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公開番号2025014818
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-01-30
出願番号2023117681
出願日2023-07-19
発明の名称原子線の量子的コリメーション方法、原子線の量子的コリメーター、原子干渉計、原子ジャイロスコープ
出願人日本航空電子工業株式会社,国立大学法人東京科学大学
代理人個人,個人,個人
主分類G21K 1/00 20060101AFI20250123BHJP(核物理;核工学)
要約【課題】レーザー光の高精度の平行配置を要することなく、レーザー光を用いて原子線をコリメートすること。
【解決手段】原子線110を量子的にコリメートする。原子線110に対してポンピングレーザー光701aとフィルタリングレーザー光701bをこの順で照射する。ポンピングレーザー光701aは原子線110に含まれる原子の基底状態と励起状態の間の遷移に対応する波長を持つ。ポンピングレーザー光701aの照射によって、原子を基底状態から励起状態に遷移させ、さらに励起状態から準安定状態に緩和させる。フィルタリングレーザー光701bは基底状態と準安定状態の間の遷移に対応する波長を持つ。フィルタリングレーザー光701bの照射によって、フィルタリングレーザー光701bの進行方向において所定の速さ成分Δvと同じ、または、Δvよりも小さい速さ成分を持っている準安定状態の原子を基底状態に遷移させる。
【選択図】図2
特許請求の範囲【請求項1】
原子線を量子的にコリメートする方法であって、
前記原子線に含まれる原子の基底状態と励起状態の間の遷移に対応する波長を持つポンピングレーザー光を前記原子線に対して照射することによって、前記原子を前記基底状態から前記励起状態に遷移させ、さらに前記励起状態から前記原子の準安定状態に緩和させる第1ステップと、
前記第1ステップの後、前記基底状態と前記準安定状態の間の遷移に対応する波長を持つフィルタリングレーザー光を前記原子線に対して照射することによって、前記フィルタリングレーザー光の進行方向において所定の速さ成分Δvと同じ、または、Δvよりも小さい速さ成分を持っている、前記準安定状態の前記原子を前記基底状態に遷移させる第2ステップと
を有する方法。
続きを表示(約 2,000 文字)【請求項2】
原子線を量子的にコリメートするコリメーターであって、
前記原子線に対してポンピングレーザー光およびフィルタリングレーザー光をこの順序で照射するように構成された照射装置を含み、
前記ポンピングレーザー光は、前記原子線に含まれる原子の基底状態と励起状態の間の遷移に対応する波長を持つレーザー光であり、
前記フィルタリングレーザー光は、前記励起状態の前記原子が緩和過程で遷移する準安定状態と前記基底状態の間の遷移に対応する波長を持つレーザー光である
コリメーター。
【請求項3】
請求項2に記載のコリメーターにおいて、
前記フィルタリングレーザー光はガウシアンビームであり、
前記原子線が前記フィルタリングレーザー光を通過することによって前記準安定状態から前記基底状態に遷移する前記原子の、前記フィルタリングレーザー光の進行方向における速さ成分の所定の最大値をΔvとし、前記フィルタリングレーザー光を横切る、前記フィルタリングレーザー光の進行方向において速さ成分を持たない原子のtransit-time broadeningをΔνとし、前記フィルタリングレーザー光を横切る、前記フィルタリングレーザー光の進行方向において速さ成分を持つ原子のスペクトル線の線幅が前記Δνよりも短縮することを表す1よりも小さい補正係数をαとし、前記フィルタリングレーザー光の波数をkとしたとき、
TIFF
2025014818000006.tif
11
169
が成立する
ことを特徴とするコリメーター。
【請求項4】
請求項3に記載のコリメーターにおいて、
α≒0.95である
ことを特徴とするコリメーター。
【請求項5】
請求項2に記載のコリメーターにおいて、
前記ポンピングレーザー光のパワー密度が前記基底状態と前記励起状態の間の遷移の飽和強度よりも大きく、且つ、
W>v×E×N
が成立する、ただし、Wは前記原子線が通過する前記ポンピングレーザー光の幅であり、vは前記原子線の進行方向における前記原子の速さ成分であり、Nは前記緩和過程において前記原子が所定の確率で前記励起状態から前記準安定状態に緩和するのに必要な緩和回数であり、Eは前記励起状態の前記原子が1回だけ緩和するのに要する時間の期待値である、
ことを特徴とするコリメーター。
【請求項6】
請求項2に記載のコリメーターにおいて、
前記ポンピングレーザー光の進行方向は、前記フィルタリングレーザー光の進行方向と平行ではない
ことを特徴とするコリメーター。
【請求項7】
原子干渉計であって、
原子線を連続生成する原子線生成装置と、
3個以上の進行光定在波を生成する進行光定在波生成装置と、
前記原子線と前記3個以上の進行光定在波とが相互作用した結果の原子線を得る干渉装置と
を含み、
前記原子線生成装置は、
原子線源と、
コリメーターと
を含み、
前記コリメーターは、
前記原子線に対してポンピングレーザー光およびフィルタリングレーザー光をこの順序で照射するように構成された照射装置を含み、
前記ポンピングレーザー光は、前記原子線に含まれる原子の基底状態と励起状態の間の遷移に対応する波長を持つレーザー光であり、
前記フィルタリングレーザー光は、前記励起状態の前記原子が緩和過程で遷移する準安定状態と前記基底状態の間の遷移に対応する波長を持つレーザー光である
ことを特徴とする原子干渉計。
【請求項8】
原子ジャイロスコープであって、
原子線を連続生成する原子線生成装置と、
3個以上の進行光定在波を生成する進行光定在波生成装置と、
前記原子線と前記3個以上の進行光定在波とが相互作用した結果の原子線を得る干渉装置と、
前記干渉装置からの前記原子線を観測することによって角速度または加速度を検出する観測装置と
を含み、
前記原子線生成装置は、
原子線源と、
コリメーターと
を含み、
前記コリメーターは、
前記原子線に対してポンピングレーザー光およびフィルタリングレーザー光をこの順序で照射するように構成された照射装置を含み、
前記ポンピングレーザー光は、前記原子線に含まれる原子の基底状態と励起状態の間の遷移に対応する波長を持つレーザー光であり、
前記フィルタリングレーザー光は、前記励起状態の前記原子が緩和過程で遷移する準安定状態と前記基底状態の間の遷移に対応する波長を持つレーザー光である
ことを特徴とする原子ジャイロスコープ。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本開示は、原子線を量子的にコリメート(collimate)するための技術に関する。
続きを表示(約 3,000 文字)【背景技術】
【0002】
近年、原子線リソグラフィや原子干渉計などにおいてコリメートされた原子線が使用されている。原子線をコリメートする技術として、例えば、原子線源から出た原子線を、原子線の進行方向に間隔を空けた複数のスリットを用いてコリメートする技術(例えば、非特許文献1の図2に示される構成を参照)、2次元磁気光学トラップ(two-dimensional magneto-optical trap; 2D-MOT)機構(例えば、非特許文献2を参照)を用いてコリメートする技術、互いに平行に配置された少なくとも3個のレーザー光を用いてコリメートする技術(例えば、特許文献1を参照)が知られている。とりわけ、特許文献1に開示されるコリメーション技術は、小さいサイズ(特に、原子線の進行方向における小さいサイズ)で実施でき且つ原子フラックスの低下を低減できながら、良好なコリメーションも達成できる点で優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
日本国特許第6713643号
【非特許文献】
【0004】
St. Bernet, R. Abfalterer, C. Keller, M. Oberthaler, J. Schmiedmayer and A. Zeilinger, “Matter waves in time-modulated complex light potentials,” Phys. Rev. A 62, 023606 (2000).
J. Schoser, A. Batar, R. Low, V. Schweikhard, A. Grabowski, Yu. B. Ovchinnikov, and T. Pfau, “Intense source of cold Rb atoms from a pure two-dimensional magneto-optical trap,” PHYSICAL REVIEW A, 66, 023410 2002.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるコリメーション技術は、上述のとおり、優れたコリメーション技術ではあるが、高い精度で2個のレーザー光を平行に配置することを必要とする。特許文献1に開示されるコリメーション技術は、第1レーザー光によって、原子線の進行方向と直交する方向(“直交方向”)に十分に小さな所定の速さ成分を持つ原子を基底状態から第1の励起状態に遷移させ、第2レーザー光によって、第1の励起状態にいる原子が自然放出によって基底状態に落ちる前に、基底状態にいる原子(つまり、直交方向に十分に小さな所定の速さ成分を持つ原子以外の原子)に運動量を与え、さらに、第3レーザー光によって、直交方向に十分に小さな所定の速さ成分を持つ原子を第1の励起状態から基底状態に戻し、この結果、原子線の良好なコリメーションを達成する。したがって、特に、第1レーザー光と第3レーザー光が高い精度で互いに平行に配置されることが要求される。さもなければ、第1レーザー光に共鳴した原子が第3レーザー光に共鳴せず、よって、直交方向に十分に小さな所定の速さ成分を持つ原子のエネルギー固有状態を第1の励起状態から基底状態に戻すことが難しい。精度の一例として、第1レーザー光と第3レーザー光の相対角度は0.1ミリラジアン(mrad)未満である。
【0006】
上述の背景技術および技術的課題に鑑みて、レーザー光の高精度の平行配置を要することなく、レーザー光を用いて原子線をコリメートする技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに記載される技術事項は、特許請求の範囲に記載された発明を明示的にまたは黙示的に限定するためではなく、さらに、本発明によって利益を受ける者(例えば出願人と権利者である)以外の者が特許請求の範囲に記載された発明を限定できるようにするためでもなく、単に、本発明の要点を容易に理解するために提供される。他の観点からの本発明の概要は、例えば、この特許出願の出願時の特許請求の範囲から理解できる。
【0008】
上述の先行技術は原子線を物理的にコリメートする技術であるが、本開示のコリメーション技術は原子線を量子的にコリメートする技術である。「物理的コリメーション」は原子線の、長さの次元を持つ幅を狭めることであるが、「量子コリメーション」は、広がりながら進む原子線の中で或る方向に進む、当該原子線に含まれる原子--正確に言えば、後述するフィルタリングレーザー光の進行方向において所定の速さ成分Δvと同じ、または、Δvよりも小さい速さ成分を持っている原子--だけを所望のエネルギー固有状態にすることである。換言すると、「量子コリメーション」によると、原子線の幅は制御されないが、当該原子線において、所望のエネルギー固有状態の原子は、当該原子線の中で既述の或る方向と直交する方向において所定の速さ成分Δvと同じ、または、Δvよりも小さい速さ成分を持っており、したがって、量子論的観点から当該原子線は既述の或る方向に関してコリメートされている。所望のエネルギー固有状態の原子と他のエネルギー固有状態の原子が原子線の中で一緒に存在するにしても、所望のエネルギー固有状態の原子と相互作用する光に対して他のエネルギー固有状態の原子は不感であるから、量子的にコリメートされた原子線は実用的である。ただし、他のエネルギー固有状態の寿命はできるだけ長いことが望ましい。コリメーションの観点からΔvは、通例、十分に小さい値に設定されるが、Δvの具体的な数値は実例に応じて決定される。
【0009】
本開示の方法は、原子線を量子的にコリメートする方法である。この方法は、原子線に含まれる原子の基底状態と励起状態の間の遷移に対応する波長を持つポンピングレーザー光を原子線に対して照射することによって、原子線に含まれる原子を基底状態から励起状態に遷移させ、さらに励起状態から原子の準安定状態に緩和させることと、ポンピングレーザー光の照射の後、基底状態と準安定状態の間の遷移に対応する波長を持つフィルタリングレーザー光を原子線に対して照射することによって、当該フィルタリングレーザー光の進行方向において所定の速さ成分Δvと同じ、または、Δvよりも小さい速さ成分を持っている、原子線に含まれる準安定状態の原子を基底状態に遷移させることを含む。
【0010】
本開示のコリメーターは、原子線を量子的にコリメートするコリメーターである。このコリメーターは、原子線に対してポンピングレーザー光およびフィルタリングレーザー光をこの順序で照射するように構成された照射装置を含む。ポンピングレーザー光は、原子線に含まれる原子の基底状態と励起状態の間の遷移に対応する波長を持つレーザー光である。フィルタリングレーザー光は、励起状態の原子が緩和過程で遷移する準安定状態と基底状態の間の遷移に対応する波長を持つレーザー光である。
【発明の効果】
(【0011】以降は省略されています)

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