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公開番号2024111516
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-08-19
出願番号2023016071
出願日2023-02-06
発明の名称心肺停止蘇生後の予後予測キット及びデバイス
出願人公立大学法人福島県立医科大学,国立大学法人千葉大学
代理人弁理士法人平木国際特許事務所
主分類C12Q 1/6851 20180101AFI20240809BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】心肺停止蘇生後の予後を予測するバイオマーカーを用いた心肺停止蘇生後の予後予測方法を開発し、提供する。
【解決手段】MMP8遺伝子を心肺停止蘇生後の予後予測マーカーとして、心肺停止後に蘇生した被験体の試料中に存在するMMP8 mRNA量に基づく発現レベルから、その被験体の予後を予測する。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
マトリックスメタロプロテアーゼ8(MMP8)遺伝子の遺伝子産物又はその一部からなる心肺停止蘇生後の予後予測マーカー。
続きを表示(約 1,900 文字)【請求項2】
前記MMP8遺伝子が配列番号1で表される塩基配列からなる、請求項1に記載の心肺停止蘇生後の予後予測マーカー。
【請求項3】
前記遺伝子産物が転写産物である、請求項1又は2に記載の心肺停止蘇生後の予後予測マーカー。
【請求項4】
心肺停止蘇生後の予後予測マーカーであるMMP8遺伝子の転写産物又はその一部と特異的に結合可能なプローブ、及び/又は該転写産物を特異的に認識し増幅可能なプライマーを含む、心肺停止蘇生後の予後予測キット。
【請求項5】
前記プローブ又はプライマーが、下記の(a)~(f)に示すポリヌクレオチド又はその断片からなる群から選択される、請求項4に記載のキット:
(a)配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
(b)配列番号1で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、又は15以上の連続した塩基を含むその断片
(c)配列番号1で表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
(d)配列番号1で表される塩基配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
(e)前記(a)~(d)のいずれかのポリヌクレオチドの塩基配列において1個又は数個の塩基の欠失、置換、又は付加を含むポリヌクレオチド、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、及び
(f)前記(a)~(d)のいずれかのポリヌクレオチド又はその断片と高ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド。
【請求項6】
心肺停止蘇生後の予後予測マーカーであるMMP8遺伝子の転写産物又はその一部と特異的に結合可能なプローブ、及び/又は該転写産物を特異的に認識し増幅可能なプライマーを含む、心肺停止蘇生後の予後予測デバイス。
【請求項7】
前記プローブ又はプライマーが、下記の(a)~(f)に示すポリヌクレオチド又はその断片からなる群から選択される、請求項6に記載のデバイス:
(a)配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
(b)配列番号1で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、又は15以上の連続した塩基を含むその断片
(c)配列番号1で表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
(d)配列番号1で表される塩基配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
(e)前記(a)~(d)のいずれかのポリヌクレオチドの塩基配列において1個又は数個の塩基の欠失、置換、又は付加を含むポリヌクレオチド、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、及び
(f)前記(a)~(d)のいずれかのポリヌクレオチド又はその断片と高ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド。
【請求項8】
心肺停止蘇生後の予後を予測するための方法であって、
被験体由来の試料からRNAを抽出する核酸抽出工程、
前記核酸抽出工程で抽出したRNAを鋳型に、標的核酸であるMMP8遺伝子の転写産物又はその一部を特異的に認識し、増幅可能なプライマーを用いて標的核酸の特定の領域を増幅する核酸増幅工程、
前記核酸増幅工程後に得られた増幅産物よりMMP8遺伝子の転写産物又はその一部を含む増幅断片を検出し、試料中のMMP8遺伝子の発現レベルを測定する発現レベル測定工程、及び
前記発現レベル測定工程で測定されたMMP8遺伝子の被験体における発現レベルと、同様に測定された予後不良群又は予後良好群の発現レベルとを比較する比較工程を含み、
前記被験体の発現レベルが予後不良群の発現レベルよりも有意に低いときに被験体の生存率は高いことを示し、又は予後良好群の発現レベルよりも有意に高いときに被験体の生存率は低いことを示す
前記方法。
【請求項9】
前記試料は心停止直後から7日以内に被験体から採取された試料である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記試料が全血、血清又は血漿である、請求項8又は9に記載の方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、心肺停止蘇生後の予後予測キット及びデバイス、及びそれを用いた予後予測方法に関する。
続きを表示(約 3,700 文字)【背景技術】
【0002】
心肺停止(CPA)は、その発生場所を問わず、大多数が死への転帰を辿る最重症の病態である。心肺停止後に心肺蘇生法(CPR:cardiopulmonary resuscitation)により自己心拍再開(ROSC:return of spontaneous circulation)が得られたとしても、低酸素性の蘇生後脳症をはじめとする様々な病態変化(心停止後症候群:PCAS:post-cardiac arrest syndrome)に陥り、結果的に救命できないことが多い。その上、それら救命率の向上及び神経学的予後の改善のためには高度な集学的治療を要する。
【0003】
一般に、心肺停止から蘇生後の集中治療は、医療費が高額な一方で、良好な転帰を見込める可能性が高いとは言えない。そのため、心肺停止蘇生後、疫学的に良好な予後が見込めるか否かの正確かつ迅速な予測は、社会貢献上の観点から極めて重要である。例えば、卒倒現場を目撃され、かつバイスタンダーCPRがなされたPCAS症例では良好な予後が期待される場合が多い。特に心室細動(VF)、無脈性心室頻拍(pulseless VT)による心原性心停止後に蘇生した場合の治療成績は、近年一層向上している。したがって、良好な予後が見込める心原性心停止後に蘇生した患者を対象として、科学的根拠に基づいて正確に予後予測することは蘇生学領域での至上命題であるといえる。
【0004】
現在、臨床的に有望視されている心肺停止蘇生後の予後を予測するバイオマーカーとしては、血中NSE、S100B、NfL、UCH-L1、GFAP、Tau等が知られている(非特許文献1)。しかし、これらのバイオマーカーは、心肺停止蘇生後の脳虚血再灌流障害や組織低酸素によって変動し得るマーカーを予測して後方視的な検討の上で選択されたものである。ところが、一般に心肺停止蘇生後の重症病態の背景には、多くの疾病重症度を反映するといわれる高サイトカイン血症も存在する。一方、前記バイオマーカーの量は、侵襲後、発現レベルが所定量に上昇するまで一定期間を要することから、即時予測が困難という問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
Humaloja J., et al., 2022, Crit Care, 26(1):81
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、診断、重症度、予後予測、及び炎症反応関連遺伝子発現を考慮した心肺停止蘇生後の予後を予測するバイオマーカーを単離すると共に、そのバイオマーカーを用いた新たな心肺停止蘇生後の予後を予測するための方法を確立する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明者らは、心原性心停止から蘇生した患者の遺伝子発現を前向きに、かつ網羅的に検討し、炎症反応関連遺伝子発現を考慮した上で、14,400種の遺伝子から統計学的手法により心肺停止蘇生後の予後を予測するバイオマーカーとなり得る遺伝子の単離を試みた。その結果、心停止直後から直ちに発現レベルが上昇し、蘇生後第1病日、及び第4病日の急性期を通じて、持続的に予後が不良化する個体で発現レベルが上昇するMMP8遺伝子の単離に成功した。この結果からMMP8遺伝子の発現は、心肺停止蘇生後、臨床的に早期の予後予測に利用でき、また心肺停止後からの数日間は安定して診断に用いられるバイオマーカーであることが明らかとなった。本発明は、当該知見に基づくものであって、以下を提供する。
【0008】
(1)マトリックスメタロプロテアーゼ8(MMP8)遺伝子の遺伝子産物又はその一部からなる心肺停止蘇生後の予後予測マーカー。
(2)前記MMP8遺伝子が配列番号1で表される塩基配列からなる、(1)に記載の心肺停止蘇生後の予後予測マーカー。
(3)前記遺伝子産物が転写産物である、(1)又は(2)に記載の心肺停止蘇生後の予後予測マーカー。
(4)心肺停止蘇生後の予後予測マーカーであるMMP8遺伝子の転写産物又はその一部と特異的に結合可能なプローブ、及び/又は該転写産物を特異的に認識し増幅可能なプライマーを含む、心肺停止蘇生後の予後予測キット。
(5)前記プローブ又はプライマーが、下記の(a)~(f)に示すポリヌクレオチド又はその断片からなる群から選択される、(4)に記載のキット:
(a)配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
(b)配列番号1で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、又は15以上の連続した塩基を含むその断片
(c)配列番号1で表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
(d)配列番号1で表される塩基配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
(e)前記(a)~(d)のいずれかのポリヌクレオチドの塩基配列において1個又は数個の塩基の欠失、置換、又は付加を含むポリヌクレオチド、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、及び
(f)前記(a)~(d)のいずれかのポリヌクレオチド又はその断片と高ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド。
(6)心肺停止蘇生後の予後予測マーカーであるMMP8遺伝子の転写産物又はその一部と特異的に結合可能なプローブ、及び/又は該転写産物を特異的に認識し増幅可能なプライマーを含む、心肺停止蘇生後の予後予測デバイス。
(7)前記プローブ又はプライマーが、下記の(a)~(f)に示すポリヌクレオチド又はその断片からなる群から選択される、(6)に記載のデバイス:
(a)配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
(b)配列番号1で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、又は15以上の連続した塩基を含むその断片
(c)配列番号1で表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
(d)配列番号1で表される塩基配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
(e)前記(a)~(d)のいずれかのポリヌクレオチドの塩基配列において1個又は数個の塩基の欠失、置換、又は付加を含むポリヌクレオチド、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、及び
(f)前記(a)~(d)のいずれかのポリヌクレオチド又はその断片と高ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド。
(8)心肺停止蘇生後の予後を予測するための方法であって、被験体由来の試料からRNAを抽出する核酸抽出工程、前記核酸抽出工程で抽出したRNAを鋳型に、心肺停止蘇生後の予後予測マーカーであるMMP8遺伝子の転写産物又はその一部を特異的に認識し増幅可能なプライマーを用いてMMP8遺伝子の転写産物又はその一部を増幅する核酸増幅工程、前記核酸増幅工程後に得られた増幅産物よりMMP8遺伝子の転写産物又はその一部を含む増幅断片を検出し、試料中のMMP8遺伝子の発現レベルを測定する発現レベル測定工程、及び前記発現レベル測定工程で測定されたMMP8遺伝子の発現レベルと、同様に測定された予後不良群又は予後良好群における発現レベルとを比較する比較工程を含み、前記被験体の発現レベルが予後不良群の発現レベルよりも有意に低いときに被験体の生存率は高いことを示し、又は予後良好群の発現レベルよりも有意に高いときに被験体の生存率が低いことを示す前記方法。
(9)前記試料は心肺停止直後から7日以内に被験体から採取された試料である、(8)に記載の方法。
(10)前記試料が全血、血清又は血漿である、(8)又は(9)に記載の方法。
(11)前記被験体が、ヒトである、(8)~(10)のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の心肺停止蘇生後予後予測バイオマーカーによれば、臨床的に心肺停止後の予後リスクを早期に予測でき、また心停止から蘇生後数日間はバイオマーカーとして安定して診断に用いることができる。
【0010】
本発明の予後予測キット又はデバイスによれば、被験者の試料から本発明の心肺停止蘇生後予後予測バイオマーカーを容易かつ簡便に検出することができる。
(【0011】以降は省略されています)

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