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公開番号
2025109209
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2025-07-25
出願番号
2024002896
出願日
2024-01-12
発明の名称
種イモ低肥大性を示すサツマイモ植物の識別方法
出願人
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
代理人
個人
主分類
C12Q
1/6895 20180101AFI20250717BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約
【課題】 サツマイモ塊根の生産(カンショ栽培)の現場において労力削減の点で大きな利点を有する種イモの直播栽培を可能とする技術に関して、所望の形質を備え且つ種イモ低肥大性を示すサツマイモ植物を効率的に作出可能とする技術を提供する。
【解決手段】 (検出工程)サツマイモ植物のゲノムDNAにおける「種イモ低肥大性の表現型との関連性を示すDNAマーカー」に関して、識別対象であるサツマイモ植物のゲノムDNAから当該DNAマーカーに係る「九州199号型変異アレル」を示す塩基部位を検出する工程、及び、(判定工程)前記検出工程において、当該DNAマーカーに係る「九州199号型変異アレル」を示す塩基部位が検出された場合に、識別対象であるサツマイモ植物が種イモ低肥大性を示すサツマイモ植物であると判定する工程、を含むことを特徴とする、種イモ低肥大性を示すサツマイモ植物の識別方法。
【選択図】 図2
特許請求の範囲
【請求項1】
識別対象であるサツマイモ植物の種イモ低肥大性に関する特性を識別する方法に関して、
(検出工程)サツマイモ植物(Ipomoea batatas)のゲノムDNAにおける下記に示す「種イモ低肥大性の表現型との関連性を示すDNAマーカー」に関して、識別対象であるサツマイモ植物のゲノムDNAから当該DNAマーカーに係る「九州199号型変異アレル」を示す塩基部位を検出する工程、及び、
(判定工程)前記検出工程において、当該DNAマーカーに係る「九州199号型変異アレル」を示す塩基部位が検出された場合に、識別対象であるサツマイモ植物が種イモ低肥大性を示すサツマイモ植物であると判定する工程、
を含むことを特徴とする、種イモ低肥大性を示すサツマイモ植物の識別方法であって、
;
(種イモ低肥大性の表現型との関連性を示すDNAマーカー)
前記「種イモ低肥大性の表現型との関連性を示すDNAマーカー」が、
サツマイモの2倍体近縁野生種(Ipomoea trifida Mx23Hm系統)のゲノム情報(Itr_r2.2)で示した場合に第11番染色体上の「chr11:5719438」から「chr11:11357942」までの領域を構成する塩基配列の塩基部位に対応するサツマイモ植物(Ipomoea batatas)の塩基部位に関して、
種イモ肥大性を示す品種コガネセンガンのゲノムDNAでのその対応する塩基部位(通常型アレル)に対して「九州199号型変異アレル」を示す塩基部位に関するDNAマーカーであって、
前記「九州199号型変異アレル」が、種イモ肥大性を示す品種コガネセンガンのゲノムDNAでのその対応する塩基部位(通常型アレル)に対して種イモ低肥大性を示す九州199号系統(FERM P-22485)が有する6倍体ゲノム中の1つの染色体上での対応する塩基部位に生じている多型を示す変異アレルであり、
;
前記「種イモ低肥大性の表現型との関連性を示すDNAマーカー」が、
i)下記DNAマーカー1~4で示すDNAマーカーのうちの1以上のDNAマーカーを指すものである、
又は
ii)当該DNAマーカーに係る「九州199号型変異アレル」を示す塩基部位が、下記DNAマーカー1~4に係る「九州199号型変異アレル」を示す塩基部位のいずれとも連鎖関係にあるDNAマーカーである、
;
(DNAマーカー1~4)
前記「DNAマーカー1」が、上記第11番染色体上の「chr11:5719438」に対応するサツマイモ植物(Ipomoea batatas)の塩基部位に関して、種イモ肥大性を示す品種コガネセンガンのゲノムDNAでのその対応する塩基部位「G」(通常型アレル)に対して「九州199号型アレル」では「T」を示す塩基部位に関するDNAマーカーであり、
前記「DNAマーカー2」が、上記第11番染色体上の「chr11:6183279」に対応するサツマイモ植物(Ipomoea batatas)の塩基部位に関して、種イモ肥大性を示す品種コガネセンガンのゲノムDNAでのその対応する塩基部位「T」(通常型アレル)に対して「九州199号型アレル」では「C」を示す塩基部位に関するDNAマーカーであり、
前記「DNAマーカー3」が、上記第11番染色体上の「chr11:8693418~chr11:8693419」に対応するサツマイモ植物(Ipomoea batatas)の連続した塩基部位に関して、種イモ肥大性を示す品種コガネセンガンのゲノムDNAでのその対応する塩基部位「TA」(通常型アレル)に対して、「九州199号型アレル」ではその2塩基の間に「T」が挿入された「TTA」を示す塩基部位に関するDNAマーカーであり、
前記「DNAマーカー4」が、上記第11番染色体上の「chr11:11357940~chr11:11357942」に対応するサツマイモ植物(Ipomoea batatas)の連続した塩基部位に関して、種イモ肥大性を示す品種コガネセンガンのゲノムDNAでのその対応する塩基部位「AGT」(通常型アレル)に対して「九州199号型アレル」では「CGC」を示す塩基部位に関するDNAマーカーである、
;
前記種イモ低肥大性を示すサツマイモ植物の識別方法。
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【請求項2】
前記「DNAマーカー1」に関して、サツマイモ植物ゲノムDNA中の位置情報に対応するサツマイモの2倍体近縁野生種(Ipomoea trifida Mx23Hm系統)のゲノム情報(Itr_r2.2)の第11番染色体上の「chr11:5719438」が、配列番号1で示す塩基配列中の第2000番目の塩基部位として特定されるものであり、
前記「DNAマーカー2」に関して、サツマイモ植物ゲノムDNA中の位置情報に対応するサツマイモの2倍体近縁野生種(Ipomoea trifida Mx23Hm系統)のゲノム情報(Itr_r2.2)の第11番染色体上の「chr11:6183279」が、配列番号4で示す塩基配列中の第2002番目の塩基部位として特定されるものであり、
前記「DNAマーカー3」に関して、サツマイモ植物ゲノムDNA中の位置情報に対応するサツマイモの2倍体近縁野生種(Ipomoea trifida Mx23Hm系統)のゲノム情報(Itr_r2.2)の第11番染色体上の「chr11:8693418」~「chr11:8693419」が、配列番号7で示す塩基配列中の第2001番目~第2002番目の塩基部位として特定されるものであり、
前記「DNAマーカー4」に関して、サツマイモ植物ゲノムDNA中の位置情報に対応するサツマイモの2倍体近縁野生種(Ipomoea trifida Mx23Hm系統)のゲノム情報(Itr_r2.2)の第11番染色体上の「chr11:11357940」~「chr11:11357942」が、配列番号10で示す塩基配列中の第2001番目~第2003番目の塩基部位として特定されるものである、
請求項1に記載の種イモ低肥大性を示すサツマイモ植物の識別方法。
【請求項3】
前記「種イモ低肥大性の表現型との関連性を示すDNAマーカー」が、
上記したDNAマーカー1~4で示すDNAマーカーのうちの1以上のDNAマーカーを指すものである、
請求項1に記載の種イモ低肥大性を示すサツマイモ植物の識別方法。
【請求項4】
前記「種イモ低肥大性の表現型との関連性を示すDNAマーカー」が、上記したDNAマーカー3を指すものである、
請求項1に記載の種イモ低肥大性を示すサツマイモ植物の識別方法。
【請求項5】
前記検出工程が、九州199号系統(FERM P-22485)の後代集団に属するサツマイモ植物を識別対象であるサツマイモ植物として行う工程である、請求項1に記載の種イモ低肥大性を示すサツマイモ植物の識別方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の識別方法を使用することを含む、種イモ低肥大性を示すサツマイモ植物の作出方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の識別方法を使用することを含む、種イモ低肥大性を示すサツマイモ系統の作出方法。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載の識別方法を使用することを含む、種イモ低肥大性を示すサツマイモ植物の植物体を生産する方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、サツマイモ塊根の生産(カンショ栽培)の現場において労力的利点を有する種イモの直播栽培を可能とする技術に関して、種イモ低肥大性を示すサツマイモ植物を効率的に作出可能とする技術に関する。
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【背景技術】
【0002】
カンショ(サツマイモ塊根)生産の栽培現場では、ビールハウスや温室等で室内栽培した「苗」を圃場に移植してから栽培を行う「挿苗栽培」が慣行的に行われている。この従来の挿苗栽培と比較して「種イモ」を圃場に直接植え付ける「直播栽培」が可能となった場合、現在のサツマイモ栽培での苗の移植の際の現場での労力が大幅に軽減されて、カンショ生産の効率性が向上することが期待される。
しかしながら、現在、カンショ(サツマイモ塊根)生産の栽培現場で一般的に用いられているサツマイモ品種系統は、「直播栽培」を行った場合に栽培過程において植えた親イモが肥大して子イモの品質や収穫量の低下が生じてしまい(種イモ肥大性の特性が発現してしまい)、商品価値のある塊根が十分に生産できなくなる問題が存在する。そのため、現在の一般的なサツマイモ植物の品種系統を用いたカンショ栽培では、現場での栽培上の利点が大きい直播栽培が行うことができない事情がある。
【0003】
本出願人である農研機構は、種イモを直植栽培した場合に種イモ(植えた親イモ)の肥大が抑制された特性(種イモ低肥大性)を示すサツマイモ系統を見出しており(非特許文献1)、これを中間母本(育種素材)として用いて有用な形質を備えるサツマイモ植物(例えば、生育や塊根の品質に関する所望の形質を有する他のサツマイモ植物)と交雑することによって、種イモ低肥大性を示し且つ所望の形質を示すサツマイモ植物を作出することが可能になると予想される。
しかしながら、交雑育種で得た子孫集団に属するサツマイモ植物が種イモ肥大性を示すのか又は低肥大性を示すのかを判定するためには、交雑して得た種子に関して翌年に一度栽培して塊根(子イモ)を得た後、更にその翌年にその塊根を種イモとして直植えして実際に直播栽培を実行することを要し、原理的に交雑及び選抜に「最短でも3年間」の年月を要する。(更に実際の現場での大規模選抜では、種イモの数の確保ための増殖栽培や所望の形質の選抜試験の信頼性を担保する複数回の栽培試験を行う観点から、計4~5年の年月を要する。)
【0004】
以上の点、直播栽培が可能であり且つ所望の形質を示すサツマイモ植物を作出するにあたり、種イモ低肥大性を示すサツマイモ植物の作出を効率的に行うことを可能とする技術開発が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
Takeo Sakaigaichi et al.; PLANT PRODUCTION SCIENCE 2022, vol.25, No.3, p407-412; Evaluation of mother and daughter root traits in sweet potato germplasm cultivated by direct planting
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、サツマイモ塊根の生産(カンショ栽培)の現場において労力削減の点で大きな利点を有する種イモの直播栽培を可能とする技術に関して、所望の形質を備え且つ種イモ低肥大性を示すサツマイモ植物を効率的に作出可能とする技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ね、まず、通常の種イモ肥大性を示す品種コガネセンガンに対して農研機構が保有する種イモ低肥大性を示す九州199号系統(FERM P-22485)を交配してF
1
集団の種子を得た。翌年、得られたF
1
集団の種子を播種して通常の挿苗栽培にて生育させてF
1
集団の各個体(系統)の塊根を得た。この栽培条件では種イモが存在しない状態での栽培であったため、種イモ肥大性/低肥大性に関する特性の判定はできなかった。
そこで更にその翌年、当該得られた塊根を種イモ(親イモ)として用いて「直播栽培」を行って新たな塊根(子イモ)を形成させ、栽培後の全体のイモ重量に対する親イモ重量の比率を示す「親イモ重率」を測定したところ、当該F
1
集団には種イモ低肥大性(親イモ重率0.2以下)を示す個体が約5割(約半数)の頻度で含まれているとの試験結果を得た。
【0008】
本発明者らはその原因を究明するため、次世代シーケンサー技術を利用してF
1
集団のほぼ全ての個体(系統)のシーケンスを決定し、種イモ肥大性を示す品種コガネセンガンと種イモ低肥大性を示す九州199号系統の間でのゲノムワイドな規模での多型部位に関するハプロタイプを決定した。
そして、ゲノムワイド関連解析(GWAS)を利用して、種イモ低肥大性を発現していると認められる表現型(親イモ重率0.2以下を示す表現型)との関連性を示す多型変異に関する統計的推定を行ってマンハッタンプロットで示したところ、サツマイモ近縁野生種(Ipomoea trifida Mx23Hm系統)のゲノム情報(Itr_r2.2)で示した場合に第11番染色体上の「chr11:5719438」から「chr11:11357942」までの領域に存在する多型塩基部位(単独塩基部位又は連続塩基部位)に関して、種イモ肥大性/低肥大性との関連性を示すDNAマーカーとして利用可能であるとの推定結果が得られた。当該結果を基に、種イモ低肥大性との関連性を示す可能性の高い多型変異1~4を選定し、検証試験を行った後にこれらをDNAマーカー1~4とした。
【0009】
当該DNAマーカー1~4に関して、実験結果(下記実験例参照)に基づく下記知見が得られた。
(1)通常の種イモ肥大性を示す品種コガネセンガンと種イモ低肥大性を示す九州199号系統(FERM P-22485)を交配して得たF
1
集団に関するヒストグラム分析及びジェノタイピング解析の結果、「DNAマーカー1~4に関する九州199号型変異アレルを有する遺伝子型」と「種イモ低肥性の表現型(親イモ重率0.2以下)」との間には、明確な相関関係が存在することが示された。この点、当該4ヵ所のDNAマーカー1~4は、そのいずれに関しても種イモ低肥大性を示すサツマイモ植物を識別可能なDNAマーカーであると認められた。
【0010】
(2)当該DNAマーカー1~4(上記した4ヵ所の多型部位)は、サツマイモ植物ゲノムの「第11番染色体上の特定のゲノム領域(5.64Mb)」に纏まって存在し且つこれらの九州199号型の変異アレルが同じ染色体上に「連鎖関係」にて存在する連鎖DNAマーカーであると認められた。
この点、これら4つのDNAマーカーの塩基部位を含む領域又はその周辺領域に種イモ肥大性/低肥大性に関与する原因遺伝子の遺伝子座が存在し、また、これらの九州199号型の変異アレル(各DNAマーカーに関する変異アレル)はその原因遺伝子の変異遺伝子(低肥大性を示すように変異した変異遺伝子のアレル)と同じ染色体上に「連鎖関係」にて存在していると認められた。
ここで、サツマイモ植物のゲノムは同質6倍体にて構成されるところ、種イモ肥大性/低肥大性遺伝子の対立遺伝子の組み合わせ(遺伝子型)としては、種イモ低肥大性を示す変異遺伝子をゲノム中に1つ有するヘテロの遺伝子型であれば、「優性形質」として種イモ低肥大性を示す表現型が発現すると認められた。
以上の点、識別対象であるサツマイモ植物のゲノムDNAに関して、上記多型部位1~4(DNAマーカー1~4)のいずれか1以上に関して「九州199号型の変異アレル」を示す塩基部位を検出することによって、種イモ低肥大性を示すサツマイモ植物の識別が可能であると認められた。
(【0011】以降は省略されています)
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