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公開番号2025109187
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-07-24
出願番号2024233064
出願日2024-12-27
発明の名称変異型アシル-ACPレダクターゼ
出願人公立大学法人大阪
代理人弁理士法人三枝国際特許事務所
主分類C12N 9/04 20060101AFI20250716BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】アシル-ACPレダクターゼ(AAR)を用いた炭化水素生産において、アルカン及び/又はアルケンの生産効率を向上できる手段を提供する。
【解決手段】変異型AAR[1]~[3]。変異型AAR[1]は、(1)又は(2)に示すアミノ酸配列を有する:(1)配列番号1で表されるアミノ酸配列(アミノ酸配列1)からなり且つ(A)~(E)から選択される要件を備えるアミノ酸配列;(A)アミノ酸配列1の11番目のアミノ酸がロイシン以外のアミノ酸、(B)アミノ酸配列1の26番目のアミノ酸がチロシン以外のアミノ酸、(C)アミノ酸配列1の33番目のアミノ酸がフェニルアラニン以外のアミノ酸、(D)アミノ酸配列1の40番目のアミノ酸がグルタミン以外のアミノ酸、(E)アミノ酸配列1の61番目のアミノ酸がグルタミン酸以外のアミノ酸である、(2)前記(1)のアミノ酸配列において、11、26、33、40及び61番目以外の1又は複数個のアミノ酸が変異したアミノ酸配列。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
以下の[1]~[3]に示す、変異型アシル-ACPレダクターゼ
[1]
以下の(1)又は(2)に示すアミノ酸配列を有する、変異型アシル-ACPレダクターゼ:
(1)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなり、且つ、(A)~(E)からなる群より選択される少なくとも1つの要件を備えるアミノ酸配列
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列の11番目のアミノ酸がロイシン以外のアミノ酸である、
(B)配列番号1で表されるアミノ酸配列の26番目のアミノ酸がチロシン以外のアミノ酸である、
(C)配列番号1で表されるアミノ酸配列の33番目のアミノ酸がフェニルアラニン以外のアミノ酸である、
(D)配列番号1で表されるアミノ酸配列の40番目のアミノ酸がグルタミン以外のアミノ酸である、
(E)配列番号1で表されるアミノ酸配列の61番目のアミノ酸がグルタミン酸以外のアミノ酸である、
(2)前記(1)のアミノ酸配列において、11番目、26番目、33番目、40番目及び61番目以外の1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列
[2]
以下の(i)又は(ii)に示すアミノ酸配列を有する、変異型アシル-ACPレダクターゼ:
(i)配列番号35で表されるアミノ酸配列のC末端から1~4個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列
(ii)前記(i)のアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が欠失(但し、前記(i)のアミノ酸配列のC末端から1番目のアミノ酸の欠失を除く)、置換、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列
[3]
以下の(ア)又は(イ)に示すアミノ酸配列を有する、変異型アシル-ACPレダクターゼ:
(ア)グルタミン酸及び/又はアスパラギン酸からなる1~12アミノ酸長のアミノ酸配列が、配列番号35で表されるアミノ酸配列のC末端に連結したアミノ酸配列
(イ)前記(ア)のアミノ酸配列において、配列番号35で表されるアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列。
続きを表示(約 1,100 文字)【請求項2】
前記(A)~(E)からなる群より選択される少なくとも1つの要件を備え、
前記(A)において11番目のアミノ酸がフェニルアラニンであり、
前記(B)において26番目のアミノ酸がグリシン、イソロイシン、アラニン、メチオニン又はロイシンであり、
前記(C)において33番目のアミノ酸がグリシン、ロイシン、バリン又はメチオニンであり、
前記(D)において40番目のアミノ酸がリジン、チロシン、バリン、ヒスチジン、メチオニン、アルギニン又はグルタミン酸であり、
前記(E)において61番目のアミノ酸がアラニンである、
請求項1に記載の変異型アシル-ACPレダクターゼ。
【請求項3】
前記(B)、ならびに、(C)及び(D)からなる群より選択される少なくとも1つの要件を備え、
前記(B)において26番目のアミノ酸がグリシンであり、
前記(C)において33番目のアミノ酸がグリシンであり、
前記(D)において40番目のアミノ酸がリジン、チロシン、バリン、ヒスチジン又はメチオニンである、
請求項1に記載の変異型アシル-ACPレダクターゼ。
【請求項4】
前記(i)において、配列番号35で表されるアミノ酸配列のC末端から3又は4個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列である、
請求項1に記載の変異型アシル-ACPレダクターゼ。
【請求項5】
前記(ア)において、配列番号35で表されるアミノ酸配列のC末端に連結されるアミノ酸配列が、グルタミン酸からなる2~10アミノ酸長のアミノ酸配列である、
請求項1に記載の変異型アシル-ACPレダクターゼ。
【請求項6】
前記(ア)において、配列番号35で表されるアミノ酸配列のC末端に連結されるアミノ酸配列が、アスパラギン酸からなる3~9アミノ酸長のアミノ酸配列である、
請求項1に記載の変異型アシル-ACPレダクターゼ。
【請求項7】
前記(ア)において、配列番号35で表されるアミノ酸配列のC末端に連結されるアミノ酸配列が、グルタミン酸及びアスパラギン酸からなる3~6アミノ酸長のアミノ酸配列である、
請求項1に記載の変異型アシル-ACPレダクターゼ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載する変異型アシル-ACPレダクターゼをコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項9】
請求項8に記載するポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項10】
更に、アルデヒド脱ホルミル化オキシゲナーゼをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項9に記載のベクター。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
変異型アシル-ACPレダクターゼに関する。
続きを表示(約 5,100 文字)【背景技術】
【0002】
エネルギーの多くは化石燃料に依存している。しかし、化石燃料の枯渇抑制、二酸化炭素排出量の削減等の点から、化石燃料に代わる新たな燃料の開発が様々な産業分野において重要である。
【0003】
例えば、航空分野では化石燃料として主に原油が使用されており、該燃料に代わる持続可能な航空燃料(SAF;sustainable aviation fuel)が模索されている(非特許文献1)。SAFは、複数の持続可能性基準を満たし、代替燃料の物理的及び化学的特性が従来の航空燃料とほぼ同じであることが求められる。現在、SAF製造には4つの主要プロセスがあり(図1)、エステル及び脂肪酸の水素化処理(HEFA)、フィッシャー・トロプシュ合成(FT)、アルコールからジェットへの変換(ATJ)、糖から炭化水素への直接変換(DSHC)の各プロセスが挙げられる。例えば、HEFAプロセスは、SAF製造プロセスとして最も広く採用されており、植物油又は動物性脂肪から得られるトリグリセリドを、水素化処理、水素化分解及び異性化処理し、不純物を除去し、長鎖脂肪酸をより短い炭化水素に変換するプロセスである。また、これらのプロセスのなかでもDSHC-SIP(synthesized iso-paraffins(合成イソパラフィン))は、組み換え酵母又は大腸菌を用いて糖を炭素数15のファルネセン(C
15

24
)に変換し、その後、ファルネセンをファルネサン(C
15

32
)に変換するプロセスであり、得られた生成物を従来の航空燃料と混合して使用できることが知られている。DSHC-SIPは、単一の発酵タンク内で実施でき、他の3つのプロセスと比較して簡便な工程で実施できるといった点で利点を有する。しかし、DSHC-SIPでは、ファルネセンを更に処理してファルネサンに変換する必要がある点でいまだ煩雑といえる。
【0004】
これまでに、微生物を用いて所望の物質を生合成する技術が知られており、例えば、シアノバクテリアは光合成に伴い脂肪酸を生合成できることが知られている。脂肪酸生合成において重要な酵素であるアシル-ACPレダクターゼ(AAR;アシル-アシルキャリアタンパク質(アシル-ACP))還元酵素)は、補酵素(主にNADPH)を用いて、アシル-ACPを対応するアルデヒドへ変換する酵素であり、生成されたアルデヒドは、アルデヒド脱ホルミル化オキシゲナーゼ(ADO)による脱ホルム化によって対応するアルカン又はアルケンに変換される。AAR及びADOによる該変換は脂肪酸生合成の最終段階で生じ、AARにより生成されたアルデヒドが、対応するアルカン又はアルケンへとADOによって変換されることから、AARは、最終的に得られる生成物中の脂肪酸誘導体の組成を決定する重要な酵素である。また、公知の組み換え技術を用いてAAR及びADOを大腸菌で共発現させることにより前述のAARによる変換とADOによる変換が生じて、炭化水素を産生できることが知られている。このように、AAR及びADOは炭化水素を簡便に生産できる酵素として有用である。一方、AAR及びADOを用いた炭化水素生産において、アルカンをより効率よく生産することが望ましい。例えば、航空燃料に含まれる炭化水素は、主にアルカン(直鎖アルカン、分岐鎖アルカン、シクロアルカン)であり、オレフィンや芳香族炭化水素の割合は低いため、アルカン生産効率の向上は、得られた炭化水素をそのままバイオ燃料(ドロップインバイオ燃料)として利用する点で有用である。また、アルカン及びアルケンをより効率よく産生することも望ましい。アルケンは水素付加を行うことで比較的容易にアルカンに変換できることが知られているため、アルカン及び/又はアルケンの生産効率向上は、ひいてはアルカン生産効率の向上を容易にもたらすといえる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
国土交通省ホームページ内「持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進に向けた官民協議会」(https://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk8_000008.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アシル-ACPレダクターゼ(AAR)を用いた炭化水素生産において、アルカン及び/又はアルケンの生産効率を向上できる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、配列番号1で表されるアミノ酸配列であって、次の(A)~(E)からなる群より選択される少なくとも1つの要件を備えるアミノ酸配列を有する変異型アシル-ACPレダクターゼ(変異型AAR)を用いて炭化水素を生産した場合、アルカン及び/又はアルケンの生産効率を向上できることを見出した。
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列の11番目のアミノ酸がロイシン以外のアミノ酸である(例えばフェニルアラニン等)、
(B)配列番号1で表されるアミノ酸配列の26番目のアミノ酸がチロシン以外のアミノ酸である(例えばグリシン等)、
(C)配列番号1で表されるアミノ酸配列の33番目のアミノ酸がフェニルアラニン以外のアミノ酸である(例えばグリシン等)、
(D)配列番号1で表されるアミノ酸配列の40番目のアミノ酸がグルタミン以外のアミノ酸である(例えばリジン等)、
(E)配列番号1で表されるアミノ酸配列の61番目のアミノ酸がグルタミン酸以外のアミノ酸である(例えばアラニン等)。
【0008】
また、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、配列番号35で表されるアミノ酸配列のC末端から1~4個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列を有する変異型アシル-ACPレダクターゼ(変異型AAR)を用いて炭化水素を生産した場合に、アルカン及び/又はアルケンの生産効率を向上できることを見出した。
【0009】
また、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、グルタミン酸及び/又はアスパラギン酸からなる1~12アミノ酸長のアミノ酸配列を、配列番号35で表されるアミノ酸配列のC末端に連結させたアミノ酸配列を有する変異型アシル-ACPレダクターゼ(変異型AAR)を用いて炭化水素を生産した場合に、アルカン及び/又はアルケンの生産効率を向上できることを見出した。
【0010】
本発明はこれらの知見に基づき更に検討を重ねて完成されたものであり、本開示は例えば下記に代表される発明を包含する。
項1.以下の[1]~[3]に示す、変異型アシル-ACPレダクターゼ
[1]
以下の(1)又は(2)に示すアミノ酸配列を有する、変異型アシル-ACPレダクターゼ:
(1)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなり、且つ、(A)~(E)からなる群より選択される少なくとも1つの要件を備えるアミノ酸配列
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列の11番目のアミノ酸がロイシン以外のアミノ酸である、
(B)配列番号1で表されるアミノ酸配列の26番目のアミノ酸がチロシン以外のアミノ酸である、
(C)配列番号1で表されるアミノ酸配列の33番目のアミノ酸がフェニルアラニン以外のアミノ酸である、
(D)配列番号1で表されるアミノ酸配列の40番目のアミノ酸がグルタミン以外のアミノ酸である、
(E)配列番号1で表されるアミノ酸配列の61番目のアミノ酸がグルタミン酸以外のアミノ酸である、
(2)前記(1)のアミノ酸配列において、11番目、26番目、33番目、40番目及び61番目以外の1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列。
[2]
以下の(i)又は(ii)に示すアミノ酸配列を有する、変異型アシル-ACPレダクターゼ:
(i)配列番号35で表されるアミノ酸配列のC末端から1~4個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列
(ii)前記(i)のアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が欠失(但し、前記(i)のアミノ酸配列のC末端から1番目のアミノ酸の欠失を除く)、置換、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列。
[3]
以下の(ア)又は(イ)に示すアミノ酸配列を有する、変異型アシル-ACPレダクターゼ:
(ア)グルタミン酸及び/又はアスパラギン酸からなる1~12アミノ酸長のアミノ酸配列が、配列番号35で表されるアミノ酸配列のC末端に連結したアミノ酸配列
(イ)前記(ア)のアミノ酸配列において、配列番号35で表されるアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列。
項2.前記(A)~(E)からなる群より選択される少なくとも1つの要件を備え、
前記(A)において11番目のアミノ酸がフェニルアラニンであり、
前記(B)において26番目のアミノ酸がグリシン、イソロイシン、アラニン、メチオニン又はロイシンであり、
前記(C)において33番目のアミノ酸がグリシン、ロイシン、バリン又はメチオニンであり、
前記(D)において40番目のアミノ酸がリジン、チロシン、バリン、ヒスチジン、メチオニン、アルギニン又はグルタミン酸であり、
前記(E)において61番目のアミノ酸がアラニンである、
項1に記載の変異型アシル-ACPレダクターゼ。
項3.前記(B)、ならびに、(C)及び(D)からなる群より選択される少なくとも1つの要件を備え、
前記(B)において26番目のアミノ酸がグリシンであり、
前記(C)において33番目のアミノ酸がグリシンであり、
前記(D)において40番目のアミノ酸がリジン、チロシン、バリン、ヒスチジン又はメチオニンである、
項1又は2に記載の変異型アシル-ACPレダクターゼ。
項4.前記(i)において、配列番号35で表されるアミノ酸配列のC末端から3又は4個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列である、
項1に記載の変異型アシル-ACPレダクターゼ。
項5.前記(ア)において、配列番号35で表されるアミノ酸配列のC末端に連結されるアミノ酸配列が、グルタミン酸からなる2~10アミノ酸長のアミノ酸配列である、
項1に記載の変異型アシル-ACPレダクターゼ。
項6.前記(ア)において、配列番号35で表されるアミノ酸配列のC末端に連結されるアミノ酸配列が、アスパラギン酸からなる3~9アミノ酸長のアミノ酸配列である、
項1に記載の変異型アシル-ACPレダクターゼ。
項7.前記(ア)において、配列番号35で表されるアミノ酸配列のC末端に連結されるアミノ酸配列が、グルタミン酸及びアスパラギン酸からなる3~6アミノ酸長のアミノ酸配列である、
項1に記載の変異型アシル-ACPレダクターゼ。
項8.前記(ア)のアミノ酸配列が、グルタミン酸及び/又はアスパラギン酸からなる1~12アミノ酸長のアミノ酸配列が、配列番号35で表されるアミノ酸配列のC末端に直接連結したアミノ酸配列である、
項1及び5~7のいずれか一項に記載の変異型アシル-ACPレダクターゼ。
項9.項1~8のいずれか一項に記載する変異型アシル-ACPレダクターゼをコードする、ポリヌクレオチド。
項10.項9に記載するポリヌクレオチドを含むベクター。
項11.更に、アルデヒド脱ホルミル化オキシゲナーゼをコードするポリヌクレオチドを含む、項10に記載のベクター。
項12.項10又は11に記載するベクターで形質転換された細胞。
項13.アルデヒド脱ホルミル化オキシゲナーゼ存在下で、項1~8のいずれか一項に記載する変異型アシル-ACPレダクターゼを用いて、アルカン及びアルケンからなる群より選択される少なくとも1種を製造する方法。
【発明の効果】
(【0011】以降は省略されています)

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