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公開番号2024103480
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-08-01
出願番号2024006929
出願日2024-01-19
発明の名称固形がんの悪性度を予測する方法
出願人公益財団法人実中研
代理人個人,個人,個人,個人
主分類G01N 21/65 20060101AFI20240725BHJP(測定;試験)
要約【課題】固形がんの悪性度の予測を客観的に行う技術を提供する。
【解決手段】固形がんの悪性度を予測する方法であって、非染色のがん組織試料の薄切切片のラマンスペクトルデータを取得する工程(a)と、前記ラマンスペクトルデータにおいて、1又は複数の所定の波数のラマンシフトのピークのラマン強度に基づいて、前記がんの悪性度が予測される工程(b)と、を含む、方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
固形がんの悪性度を予測する方法であって、
非染色のがん組織試料の薄切切片のラマンスペクトルデータを取得する工程(a)と、
前記ラマンスペクトルデータにおいて、1又は複数の所定の波数のラマンシフトのピークのラマン強度に基づいて、前記がんの悪性度が予測される工程(b)と、
を含む、方法。
続きを表示(約 970 文字)【請求項2】
前記工程(b)における前記ラマンスペクトルデータが、がん間質細胞領域から取得されたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固形がんが乳がんであり、
前記工程(b)において、382±10cm
-1
、480±10cm
-1
、974±10cm
-1
及び1140±10cm
-1
からなる群より選択されるいずれかの波数のラマンシフトのピークのラマン強度に基づいて、前記がんがDuctal carcinoma in situ(DCIS)であるかInvasive breast cancer(IBC)であるかが識別され、前記がんがIBCであった場合には、前記がんがDCISであった場合と比較してより悪性度が高いと予測される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(b)において、382±10cm
-1
、974±10cm
-1
又は1140±10cm
-1
の波数のラマンシフトのピークのラマン強度が所定の閾値よりも高いことが、前記がんがDCISであることを示す、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記工程(b)において、480±10cm
-1
の波数のラマンシフトのピークのラマン強度が所定の閾値よりも低いことが、前記がんがDCISであることを示す、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記固形がんが膵臓がんであり、
前記工程(b)において、298±10cm
-1
、480±10cm
-1
及び720±10cm
-1
からなる群より選択されるいずれかの波数のラマンシフトのピークのラマン強度に基づいて、前記がんの悪性度が予測される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(b)において、298±10cm
-1
又は480±10cm
-1
の波数のラマンシフトのピークのラマン強度が所定の閾値よりも高いことが、前記がんの悪性度が高いことを示す、請求項6に記載の方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、固形がんの悪性度を予測する方法に関する。
続きを表示(約 4,400 文字)【背景技術】
【0002】
がん組織は、がん細胞とその周囲のがん間質細胞、免疫担当細胞等から構成され、それらの量比は、がんの種類によって大きく異なる。生体内に存在する多くの因子をインビトロで再現することは極めて難しいが、近年、オルガノイド技術のブレイクスルーによって微小環境を再現した単一細胞レベルでのオミックス解析が可能になりつつある。
【0003】
一方、生体組織そのものをあるがままに代謝解析に供することは極めて難しい。まず、患者検体を液体窒素等で固定すること自体が、原則としてがん組織の断端診断上の禁忌とされている。したがって、断端病理診断に必要なホルムアルデヒド固定・パラフィン包埋組織(以下、FFPE)を確保した上で、がん組織の一部を凍結切片として得る必要がある。FFPEでは、組織内の低分子代謝物情報がほとんど消失する。臨床検体から得られた凍結切片の解析によって、従来の病理情報では得られない知見や、新規の代謝システムの制御機構が明らかになりつつある。
【0004】
発明者らは、生体組織の凍結切片を用いて、無標識・非染色のイメージングメタボロミクス技術を開発してきた(例えば、非特許文献1~3を参照)。現在用いられるイメージングメタボロミクス技術には、質量分析イメージング(Imaging MS、IMS)技術と、表面増強ラマン(Surface-enhanced Raman scattering、SERS)イメージング技術がある。強大なエネルギーを有するレーザーによって組織表面の代謝物をイオン化するIMSとは対照的に、SERSイメージングでは比較的低エネルギーの近赤外レーザーを用いることが可能である。興味深いことに、SERSイメージングでは、がんの代謝制御に重要な役割を果たす複数のレドックス代謝物の検出・画像化が容易である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
Yamazoe S., et al., Large-Area Surface-Enhanced Raman Spectroscopy Imaging of Brain Ischemia by Gold NanoparticlesGrown on Random Nanoarrays of Transparent Boehmite, ACS Nano, 8 (6), 5622-5632, 2014.
Shiota M., et al., Gold-nanofeve surface-enhanced Raman spectroscopy visualizes hypotaurine as a robust anti-oxidant consumed in cancer survival, NATURE COMMUNICATIONS, 9, 1561, 2018.
Honda K., et al., On-tissue polysulfide visualization by surface-enhanced Raman spectroscopy benefits patients with ovarian cancer to predict post-operative chemosensitivity, Redox Biology, 41, 101926, 2021.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
病理専門医によるがん組織試料の顕微鏡観察により、固形がんの悪性度の予測が行われる場合がある。例えば、乳がんでは、針生検組織から作製した薄切切片をヘマトキシリン・エオジン(HE)染色した標本を顕微鏡観察することにより、Ductal carcinoma in situ(DCIS)とInvasive breast cancer(IBC)の鑑別がなされている。DCISは予後良性であるが、IBCは予後不良である。しかしながら、DCISとIBCの鑑別は、病理医にとっても容易ではない作業である。また、例えば、膵臓がんにおいても、病理専門医によるがん組織試料の顕微鏡観察により、悪性度を予測することは困難である。そこで、本発明は、固形がんの悪性度の予測を客観的に行う技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の態様を含む。
[1]固形がんの悪性度を予測する方法であって、非染色のがん組織試料の薄切切片のラマンスペクトルデータを取得する工程(a)と、前記ラマンスペクトルデータにおいて、1又は複数の所定の波数のラマンシフトのピークのラマン強度に基づいて、前記がんの悪性度が予測される工程(b)と、を含む、方法。
[2]前記工程(b)における前記ラマンスペクトルデータが、がん間質細胞領域から取得されたものである、[1]に記載の方法。
[3]前記固形がんが乳がんであり、前記工程(b)において、382±10cm
-1
、480±10cm
-1
、974±10cm
-1
及び1140±10cm
-1
からなる群より選択されるいずれかの波数のラマンシフトのピークのラマン強度に基づいて、前記がんがDuctal carcinoma in situ(DCIS)であるかInvasive breast cancer(IBC)であるかが識別され、前記がんがIBCであった場合には、前記がんがDCISであった場合と比較してより悪性度が高いと予測される、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]前記工程(b)において、382±10cm
-1
、974±10cm
-1
又は1140±10cm
-1
の波数のラマンシフトのピークのラマン強度が所定の閾値よりも高いことが、前記がんがDCISであることを示す、[3]に記載の方法。
[5]前記工程(b)において、480±10cm
-1
の波数のラマンシフトのピークのラマン強度が所定の閾値よりも低いことが、前記がんがDCISであることを示す、[3]に記載の方法。
[6]前記固形がんが膵臓がんであり、前記工程(b)において、298±10cm
-1
、480±10cm
-1
及び720±10cm
-1
からなる群より選択されるいずれかの波数のラマンシフトのピークのラマン強度に基づいて、前記がんの悪性度が予測される、[1]又は[2]に記載の方法。
[7]前記工程(b)において、298±10cm
-1
又は480±10cm
-1
の波数のラマンシフトのピークのラマン強度が所定の閾値よりも高いことが、前記がんの悪性度が高いことを示す、[6]に記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、固形がんの悪性度の予測を客観的に行う技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1は、凍結した生検標本から作製した薄切切片の代謝物をSERSイメージングにより画像化するシステムを説明する概略図である。
図2(a)は、実験例1において、乳がん針生検組織切片のSERSイメージングにより測定された平均SERSスペクトルデータである。図2(b)は、主要なラマンシフトのピークである、382cm
-1
、480cm
-1
、722cm
-1
、974cm
-1
、1140cm
-1
の波数におけるSERS像を示す画像である。
図3は、実験例2において、DCIS由来の試料及びIBC由来の試料のSERSイメージングにより測定された典型的なSERS画像である。
図4(a)は、実験例2において、DCIS由来の試料及びIBC由来の試料の「がん細胞領域」のみに着目した平均SERSスペクトルデータである。図4(b)は、実験例2において、DCIS由来の試料及びIBC由来の試料の「がん間質細胞領域」のみに着目した平均SERSスペクトルデータである。
図5は、実験例4において、膵管腺がん(pancreatic ductal adenocarcinoma、PDAC)の針生検組織切片のSERSイメージングにより測定された平均SERSスペクトルデータである。
図6は、実験例4において、図5における主要なラマンシフトのピークである、298±10cm
-1
、480±10cm
-1
、720±10cm
-1
の波数におけるSERS像を示す画像である。
図7は、実験例4において、13例のPDAC由来の試料のSERSスペクトルデータに基づいて、各試料の298±10cm
-1
、480±10cm
-1
、720±10cm
-1
、978±10cm
-1
の波数におけるラマン強度を示したグラフである。
図8(a)は、実験例4において、膵がん組織のがん間質細胞領域を質量分析イメージングにより解析し、ポリスルフィドの基質になるシステインの量を測定した結果に基づいて、システインの量が平均値より高い患者と低い患者に分け、治療後の予後を示した無病生存率を示したグラフである。図8(b)は、膵がん組織のがん細胞領域をSERSイメージングにより解析し、480cm
-1
のピークで示されるポリスルフィドの量を測定した結果に基づいて、ポリスルフィドの量が平均値より高い患者と低い患者に分け、手術後の予後を示した無病生存率を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[固形がんの悪性度を予測する方法]
一実施形態において、本発明は、固形がんの悪性度を予測する方法であって、非染色のがん組織試料の薄切切片のラマンスペクトルデータを取得する工程(a)と、前記ラマンスペクトルデータにおいて、1又は複数の所定の波数のラマンシフトのピークのラマン強度に基づいて、前記がんの悪性度が予測される工程(b)と、を含む、方法を提供する。実施例において後述するように、本実施例の方法により、固形がんの悪性度の予測を客観的に行うことができる。
(【0011】以降は省略されています)

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