TOP特許意匠商標
特許ウォッチ Twitter
公開番号2024123751
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-09-12
出願番号2023031400
出願日2023-03-01
発明の名称カキの品質判定方法及びその品質判定システム
出願人国立大学法人岩手大学
代理人個人
主分類G06T 7/00 20170101AFI20240905BHJP(計算;計数)
要約【課題】現場で迅速に殻を開けることなく、カキの得率、活力、鮮度に関する品質判定を非侵襲で即時判定できるカキの品質判定技術を提供すること。
【解決手段】カキの品質判定方法は、二枚の貝殻付きのカキ50の品質を判定するものである。学習用のカキの外形を3次元スキャナー25で測定して作成した3次元モデルデータから外形の特徴値である3次元外形特徴を取得し、学習用のカキを計測して生化学指標を取得することでデータベースを構築し、教師データとしての3次元外形特徴から主成分分析方法を用いた機械学習により3次元外形特徴の特徴量を抽出し生化学指標に関連付けて選別モデルを学習し、品質判定の対象となるカキを3次元スキャナーで測定して作成した3次元モデルデータから3次元外形特徴を取得し、最も近い選別モデルに基づく外形特徴から品質判定の対象となるカキの活力・鮮度を推定する。
【選択図】図2


特許請求の範囲【請求項1】
二枚の貝殻付きのカキの品質を判定するカキの品質判定方法であって、
学習用の前記カキの外形を3次元スキャナーで測定して作成した3次元モデルデータから外形の特徴値である3次元外形特徴を取得し、学習用の前記カキを計測して生化学指標を取得することでデータベースを構築する3次元外形特徴・生化学指標データベース構築工程と、
前記データベースの教師データとしての前記3次元外形特徴から主成分分析方法を用いた機械学習により前記3次元外形特徴の特徴量を抽出し前記生化学指標に関連付けて選別モデルを学習する選別モデル学習工程と、
品質判定の対象となる前記カキを3次元スキャナーで測定して作成した3次元モデルデータから3次元外形特徴を取得し、最も近い前記選別モデルに基づく外形特徴から品質判定の対象となる前記カキの活力・鮮度を推定するカキの品質判定工程とを有することを特徴とするカキの品質判定方法。
続きを表示(約 1,800 文字)【請求項2】
請求項1記載のカキの品質判定方法であって、
前記3次元外形特徴・生化学指標データベース構築工程では、前記3次元外形特徴は、殻高/殻長、平均扁平率、前後平均扁平率の差の絶対値、中心軸の曲率、中心軸の回転角を使用し、
前記殻高/殻長は、前記カキの殻高と殻長から求められ、
前記平均扁平率は、前記カキの外形から近似曲線に基づいて中心軸を推定し、この中心軸に垂直な任意の枚数の断面を等間隔で生成し、前記カキの外形を表す点から最も近い前記断面に投影点を求め、各前記断面の前記投影点に楕円を当てはめて各楕円の扁平率を計算し、任意の個数の前記扁平率から平均を計算することで求められ、
前記前後平均扁平率の差の絶対値は、前後に隣り合う任意の組の前記楕円に対して前記平均扁平率の差の絶対値を計算することで求められ、
前記中心軸の曲率は、前記中心軸から求められ、
前記中心軸の回転角は、前記カキの外形を3次元スキャナーで測定した点群データに楕円体を当てはめ、前記楕円体に直交した軸で定義した平面により前記中心軸の回転角を計算することで求められることを特徴とするカキの品質判定方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のカキの品質判定方法であって、
前記3次元外形特徴・生化学指標データベース構築工程では、生化学指標は、ATP関連化合物の組成である鮮度指標としてのK値、ATP関連化合物の組成値である活力指標としてのA.E.C.値、アルギニンリン酸の含有量、pH値、グリコーゲンの含有量のいずれか又はその組み合わせを使用することを特徴とするカキの品質判定方法。
【請求項4】
二枚の貝殻付きのカキの品質を判定するカキの品質判定システムであって、
教師データ作成部と、生化学指標測定部と、解析部と、品質判定対象撮影表示部とを備え、
前記教師データ作成部は、前記カキの外形を測定する3次元スキャナーと、この3次元スキャナーで測定した前記カキの外形を座標値からなる点群データとして表すCAD部とを備え、
学習用の前記カキの外形を前記3次元スキャナーで測定し、作成した3次元モデルデータから外形の特徴値である3次元外形特徴として、殻高/殻長、平均扁平率、前後平均扁平率の差の絶対値、中心軸の曲率、中心軸の回転角を取得し、
前記殻高/殻長は、前記カキの殻高と殻長から求められ、
前記平均扁平率は、前記カキの外形から近似曲線に基づいて中心軸を推定し、この中心軸に垂直な任意の枚数の断面を等間隔で生成し、前記カキの外形を表す点から最も近い前記断面に投影点を求め、各前記断面の前記投影点に楕円を当てはめて各楕円の扁平率を計算し、任意の個数の前記扁平率から平均を計算することで求められ、
前記前後平均扁平率の差の絶対値は、前後に隣り合う任意の組の前記楕円に対して前記平均扁平率の差の絶対値を計算することで求められ、
前記中心軸の曲率は、前記中心軸から求められ、
前記中心軸の回転角は、前記カキの外形を3次元スキャナーで測定した点群データに楕円体を当てはめ、前記楕円体に直交した軸で定義した平面により前記中心軸の回転角を計算することで求められるものであり、
前記生化学指標測定部は、少なくともATP関連化合物の組成である鮮度指標としてのK値、ATP関連化合物の組成値である活力指標としてのA.E.C.値、アルギニンリン酸の含有量、pH値、グリコーゲンの含有量のいずれか又はその組み合わせを含む生化学指標を計測する計測機器であり、
前記解析部は、学習用の前記3次元モデルデータ及び前記3次元外形特徴と、これらの3次元外形特徴に関連した前記生化学指標とを含み構成されたデータベースを備え、
前記データベースの教師データとしての前記3次元外形特徴から主成分分析方法を用いた機械学習により前記3次元外形特徴の特徴量を抽出し前記生化学指標に関連付けて選別モデルを学習するものであり、
前記品質判定対象撮影表示部は、品質判定の対象となる前記カキを3次元スキャナーで測定して作成した3次元モデルデータを用い、前記解析部で判定用の前記3次元モデルデータと最も近い前記選別モデルを推定することにより品質判定の対象となる前記カキの品質を判定し、前記生化学指標を表示するものであることを特徴とするカキの品質判定システム。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、貝殻付きのカキの品質を判定するカキの品質判定技術に関する。
続きを表示(約 2,200 文字)【背景技術】
【0002】
近年、カキ(牡蠣)出荷における生食用の割合は増加しており、カキの安全性および鮮度評価がますます重要になっている。カキはイタボガキ科の二枚貝の総称で、世界各地で食され、とくに欧米でも生食される数少ない魚介類の1つである。マガキ Crassostrea gigas が最重要品種であり、市場に流通しているほとんどは養殖されたマガキと言う。日本のカキ養殖は、17世紀に広島で始められ、1930年頃から垂下式養殖法が開発されて全国的に普及し、養殖量が増加した。令和2年のカキ類の養殖収穫量は全国で161,646トンあり、主要な産地は広島県(99,144トン)を中心とした瀬戸内海水域、宮城県(21,406トン)、岩手県(6,341トン)を主とした三陸沿岸および岡山県(12,166トン)となっている。
【0003】
今までカキの販売に最も重要な経済指標は得率(収率)であり、カキの性質として、得率の定義は軟体重量と総重量の比、すなわちカキの軟体部の貝殻中の充満度である。カキは水揚げから販売まで分離、洗浄、選別などの段階を経なければならない。選別はその重要な一環として,現在市場では主に重量範囲によって選別されており、同じ重量範囲のカキは同じ箱の中に入る。実際の販売段階では、重量が大きいほど価格が高くなる。このように、カキの重量を考慮したカキの選別技術が知られている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1の夏季の選別技術は、従来のカキの選別方法は重量感応方式が多いことに着目し、重量はカキ殻の大きさに比例することから、殻の体積の大きさに応じてカキを選別する選別機を提供している。
【0005】
しかし、殻の部分がカキの重量の大きな割合を占めているため、この選別方式は同じ重量範囲で得率の低いカキが大量に混入している問題を引き起こし、カキの販売価格もそれによって大幅に割引され、経済損失をもたらし、これはカキの輸出販売にも一定の影響を与えている。また、カキ殻の大きさだけでは、鮮度(品質)による選別ができない。
【0006】
さらに、近年、生食用生鮮殻付きカキを食する機会が増えている。生カキは産地によって出荷期間が限られ、且つ出荷に際して安全性の確認が重要であるので、カキの活力・鮮度はもう一つの重要な経済指標として認識されている。しかし、カキの活力・鮮度判定は技術的に容易ではなく、現在も熟練者の経験や勘により鮮度が判定されて取引されている。最近、熟練者の減少とともに、鮮度の良悪に関係なく殻が閉じていれば生きていると判断して出荷する可能性があり、活性が低く低鮮度で品質の悪いカキが出回ることで、消費者のカキ離れを引き起こしていると言われている。一方、カキの活力・鮮度測定において、生化学分析法であるグリコーゲンまたはATPの含量の測定方法がよく使用されているが、いずれも閉殻筋からの抽出を伴う必要がある。しかし、貝柱である閉殻筋を採取するためにカキの殻を開けることでそのカキは死んでしまい商品にはならない。したがって、科学的かつ客観的にカキの活力・鮮度判定および非侵襲即時選別ができる手法の開発が望まれている。
【0007】
カキの外形に対して、殻長(L)、殻幅(W)、殻高(H)は、カキの主な外形特徴として認識されている。この3つの外形特徴を用いて漁師の経験により、理想的なカキの外形は涙の粒に似ていると考えられている。逆に、専門家や漁師は、長くて痩せたカキは市場での販売には適していないと認識している。しかし、絶対測定値を単独で使用する場合、カキの分類を過大評価したり、過小評価したりするため、慎重にしなければならない。そして、殻高/殻長(H/L)または殻幅/殻長(W/L)の比率も外形特徴として考えられている。マカキについて、理想的な殻特徴比は、殻高/殻長が1:3またはH/L>0.25であり、殻幅/殻長さ比は2:3(0.67)またはW/L>0.63であると言われている。この2つの外形特徴は良好な形状の決定要素として重要であるが、以前の研究では、H/LとW/Lの比率はカキの品質分類に同時に使用され、正確に分配された割合は30.0%にすぎなかったが、H/LまたはW/Lの比率を単独で使用した場合、正確な分配割合はそれぞれ85.6%と70.6%であった。現在、多くの地域では、漁師らの目標はL:W:H=3:2:1の割合を最適なカキの外形としている。
【0008】
しかし、このような選別方法により、殻の外形上、涙の粒に似ているカキを容易に区別することができるが、殻の外観だけでカキの得率や活力・鮮度に関する種内品質等級を推定・選別するのは、いまだ困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
中国実用新案第215940687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上の点に鑑み、現場で迅速に殻を開けることなく、カキの得率、活力、鮮度に関する品質判定を非侵襲的に即時判定できるカキの品質判定技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
(【0011】以降は省略されています)

この特許をJ-PlatPatで参照する
Flag Counter

関連特許