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公開番号2025024965
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-02-21
出願番号2023129376
出願日2023-08-08
発明の名称SiCウェハのダイシング方法及びその装置
出願人国立大学法人 東京大学,個人
代理人個人,弁理士法人有我国際特許事務所
主分類H01L 21/301 20060101AFI20250214BHJP(基本的電気素子)
要約【課題】レーザ光の焦点調整が不要で、ウェハ切断面が垂直で設計通りの切断幅でダイシングでき、またダイシング時の機械的応力や熱応力を原因とした、ウェハ切断部のクラックやBPDの拡張を防止し、かつウェハ切断面の焼き付きも防止し、ウェハ表面へのデブリの残留も低減できるSiCウェハのダイシング方法及びその装置を提供する。
【解決手段】SiCウェハWのダイシング時、高圧水ビーム12にレーザ光Rを通して、これを水流の内壁に全反射させながらSiCウェハWを切断するウォーターガイドレーザ加工を採用した。そのため、レーザ光Rの焦点調整が不要で、ウェハ切断面が垂直で設計通りの切断幅でのダイシングができ、またダイシング時の機械的応力や熱応力を原因とした、ウェハ切断部のクラックやBPDの拡張を防止し、かつウェハ切断面の焼き付きを防ぎ、ウェハ表面へのデブリの残留も低減できる。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
レーザ光をSiCウェハの切断ライン上に照射して、前記SiCウェハをダイシングするSiCウェハのダイシング方法において、
前記切断ライン上で移動される高圧水ビーム内に前記レーザ光を通すことで、該レーザ光を前記高圧水ビームの内壁に全反射させながら前記SiCウェハをダイシングすることを特徴とするSiCウェハのダイシング方法。
続きを表示(約 1,200 文字)【請求項2】
前記レーザ光は、波長が300nm~1100nm、ピーク強度が0.3GW/cm
2
~1.5GW/cm
2
のパルスレーザ光で、
前記高圧水ビームは、ノズル径が20μm~100μmのジェットノズルから、50bar~350barで照射されたもので、
前記切断ライン上で走査される前記高圧水ビームの送り速度が、10mm/sec~100mm/secであることを特徴とする請求項1に記載のSiCウェハのダイシング方法。
【請求項3】
前記高圧水ビームを、前記SiCウェハに対して斜めに照射することで、ダイシング中に現出した前記SiCウェハの切断溝内のデブリを、その水圧によって洗浄・除去することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のSiCウェハのダイシング方法。
【請求項4】
レーザ光を発生させるレーザ光発振部と、
SiCウェハの切断ライン上に照射される高圧水ビームを発生させるための高圧水発生部と、
前記SiCウェハのダイシング時に、前記切断ラインに沿って前記SiCウェハと前記高圧水ビームとを相対的に移動させる移動手段と、
前記レーザ光を集光して前記高圧水ビーム内に通す集光レンズと、
前記レーザ光発振部からの前記レーザ光と、前記高圧水発生部からの前記高圧水とがそれぞれチャンバ内に導入されて、前記レーザ光が通された前記高圧水ビームを、このチャンバ内と連通したジェットノズルから噴出させる水チャンバとを備え、
前記レーザ光を前記高圧水ビームの内壁に全反射させながら、前記ジェットノズルを介して、前記SiCウェハの切断ライン上に照射した状態で、該切断ラインに沿って、前記移動手段により前記SiCウェハと前記高圧水ビームとを相対的に移動させて、前記Siウェハをダイシングすることを特徴とするSiCウェハのダイシング装置。
【請求項5】
前記レーザ光は、波長が300nm~1100nm、ピーク強度が0.3GW/cm
2
~1.5GW/cm
2
のパルスレーザ光で、
前記高圧水ビームは、ノズル径が20μm~100μmのジェットノズルから、50bar~350barで照射されたもので、
前記切断ライン上で走査される前記高圧水ビームの送り速度が、10mm/sec~100mm/secであることを特徴とする請求項4に記載のSiCウェハのダイシング装置。
【請求項6】
前記SiCウェハに対する前記高圧水ビームの照射角を変更するビーム照射角変更手段を有し、
ダイシング時に前記SiCウェハの切断溝内に現出したデブリを、前記ビーム照射角変更手段によって照射角を変更した前記高圧水ビームの水圧で除去することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のSiCウェハのダイシング装置。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、SiCウェハをダイシング(分割)し、SiCチップを得るSiCウェハのダイシング方法及びその装置に関する。
続きを表示(約 1,700 文字)【背景技術】
【0002】
単結晶SiC(炭化珪素)は、Si:C=1:1の組成比からなる共有結合結晶のIV-IV族化合物半導体である。SiC単結晶は、SiとCとの原子間距離が0.189nmと短く、結合エネルギーが約4.5eVと高いため、高フォノンエネルギー、高熱伝導度の材料となる。半導体としては、Si-Cの強い原子間結合力が、広いバンドギャップと高い絶縁破壊強度を実現する。
これにより、SiCはSi(シリコン)に比べて耐電圧性および耐熱性に優れ、デバイスの電力損失を約10分の1に低減できることから、パワーデバイスの材料として注目されている。しかしながら、SiCはSiに比べて高硬度であるため、ダイヤモンドブレードを使用したダイシングでは、SiCウェハを効率的に分割できなかった。
【0003】
そこで、近年、この課題を解消する技術として、例えば、特許文献1などに記載されたレーザダイシングが開発されている。これは、気体環境下でレーザ光をSiCウェハに照射することにより、照射部位のSiCを蒸散させてウェハを切断し、SiCチップ(SiCデバイス)を得るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許第5413861号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のレーザダイシングは、ドライレーザ加工であるため、SiCウェハにレーザを照射する際には、集光レンズにより集光された円錐状のレーザの焦点を調整する必要があった。
また、この従来法では、このように集光レンズを通過したレーザ光は円錐状であるため、これをSiCウェハの切断ライン上に照射してウェハを切断すれば、ウェハ切断面(加工断面)がテーパ面となり、設計通りのラインでSiCウェハを垂直に切断できなかった。
【0006】
さらに、ドライのレーザダイシングでは高エネルギーのレーザ光を使用するため、SiCウェハの切断部は機械的応力や熱応力を受けやすかった。その結果、ウェハの切断部にクラック等が生じて切断面が粗くなり、焼き付きも発生していた。さらには、ウェハ表面の切断部付近には、蒸散物であるデブリが残留していた。
【0007】
ところで、SiCのパワーデバイスは、電流が流れるアクティブ領域と、ダイシング時に発生した欠陥を考慮した耐圧保持領域のエッジターミネーション領域とから構成されている。ちなみに、このデバイスは、チップ全体に占めるエッジターミネーション領域の割合を少なくすることで、チップ当たりの通電量を上げることができる。
【0008】
また、SiCのパワーデバイスは耐圧長期信頼性が乏しい場合があり、その要因の1つとして、バルク欠陥(結晶欠陥)の基底面転位(BPD:Basal Plane Dislocation)が知られている。すなわち、パワーデバイスは厚さ方向に大電流を流すことから、通電による抵抗発熱によりデバイスが高温化し易く、常温に戻る際の熱応力で、エッジターミネーション領域のBPDが拡張されて積層欠陥となり抵抗値の増大を招き、最終的にチップ破壊が生じるおそれがあった。
【0009】
従来のSiCウェハのドライレーザ加工にあっては、ダイシング時に発生する高い熱の影響で、ウェハ切断面近傍にBPDが導入されあるいは拡張し、これを原因として、得られたSiCパワーデバイスのエッジターミネーション領域において最終的には積層欠陥となり、パワーデバイスの耐圧長期信頼性がさらに低下するおそれがあった。
【0010】
そこで、発明者らは鋭意研究の結果、従来のドライレーザ加工に代えて、高圧水流内にレーザ光を通して、レーザ光を水流の内壁に全反射させながらSiCウェハを切断するウォーターガイドレーザ(Water Guide Laser(以下、WGLとする場合がある))加工を採用すれば、上述した課題はすべて解消されることを知見し、この発明を完成させた。
(【0011】以降は省略されています)

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