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公開番号
2025077455
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2025-05-19
出願番号
2023189645
出願日
2023-11-06
発明の名称
異種タンパク質の大量生産が可能なナス科植物の四重変異体
出願人
学校法人立命館
代理人
弁理士法人京都七条特許事務所
,
個人
,
個人
主分類
C12N
5/14 20060101AFI20250512BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約
【課題】従来の方法と比較して、効率よく、また一度の形質転換で大量の異種タンパク質の生産を可能とする細胞又は植物体の提供。
【解決手段】DCL2遺伝子、DCL3遺伝子、及びDCL4遺伝子に機能喪失型変異を有するナス科植物細胞であって、外来遺伝子の発現能力が向上した、細胞。
【選択図】なし
特許請求の範囲
【請求項1】
DCL2遺伝子、DCL3遺伝子、及びDCL4遺伝子に機能喪失型変異を有するナス科植物細胞であって、外来遺伝子の発現能力が向上した、細胞。
続きを表示(約 750 文字)
【請求項2】
DCL4a及びDCL4b遺伝子に機能喪失型変異を有する、請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
前記ナス科植物がタバコ属に属する植物である、請求項1又は2に記載の細胞。
【請求項4】
外来遺伝子を有さないことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の細胞を有する植物体。
【請求項6】
(1)請求項1~4のいずれか1項に記載の細胞又は請求項5の植物体に、目的タンパク質をコードする核酸を導入する工程、及び
(2)工程(1)で核酸が導入された細胞又は植物体において該タンパク質を発現させる工程
を含む、目的タンパク質の製造方法。
【請求項7】
(3)工程(2)で得られた目的タンパク質を発現する細胞又は植物体から、該タンパク質を単離する工程を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(1)が、目的タンパク質をコードする核酸を有するアグロバクテリウム又は植物ウイルスベクターを細胞又は植物体に感染させる工程を含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記核酸がウイルス由来の複製システム又は植物ウイルスベクターをコードする配列を有する、請求項6~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
(1)請求項1~4のいずれか1項に記載の細胞又は請求項5に記載の植物体にウイルスを感染させ、該ウイルスを増殖させる工程、及び
(2)前記工程(1)により増殖したウイルスを回収する工程
を含む、ウイルスの増殖方法。
(【請求項11】以降は省略されています)
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、異種タンパク質の大量生産が可能なナス科植物の変異体に関する。より詳細には、本発明は、ダイサー様タンパク質(DCL)の機能を欠損したナス科植物細胞又は植物体、並びに該細胞又は植物体を用いた異種タンパク質の製造方法に関する。
続きを表示(約 4,200 文字)
【背景技術】
【0002】
異種タンパク質の産生に植物を利用したシステムは、細菌、酵母、及び動物細胞を利用したシステムの代替として注目されている。ニコチアナ・ベンサミアナ(Nicotiana benthamiana)などの特定の植物は、大規模で栽培することができ、異種タンパク質の大量産生を可能にする。植物で異種のタンパク質を産生する方法として、安定した形質転換を用いる方法と一過的な過剰発現方法の2つの方法がある。安定した形質転換は、再現性と大規模産生の面で利点があるものの、形質転換体の樹立に時間がかかるため、多種多様なコンストラクトの迅速な発現には適していない。一方、植物における一過的発現は短期間で高力価の異種タンパク質を産生することができる。一過的発現は、改変された植物ウイルスを用いる方法や、浸潤を介して体細胞組織に遺伝子を導入するAgrobacterium tumefaciensを利用する方法により可能になる。後者の方法で異種タンパク質を効率的に産生させるためには、転写活性を向上させ、mRNAレベルを増加させることや、翻訳活性を向上させ、mRNAを最大に翻訳させる必要がある(例えば、非特許文献1)。
【0003】
ところで、動物は、抗体抗原反応に代表される免疫機構を中心にウイルスの増殖を防ぐが、植物は獲得免疫機構を持たないため、RNA干渉(植物では、RNAサイレンシングと呼ぶ)がウイルス抵抗性において重要な役割を占めている。この機構を介して、遺伝子発現の制御や転位因子発現抑制も行っている。植物におけるRNAサイレンシングには、ウイルスなどの外来性の長い二本鎖RNA由来のsmall-interfering RNA(siRNA)が防御システムとして働くRNAi経路と、ヘアピン構造をとる前駆体RNAとしてゲノムにコードされ、発生、分化、環境応答などの生命現象の制御を行うmicroRNA(miRNA)の働くmiRNA経路の2つの経路が存在している。
【0004】
本発明者らは、以前、RNAi経路である、siRNAと相補的なmRNAの切断及び翻訳抑制を行うPost-transcriptional gene silencing(PTGS)経路と、相補的な遺伝子をDNAのメチル化を介して抑制し、転写制御を行うTranscriptional gene silencing(TGS)経路の2種類の経路に着目した。そして、PTGSを引き起こさない植物を作製するため、アグロバクテリウム法に好適なN.benthamianaを用いて、上記PTGS経路に関与するDCL遺伝子(dcl2、dcl4aおよびdcl4b)が破壊された形質転換体の作製を行ったところ、該形質転換体では、野生型植物体と比較して、導入した遺伝子の発現が増加することを見出した(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
WO 2022/054941
【非特許文献】
【0006】
Peyret, H. et al., Plant biotechnology journal, 13(8):1121-1135 (2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
植物ウイルスを用いた植物における一過的な異種タンパク質の発現においては、RNAサイレンシングによりウイルスの増殖が妨げられ、また導入遺伝子の発現抑制も生じ得るため、従来の異種タンパク質の発現方法では、十分な量のタンパク質を得るためには時間もコストもかかるとの課題があった。従って、本発明の課題は、従来の方法と比較して、効率よく、また一度の形質転換で大量の異種タンパク質の生産を可能とする細胞又は植物体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特許文献1に記載の発明を改良することで、外因性遺伝子のさらなる高発現できる方法の開発を試みた。鋭意研究を進めたところ、PTGS経路の阻害に加えて、TGS経路も阻害した変異体を作製し、該変異体を用いることで、遺伝子の発現効率を顕著に向上させることに成功した。アブラナ科モデル植物であるシロイヌナズナでは、PTGS経路やTGS経路の変異体が詳細に解析されてきたが、アグロバクテリウムによる免疫誘導が生じるため(例えば、Tsuda K. et al., Plant J,69(4):713-719 (2012)など)、一過的な異種タンパク質発現とRNAサイレンシングの関係については研究されていない。他方、PTGS経路のみを抑制する植物ウイルスのRNAサイレンシングサプレッサー(Tomato bushy stunt virusのp19など)を発現させることで、N.benthamianaにおける一過的な異種タンパク質発現効率を上昇させた例は多数報告されている(例えば、Takeda A. et al., FEBS Lett.,532(1-2):75-79 (2002)など)。しかし、TGS経路の抑制でN.benthamianaにおける一過的な異種タンパク質発現効率を上昇させた例は報告されていない。すなわち、N.benthamianaでPTGS経路に加えてTGS経路を阻害することによって一過的な遺伝子発現効率が顕著に上昇する事態は予想し難く、本発明によるナス科植物における外因性遺伝子の発現効率の顕著な向上は、驚くべきことであった。また、上記のナス科植物の変異体は、野生型植物体と比較して、導入した遺伝子の発現が約430倍も増加しているものも認められた。これらの知見に基づきさらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
[1]
DCL2遺伝子、DCL3遺伝子、及びDCL4遺伝子に機能喪失型変異を有するナス科植物細胞であって、外来遺伝子の発現能力が向上した、細胞。
[2-1]
DCL4a及びDCL4b遺伝子に機能喪失型変異を有する、[1]に記載の細胞。
[2-2]
全てのアリルにおけるDCL2遺伝子、DCL3遺伝子、DCL4a遺伝子およびDCL4b遺伝子に機能喪失型変異を有する、[1]又は[2-1]に記載の細胞。
[3-1]
前記ナス科植物がタバコ属に属する植物である、[1]~[2-2]のいずれか1つに記載の細胞。
[3-2]
前記タバコ属に属する植物がニコチアナ・ベンサミアナである、[3-1]に記載の細胞。
[4-1]
外来遺伝子を有さないことを特徴とする、[1]~[3-2]のいずれか1つに記載の細胞。
[4-2]
ヌル変異個体である、[4-1]に記載の細胞。
[4-3]
前記植物細胞が遺伝子組換え体である、[1]~[3-2]のいずれか1つに記載の細胞。
[4-4]
遺伝子組換えに用いた導入遺伝子を有さないことを特徴とする、[4-3]に記載の細胞。
[5-1]
[1]~[4-4]のいずれか1つに記載の細胞を有する植物体。
[5-2]
外来遺伝子を有さないことを特徴とする、[5-1]の植物体。
[5-3]
ヌル変異個体である、[5-2]に記載の植物体。
[6]
(1)[1]~[4-4]のいずれか1つに記載の細胞又は[5-1]~[5-3]のいずれか1つに記載の植物体に、目的タンパク質をコードする核酸を導入する工程、及び
(2)工程(1)で核酸が導入された細胞又は植物体において該タンパク質を発現させる工程
を含む、目的タンパク質の製造方法。
[7]
(3)工程(2)で得られた目的タンパク質を発現する細胞又は植物体から、該タンパク質を単離する工程を含む、[6]に記載の方法。
[8]
前記工程(1)が、目的タンパク質をコードする核酸を有するアグロバクテリウム又は植物ウイルスベクターを細胞又は植物体に感染させる工程を含む、[6]又は[7]に記載の方法。
[9-1]
前記核酸がウイルス由来の複製システム又は植物ウイルスベクターをコードする配列を有する、[6]~[8]のいずれか1つに記載の方法。
[9-2]
目的タンパク質が、酵素、抗体、インターフェロン及び抗原からなる群から選択される少なくとも1種である、[6]~[9-1]のいずれか1つに記載の方法。
[10]
(1)[1]~[4-4]のいずれか1つに記載の細胞又は[5-1]~[5-3]のいずれか1つに記載の植物体にウイルスを感染させ、該ウイルスを増殖させる工程、及び
(2)前記工程(1)により増殖したウイルスを回収する工程
を含む、ウイルスの増殖方法。
[11]
前記ウイルスが弱毒植物ウイルスである、[10]に記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、異種タンパク質の大量生産が可能なナス科植物の変異体が提供される。一実施態様において、本変異体の葉における一過性発現によって、野生型植物における場合と比較して、外来タンパク質(異種タンパク質)を400倍以上高く発現させることができるため、抗体のように複数遺伝子を同時に過剰発現させる場合などに特に強みを発揮する。また、本変異体では、RNAサイレンシングによる発現抑制が起こらないので、より長期間タンパク質を高発現させることが可能となる。さらに、本変異体は外来遺伝子を除去したヌル分離個体とすることもできるため、カルタヘナ法の対象外となり得るという有利な効果も有し、野生型植物同様、開放系で栽培が可能である。
【図面の簡単な説明】
(【0011】以降は省略されています)
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