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公開番号2025031494
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-03-07
出願番号2024039218
出願日2024-03-13
発明の名称歯科用硬化性組成物
出願人株式会社トクヤマデンタル
代理人
主分類A61K 6/818 20200101AFI20250228BHJP(医学または獣医学;衛生学)
要約【課題】 フロアブルタイプのバルクフィルCRとして使用でき、且つ一括充填による審美修復が可能な歯科用硬化性組成物を提供する。
【解決手段】 粘度が特定範囲内にあるラジカル重合性モノマー成分(A);該(A)及びその硬化体の屈折率よりも大きな屈折率を有する球状無機粒子からなる特定の平均粒子径及び粒度分布を有する球状無機粉粒体(b):及び光重合開始剤;を含むことにより構造色を発現する硬化体を与えることができる硬化性組成物において、前記(b)の一部を、その屈折率より小さく且つ前記(A)の硬化体の屈折率より大きな屈折率を有する樹脂マトリックス中に分散させた複合体の粒子からなる平均粒子及びD90が特定範囲内にある粉粒体(B2)として、前記(B)の残部(B1)と共に配合し、更に(B1)と(B2)の合計配合量及び両者の配合比を一定の範囲内とする。
【選択図】 なし
特許請求の範囲【請求項1】
1種のラジカル重合性単量体又は複数のラジカル重合性単量体の混合物からなり、25℃における粘度が100~500mPa・sであるモノマー成分(A)、
電子顕微鏡法によって測定される平均1次粒子径が230~500nmである無機球状粉粒体(b)からなり、当該粉粒体(b)の個数基準粒度分布において全粒子数の90%以上が前記所定の平均1次粒子径の前後の5%の範囲に存在する、1又は複数の“同一粒径球状粒子群”(B)、及び
光重合開始剤(C)
を含み、
前記(B)における“同一粒径球状粒子群”の数をaとし、aが1のときは1となり、aが2以上のときは1~aまでの自然数となる変数をmとし、各“同一粒径球状粒子群”を、その平均1次粒子径の小さい順にそれぞれB

で表し、25℃におけるナトリウムd線に対する屈折率をnで表したときに、
前記aが2以上の場合における各B

の平均1次粒子径は、それぞれ互いに25nm以上異なるという第1の条件、及び
前記(A)の硬化体(AP)の屈折率:nをn
(AP)
とし、前記各B

を構成する無機球状粉粒体(b)の屈折率:nをn
(Bm)
としたときに、何れのn
(Bm)
に対しても、

(AP)
<n
(Bm)
の関係が成り立つという第2の条件
を同時に満足する、
ことにより光の入射角度によらない所定の色調の構造色を発現する硬化体を与えることができる流動性組成物からなる歯科用硬化性組成物において、
前記(B)を構成する少なくとも1種の“同一粒径球状粒子群”となる前記無機球状粉粒体(b)の一部(B2F)は、該一部の無機球状粉粒体(B2F)が樹脂マトリックス(B2P)中に分散した複合体からなる粒子によって構成される有機無機粉粒体(B2)として前記歯科用硬化性組成物に含まれており、
前記(B2)を構成する個々の有機無機複合粒子に含まれる前記(B2F)は、単一の“同一粒径球状粒子群”を構成する無機球状粉粒体(b)の一部であり、前記(B2)の総質量に対する前記(B2F)の総質量で定義される平均無機含有率は、30~95質量%であり、前記(B2)のレーザー回折-散乱法により求められる体積基準の粒度分布におけるメディアン径は1~30μmであると共にD90は35μm未満であり、
前記歯科用硬化性組成物に含まれる(B)のうち、前記(B2F)以外の有機無機複合化されない状態で含まれる無機球状粒粉体を(B1)とし、前記モノマー成分(A)の屈折率:nをn
(A)
とし、前記(B2)を構成する個々の有機無機複合粒子について、これに含まれる前記(B2F)の屈折率:nをn
(B2F)
とし、前記(B2P)の屈折率:nをn
(B2P)
としたときに、
前記(B1)について、何れのn
(Bm)
に対しても、

(A)
<n
(Bm)
の関係が成り立ち、
前記(B2)を構成する全ての有機無機複合粒子について、

(AP)
<n
(B2F)
の関係および

(B2P)
<n
(B2F)
の関係が成り立ち、
前記(A)100質量に対する前記(B1)及び前記(B2)の総含有量が150~300質量部で、且つ、前記(B1)及び前記(B2)の合計量に対する前記(B2)の占める割合が50~70質量%の範囲内である、
ことを特徴とする歯科用硬化性組成物。
続きを表示(約 620 文字)【請求項2】
前記(B)の構成粒子以外の無機粒子からなる無機粉粒体(D)として、平均1次粒子径が1~100nmである微細粉粒体(D1)を、前記(A)100質量部に対して0.1~5質量部、更に含んでなる請求項1に記載の歯科用硬化性組成物。
【請求項3】
前記(B)の構成粒子以外の無機粒子からなる無機粉粒体(D)として、結晶性希土類金属フッ化物粒子によって構成され、電子顕微鏡法によって測定される平均1次粒子径が1~300nmであり、X線回折測定を行った時に得られるX線回折パターンにおける前記結晶性希土類金属フッ化物に由来する最大強度ピークの半値全幅が0.3°以上である希土類金属フッ化物粉粒体(D2)を更に含み、前記(A)100質量に対する当該(D2)の配合量が5~25質量部であり、且つ前記(A)100質量に対する前記(B1)、前記(B2)及び前記(D2)の総含有量が150~300質量部である、請求項1に記載の歯科用硬化性組成物。
【請求項4】
JIS T6514:2015に準じて測定される光硬化深さが3.5~5.0mmであり、水平ガラス平面上の直径5.5mm内の領域に載置した0.1gの試料を37℃で2分間自然延展させたときの広がり直径(mm)で評価される流動性が4.0~12.0mmである、請求項1乃至3の何れか1項に記載の歯科用硬化性組成物からなる歯科用コンポジットレジン。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用硬化性組成物、具体的にはフロアブルタイプのバルクフィルコンポジットレジンとして好適に使用できる歯科用硬化性組成物に関する。
続きを表示(約 2,500 文字)【背景技術】
【0002】
歯科治療においては、重合性単量体、充填材および重合開始剤を含む硬化性組成物からなる歯科用コンポジットレジン(以下、単に「CR」ともいう。)と呼ばれる歯科用充填材料を、齲蝕を除去した後の窩洞に充填した後、硬化させることにより窩洞を硬化体で塞ぐ修復(CR修復)が行われている。このようなCR修復は、歯質の切削量を少なくでき、天然歯牙色と同等の色調を付与できることや操作が容易なことから、急速に普及している。また、近年においては、硬化体の機械的強度の向上や、歯牙との接着力の向上から、前歯部の修復のみならず、高い咬合圧が加わる臼歯部に対しても使用されている。
【0003】
ところで、実際のCR修復においては、修復の具体的態様によって、操作性が良好となるCRの流動性や賦形性は異なることから、各社から様々な性状を有するCRが市場に供給されている。そして、CR修復を行う術者が実際の修復に適していると判断したものを選んで使用するのが一般的である。
【0004】
たとえば、CRは、充填時の操作性に影響を与えるような大まかな流動性の違いから、「ユニバーサルコンポジットレジン」(賦形性を重視した、流動性が低く比較的堅いペースト状のもの)と「フロアブルコンポジットレジン」(シリンジから直接充填可能な流動性を有するもの)とに大別されている。そして、フロアブルコンポジットレジン(以下、「フロアブルCR」ともいう。)については、「バルクフィルタイプ」と呼ばれるもの(以下、「バルクフィルCR」ともいう。)も開発されている。バルクフィルCRとは、たとえば深さ4mm程度の臼歯I級窩洞のような深い窩洞に一括充填してCR修復を行えるようにした光硬化型のCRであり、フロアブルタイプのバルクフィルCRは、フィラーの配合量を少なめにして一括充填可能な高い流動性を有するようにした点、光硬化に用いる光(光重合開始剤の活性化光)に対する透過性を高く(光硬化深さを深く)した点、及び樹脂と無機粉粒体との複合材粒子によって構成される粒粉体からなる充填材(以下、「有機無機複合フィラー」ともいう。)を用いて重合収縮を低減した点に特徴を有している。
【0005】
フロアブルタイプのバルクフィルCRは、このような優れた特長を有するものであるが、臼歯I級窩洞のような深い窩洞について高度な審美性を有する(天然歯の色調を再現する)CR修復を一括充填で行うことは困難であった。これは、歯牙の色調は、単に歯面部(エナメル質部分)の色調だけでなく、透けて見える深層部(象牙質部分)までの色調も融合してグラデーションに富む状態で観取されることによる。このため、深い窩洞の審美CR修復においは、従来の(バルクフィルCR以外の)フロアブルCRを用いた場合(非特許文献1及び2参照。)と同様に、一定の深さごとに、充填する硬化性ペーストの色調を変え、積層充填して、この微妙な色調を再現する必要があった。
【0006】
このような状況を受けて、硬化体の光散乱を制御して(所定の式で定義される拡散度:Dが一定の値以上となるように)して、一括充填により比較的高度な審美修復が可能なバルクフィルCRも提案されている(特許文献1参照。)。しかし、この場合にも、色調が各々異なる複数種のバルクフィルCRを用意し、その中から、修復する歯牙および隣接する天然歯牙の色調と最も近似した色調の材料を選定して、修復することが必要である。
【0007】
一方、特定の平均粒子径及び粒度分布を有する球状無機粉粒体からなるフィラーを用い、当該球状無機粉粒体の屈折率を硬化した時のマトリックスとなる樹脂部の屈折率よりも大きくすることにより、光の干渉や散乱等を利用して、光の入射角度に依存しない所定の色調に発色する構造色を発現するようにした歯科用硬化性組成物(以下、このような構造色を発現する歯科用硬化性組成物を「構造色系歯科用硬化性組成物」ともいう。)が、近年、提案され(特許文献2及び3参照。)、このような歯科用硬化性組成物からなるCR(以下、「構造色系CR」ともいう。)も開発されている。そして、上記構造色系歯科用硬化性組成物(構造色系CR)は、(1)染料物質や顔料物質を用いていないので経時変色の問題が起こり難く、(2)使用する球状無機粉粒体の平均粒子径に応じて、光の入射角度に依存しない特定の色調の構造色を発現し、特に平均1次粒子径が230~350nmの球状無機粉粒体を用いた場合には、象牙質色と同様の色である黄色~赤色に着色することができ、しかも(3)硬化体が適度な透明性を有するため、被修復歯牙の色と調和し易く、煩雑なシェードテイキングやコンポジットレジンのシェード選択を行うことなく、1種類のコンポジットレジンで広範な色の被修復歯牙に対して天然歯に近い外観の修復を行うことができる、という優れた特長を有することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
特許6966785号公報
国際公開第2020/050123号パンフレット
特許第6762623号公報
国際公開第2023/042598号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
松村英雄、田上順次監修,「接着YEARBOOK 2006」,第1版,クインテッセンス出版株式会社,2006年8月,p.129-137
宮崎真至著,「コンポジットレジン修復のサイエンス&テクニック」,第1版,クインテッセンス出版株式会社,2010年1月,p.48-49
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、フロアブルタイプのバルクフィルCRとして使用できる歯科用硬化性組成物であって、臼歯の深い窩洞の修復についても、(単独で用いた)一括充填による審美修復が可能な歯科用硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
(【0011】以降は省略されています)

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