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公開番号2024119258
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-09-03
出願番号2023026029
出願日2023-02-22
発明の名称体表細菌叢コントロールによる魚類における細菌感染症の抑制技術
出願人国立研究開発法人産業技術総合研究所,学校法人近畿大学
代理人個人,個人
主分類C12N 1/20 20060101AFI20240827BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】魚類の細菌感染症に有効な予防および/または治療剤を提供する。
【解決手段】独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託され、受領番号NITE AP-03824を付与されたPseudomonas K2H株、または上記菌株の近縁細菌であって、魚類の病原性細菌に対する増殖抑制作用を有する細菌、これらの細菌の培養上清、ならびにこれらの細菌または培養上清を含む魚類の病原性細菌の増殖抑制剤および魚類の細菌感染症の予防および/または治療剤。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
以下の(a)または(b)に記載された細菌:
(a)独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託され、受領番号NITE AP-03824を付与されたシュードモナス(Pseudomonas)K2H株、
(b)魚類の病原性細菌に対する増殖抑制作用を有する細菌であって、その16S rRNA遺伝子の塩基配列がK2H株の16S rRNA遺伝子の塩基配列(配列番号:1)に対して98%以上の相同性を有する、細菌。
続きを表示(約 420 文字)【請求項2】
魚類の病原性細菌に対して抗菌活性を有する請求項1に記載の細菌の培養上清。
【請求項3】
請求項1に記載の細菌または請求項2に記載の培養上清を魚類の病原性細菌に適用することを含む、魚類の病原性細菌の増殖抑制方法。
【請求項4】
請求項1に記載の細菌または請求項2に記載の培養上清を含む、魚類の病原性細菌の増殖抑制剤。
【請求項5】
請求項1に記載の細菌または請求項2に記載の培養上清を魚類に適用することを含む、魚類の細菌感染症の予防および/または治療方法。
【請求項6】
魚類が原棘鰭上目の魚類である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の細菌または請求項2に記載の培養上清を有効成分として含む、魚類の細菌感染症の予防および/または治療剤。
【請求項8】
魚類が原棘鰭上目の魚類である、請求項7に記載の剤。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、魚類の細菌感染症の抑制技術に関する。詳細には、病原性細菌の増殖を抑制する細菌およびその培養上清、ならびにそれらの使用に関する。
続きを表示(約 2,600 文字)【背景技術】
【0002】
水産養殖は世界的に急成長し、増加する人口に対応する食糧需要を賄う重要な産業となっている。その大きな課題となっているのが魚病であり、世界では年間6000億円、国内でも100億円の損害があると試算されている。一般的に魚病に対しては抗生物質、ワクチンなどの対策がとられる。しかし、抗生物質については、薬剤耐性菌の広がりを受け、WHOなどを中心に各国に対して農水産業を含めた利用制限が求められつつある。またワクチンについても、有効なワクチンがない魚病も多いことが対策を困難にしている。このような状況の中で、微生物を利用したバイオコントロール技術(プロバイオティクスやファージセラピーなど)が期待されている。
【0003】
魚病のなかでも細菌感染症はしばしば深刻な問題を引き起こす。細菌感染症としては冷水病、エドワジエラ感染症、エロモナス感染症などが挙げられる。例えば冷水病は、アユやニジマスなどにおいて発生する魚病であり、Flavobacterium psychrophilumが原因菌である。商業的に利用可能なワクチンがまだないことから、バイオコントロールによる予防・治療が特に期待されている魚病の1つである。これまでにもプロバイオティクスは水産分野でも研究されてきた。多くの研究例(非特許文献1等)は有用菌を餌として投与し、腸内細菌改善や免疫力活性化を目指すものであった。しかし冷水病菌のような体表が感染門戸となる病原性細菌に対しては直接体表を対象にするアプローチの方が有効ではないかと考えられている。これまでに有用菌を魚類の体表に作用させる試みもなされているが(特許文献1、特許文献2)、実用化には至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開2022-79240号公報
特開2022-89672号公報
【非特許文献】
【0005】
T.L.Korkea-aho et al. Journal of Applied Microbiology 111, 266-277 2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
魚類の病原性細菌に対して抗菌活性を有する新たな有用細菌を見出し、そのような有用細菌を魚類の体表に作用させて、あるいは体表に定着させることで病原性細菌の定着を抑制する技術を提供する。また、そのような有用細菌の培養上清を用いて病原性細菌の増殖を抑制する技術も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために、アユの体表から常在菌を分離培養し、病原性細菌に対する増殖抑制効果を調べ、高い増殖抑制効果を有する細菌株を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下を提供する:
(1)以下の(a)または(b)に記載された細菌:
(a)独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託され、受領番号NITE AP-03824を付与されたシュードモナスK2H株、
(b)魚類の病原性細菌に対する増殖抑制作用を有する細菌であって、その16S rRNA遺伝子の塩基配列がK2H株の16S rRNA遺伝子の塩基配列(配列番号:1)に対して98%以上の相同性を有する、細菌。
(2)魚類の病原性細菌に対して抗菌活性を有する(1)に記載の細菌の培養上清。
(3)(1)に記載の細菌または(2)に記載の培養上清を魚類の病原性細菌に適用することを含む、魚類の病原性細菌の増殖抑制方法。
(4)(1)に記載の細菌または(2)に記載の培養上清を含む、魚類の病原性細菌の増殖抑制剤。
(5)(1)に記載の細菌または(2)に記載の培養上清を魚類に適用することを含む、魚類の細菌感染症の予防および/または治療方法。
(6)魚類が原棘鰭上目の魚類である、(5)に記載の方法。
(7)(1)に記載の細菌または(2)に記載の培養上清を有効成分として含む、魚類の細菌感染症の予防および/または治療剤。
(8)魚類が原棘鰭上目の魚類である、(7)に記載の剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明の細菌およびその培養上清を用いることにより、魚類の細菌感染症を効果的に予防および/または治療することができる。本発明の細菌およびその培養上清は、我が国において冷水病が問題となっている重要魚種であるアユの冷水病の予防および/または治療に有効である。本発明の細菌およびその培養上清は、冷水病菌以外の病原菌、例えばエドワジエラ菌、エロモナス菌などに対しても有効である。本発明は、バイオコントロール技術を利用するものであり、抗生物質等の薬剤を使用しないため、薬剤耐性菌の発生や利用制限等の問題がない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1は、冷水病菌に対する増殖抑制効果を有する細菌のスクリーニングの結果の例を示すグラフである。冷水病菌の増殖抑制効果をbroth assayで評価した。横軸の番号はアユの体表常在菌の試験菌株番号である。縦軸は、コントロールとして培養上清未添加時の増殖を100%として%表示したものである。
図2は、K2H株とOX14株およびGL7株について、冷水病菌31株の増殖抑制効果を、交差培養法を用いて調べた結果を示す写真である。写真は、冷水病菌(黄色)を線状に画線し、その上にK2H株(白色)の培養液を滴下して培養した時の様子を示す。
図3は、K2H株とOX14株およびGL7株について、冷水病菌31株の増殖抑制効果を、交差培養法を用いて調べた結果を++(非常に強い)、+(強い)、±(弱い)、-(確認されず)の4段階で判定し、各判定区分の総数をまとめてグラフにしたものである。
図4は、実施例2に記載の手順に従って実験を行って、カプラン・マイヤー法にて作成した生存曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
(【0011】以降は省略されています)

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