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公開番号2025012944
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-01-24
出願番号2023116153
出願日2023-07-14
発明の名称ニッケル硫化物原料の処理方法、並びに硫黄回収方法
出願人住友金属鉱山株式会社
代理人個人,個人
主分類C01B 17/027 20060101AFI20250117BHJP(無機化学)
要約【課題】ニッケル硫化物原料を塩素浸出する工程で発生する塩素浸出残渣を昇温した塩素浸出残渣溶融物の固液分離性の悪化を防いで、その塩素浸出残渣から効率的に硫黄を回収することを可能にする、ニッケル硫化物原料の処理方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、鉄及び砒素を含むニッケル硫化物原料の処理方法であり、2価銅イオンを含む含銅含鉄粗塩化ニッケル水溶液とニッケル硫化物原料とを混合し、ニッケル硫化物原料中のニッケルを置換浸出することで銅イオンが除去されたセメンテーション終液とセメンテーション残渣とを得るセメンテーション工程と、セメンテーション残渣をレパルプして得られるセメンテーション残渣スラリーに塩素ガスを吹込んで塩素浸出スラリーを生成させ、塩素浸出液と塩素浸出残渣とを得る塩素浸出工程と、を含み、塩素浸出工程では、塩酸を添加して、生成する前記塩素浸出液の塩酸濃度を調整することにより、その塩素浸出液のpHを-0.1以下とする。
【選択図】図5

特許請求の範囲【請求項1】
不純物として鉄及び砒素を含むニッケル硫化物原料の処理方法であって、
2価の銅イオンを含む含銅含鉄粗塩化ニッケル水溶液とニッケル硫化物原料とを混合し、該含銅含鉄粗塩化ニッケル水溶液中の銅イオンによって該ニッケル硫化物原料中のニッケルを置換浸出することで、銅イオンが除去された含鉄粗塩化ニッケル水溶液と硫化銅を含む沈澱物との混合物であるセメンテーションスラリーを生成させ、固液分離によってセメンテーション終液とセメンテーション残渣とに分離するセメンテーション工程と、
前記セメンテーション残渣をレパルプしてセメンテーション残渣スラリーとした後、該セメンテーション残渣スラリーに塩素ガスを吹き込んで該セメンテーション残渣中の重金属を浸出して塩素浸出スラリーを生成させ、固液分離によって塩素浸出液と塩素浸出残渣とに分離する塩素浸出工程と、を含み、
前記塩素浸出液を前記含銅含鉄粗塩化ニッケル水溶液として繰り返すことで構成される原料処理プロセスにおいて、
前記塩素浸出工程では、塩酸を添加して、生成する前記塩素浸出液の塩酸濃度を調整することにより、該塩素浸出液のpHを-0.1以下とする、
ニッケル硫化物原料の処理方法。
続きを表示(約 1,000 文字)【請求項2】
前記塩素浸出スラリーから分離して得られる前記塩素浸出残渣中の鉄品位を0.3質量%以下、砒素品位を0.2質量%以下とする、
請求項1に記載のニッケル硫化物原料の処理方法。
【請求項3】
前記塩素浸出残渣を融解槽中で加熱することによって該塩素浸出残渣に含まれる硫黄分を融解して塩素浸出残渣溶融物にし、該塩素浸出残渣溶融物を固液分離して液体硫黄と融解残渣とを得る硫黄回収工程をさらに含み、
前記硫黄回収工程での固液分離の処理において、回分式リーフ型濾過装置で濾過したときの通液性を制御する、
請求項1に記載のニッケル硫化物原料の処理方法。
【請求項4】
前記硫黄回収工程での固液分離の処理において、回分式リーフ型濾過装置で濾過したときの通液性として、単位濾過面積当たりの硫黄回収量が40kg/m

以上である、
請求項3に記載のニッケル硫化物原料の処理方法。
【請求項5】
不純物として鉄及び砒素を含むニッケル硫化物原料を塩素浸出して得られる塩素浸出残渣から硫黄を回収する方法であって、
2価の銅イオンを含む含銅含鉄粗塩化ニッケル水溶液とニッケル硫化物原料とを混合し、該含銅含鉄粗塩化ニッケル水溶液中の銅イオンによって該ニッケル硫化物原料中のニッケルを置換浸出することで、銅イオンが除去された含鉄粗塩化ニッケル水溶液と硫化銅を含む沈澱物との混合物であるセメンテーションスラリーを生成させ、固液分離によってセメンテーション終液とセメンテーション残渣とに分離するセメンテーション工程と、
前記セメンテーション残渣をレパルプしてセメンテーション残渣スラリーとした後、該セメンテーション残渣スラリーに塩素ガスを吹き込んで該セメンテーション残渣中の重金属を浸出して塩素浸出スラリーを生成させ、固液分離によって塩素浸出液と塩素浸出残渣とに分離する塩素浸出工程と、を含み、
前記塩素浸出液を前記含銅含鉄粗塩化ニッケル水溶液として繰り返すことで構成される原料処理プロセスにおいて、
さらに、前記塩素浸出残渣を融解槽中で加熱することによって該塩素浸出残渣に含まれる硫黄分を融解して塩素浸出残渣溶融物にし、該塩素浸出残渣溶融物を固液分離して液体硫黄と融解残渣とを得る硫黄回収工程を含み、
前記塩素浸出工程では、塩酸を添加して、生成する前記塩素浸出液の塩酸濃度を調整することにより、該塩素浸出液のpHを-0.1以下とする、
硫黄回収方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル、コバルト、銅及び硫黄を含むとともに、不純物として鉄及び砒素を含むニッケル硫化物を原料として、塩素によりニッケルやコバルトを浸出させる塩素浸出工程で発生する塩素浸出残渣から効率的に硫黄を回収することを可能にするニッケル硫化物原料の処理方法、並びにその処理方法を経て得られた塩素浸出残渣から硫黄を回収する硫黄回収方法に関する。
続きを表示(約 2,300 文字)【背景技術】
【0002】
ニッケルの湿式製錬プロセス(以下、「MCLEプロセス」ともいう)では、原料であるニッケルマットやニッケル・コバルト混合硫化物(MS:ミックスサルファイド)を塩素浸出し、得られた浸出液(塩素浸出液)から不純物を除去する浄液工程等を経て、電解工程にて電気ニッケルや電気コバルトの形態としてニッケルやコバルトを回収する。MCLEプロセスの技術については、例えば、特許文献1、特許文献2に開示されている。
【0003】
図1に示すように、塩素浸出を行う塩素浸出工程から得られた塩素浸出液は、セメンテーション工程との間に備えられた脱銅電解工程において余剰の銅が除去され、さらに、脱鉄工程において鉄や砒素等の不純物が除去された後、コバルト溶媒抽出工程に送られる。コバルト溶媒抽出工程では、溶媒抽出によりニッケルとコバルトとが分離し、粗塩化ニッケル溶液(NiCl

)と粗塩化コバルト溶液(CoCl

)とが得られる。粗塩化ニッケル溶液は、浄液工程においてさらに不純物が除去され高純度となってニッケル電解工程に送られる。そして、ニッケル電解工程では、電解採取により電気ニッケルが製造される。一方、粗塩化コバルト溶液についても、浄液工程においてさらに不純物が除去され高純度となってコバルト電解工程に送られ、コバルト電解工程にて電解採取により電気コバルトが製造される。
【0004】
また、MCLEプロセスでは、塩素浸出により得られた塩素浸出液(含銅塩化ニッケル水溶液)中に含まれる不純物である銅イオンを除去する工程として、セメンテーション工程を有している。セメンテーション工程では、塩素浸出液中に含まれる2価銅イオンの酸化力を利用してニッケルマットやMS(以降、これらを総称して「ニッケル硫化物原料」とも表記することがある)中のニッケル、コバルトを浸出するとともに、ニッケルマットやMSの還元力を利用して塩素浸出液中に含まれる銅イオンや銀イオンを固体側へ分配させて除去している。
【0005】
さて、塩素浸出工程から塩素浸出液と分離して得られる塩素浸出残渣には、溶け残った金属含有成分(ニッケル、コバルト、銅の硫化物等)も含まれているが、主成分は単体硫黄で構成されている。そのため、分離した塩素浸出残渣を硫黄回収工程に送り、塩素浸出残渣に含まれる硫黄を回収して副産物とする処理が行われる。具体的には、硫黄回収工程では、硫黄の融点が比較的低いことを利用して、塩素浸出残渣に含まれる硫黄のみが融解して液体硫黄となる温度にその塩素浸出残渣を昇温して塩素浸出残渣溶融物とした後、融体専用のメッシュフィルターを用いて固液分離を行うことで、純度の高い硫黄を回収することができる。
【0006】
このとき、金属含有成分の融点は非常に高いため溶融はしないものの、それらの金属含有成分の一部がメッシュフィルターの目を詰まらせることが原因で、固液分離性(メッシュフィルターによる液体硫黄の通液性)を著しく悪化させることがある。このことから、塩素浸出残渣中には固液分離性を悪化させる要因となり得る成分の含有量が少ないことが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
特開2018-3104号公報
特開2019-81920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、硫黄回収工程での固液分離においてメッシュフィルターによる通液性の悪化を防ぐためには、塩素浸出残渣に含まれる、固液分離性を悪化させる成分の含有量を抑制する必要があり、その手段が求められている。ここで、メッシュフィルターとは、濾過材が金網状もしくは多孔板状の固液分離装置を指すが、例えば、回分式リーフ型濾過装置がそれに相当する。
【0009】
硫黄回収工程における固液分離処理では、通常の水溶液と固体との混合物であるスラリーの濾過操作とは違い、常温では固体である硫黄を昇温により液体化した液体硫黄と固体との混合物であるスラリーの濾過操作を行うため、通液性の悪化は液体硫黄の通液量の低下を意味し、液温の低下によって更なる通液性の悪化を引き起す。またさらには、通液不能な状態に至ることもある。より詳しく説明すると、当然のことながら固液分離装置は配管も含めてシェル側には保温が施されてはいるものの、濾板等の内部部品には加温又は保温が施されていない。よって、通液量が低下すると塩素浸出残渣溶融物そのものが保有する顕熱が少なからず放散するため、塩素浸出残渣溶融物の温度が低下し、粘度が上昇する。粘度が上昇すると、さらに通液量が低下し、温度が低下する。温度が硫黄の融点以下にまで低下すると、固体硫黄が析出し、通液不能となることもある。
【0010】
ニッケル硫化物原料やセメンテーション残渣を塩素浸出して得られる塩素浸出残渣は、そのニッケル硫化物原料やセメンテーション残渣を構成する各化合物の粒子構造に基づけば、硫黄以外の金属含有成分の溶け残りであっても、非浸出成分がスポンジのようにポーラス状に残留しているため、濾過性は良好である。ところが、塩素浸出の反応中に二次的に生成する沈澱物については、微細な粒子となるため、著しく濾過性を悪化させることが分かった。
(【0011】以降は省略されています)

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