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公開番号2025004834
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-01-16
出願番号2023104688
出願日2023-06-27
発明の名称高強度鋼管杭用鋼管およびその製造方法
出願人JFEスチール株式会社
代理人個人,個人,個人,個人
主分類C22C 38/00 20060101AFI20250108BHJP(冶金;鉄または非鉄合金;合金の処理または非鉄金属の処理)
要約【課題】 本発明は、API X100グレード以上の高強度鋼管であって、靭性に優れ、かつ表層硬さを低減した高強度鋼管杭用鋼管を提供することにある。
【解決手段】 特定の成分組成を有し、特定の関係式を満足する成分組成であり、ミクロ組織はベイナイト組織が80%以上、島状マルテンサイトが20%以下、残部が残留オーステナイト、疑似パーライト、フェライトのうち1種または2種以上かつ残部の合計面積率が20%以下であり、Nb、Ti、Moを1種以上含み且つ円相当径で20nm以下である複合炭化物が5個/μm2以上であり、降伏強度が690MPa以上、引張強度が760MPa以上、表面から1mm位置の表層硬さが350HV10以下であることを特徴とする、高強度鋼管杭用鋼管。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
母材部と溶接部を有する高強度鋼管杭用鋼管であって、
母材部が、質量%で、
C:0.04~0.10%、
Si:0.01~0.5%、
Mn:1.5~2.5%、
P:0.015%以下、
S:0.0020%以下、
Al:0.08%以下、
Cr:0.01~0.5%、
Mo:0.01~0.5%、
Ti:0.005~0.025%、
Nb:0.005~0.08%、
N:0.001~0.010%、
O:0.0050%以下、
を含有し、
下記(1)式であらわされるCeq値に対して、Ceq値≧0.48を満足し、かつ下記(2)式であらわされるP値に対して、P値≧0.15を満足し、かつ下記(3)式であらわされる質量%のCr、Moの合計値Q値に対して、Q値≧0.50かつCr≦Moを満足し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
ミクロ組織はベイナイト組織が80%以上、島状マルテンサイトが20%以下、残部が残留オーステナイト、疑似パーライト、フェライトのうち1種または2種以上かつ残部の合計面積率が20%以下であり、
Nb、Ti、Moを1種以上含み且つ円相当径で20nm以下である複合炭化物が5個/μm

以上であり、
降伏強度が690MPa以上、引張強度が760MPa以上、表面から1mm位置の表層硬さが350HV10以下であることを特徴とする高強度鋼管杭用鋼管。
Ceq値=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5・・・(1)
但し、(1)式の元素記号は各含有元素の質量%を示す。
P値=(Mo/95.9+Nb/92.91+V/50.94+Ti/47.9)/(100/55.85)×100・・・・(2)
但し、(2)式の元素記号は各含有元素の質量%である。
Q値= Cr+Mo ・・・(3)
但し、(3)式の元素記号は各含有元素の質量%を示す。
続きを表示(約 550 文字)【請求項2】
前記成分組成は、さらに、質量%で、
V:0.005~0.1%、
Cu:0.5%以下、
Ni:0.5%以下、
Ca:0.0005~0.0035%、
REM:0.0005~0.0100%、
B:0.002%以下の中から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度鋼管杭用鋼管。
【請求項3】
請求項1または2に記載の成分組成を有する鋼素材を、
1100~1300℃の温度に加熱し、熱間圧延した後、Ar3点以上から冷却開始し、20℃/s以上の平均冷却速度で300℃未満の冷却停止温度まで加速冷却を行い、鋼板とし、
前記鋼板を素材とし、鋼板長手方向に筒状に成形した後、鋼板の端面ともう一方の端面とを突き合せた突合せ部を内外面から1層ずつ長手方向に溶接して管状とし、拡管して製造する、降伏強度が690MPa以上、引張強度が760MPa以上、表面から1mm位置の表層硬さが350HV10以下であることを特徴とする高強度鋼管杭用鋼管の製造方法。
【請求項4】
拡管後、100~300℃に再加熱して製造することを特徴とする請求項3に記載の高強度鋼管杭用鋼管の製造方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、港湾構造物や防潮堤に用いるAPI X100グレード以上(JISのSBHS700グレード以上)の強度を有する高強度鋼管杭用鋼管に関し、特に強度と靭性に優れることを特徴とする。
続きを表示(約 3,400 文字)【背景技術】
【0002】
港湾構造部や防潮堤等に用いられる鋼管杭において、鋼管に対しては高い強度、特に掘削時の海底での外圧による破壊防止のため、高強度かつ高靭性を確保することが要求される。近年、構造物大型化に伴い、API X100グレード以上の高強度鋼管に対する要求も高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特開平11-50188号公報
特開2001-158939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の鋼板はPWHT処理による強度低下をPWHT時のCr炭化物の析出によって補っているため、多量のCrの添加が必要となっており、素材コストが高いだけでなく、溶接性や靱性の低下が問題となっている。一方、特許文献2に記載の鋼管はシーム溶接金属の特性改善を主眼においており、母材に対しては特段の配慮がなされていない。また、一般的に高強度のX100グレード以上では、表層硬さの増加に伴い、造管溶接後の拡管時の拡管割れが課題となることが多く、抜本的な対策が必要となっている。
本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、API X100グレード以上の高強度鋼管であって、靭性に優れ、かつ表層硬さを低減した高強度鋼管杭用鋼管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
[1] 母材部と溶接部を有する高強度鋼管杭用鋼管であって、
母材部が、質量%で、
C:0.04~0.10%、
Si:0.01~0.5%、
Mn:1.5~2.5%、
P:0.015%以下、
S:0.0020%以下、
Al:0.08%以下、
Cr:0.01~0.5%、
Mo:0.01~0.5%、
Ti:0.005~0.025%、
Nb:0.005~0.08%、
N:0.001~0.010%、
O:0.0050%以下、
を含有し、
下記(1)式であらわされるCeq値に対して、Ceq値≧0.48を満足し、かつ下記(2)式であらわされるP値に対して、P値≧0.15を満足し、かつ下記(3)式であらわされる質量%のCr、Moの合計値Q値に対して、Q値≧0.50かつCr≦Moを満足し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
ミクロ組織はベイナイト組織が80%以上、島状マルテンサイトが20%以下、残部が残留オーステナイト、疑似パーライト、フェライトのうち1種または2種以上かつ残部の合計面積率が20%以下であり、
Nb、Ti、Moを1種以上含み且つ円相当径で20nm以下である複合炭化物が5個/μm

以上であり、
降伏強度が690MPa以上、引張強度が760MPa以上、表面から1mm位置の表層硬さが350HV10以下であることを特徴とする高強度鋼管杭用鋼管。
Ceq値=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5・・・(1)
但し、(1)式の元素記号は各含有元素の質量%を示す。
P値=(Mo/95.9+Nb/92.91+V/50.94+Ti/47.9)/(100/55.85)×100・・・・(2)
但し、(2)式の元素記号は各含有元素の質量%である。
Q値= Cr+Mo ・・・(3)
但し、(3)式の元素記号は各含有元素の質量%を示す。
[2] 前記成分組成は、さらに、質量%で、
V:0.005~0.1%、
Cu:0.5%以下、
Ni:0.5%以下、
Ca:0.0005~0.0035%、
REM:0.0005~0.0100%、
B:0.002%以下の中から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする[1]に記載の高強度鋼管杭用鋼管。
[3] [1]または[2]に記載の成分組成を有する鋼素材を、
1100~1300℃の温度に加熱し、熱間圧延した後、Ar3点以上から冷却開始し、20℃/s以上の平均冷却速度で300℃未満の冷却停止温度まで加速冷却を行い、鋼板とし、
前記鋼板を素材とし、鋼板長手方向に筒状に成形した後、鋼板の端面ともう一方の端面とを突き合せた突合せ部を内外面から1層ずつ長手方向に溶接して管状とし、拡管して製造する、降伏強度が690MPa以上、引張強度が760MPa以上、表面から1mm位置の表層硬さが350HV10以下であることを特徴とする高強度鋼管杭用鋼管の製造方法。
[4] 拡管後、100~300℃に再加熱して製造することを特徴とする[3]に記載の高強度鋼管杭用鋼管の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
以上述べたように、本発明によれば、API X100グレード以上の高強度を有し、靭性の優れた鋼管が得られる。このため、鋼管杭用鋼管への利用に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明者らは表層硬さの低減と高強度・高靭性の両立のために、鋼板を素材とする鋼管のミクロ組織変化について詳細な検討を行った。一般に溶接鋼管は溶接性の観点から化学成分が厳しく制限されるため、X65グレード以上の高強度鋼は熱間圧延後に加速冷却されて製造されている。そのため、ミクロ組織はベイナイト主体か、またはベイナイト中に島状マルテンサイト(Martensite-Austenite constituent)を含んだ組織となるが、表層の高冷却速度に伴う硬度上昇は避けられない。また、焼戻しによる強度低下を補うために、PWHT時にCr炭化物等を析出させる方法があるが、炭化物が容易に粗大化するために靭性低下を生じてしまう。このように表層硬さを低減しながら、変態強化によって、強度および靭性を確保することには限界があることが明白である。そこで、本発明者らは表層硬さの低減と高強度および高靭性が両立可能なミクロ組織形態に関して鋭意研究を行った結果、以下の知見を得るに至った。
Cr、Moの最適なバランスによって、変態強化と析出強化を同時活用し、表層硬さ低減のための冷却速度低減による板内部の強度低下を抑制することができる。つまり、鋼板のミクロ組織中のベイナイト組織を80%以上、島状マルテンサイトが20%以下、残部が残留オーステナイト、疑似パーライト、フェライトのうち1種または2種以上かつ残部の合計面積率が20%以下とすることで、表層硬さを低減しながら、造管・拡管後の強度・靭性を向上する。
【0008】
以下、本発明の高強度鋼管杭用鋼管(鋼管)について詳しく説明する。まず、鋼管の母材における成分組成について説明する。以下の説明において%で示す単位は特にことわりのない限り質量%である。
【0009】
[成分組成]
C:0.04~0.10%
Cは、鋼の強度を増加させる元素であり、所望の組織を得て、所望の強度、靭性とするためには、0.04%以上の含有を必要とする。C含有量は好ましくは0.05%以上である。一方、0.10%を超えて含有すると溶接性が劣化し、溶接割れが生じやすくなるとともに、母材靭性およびHAZ靭性が低下する。このため、C含有量は0.10%以下に限定する。好ましくは0.07%以下である。
【0010】
Si:0.01~0.5%
Siは、脱酸材として作用し、更に固溶強化により鋼材の強度を増加させる元素であるが、Si含有量が0.01%未満ではその効果がないため、Si含有量は0.01%以上とする。好ましくは、Si含有量は0.05%以上である。一方、0.5%を超えるSiの含有は、HAZ靭性を著しく劣化させる。このため、Si含有量は0.5%以下とする。尚、好ましくは、Si含有量は0.2%以下である。
(【0011】以降は省略されています)

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