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公開番号2025016014
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-01-31
出願番号2023119004
出願日2023-07-21
発明の名称成形物の製造方法及び接着性成形物
出願人AGC株式会社
代理人個人
主分類C08J 5/00 20060101AFI20250124BHJP(有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物)
要約【課題】ポリテトラフルオロエチレン及び特定のテトラフルオロエチレン系ポリマーを含み、ポリテトラフルオロエチレンのフィブリル構造に基づく繊維状の表面物性及び接着性を備え、クラックが生じにくく耐熱性、耐候性、電気特性等に優れる緻密な成形物の製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリテトラフルオロエチレンの粒子と、熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と、液状媒体とを含む分散液を配置し、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度超の温度域にて加熱して、前記ポリテトラフルオロエチレン及び前記テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む成形物を得る、成形物の製造方法であって、
前記加熱後に、少なくとも前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度以下まで、5℃/分未満の降温速度で降温させる、製造方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
ポリテトラフルオロエチレンの粒子と、熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と、液状媒体とを含む分散液を配置し、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度超の温度域にて加熱して、前記ポリテトラフルオロエチレン及び前記テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む成形物を得る、成形物の製造方法であって、
前記加熱後に、少なくとも前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度以下まで、5℃/分未満の降温速度で降温させる、製造方法。
続きを表示(約 730 文字)【請求項2】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度が、230~320℃である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、カルボニル基含有基を有するテトラフルオロエチレン系ポリマーである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ポリテトラフルオロエチレンの粒子の平均粒子径が0.01~10μmであり、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の平均粒子径が0.05~50μmであり、前者の平均粒子径が後者の平均粒子径以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記分散液における前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の含有量が、前記ポリテトラフルオロエチレンの粒子に対して、5質量%以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記加熱後に、少なくとも[前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度-10℃]まで、前記5℃/分未満の降温速度を維持する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記分散液が、さらに界面活性剤を含有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記分散液が、さらに無機フィラーを含有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記液状媒体が、水、アミド、ケトンおよびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記分散液を基材の表面に塗布して配置し、基材層と、ポリマー層とを有する積層体を形成する、請求項1に記載の製造方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、成形物の製造方法に関する。詳細には、本発明は、ポリテトラフルオロエチレン及び熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーを含む、積層体やプリプレグ等の成形物の製造方法に関する。
続きを表示(約 4,600 文字)【背景技術】
【0002】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)のコポリマー(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー(FEP)等のテトラフルオロエチレン系ポリマーは、離型性、電気特性、撥水撥油性、耐薬品性、耐候性、耐熱性等の物性に優れており、その物性を活用して、種々の産業用途に利用されている。
テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子が液状分散媒中に分散した分散液は、各種基材の表面に塗布すれば、その表面にテトラフルオロエチレン系ポリマーの物性を付与できるため、有用である。
特許文献1には、テトラフルオロエチレンに基づく単位及び酸素含有極性基を有する第1のポリマーのパウダーと、フルオロオレフィンに基づく単位を含む第2のポリマーのパウダーとを含み、第1のポリマーと第2のポリマーを所定含有量比で含む分散液が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
国際公開第2020/004339号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で提案される分散液より得られる成形物は、ポリテトラフルオロエチレンのフィブリル構造に基づく繊維状の表面物性及び接着性を備える。本発明者らは、特許文献1で提案される分散液より得られる成形物の性状及び物性に関し、より詳細に検討した結果、成形物の表面に局所的に熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーが露出したり偏在した部位が発生する場合があり、成形物の繊維状の表面物性には改善の余地があることを知見した。
そこで、本発明者らは、ポリテトラフルオロエチレンの粒子及び熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と液状分散媒とを含む分散液の基材表面への塗工、及びポリマー焼成の工程に着目して検討した。その結果、ポリマー焼成後の降温状態、具体的には降温速度を特定条件に制御すると、ポリテトラフルオロエチレンのフィブリル構造に基づく繊維状の表面物性及び接着性を備え、かつ厚い層を形成してもクラックが生じにくく、耐熱性、耐候性、電気特性等に優れる緻密な成形物が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明の目的は、ポリテトラフルオロエチレン及び特定のテトラフルオロエチレン系ポリマーを含み、ポリテトラフルオロエチレンのフィブリル構造に基づく繊維状の表面物性及び接着性を備え、クラックが生じにくく耐熱性、耐候性、電気特性等に優れる緻密な成形物を形成できる製造方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記の態様を有する。
〔1〕 ポリテトラフルオロエチレンの粒子と、熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と、液状媒体とを含む分散液を配置し、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度超の温度域にて加熱して、前記ポリテトラフルオロエチレン及び前記テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む成形物を得る、成形物の製造方法であって、前記加熱後に、少なくとも前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度以下まで、5℃/分未満の降温速度で降温させる、製造方法。
〔2〕 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度が、230~320℃である、〔1〕の製造方法。
〔3〕 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、カルボニル基含有基を有するテトラフルオロエチレン系ポリマーである、〔1〕又は〔2〕の製造方法。
〔4〕 前記ポリテトラフルオロエチレンの粒子の平均粒子径が0.01~10μmであり、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の平均粒子径が0.05~50μmであり、前者の平均粒子径が後者の平均粒子径以下である、〔1〕~〔3〕のいずれかの製造方法。
〔5〕 前記分散液における前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の含有量が、前記ポリテトラフルオロエチレンの粒子に対して、5質量%以上である、〔1〕~〔4〕のいずれかの製造方法。
〔6〕 前記加熱後に、少なくとも[前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度-10℃]まで、前記5℃/分未満の降温速度を維持する、〔1〕~〔5〕のいずれかの製造方法。
〔7〕 前記分散液が、さらに界面活性剤を含有する、〔1〕~〔6〕のいずれかの製造方法。
〔8〕 前記分散液が、さらに無機フィラーを含有する、〔1〕~〔7〕のいずれかの製造方法。
〔9〕 前記液状媒体が、水、アミド、ケトンおよびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、〔1〕~〔8〕のいずれかの製造方法。
〔10〕 前記分散液を基材の表面に塗布して配置し、基材層と、ポリマー層とを有する積層体を形成する、〔1〕~〔9〕のいずれかの製造方法。
〔11〕 前記ポリマー層の厚さが25μm以上である、〔10〕の製造方法。
〔12〕 前記分散液を繊維基材に含浸させて配置し、繊維基材にポリマーが含浸した含浸基材を形成する、〔1〕~〔9〕のいずれかの製造方法。
〔13〕 ポリテトラフルオロエチレンと、熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーとを含む接着性成形物であって、実質的にその全表面が、繊維状の表面物性を有する接着性成形物。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ポリテトラフルオロエチレン及び熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーを含み、ポリテトラフルオロエチレンのフィブリル構造に基づく繊維状の表面物性及び接着性を備え、クラックが生じにくく耐熱性、耐候性、電気特性等に優れる緻密な成形物を形成できる、製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の用語は、以下の意味を有する。
「平均粒子径(D50)」は、レーザー回折・散乱法によって求められる、粒子又はフィラーの体積基準累積50%径である。すなわち、レーザー回折・散乱法によって粒度分布を測定し、粒子又はフィラーの集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径である。
粒子又はフィラーのD50は、粒子を水中に分散させ、レーザー回折・散乱式の粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA-920測定器)を用いたレーザー回折・散乱法により分析して求められる。
粒子又はフィラーの「D90」は、上記D50と同様にして測定される、粒子又はフィラーの体積基準累積90%径である。
「溶融温度」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定したポリマーの融解ピークの最大値に対応する温度である。
「ガラス転移温度(Tg)」は、動的粘弾性測定(DMA)法でポリマーを分析して測定される値である。
「粘度」は、B型粘度計を用いて、25℃で回転数が30rpmの条件下で分散液を測定して求められる。測定を3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
「チキソ比」とは、分散液の、回転数が30rpmの条件で測定される粘度η

を、回転数が60rpmの条件で測定される粘度η

で除して算出される値である。それぞれの粘度の測定は、3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
ポリマーにおける「単位」とは、モノマーの重合により形成された前記モノマーに基づく原子団を意味する。単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって前記単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。以下、モノマーaに基づく単位を、単に「モノマーa単位」とも記す。
【0008】
本発明の製造方法(以下、「本法」とも記す。)は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の粒子(以下、「PTFE粒子」とも記す。)と、熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマー(以下、「Fポリマー」とも記す。)の粒子(以下、「F粒子」とも記す。)と、液状媒体とを含む分散液(以下、「本分散液」とも記す。)を配置し、前記Fポリマーの溶融温度超の温度域にて加熱して、前記PTFE及び前記Fポリマーを含む成形物を得る、成形物の製造方法であって、前記加熱後に、少なくとも前記Fポリマーの溶融温度以下まで、5℃/分未満の降温速度で降温させる、製造方法である。
本法によれば、PTFE及びFポリマーを含み、PTFEのフィブリル構造に基づく繊維状の表面物性及び接着性を備え、クラックが生じにくく耐熱性、耐候性、電気特性等に優れる緻密な成形物を形成できる。その理由は必ずしも明確ではないが、以下の様に考えられる。
【0009】
本法では、本分散液を配置して形成した塗工層を所定の温度域で加熱して、液状媒体を除去し、PTFE粒子及びFポリマー粒子を焼成してPTFE及びFポリマーを含む成形物を得る際に、加熱後に、少なくともFポリマーの溶融温度以下まで、5℃/分未満の降温速度で降温させる。すなわち、ポリマー焼成後の降温速度が所定の範囲で制御されることで降温が緩やかとなり、溶融したFポリマーが流動又は軟化した状態が保持されるため、急激な固化が抑制されやすくなる。かかる急激な固化の抑制によってPTFEとFポリマーの相互作用が促進されやすくなり、Fポリマーが成形物の表面にブリードアウトして、局所的に露出したり偏在したりすることが妨げられると推測される。その結果、表面にFポリマーがブリードアウトすることなく、緻密なPTFEの繊維状の表面物性を有する成形物が得られたと考えられる。
このように、本法で得られる成形物は表面全体においてPTFEのフィブリル構造に基づく繊維状の表面物性を有すると共に接着性を備え、また、緻密でクラックが生じにくく耐熱性、耐候性、電気特性等に優れる。さらにPTFEの物性に基づく、成形物表面における低摩擦性も保持されやすい。
そのため本法は、成形物にFポリマーを充分に含有させ、上記した物性に加えて、曲げ性等の力学的物性を高めたい場合に特に有用である。
【0010】
本発明において、Fポリマーは、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」とも記す。)に基づく単位(以下、「TFE単位」とも記す。)を含む、熱溶融性のポリマーである。ここで、熱溶融性のポリマーとは、荷重49Nの条件下、溶融流れ速度が1~1000g/10分となる温度が存在するポリマーを意味する。
Fポリマーの溶融温度は、230℃以上が好ましく、260℃以上がさらに好ましい。Fポリマーの溶融温度は、320℃以下が好ましく、315℃以下がより好ましい。この場合、本法で用いる本分散液が加工性に優れやすく、また、本分散液から形成されるポリマー層等の成形物が耐熱性に優れやすい。
Fポリマーは、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
(【0011】以降は省略されています)

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