAR(Variable domain of new antigen receptor)等が含まれる。また、VHHやVNARのアミノ酸配列情報をもとに人工的に改変が加えられたアミノ酸配列からなる可変ドメインも、単一ドメイン抗体に含まれる。
【0003】
VHHはIgG抗体と同等の結合活性を示しながらも、(1)IgG抗体と比較して分子量が10分の1程度であり、従来の抗体では結合できない新規のエピトープが期待されること、(2)IgG抗体とは異なり、可逆性の高いタンパク質構造をもち、熱や圧に対して優れた耐性を示すこと、(3)IgG抗体とは異なり、酵母や細菌等の微生物を用いた生産が可能であること、等の特徴をもつ。さらに、(4)VHHは、cDNAディスプレイ法やファージディスプレイ法等の試験管内の抗体選抜技術との親和性が非常に高く、マウスやウサギ等への免疫によって得られるIgG抗体と比較して、より短期間に開発することが可能である。そのため、VHHは医薬品や検査薬に用いられてきたIgG抗体やIgA抗体といった従来の免疫グロブリンに代わる抗体としてその利用が期待されている。
【0004】
近年のSARS-CoV-2(Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)により引き起こされる新型コロナウイルス感染症の世界的流行を受けて、POCT(Point of Care Testin
g)の必要性が以前にも増して高まっている背景がある。
【0005】
代表的なPOCTとして、イムノクロマト法を原理とした抗原検査キットが挙げられる。イムノクロマト法では、予め用意された金コロイドやラテックス粒子等と結合した抗体(以下、標識抗体と呼ぶ)と被検体中に含まれる抗原が複合体を形成しながら毛細管現象によりニトロセルロース膜上を移動し、予めニトロセルロース膜上に固相化された抗体(以下、捕捉抗体と呼ぶ)が抗原-標識抗体複合体と結合することで呈色することを利用し
た免疫測定法である。現在、市販されているイムノクロマトキットの殆どはマウスやウサギ等に由来するモノクローナル、又はポリクローナルIgG抗体が用いられている。
【0006】
検査薬の開発においても、VHHの優位性は明らかである。特に、VHHが有する特性から、(1)VHHは粒子やニトロセルロース膜に高密度に固相化することが可能であり、より多くのパラトープを基材上に提示することができること、(2)VHHはタンパク質としての安定性に優れており、製品のより優れた保存安定性が期待できること、(3)VHHは微生物によって大量かつ安価に生産可能であるため、製造原価をより低減させることが出来ること、(4)VHHはイムノクロマト法において非特異的反応の原因となりうるFc領域を有さないこと、がIgG抗体と比較して優位であると考えられる。
【0007】
しかしながら、イムノクロマト法等の抗原検査法にVHHを用いることには課題がある。可変領域のみからなるVHHは、(1)IgG抗体と比較して低分子量であるため、基材への物理的な吸着性能が低いこと、(2)基材への固相化時に受けるタンパク質変性効果により、結合活性が低下しやすいこと、(3)IgG抗体とは異なり、VHHはFc領域を持たないため、基材へのランダムな吸着において配向性の制御が困難であること、が知られている。このような理由から、VHHを捕捉抗体として用いた場合、結合活性が低下しやすいことが課題となる。すなわち、イムノクロマト法において、VHHを捕捉抗体として用いた場合、高感度に抗原を検出するのが難しいことが知られている。
【0008】
この課題に対して、非特許文献1ではコンジュゲーションパッドに予め用意された標識抗体としてのVHHとビオチン標識化されたVHHの2種類の抗体、そしてニトロセルロース膜上にはビオチンに対して結合活性を示すストレプトアビジンを固相化する方法が用いられている。すなわち、ニトロセルロース膜上で、標識抗体-抗原-ビオチン化VHHの複合体を形成させ、その複合体をストレプトアビジンにより捕捉する方法である(従来技術1)。
【0009】
また、非特許文献2では標識抗体にVHHを用いており、捕捉抗体としては予め用意されたビオチン化VHH-ストレプトアビジン複合体をニトロセルロース膜上に固相化する方法が用いられている。すなわち、ニトロセルロース膜におけるVHHの固相化をストレプトアビジンとニトロセルロース膜間の相互作用に依存させる方法である(従来技術2)。
【0010】
また、非特許文献3ではIgG抗体が抗原を認識するための最小単位であるVHとVLから構成される可変領域をペプチドスペーサーで結合した単鎖可変領域フラグメントを、セルロース膜を用いたイムノクロマト法における捕捉抗体として用いている。単鎖可変領域フラグメントを捕捉抗体として用いた場合では検出感度に課題があるが、セルロース膜に対して結合する炭水化物結合モジュールを用いることで解決している(従来技術3)。すなわち、単鎖可変領域フラグメントと炭水化物結合モジュールを連結することにより、セルロース膜上の当該単鎖可変領域フラグメントの固定化量及び配向性が制御され、捕捉抗体として用いられた単鎖可変領域フラグメントの結合活性を向上させたことを報告している。
(【0011】以降は省略されています)
この特許をJ-PlatPat(特許庁公式サイト)で参照する
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