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公開番号2025115765
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-08-07
出願番号2024010401
出願日2024-01-26
発明の名称環境関連データを管理するシステムおよび方法
出願人株式会社日立製作所
代理人弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
主分類G06Q 50/10 20120101AFI20250731BHJP(計算;計数)
要約【課題】一貫した判断ロジックに基づいて、GHG排出量の集計値を自動的に最適化する環境関連データ管理システム及び方法を提供する。
【解決手段】環境関連データ管理処理は、組織単位集計の対象項目の値と、カテゴリ別に積算された製品単位集計のカテゴリごとの積算結果を表す値とを比較し、組織単位集計の対象項目の値および製品単位集計のカテゴリごとの積算結果を表す値が比較された、当該組織単位集計の対象項目と、対応する当該製品単位集計の対象項目とのうち予め決められた集計値が異なる項目を特定し、集計値が異なる当該組織単位集計の対象項目と、当該製品単位集計の対象項目とのうち、どちらの集計値がより実情を正確に表しているかを、比較した項目ごとに判断し、実情を正確に表していないと判断された集計値をより正確な値に補正する。
【選択図】図20
特許請求の範囲【請求項1】
環境関連データを管理する環境関連データ管理システムであって、
前記環境関連データは、少なくともサプライヤ企業とバイヤー企業で構成されるサプライチェーンにおいて排出された温室効果ガス(Greenhouse Gas; GHG)の量を表すGHG排出量を少なくとも含み、
前記サプライヤ企業の組織単位でGHG排出量を集計する組織単位集計の対象項目と、
前記バイヤー企業が製造する製品単位でGHG排出量を集計する製品単位集計の対象項目のうち、前記組織単位集計において比較可能な項目と対応関係を有する項目と
について、
前記製品単位はGHGを排出する部品の調達から製造、使用、廃棄までの各工程に対応する各カテゴリを有しており、
前記カテゴリは製品ごとに管理されており、
組織単位集計の前記対象項目の値と、前記カテゴリ別に積算された製品単位集計のカテゴリごとの積算結果を表す値とを比較し、
前記組織単位集計の前記対象項目の値および前記製品単位集計のカテゴリごとの積算結果を表す値が比較された、当該組織単位集計の対象項目と、対応する当該製品単位集計の対象項目とのうち、予め決められた集計値が異なる項目を特定し、
前記集計値が異なる当該組織単位集計の対象項目と、当該製品単位集計の対象項目とのうち、どちらの集計値がより実情を正確に表しているかを、比較した項目ごとに判断し、
実情を正確に表していないと判断された集計値をより正確な値に補正する、
環境関連データ管理システム。
続きを表示(約 1,600 文字)【請求項2】
前記組織単位集計値は、メタデータによって当該組織単位集計の対象項目ごとに管理される、請求項1に記載の環境関連データ管理システム。
【請求項3】
前記製品単位集計値は、メタデータによって当該製品単位集計の対象項目ごとに管理される、請求項1に記載の環境関連データ管理システム。
【請求項4】
当該組織単位集計における比較対象項目および当該製品単位集計における比較対象項目は、所定のしきい値に基づいて特定される、請求項1に記載の環境関連データ管理システム。
【請求項5】
当該組織単位集計における比較対象項目の集計単位と、当該製品単位集計における比較対象項目の集計単位とが不揃いな場合、集計単位が細かい比較対象項目の集計単位を集計単位が粗い比較対象項目の集計単位に揃えて組織単位集計値と製品単位集計値とを比較する、請求項1に記載の環境関連データ管理システム。
【請求項6】
前記温室効果ガスは、二酸化炭素(CO

)、メタン(CH

)、一酸化二窒素(N

O)、フロンの少なくともいずれか一つを含む、請求項1に記載の環境関連データ管理システム。
【請求項7】
前記フロンは、CFC(Chlorofluorocarbon)、HCFC(Hydrochlorofluorocarbon)、HFC(Hydrofluorocarbon)の少なくともいずれか一つである、請求項6に記載の環境関連データ管理システム。
【請求項8】
前記所定のしきい値は、次のいずれかの場合に更新される、
・前回の集計値にしきい値を超えるデータがない場合、
・前回の集計値にしきい値を超えたデータがあり、かつ、当該しきい値を超えたデータについて登録修正があった場合、
請求項4に記載の環境関連データ管理システム。
【請求項9】
前記補正された集計値に係る当該組織単位集計または当該製品単位集計の全ての対象項目と、差異理由と、補正前後の組織単位集計値および製品単位集計値とを表示画面に表示させる、請求項1に記載の環境関連データ管理システム。
【請求項10】
前記予め決められた集計値が異なる項目がScope1またはScope2に関するものである場合、前記組織単位集計の前記対象項目の値を元に、製造工程に含まれないアイドリング時の排出量等を按分ルールに沿って記録し、
差異がある項目がScope1またはScope2に関するものでない場合であって、Scope3に含まれる各カテゴリの値が少なくともいずれか一方の集計値に設定されていない場合、設定済みのカテゴリの数値を記録し、
Scope3に含まれる各カテゴリの値が少なくともいずれか一方の集計値に設定されている場合であって、どちらか片方の集計値にのみ1次データが設定されている場合、設定済みの1次データを未設定の集計値に紐づけて記録し、
Scope3に含まれる各カテゴリの値が少なくともいずれか一方の集計値に設定されている場合であって、どちらの集計値にも1次データが設定されている場合、最新の1次データが登録されている集計値を記録することで古い集計値を更新し、
どちらの集計値にも物量ベースの原単位が設定されている場合、原単位計算の方法が金額ベースとなっている集計値を物量ベースの原単位にして記録し、
いずれか一方の集計値に物量ベースの原単位が設定されていない場合、ユーザが手動で変更値を入力するために、異なっているパラメータをユーザへ提示する
ことにより、前記実情を正確に表していないと判断された集計値をより正確な値に補正する、請求項1に記載の環境関連データ管理システム。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、GHG排出量を少なくとも含む各種の環境関連データ(以下、「環境関連データ」と総称する)を管理するためのコンピュータ技術に関する。
続きを表示(約 3,300 文字)【背景技術】
【0002】
地球温暖化が進みつつある今、その要因の一つであるとされる、二酸化炭素(CO

)やメタン(CH

)等といった温室効果ガス(Greenhouse Gas; GHG)の排出量(以下、「GHG排出量」とも称する)の削減は、地球上で暮らす我々人類にとって、喫緊の社会課題である。
【0003】
こうした中、化石燃料由来のエネルギーから再生可能エネルギーへと転換する、所謂グリーントランスフォーメーション(Green Transformation; 以下、「GX」とも称する)の早急な実現に向けたさまざまな取り組みが産業界を中心に推進されており、その際に使用される技術も種々提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開2005-078574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
GHG排出量の主要な集計方法には、GHGを排出する事業者の組織全体で集計する方法(以下、「組織単位集計」とも称する)と、当該組織が製造・販売する製品の単位で集計する方法(以下、「製品単位集計」とも称する)との二種類の方法がある。組織単位集計はGHGプロトコルに則って算定され、Scope1(事業者が燃料の燃焼や、製品の製造などを通じて直接排出するGHG)、Scope2(事業者が他社から供給された電気・熱・蒸気を使うことで、間接的に排出されるGHG)Scope3(Scope1,2に含まれない他社から排出されるGHG)の項目ごとに集計される。なお、Scope3はさらに、カテゴリ1(購入した製品のGHG)、カテゴリ4(購入した製品の輸送時に排出されるGHG)、カテゴリ9(製造した製品の輸送時に排出されるGHG)、カテゴリ11(製造した製品の使用時に排出されるGHG)、カテゴリ12(製造した製品の廃棄時に排出されるGHG)など15のカテゴリに細かく分類されている。製品単位集計は事業者が製造・販売する製品の原材料や部品等の調達輸送時に排出されるGHG、原材料や部品自体の生産時に排出されたGHG、製造工程で排出されるGHG、製品の輸送時に排出されるGHG、製品の仕様時に排出されるGHG、廃棄・リサイクル時に排出されるGHGの項目ごとに集計される。この二種類の集計方法には、組織単位集計が主に当該組織の環境管理部門がCSR(Corporate Social Responsibility)レポートの作成等に用いる集計方法であるのに対して、製品単位集計が主に当該製品の設計開発部門がLCA(Life Cycle Assessment)計算を行う際に用いる集計方法であるように、その用途や性質等における根本的な差異がある。そして、こうした差異に起因して、組織単位集計および製品単位集計は、集計方法がそれぞれ異なる。このことから、組織単位集計の比較可能な項目ごとの集計値(以下、「組織単位集計値」とも称する)と、組織単位集計の比較可能な項目と対応する、当該組織が製造する製品全ての製品単位集計の項目ごとの集計値(以下、「製品単位集計値」とも称する)とを対比した場合、集計する際に対象製品や期間等といった諸条件を可能な限り揃えたとしても、集計値が異なるケースが少なくない。その理由は複数存在するが、例えば組織単位集計のSocpe1の集計値(事業者が燃料の燃焼や製品の製造などを通じて直接排出するGHG)には、製品製造時の製造設備のアイドリング中のGHG排出などが含まれるのに対して、対応する製品単位集計の項目である製造工程で排出されるGHGには設備アイドリング中のGHG排出が適切に製品ごとに按分して算定されていない可能性がある。同様に、組織単位集計のScope2(事業者が他社から供給された電気・熱・蒸気を使うことで、間接的に排出されるGHG)にはオフィスでのエアコンなどで消費される電力などが含まれるのに対して、製品単位集計として各製品のGHG排出量としては積算されていないなど、集計目的の違いから、全ての項目に対して一様に比較することが困難であった。
【0006】
また、従来多くの事業者は組織単位集計において、活動量とGHG算定の排出原単位をかけ合わせることで各Scopeの値を算定していた。活動量とは使用した燃料の金額や使用量、購入した電気やガスの金額や重量などになる。また、GHG算定の排出原単位はあくまで統計的に求められた標準的な原単位あたりの排出量である。そのため、より適切なGHG算定を行うためには金額よりも重量を活動量として排出源単位とかけあわせることが望まれる。また、重量と排出源単位をかけ合わせるよりも、サプライヤから提供されるGHG排出量の情報がある場合やセンサなどを用いて排出量を測定できる場合はその1次データの方がより正確なGHG排出量であると考えられる。その理由として、例えば組織単位集計のScope2で集計される他社が発電した電力のGHG排出量として、活動量となる電力量と排出源単位とかけあわせて算出する場合、排出源単位として火力発電や水力発電など様々な発電形態の電力から統計的に排出源単位を算定しているが、それに対して、電力会社が太陽光により発電しておりGHG排出量を減らしていた場合には排出源単位が大きく異なることになる。そのため、個々の会社のGHG排出削減の企業努力が適切に反映された値として1次データの値を集計に用いることがより適切である。
【0007】
一方で、欧州におけるDPP(Digital Product Passport)などの規制により、一部の企業には製品単位でのGHG排出量の算定が求められるようになってきており、今後はより多くの事業者が製品単位でGHG排出量の算定や削減が求められるようになると考えられる。そのため、製品単位集計においても、GHG排出量の算定には金額や重量をベースに排出源単位をかけあわせて算定することもできるが、企業の排出削減努力をより正確に反映した値として、サプライヤから提供されるデータやセンサから取得できる1次データを用いることがより強く望まれると考えられる。製品ごとのGHG排出量を減らすことで、製品の販売に影響が出る場合など、特にその傾向が強いと考えられる。同様に、当該組織の設計担当者も製品ごとのGHG排出量を減らそうと考えた場合、サプライヤに対して購入品のGHG排出量の情報を要求することで、サプライヤの排出量削減を促し、排出源単位による計算よりも正しい排出量を把握できると考えられる。
【0008】
以上の様な理由により、組織単位集計と製品単位集計では、集計する担当者が異なることや、排出量算定の素となるデータが異なることなどから、当該組織で生産している製品全ての製品単位集計の値を積算したものと組織単位集計の値とで、比較可能な項目について比較しても同じ値とはならないことがありえる。
【0009】
組織単位集計値と製品単位集計値とが異なる場合に、いずれの値が実情を正確に表しているかはケースバイケースである。また、そうした場合に、不一致を是正して、組織単位集計値および製品単位集計値がどちらも実情を正確に表した値となるように、一貫した判断ロジックに基づいて、いずれか一方の集計値を適宜に補正し、最適化することができる方法は現状ない。このことがGXを推進するうえで障壁となっており、新規な技術の開発が待たれていた。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、一貫した判断ロジックに基づいて、GHG排出量の集計値を自動的に最適化することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
(【0011】以降は省略されています)

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