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公開番号
2024178476
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2024-12-25
出願番号
2021160158
出願日
2021-09-29
発明の名称
α線放出抗体薬物複合体
出願人
国立大学法人大阪大学
,
公益財団法人野口研究所
代理人
個人
,
個人
,
個人
,
個人
,
個人
,
個人
,
個人
,
個人
,
個人
,
個人
,
個人
,
個人
,
個人
,
個人
主分類
C07K
16/00 20060101AFI20241218BHJP(有機化学)
要約
【課題】α線放出抗体薬物複合体、その製造方法、その使用、並びに、当該α線放出抗体薬物複合体を含む医薬組成物および検査、診断、治療方法を提供する。
【解決手段】抗体分子中のN結合型糖鎖結合部位(Asn297)に、糖オキサゾリン誘導体を利用するリンカーを介して211Atを導入することで、211Atの導入位置が制御された抗体薬物複合体。該抗体薬物複合体は、
(1)糖加水分解酵素の存在下で、抗体またはその抗原結合断片Bと、第1のリンカーL1とを結合する工程;
(2)アスタチン結合構造Aと、第1のリンカーL1とを、第2のリンカーL2を介して、あるいは介さずに結合する工程;
(3)工程(1)および(2)により製造されたアスタチン結合構造含有抗体複合体に、211Atを結合する工程
を含む製造方法によって製造することが出来る。
【選択図】図7
特許請求の範囲
【請求項1】
下記式(1)を有する複合体。
式(1)(N
m
-A-L
2
-L
1
)
n
-B
[式中、
Bは抗体またはその抗原結合断片であり;
L
1
は下記式(2)を有する第1のリンカーであり;
式(2)
TIFF
2024178476000118.tif
39
150
[式中、
Xはそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、-NH-、-COHN-、-COO-、又は式(4)又は(5):
TIFF
2024178476000119.tif
46
155
[式中、R
1
は、炭素数1~6の3価の分岐炭化水素基であり、R
2
及びR
3
は、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキレン基である]で表される基であり;
Y1~3はいずれか1つ以上は存在し、それぞれ独立して、PEG鎖、置換されたPEG鎖、又は酸素原子、-NH-、-COHN-、又は-COO-を主鎖に含むPEG鎖であり、PEG鎖の構造は直鎖構造又は分岐構造であり、分岐構造の場合は、分岐数は2~10であり;
Zはそれぞれ独立して、-O-、-CH
2
-、―N-、場合により置換されることのあるテトラジン基、ノルボルネン基、trans-シクロオクテン基、ジベンジルシクロオクチル基、又はビシクロ[6.1.0]ノナ-4-イン-9-イルメチル基、又は場合により置換されることのあるシアノベンゾチアゾール基であり、;
RはL-フコース又は水素原子であり;
Y1~3のいずれかが存在しない場合、Zは水素そしてXは酸素であり;
Xが前記式(5)又は(6)で表される基の場合、Y1~3は分岐鎖のR
2
及びR
3
にそれぞれ結合しており、PEG鎖が分岐構造の場合、それぞれの分岐鎖にZが結合しており、
#BはBへの結合点であって、抗体分子に存在するアスパラギン残基に結合する結合点を表し;
#L
2-1
、#L
2-2
および#L
2-3
は、それぞれ独立してY1~3が存在するときには存在し、それぞれ独立してL
2
への結合点または水素を表し;
存在する#L
2-1
、#L
2-2
および#L
2-3
の少なくとも1つはL
2
への結合点を表す。]
L
2
は結合または第2のリンカーであり;
Aはアスタチン結合構造であり;
Nは
211
Atであり;
mは1以上の整数であり;
nは1~10の整数である。]
続きを表示(約 3,300 文字)
【請求項2】
式(2)の#Bは、
抗体のクラスがIgGである場合、297番目のアスパラギン残基に結合する結合点を表し;
抗体のクラスがIgAである場合、144番目及び340番目のアスパラギン残基からなる群の少なくとも1つに結合する結合点を表し;
抗体のクラスがIgA2である場合、131番目、205番目、及び327番目のアスパラギン残基からなる群の少なくとも1つに結合する結合点を表し;
抗体のクラスがIgEである場合、140番目、168番目、218番目、265番目、371番目、383番目、及び394番目のアスパラギン残基からなる群の少なくとも1つに結合する結合点を表し;
抗体のクラスがIgMである場合、171番目、332番目、395番目、402番目、及び563番目のアスパラギン残基からなる群の少なくとも1つに結合する結合点を表し、
上記アスパラギン残基の位置は、KabatのEUインデックスに従う番号付けによるものである、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
アスタチン結合構造Aがデカボランおよびホウ素クラスター脂質構造からなる群から選択される、請求項1または2のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の複合体を含む医薬組成物。
【請求項5】
がん治療のために用いられる請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記がんが、リンパ腫、甲状腺癌、メラノーマ、前立腺癌、大腸癌、膵臓癌、肝臓癌、乳癌、子宮頸癌、肺癌、頭頸部癌、癌幹細胞からなる群から選択される、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の抗体薬物複合体の製造方法であって、
(1)糖加水分解酵素の存在下で、抗体またはその抗原結合断片Bと、第1ノリンカーL
1
とを結合する工程;
(2)アスタチン結合構造Aと、第1のリンカーL
1
とを、第2のリンカーL
2
を介して、あるいは介さずに結合する工程;
(3)工程(1)および(2)により製造されたアスタチン結合構造含有抗体複合体に、
211
Atを結合する工程
を含む製造方法。
【請求項8】
下記式(5)で表される化合物。
式(5)(A-L
2
-L
1
)
n
-B
[式中、
Bは抗体またはその抗原結合断片であり;
L
1
は第1のリンカーであり;
L
2
は結合または第2のリンカーであり;
Aはアスタチン結合構造であり;
nは1~10の整数であり、
第1のリンカーL
1
は下記式(2)を有する。
式(2)
TIFF
2024178476000120.tif
35
157
[式中、
#Bは抗体分子または抗原結合断片への結合点であり;
Xはそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、-NH-、-COHN-、-COO-、又は式(3)又は(4):
TIFF
2024178476000121.tif
45
156
[式中、R
1
は、炭素数1~6の3価の分岐炭化水素基であり、R
2
及びR
3
は、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキレン基である]で表される基であり;
Y1~3はいずれか1つ以上は存在し、それぞれ独立して、PEG鎖、置換されたPEG鎖、又は酸素原子、-NH-、-COHN-、又は-COO-を主鎖に含むPEG鎖であり、PEG鎖の構造は直鎖構造又は分岐構造であり、分岐構造の場合は、分岐数は2~10であり;
Zはそれぞれ独立して、-O-、-CH
2
-、―N-、置換されてもよいテトラジン基、ノルボルネン基、trans-シクロオクテン基、ジベンジルシクロオクチル基、又はビシクロ[6.1.0]ノナ-4-イン-9-イルメチル基、又は置換されてもよいシアノベンゾチアゾール基であり;
RはL-フコース又は水素原子であり;
Y1~3のいずれかが存在しない場合、Zは水素そしてXは酸素であり;
Xが前記式(3)又は(4)で表される基の場合、Y1~3は分岐鎖のR
2
及びR
3
にそれぞれ結合しており、PEG鎖が分岐構造の場合、それぞれの分岐鎖にZが結合しており、
#BはBへの結合点であって、抗体分子に存在するアスパラギン残基に結合する結合点を表し;
#L
2-1
、#L
2-2
および#L
2-3
は、それぞれ独立してY1~3が存在するときには存在し、それぞれ独立してL
2
への結合点または水素を表し;
存在する#L
2-1
、#L
2-2
および#L
2-3
の少なくとも1つはL
2
への結合点を表す。]
【請求項9】
下記式(6)を有する化合物。
式(6)A-L
2
-L
1
[式中、
L
1
は第1のリンカーであり;
L
2
は結合または第2のリンカーであり;
Aはアスタチン結合構造であり;
第1のリンカーL
1
は下記式(7)を有する。
式(7)
TIFF
2024178476000122.tif
32
149
[式中、
Xはそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、-NH-、-COHN-、-COO-、又は式(3)又は(4):
TIFF
2024178476000123.tif
46
157
[式中、R
1
は、炭素数1~6の3価の分岐炭化水素基であり、R
2
及びR
3
は、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキレン基である]で表される基であり;
Y1~3はいずれか1つ以上は存在し、それぞれ独立して、PEG鎖、置換されたPEG鎖、又は酸素原子、-NH-、-COHN-、又は-COO-を主鎖に含むPEG鎖であり、PEG鎖の構造は直鎖構造又は分岐構造であり、分岐構造の場合は、分岐数は2~10であり;
Zはそれぞれ独立して、-O-、-CH
2
-、―N-、置換されてもよいテトラジン基、ノルボルネン基、trans-シクロオクテン基、ジベンジルシクロオクチル基、又はビシクロ[6.1.0]ノナ-4-イン-9-イルメチル基、又は置換されてもよいシアノベンゾチアゾール基であり;
RはL-フコース又は水素原子であり;
Y1~3のいずれかが存在しない場合、Zは水素そしてXは酸素であり;
Xが前記式(3)又は(4)で表される基の場合、Y1~3は分岐鎖のR
2
及びR
3
にそれぞれ結合しており、PEG鎖が分岐構造の場合、それぞれの分岐鎖にZが結合しており、
#L
2-1
、#L
2-2
および#L
2-3
は、それぞれ独立してY1~3が存在するときには存在し、それぞれ独立してL
2
への結合点または水素を表し;
存在する#L
2-1
、#L
2-2
および#L
2-3
の少なくとも1つはL
2
への結合点を表す。]
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本明細書において、国際出願PCT/JP/2021-012997号の内容を、本明細書の一部を構成するものとして援用する。
本開示は、α線放出抗体薬物複合体、その製造方法、その使用、並びに、当該α線放出抗体薬物複合体を含む医薬組成物および検査、診断、治療方法に関係する。
続きを表示(約 2,600 文字)
【背景技術】
【0002】
核医学治療は体内に投与(静注、経口)した放射性同位元素(RI)やこれを組み込んだ薬剤を用いた放射線治療で、RI内用療法とも呼ばれる。従来は核医学治療にβ線を放出する核種が主として用いられてきた。β線に比して、α線はより飛程が短く、高いエネルギーを放出することから、がん細胞に対する高い毒性を持ち、正常細胞に対する副作用が小さいという特徴を有している。このような特徴を有するα線を放出する核種を、がん細胞などの標的細胞に特異的に発現している抗原に対して特異的に結合する抗体と結合させ、抗体薬物複合体(Antibody-drug conjugate:ADC)として用いることが試みられている。
【0003】
発明者らは、デカボランを担持したポリエチレングリコール(PEG)リンカーを、抗体中にランダムに存在するリジン残基と非特異的に縮合させる方法で、α線放出核種である
211
Atで標識した抗体の作成に成功している(第一世代
211
At標識抗体)。当該第一世代
211
At標識抗体は担がんマウスを用いた抗腫瘍効果試験で、強い腫瘍成長抑制効果を持つことが示唆された。発明者以外の研究グループにおいても、
211
At標識抗体を作成し、抗腫瘍薬剤や造血幹細胞移植の前処理用薬剤として使用することが試みられている(非特許文献1~5)。
【0004】
一方で、α線放出医薬を医薬品として使用するためには、抗体に対する
211
Atなどのα線放出核種の導入位置を制御することが必須である。例えば、第一世代
211
At標識抗体でも用いられた、IgG抗体の側鎖アミノ基やチオール基に対してリンカーを介してα線放出核種を結合させる一般的な手法では、α線放出核種の導入位置を制御することは困難である。これらの一般的な手法では、α線放出核種が抗体上に複数箇所存在するアミノ基やチオール基にランダムに導入されるため、導入の位置や数に幅広い分布を有する多様なADC異性体群が得られる。このようなADC異性体群は品質管理、及び薬効(循環半減期や有効性の低下)等、臨床的な問題が懸念される。
【0005】
この問題点を解決する方法の1つとして、IgG抗体のFc領域のN結合型糖鎖を足掛かりとして、位置選択的に薬物を導入する方法が報告されている(非特許文献6、7)。これらの方法は抗体上の糖鎖部分にのみ選択的に薬物を導入することができるため、従来のランダムに薬物を導入する方法よりも高い位置選択性と薬物の導入数の制御が可能な利点を持つ。
【0006】
これらの方法ではいずれも糖鎖非還元末端のN-アセチルノイラミン酸に対して薬物導入のための官能基を導入する必要がある。しかしN-アセチルノイラミン酸は血液中で糖鎖から遊離する可能性が指摘されており、薬物が標的細胞外でADCから放出されてしまう危険性が懸念される。また、これらの方法で使用されている糖鎖は鶏卵より調製されているため卵由来のアレルゲンが薬剤製造においては問題となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
特開2019-156796号公報
国際公開第2019/151384号
特開2020-100865号公報
【非特許文献】
【0008】
Wilbur,D. et al.Bioconjug.Chem.2009,20,1983-1991.
Wilbur,D. et al.J.Nucl.Med. 2009,50,39.
Wilbur,D. et al.Bioconjug.Chem.2011,22,1089-1102.
Wilbur,D. et al.Bioconjug.Chem.2007,18,1226-1240.
Fujiki K. et al.Chemical Science,2019,10,1936-1944.
F.Tang et al.,Org.Biomol.Chem.,14,9501(2016)
M.Iwamoto et al.,BioconjugateChem.,29,2829(2018)
K.Goto et al.,TetrahedronLett.,61,151475(2020)
Aoyama,M.,et al.,Mabs,11:826-836(2019)
Kuzmin,A,et al.,Bioconjugate Chem.21,2076-2085(2010)
E. Aurlien,British Journal of Cancer,83(10),1375-1379(2000)
Y.Shirakami et al., Scientific Reports,11,Article number:12982(2021)
K.Goto,et al, Tetrahedron Lett.,61,151475(2020)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、上記背景を踏まえて、α線放出のもたらす生理学的効果を十分に維持しつつ、抗体分子上のα線放出核種の導入位置が制御された、新規のα線放出ADCを提供することを課題とする。本開示は別の態様において、前記α線放出ADCの製造方法、α線放出ADCを含有する医薬、α線放出ADCを用いた治療方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の発明者は鋭意研究を進めた結果、抗体分子中のN結合型糖鎖結合部位(Asn297)に、糖オキサゾリン誘導体を利用するリンカーを介して
211
Atを導入することで、
211
Atの導入位置が制御された抗体薬物複合体を得られること、当該抗体薬物複合体が優れた生理学的効果を奏することを発見することにより、上記課題を解決し得ることを見出した。
(【0011】以降は省略されています)
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