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公開番号
2025128349
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2025-09-02
出願番号
2025100692,2021537397
出願日
2025-06-17,2020-08-07
発明の名称
二重特異性タンパク質
出願人
小野薬品工業株式会社
代理人
弁理士法人三枝国際特許事務所
主分類
C07K
16/46 20060101AFI20250826BHJP(有機化学)
要約
【課題】本発明の課題は、自己免疫疾患または血液がん等に対する予防、症状進展抑制、再発抑制または治療のための新たな薬剤を提供することにある。
【解決手段】本発明の発明者らは鋭意検討した結果、かかる課題を解決し得る物質として、PD-1/CD4二重特異性タンパク質に着目し、本発明を完成した。本発明のPD-1/CD4二重特異性タンパク質は、投与時のサイトカインの産生または放出の誘導が低減されており、そのため、投与後のインフュージョン・リアクションあるいはサイトカイン放出症候群の発現が抑制されることが期待できる。
【選択図】なし
特許請求の範囲
【請求項1】
PD-1に特異的に結合する第一アームおよびCD4に特異的に結合する第二アームを有するPD-1/CD4二重特異性抗体またはその抗体断片。
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【請求項2】
当該第一アームが、抗PD-1抗体のVHおよびVLを含むことを特徴とする請求項1記載のPD-1/CD4二重特異性抗体またはその抗体断片。
【請求項3】
当該第二アームが、抗CD4抗体のVHおよびVLを含むことを特徴とする請求項1または2記載のPD-1/CD4二重特異性抗体またはその抗体断片。
【請求項4】
IgG抗体である、請求項1~3の何れか一項に記載のPD-1/CD4二重特異性抗体またはその抗体断片。
【請求項5】
IgG抗体が、IgG
1
抗体またはIgG
4
抗体である、請求項4記載のPD-1/CD4二重特異性抗体またはその抗体断片。
【請求項6】
PD-1の抑制性シグナルを伝達する、請求項1~5の何れか一項記載のPD-1/CD4二重特異性抗体またはその抗体断片。
【請求項7】
当該第一アームがPD-1およびPD-L1との相互作用、PD-1およびPD-L2との相互作用またはそれら両相互作用を許容する、請求項1~6の何れか一項記載のPD-1/CD4二重特異性抗体またはその抗体断片。
【請求項8】
投与中または投与後24時間以内のサイトカイン産生が十分に低減された、請求項1~7の何れか一項記載のPD-1/CD4二重特異性抗体またはその抗体断片。
【請求項9】
T細胞リンパ球に発現するPD-1およびCD4各々に特異的に結合する、請求項1~8の何れか一項記載のPD-1/CD4二重特異性抗体またはその抗体断片。
【請求項10】
PD-1に特異的に結合する第一アームおよびCD4に特異的に結合する第二アームを有する、単離PD-1/CD4二重特異性抗体であって、
(a) 当該第一アームが抗PD-1抗体のVHおよびVLを含み、当該第二アームが抗CD4抗体のVHおよびVLを含み、
(b) T細胞リンパ球上に発現するPD-1およびCD4各々に特異的に結合し、ならびに
(c) (i)PD-1の抑制性シグナルを伝達し、(ii)当該第一アームがPD-1およびPD-L1との相互作用、PD-1およびPD-L2との相互作用もしくはそれら両相互作用を許容し、および/または(iii)投与中または投与後24時間以内のサイトカイン産生が十分に低減された、当該抗体。
(【請求項11】以降は省略されています)
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本開示は、PD-1およびCD4に各々特異的に結合することができる二重特異性タンパク質(以下、「PD-1/CD4二重特異性タンパク質」と略記することがある。)ならびにその医薬治療用途に関する。
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【背景技術】
【0002】
PD-1は免疫グロブリンファミリーに属する免疫抑制受容体であり、抗原レセプターからの刺激により活性化したT細胞の免疫活性化シグナルを抑制する機能を持つ分子である。PD-1ノックアウトマウスの解析等から、PD-1シグナルは、自己免疫性拡張型心筋症、ループス様症候群、自己免疫性脳脊髄炎、全身性ループスエリテマトーデス、移植片対宿主病、I型糖尿病およびリウマチ性関節炎等の自己免疫疾患の抑制に重要な役割を果たすことが知られている。したがって、PD-1シグナルを増強する物質は自己免疫疾患の予防または治療剤となり得ることが指摘されている。
【0003】
T細胞のすべてのサブタイプは、その表面にCD3抗原を発現している。一方、それ以外の抗原については、サブタイプによって発現パターンは異なる。例えばCD3の他、キラーT細胞はCD8、ヘルパーT細胞はCD4、制御性T細胞はCD4、CD25、FoxP3、CD127などを各々発現している。
【0004】
これまでにPD-1シグナルを増強する物質として、PD-1を認識する二重特異性抗体が知られている(特許文献1ないし3)。これら二重特異性抗体は、T細胞受容体複合体のメンバーであるCD3を認識する抗体の抗原認識部位とPD-1を認識する抗体の抗原認識部位とを遺伝子工学的に連結されたものであり、PD-1をT細胞受容体複合体近傍に位置させる頻度を上げることによって、T細胞受容体複合体に対するPD-1の抑制シグナルを増強する作用をもつ。さらに、これら特許文献には、PD-1二重特異性抗体が自己免疫疾患の予防または治療に使用できることも記載されている。
【0005】
一方、本発明のPD-1/CD4二重特異性タンパク質は、現在までに全く報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
国際公開第2003/011911号パンフレット
国際公開第2004/072286号パンフレット
国際公開第2013/022091号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、自己免疫疾患や血液がん等に対する予防、症状進展抑制、再発抑制または治療のための新たな薬剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者らは鋭意検討した結果、かかる課題を解決し得る物質としてPD-1/CD4二重特異性タンパク質に着目し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1] PD-1に特異的に結合する第一アームおよびCD4に特異的に結合する第二アームを有する二重特異性タンパク質(本明細書において、「PD-1およびCD4に各々特異的に結合することができる二重特異性タンパク質」と同義であり、これについても、「PD-1/CD4二重特異性タンパク質」と略記することがある。)。
[2] PD-1に特異的に結合する第一アーム(以下、「第一アーム」と略記することがある。)およびCD4に特異的に結合する第二アーム(以下、「第二アーム」と略記することがある。)を有する二重特異性抗体(以下、「PD-1/CD4二重特異性抗体」と略記することがある。)またはその抗体断片(以下、これらをあわせて「PD-1/CD4二重特異性抗体等」と略記することがある。)。
[3] 当該第一アームが、PD-1に特異的に結合する抗体(以下、「抗PD-1抗体」という。)の重鎖可変領域(以下、「VH」と略記する。)および軽鎖可変領域(以下、「VL」と略記する。)を含むことを特徴とする前項[2]記載のPD-1/CD4二重特異性抗体またはその抗体断片。
[4] 当該第二アームが、CD4に特異的に結合する抗体(以下、「抗CD4抗体」という。)のVHおよびVLを含むことを特徴とする前項[2]または[3]記載のPD-1/CD4二重特異性抗体またはその抗体断片。
[5] N末端から、抗PD-1抗体のVL、抗CD4抗体のVH、抗CD4抗体のVLおよび抗PD-1抗体のVHの順番で、各々、ペプチドリンカーを介してもしくは直接連結された構造を有する、前項[4]記載のPD-1/CD4二重特異性抗体またはその抗体断片。
[6] N末端から、抗PD-1抗体のVL、抗PD-1抗体のVH、抗CD4抗体のVHおよび抗CD4抗体のVLの順番で、各々、ペプチドリンカーを介してもしくは直接連結された構造を有する、前項[4]記載のPD-1/CD4二重特異性抗体またはその抗体断片。
[7] N末端から、抗CD4抗体のVL、抗PD-1抗体のVH、抗PD-1抗体のVLおよび抗CD4抗体のVHの順番で、各々、ペプチドリンカーを介してもしくは直接連結された構造を有する、前項[4]記載のPD-1/CD4二重特異性抗体またはその抗体断片。
[8] 前項[5]記載の抗PD-1抗体のVH、前項[6]記載の抗CD4抗体のVLまたは前項[7]記載の抗CD4抗体のVHのC末端に、ヒンジ部位からCH3領域までのヒトIgG定常領域(以下、「IgG定常領域(ヒンジ/CH3)」と略記することがある。)を有するポリペプチドのN末端が、ペプチドリンカーを介してもしくは直接に、さらに連結された構造を有する、前項[5]~[7]の何れか一項記載のPD-1/CD4二重特異性抗体またはその抗体断片。
[9] N末端から、抗CD4抗体のVL、抗CD4抗体のVH、IgG定常領域(ヒンジ/CH3)、抗PD-1抗体のVHおよび抗PD-1抗体のVLの順番で、各々、ペプチドリンカーを介してもしくは直接連結された構造を有する、前項[4]記載のPD-1/CD4二重特異性抗体またはその抗体断片。
[10] さらに、IgG定常領域(ヒンジ/CH3)を有するポリペプチドを含む構造を有する、前項[8]または[9]記載のPD-1/CD4二重特異性抗体またはその抗体断片。
[11] ペプチドリンカーが、Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号1;ここで、「Gly」はグリシンを表し、「Ser」はセリンを表し、以下、「(Gly)×4-Ser」と略記することがある。)またはGly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号2;以下、「((Gly)×4-Ser)×3」と略記することがある。)である(但し、複数のペプチドリンカーが存在する場合、各々が同じでも異なっていてもよく、そのうちの少なくとも一つが当該ペプチドリンカーであってもよい。)、前項[5]~[10]の何れか一項記載のPD-1/CD4二重特異性抗体またはその抗体断片。
[12] ダイアボディ、二重特異性sc(Fv)
2
、二重特異性ミニボディ、二重特異性F(ab′)
2
、二重特異性ハイブリッド抗体、共有結合型ダイアボディ(二重特異性DART)、二重特異性(FvCys)
2
、二重特異性F(ab′-ジッパー)
2
、二重特異性(Fv-ジッパー)
2
、二重特異性三鎖抗体、または二重特異性mAb
2
の形態である、前項[2]~[4]の何れか一項記載のPD-1/CD4二重特異性抗体またはその抗体断片。
[13] 二重特異性ハイブリッド抗体の形態である、前項[2]~[4]の何れか一項記載のPD-1/CD4二重特異性抗体またはその抗体断片。
[14] IgG抗体である、前項[2]~[4]および[13]の何れか一項記載のPD-1/CD4二重特異性抗体またはその抗体断片。
[15] IgG抗体が、IgG
1
抗体またはIgG
4
抗体である前項[14]記載のPD-1/CD4二重特異性抗体またはその抗体断片。
[16] 当該IgG
1
抗体のFc受容体への結合が消失あるいは減弱した、前項[15]記載のPD-1/CD4二重特異性抗体またはその抗体断片。
[17] 当該IgG
1
抗体のADCCおよび/またはCDC作用が消失あるいは減弱した、前項[15]または[16]記載のPD-1/CD4二重特異性抗体またはその抗体断片。
[18] IgG定常領域(ヒンジ/CH3)のアイソタイプが、IgG
1
である前項[8]~[10]の何れか一項記載のPD-1/CD4二重特異性抗体またはその抗体断片。
[19] PD-1およびCD4が、各々ヒトPD-1およびヒトCD4である、前項[1]~[18]の何れか一項記載のPD-1/CD4二重特異性タンパク質またはPD-1/CD4二重特異性抗体もしくはその抗体断片。
[20] モノクローナル抗体である、前項[2]~[19]の何れか一項記載のPD-1/CD4二重特異性抗体またはその抗体断片。
[21] ヒト化または完全ヒト型抗体である、前項[2]~[20]の何れか一項記載のPD-1/CD4二重特異性抗体またはその抗体断片。
[22] 単離抗体である前項[2]~[21]の何れか一項記載のPD-1/CD4二重特異性抗体またはその抗体断片。
[23] 当該二重特異性タンパク質が、Scaffold分子または修飾型ペプチドである、前項[1]記載の二重特異性タンパク質。
[24] 当該Scaffold分子が、Adnectin、Affibody(登録商標)、Anticalin(登録商標)、Avimer、DARPin、LRRP、Affilin(登録商標)、AffitinまたはFynomerの形態であり、当該修飾型ペプチドが特殊環状ペプチド、Addbody(登録商標)またはMirabody(登録商標)の形態である、前項[23]記載の二重特異性タンパク質。
[25] PD-1の抑制性シグナルを伝達する(またはPD-1の抑制性シグナルの伝達に使用される)、前項[1]~[24]の何れか一項記載のPD-1/CD4二重特異性タンパク質またはPD-1/CD4二重特異性抗体もしくはその抗体断片。
[26] 当該第一アームがPD-1およびPD-L1との相互作用、PD-1およびPD-L2との相互作用またはそれら両相互作用を許容する(以下、「PD-1およびPD-Lとの相互作用を許容する」と略記することがある。)、前項[1]~[25]の何れか一項記載のPD-1/CD4二重特異性タンパク質またはPD-1/CD4二重特異性抗体もしくはその抗体断片。
[27] 投与中もしくは投与後24時間以内のサイトカイン産生もしくは放出が十分に低減された、前項[1]~[26]の何れか一項記載のPD-1/CD4二重特異性タンパク質またはPD-1/CD4二重特異性抗体もしくはその抗体断片。
[28] 当該第一アームがPD-1およびPD-L1との相互作用を許容し、かつ、投与中もしくは投与後24時間以内のサイトカイン産生もしくは放出が十分に低減された、前項[1]~[25]の何れか一項記載のPD-1/CD4二重特異性タンパク質またはPD-1/CD4二重特異性抗体もしくはその抗体断片。
[29] サイトカインが、少なくともIL-2、IFN-γまたはTNF-αである、前項[27]または[28]記載のPD-1/CD4二重特異性タンパク質またはPD-1/CD4二重特異性抗体もしくはその抗体断片。
[30] リンパ球(例えば、ヘルパーT細胞または制御性T細胞等)上に発現するPD-1およびCD4各々に特異的に結合する、前項[1]~[29]の何れか一項記載のPD-1/CD4二重特異性タンパク質またはPD-1/CD4二重特異性抗体もしくはその抗体断片。
[31] 標的細胞である血液がんのがん細胞に発現するPD-1およびエフェクター細胞であるリンパ球(例えば、ヘルパーT細胞または制御性T細胞等)に発現するCD4各々に特異的に結合する、前項[1]~[29]の何れか一項記載のPD-1/CD4二重特異性タンパク質またはPD-1/CD4二重特異性抗体もしくはその抗体断片。
[32] 標的細胞であるT細胞由来のがん細胞に発現するPD-1およびCD4に各々特異的に結合する、前項[1]~[29]の何れか一項記載のPD-1/CD4二重特異性タンパク質またはPD-1/CD4二重特異性抗体もしくはその抗体断片。
[33] PD-1に特異的に結合する第一アームおよびCD4に特異的に結合する第二アームを有する、単離PD-1/CD4二重特異性抗体であって、
(a)当該第一アームが抗PD-1抗体のVHおよびVLを含み、当該第二アームが抗CD4抗体のVHおよびVLを含み、
(b)リンパ球(例えば、ヘルパーT細胞または制御性T細胞等)上に発現するPD-1およびCD4各々に特異的に結合し、ならびに
(c)(i)PD-1の抑制性シグナルを伝達し、(ii)当該第一アームがPD-1およびPD-L1との相互作用、PD-1およびPD-L2との相互作用もしくはそれら両相互作用を許容し、および/または(iii)投与中もしくは投与後24時間以内のサイトカイン産生もしくは放出が十分に低減された、当該抗体。
[34] PD-1に特異的に結合する第一アームおよびCD4に特異的に結合する第二アームを有する、ヒト化または完全ヒト型単離PD-1/CD4二重特異性抗体であって、
(a)当該第一アームが抗ヒトPD-1抗体のVHおよびVLを含み、第二アームが抗ヒトCD4抗体のVHおよびVLを含み、
【発明の効果】
【0010】
本発明のPD-1/CD4二重特異性タンパク質は、自己免疫疾患や血液がん等に対する予防、症状進展抑制、再発抑制または治療に使用できる。
(【0011】以降は省略されています)
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