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公開番号2024088039
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-07-02
出願番号2022202991
出願日2022-12-20
発明の名称軸封装置
出願人日本ピラー工業株式会社
代理人個人
主分類F16J 15/3252 20160101AFI20240625BHJP(機械要素または単位;機械または装置の効果的機能を生じ維持するための一般的手段)
要約【課題】低温化に伴うシール材の熱収縮にかかわらず、十分に高いシール性の維持を部品の追加なしで実現可能な軸封装置を提供する。
【解決手段】スタッフィングボックスは流体機器のケーシングの開口部に嵌め込まれ、可動軸の周囲にパッキン室を形成する。パッキン室にはシール材が詰め込まれる。スタッフィングボックスのリブはケーシング内の流路とパッキン室との間を仕切る。リブからは環状の凸部がパッキン室の中へ軸方向に突出して可動軸を囲む。シール材の外周リップはパッキン室の中へ軸方向に突出してスタッフィングボックスの凸部を囲み、先端部をスタッフィングボックスのリブに接触させる。シール材はスタッフィングボックスよりも熱収縮率が高く、シール領域を、常温ではパッキン押さえの圧力によって外周リップの先端部をリブに押し付けて形成し、低温では外周リップの内周面で凸部の外周面を締め付けて形成する。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
流体機器のケーシングの開口部に嵌め込まれて、前記流体機器の可動軸の周囲にパッキン室を形成するスタッフィングボックスと、
前記パッキン室に詰め込まれて前記可動軸を囲む環状のシール材と、
前記シール材に対して軸方向の圧力を加えるパッキン押さえと
を備えている軸封装置であって、
前記スタッフィングボックスが、
前記可動軸を囲む環状壁であり、前記ケーシングの中の流路と前記パッキン室との間を仕切っているリブと、
前記リブから前記パッキン室の中へ軸方向に突出して前記可動軸を囲む環状の凸部と
を含み、
前記シール材が、
前記パッキン室の中へ軸方向に突出して前記凸部を囲み、先端部を前記リブに接触させる環状の外周リップ
を含み、
前記シール材は前記スタッフィングボックスよりも熱収縮率が高く、前記可動軸と前記リブとの隙間を密封するための外周側シール領域を、
常温では、前記パッキン押さえの圧力によって前記外周リップの先端部を前記リブに押し付けて形成し、
低温では、前記外周リップの内周面で前記凸部の外周面を締め付けて形成する
ように構成されている軸封装置。
続きを表示(約 210 文字)【請求項2】
前記シール材が、
環状のリップであり、内周側に前記可動軸が圧入されることによって内周面を前記可動軸の外周面に密着させて、前記可動軸と前記リブとの隙間を密封するための内周側シール領域を形成するように構成されている内周リップ
を更に含む、請求項1に記載の軸封装置。
【請求項3】
前記内周リップの内周面が前記内周側シール領域に放物面を含む、請求項2に記載の軸封装置。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は軸封装置に関し、特に低温で使用されるものに関する。
続きを表示(約 2,500 文字)【背景技術】
【0002】
「軸封装置」とは、流体機器のケーシングの開口部と可動軸との隙間を密封する装置、すなわち、その隙間からの流体の漏れ、またはその隙間への異物の侵入を防止する装置である。典型的な軸封装置は、スタッフィングボックス、シール材、およびパッキン押さえを含む(たとえば、特許文献1-3参照)。「スタッフィングボックス」は、ケーシングの開口部に嵌め込まれている筒状部材であり、可動軸を囲んで自身の内周面と可動軸の外周面との間に環状の空間、すなわちパッキン室を形成する。「シール材」(「パッキン」とも言う。)は紐状または環状の可撓性部材であり、パッキン室に一般に複数詰め込まれる。パッキン室では複数のシール材が、紐状であれば可動軸に巻き付けられた状態で、環状であれば内周側に可動軸を通した状態で、可動軸に沿って隣り合わせで並べられる。「パッキン押さえ」(「グランド押さえ」とも言う。)は、パッキン室の軸方向における片側の端で可動軸を囲む環状部材であり、シール材に対して軸方向の圧力を加える。この圧力によってシール材が軸方向に圧縮されると径方向へは拡張し、スタッフィングボックスの内周面と可動軸の外周面とに密着する。その結果、シール材によってパッキン室が塞がれるので、ケーシングの開口部と可動軸との隙間が密封される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特開2015-102132号公報
特開2016-020711号公報
特許第5153576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シール材の材料としては樹脂がよく選択される。特に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素樹脂は、耐熱性が高く、流体に対する化学的な安定性に優れ、かつ可動軸に対する摩擦係数が低いので、多用される。しかし、可動軸やスタッフィングボックスの材料として一般的な金属に比べ、樹脂は熱収縮率(温度降下に伴って体積または長さが減少する割合。熱膨張係数と等しい。)が10倍程度高い。これにより、樹脂製のシール材の利用には以下の問題点がある。
【0005】
液体アンモニア(沸点-33℃)、液化天然ガス(LNG、沸点-160℃程度)、液体窒素(沸点-196℃)、液体水素(沸点-253℃)、液体ヘリウム(沸点-269℃)等、低温(この明細書では「零下数十℃以下」を意味する。)の流体を流体機器が扱う場合、その流体によって可動軸だけでなく軸封装置も低温まで冷却される。一般に可動軸およびスタッフィングボックスよりもシール材は熱収縮率が高いので、常温(この明細書では「零下数℃以上数十℃以下」を意味する。)から低温までの温度降下(以下、「低温化」と呼ぶ。)に伴い、パッキン室の内径よりもシール材の外径が大きく熱収縮する。その結果、シール材の外周側でシール圧が低下する。この低下が過大である場合、流体の漏れ量が過多になる危険性がある。しかし、低温の流体を流体機器が扱う状況下では増し締め作業が困難であり、パッキン押さえの圧力を高めてシール圧を元に戻すこと、すなわち漏れを抑えることが難しい。
【0006】
低温化に伴うシール性の低下を防ぐ技術としては、たとえば特許文献1に記載のものが知られている。この技術は、樹脂製のシール材(16)を軸方向において2本の金属環(18、20)の間に挟み、片方の金属環(18)に支えられた2本の環状のばね(22、24)からの径方向の圧力によって可動軸(10)とスタッフィングボックス(6)とに押し付ける。シール材(16)に比べれば金属環(18、20)は低温化に伴う熱収縮が小さいので、金属環(18、20)を、それらの間でシール材(16)が、低温化にかかわらずに実質上、常温時の形状に維持されるように、構成することができる。その結果、シール材(16)から可動軸(10)とスタッフィングボックス(6)とへ加えられるシール圧がばね(22、24)の圧力により、変わらずに高く維持される。しかし、この技術には金属環(18、20)とばね(22、24)とが不可欠であるので、軸封装置の部品点数が多く、製造工程が煩雑になり、軸方向における小型化も難しい。
【0007】
本発明の目的は上記の課題を解決することであり、特に、低温化に伴うシール材の熱収縮にかかわらず、十分に高いシール性の維持を部品の追加なしで実現可能な軸封装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの観点による軸封装置は、スタッフィングボックスと環状のシール材とパッキン押さえとを備えている。スタッフィングボックスは流体機器のケーシングの開口部に嵌め込まれて、その流体機器の可動軸の周囲にパッキン室を形成する。シール材はパッキン室に詰め込まれて可動軸を囲む。パッキン押さえはシール材に対して軸方向の圧力を加える。
【0009】
スタッフィングボックスはリブと環状の凸部とを含む。リブは、可動軸を囲む環状壁であり、ケーシングの中の流路とパッキン室との間を仕切っている。凸部はリブからパッキン室の中へ軸方向に突出して可動軸を囲む。
【0010】
シール材は環状の外周リップ、すなわち軸方向に張り出した外周部分を含む。外周リップはパッキン室の中へ軸方向に突出してスタッフィングボックスの凸部を囲み、先端部をスタッフィングボックスのリブに接触させる。シール材はスタッフィングボックスよりも熱収縮率が高く、可動軸とリブとの隙間を密封するための外周側シール領域を、(i)常温では、パッキン押さえの圧力によって外周リップの先端部をリブに押し付けて形成し、(ii)低温では、外周リップの内周面で凸部の外周面を締め付けて形成するように構成されている。
【発明の効果】
(【0011】以降は省略されています)

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