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公開番号2024058048
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-04-25
出願番号2022165164
出願日2022-10-14
発明の名称二酸化バナジウム薄膜の製造方法及び二酸化バナジウム薄膜形成用原料溶液
出願人学校法人常翔学園,株式会社高純度化学研究所
代理人個人,個人
主分類C01G 31/02 20060101AFI20240418BHJP(無機化学)
要約【課題】500℃以下の焼成温度で化学量論組成を有する二酸化バナジウム薄膜を形成することができ、汎用ガラスなどの低融点材料に成膜可能な二酸化バナジウム薄膜の製造方法を提供する。
【解決手段】二酸化バナジウム前駆体に、炭素数2~10のカルボン酸及び炭素数5~11のβ-ジケトンからなる群より選択される少なくとも一種の安定化剤、及び、溶剤を添加して二酸化バナジウム薄膜形成用原料溶液を調製する工程1と、前記二酸化バナジウム薄膜形成用原料溶液を基材上に塗布して膜を形成し、不活性雰囲気下に250~350℃で仮焼成を行う工程2と、前記工程2に続いて、水素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気下に、450~650℃で本焼成を行う工程3とを有する二酸化バナジウム薄膜の製造方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
二酸化バナジウム前駆体に、炭素数2~10のカルボン酸及び炭素数5~11のβ-ジケトンからなる群より選択される少なくとも一種の安定化剤、及び、溶剤を添加して二酸化バナジウム薄膜形成用原料溶液を調製する工程1と
前記二酸化バナジウム薄膜形成用原料溶液を基材上に塗布して膜を形成し、不活性雰囲気下に250~350℃で仮焼成を行う工程2と
前記工程2に続いて、水素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気下に、450~650℃で本焼成を行う工程3とを有する二酸化バナジウム薄膜の製造方法。
続きを表示(約 590 文字)【請求項2】
前記工程3において、混合ガスが水素及び窒素の混合物であり、かつ、該混合ガスの圧力が0.5~2気圧である、請求項1に記載の二酸化バナジウム薄膜の製造方法。
【請求項3】
前記工程3において、水素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気下に、450~500℃で本焼成を行う、請求項1に記載の二酸化バナジウム薄膜の製造方法。
【請求項4】
前記工程1において、二酸化バナジウム薄膜形成用原料溶液中に、さらにニオブ、タンタル、モリブデン、ジルコニウム、ハフニウム及びクロムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属カチオン種を添加し、
前記金属カチオン種の含有量が、二酸化バナジウム前駆体に対して、原子換算で1~3mol%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の二酸化バナジウム薄膜の製造方法。
【請求項5】
二酸化バナジウム前駆体と、炭素数2~10のカルボン酸及び炭素数5~11のβ-ジケトンからなる群より選択される少なくとも一種の安定化剤と、ニオブ、タンタル、モリブデン、ジルコニウム、ハフニウム及びクロムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属カチオン種とからなり、
前記金属カチオン種の含有量が、前記二酸化バナジウム前駆体に対してチタン原子換算で0.1~3mol%である、二酸化バナジウム薄膜形成用原料溶液。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、有機金属分解(MOD)法により、二酸化バナジウム(VO
2
)薄膜を製造する方法に関する。
続きを表示(約 3,300 文字)【背景技術】
【0002】
二酸化バナジウム(VO
2
)は68℃付近で単斜晶系から正方晶への絶縁体-金属相転移を生じ、電気的・光学的特性が大きく変化する。68℃付近の相転移を境に電気的に高い抵抗温度係数(TCR)を示すことを利用して、ボロメータ型赤外線センサや、温度によって透過率や反射率等の光学特性が可逆的に変化するスマートウィンドウ材料への応用が注目されている。
【0003】
このような二酸化バナジウム薄膜の形成方法には、スパッタリング法、化学気相成長(CVD)法、ゾル-ゲル法及び有機金属分解(MOD)法などが知られている。MOD法を利用した薄膜形成技術は、スパッタリング法やCVD法とは異なり、有機金属溶剤を塗布し、大気圧下で焼成して薄膜を形成できる簡便な方法であり、大型の真空装置を必要としないことから、広く普及している。例えば、特許文献1には、MOD法により、二酸化バナジウム薄膜、又はチタン等の異種元素をドープした二酸化バナジウム薄膜の高純度品を簡便に量産する方法として、二酸化バナジウム前駆体に、炭素数2~10のカルボン酸及び炭素数5~11のβ-ジケトンからなる群より選択される少なくとも一種の安定化剤、及び、溶剤を添加して二酸化バナジウム薄膜形成用原料溶液を調製する工程1と、前記二酸化バナジウム薄膜形成用原料溶液を基材上に塗布して膜を形成し、不活性雰囲気下に250~350℃で仮焼成を行う工程2と、前記工程2に続いて、0.2~2気圧で不活性ガス雰囲気下に550~750℃で本焼成を行う工程3とを有する二酸化バナジウム薄膜の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開2020-142961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のMOD法による二酸化バナジウム薄膜の製造方法では、アルゴン、窒素、ヘリウム又はこれらの混合物である不活性ガス雰囲気中で0.2~2気圧で焼成温度550℃以上にして焼成しなければ、化学量論組成を有する二酸化バナジウム薄膜が得られなかった。このため、汎用ガラスのように耐熱温度の低い基板への成膜には制限があった。
本発明は、従来よりも低い焼成温度で化学量論組成を有する二酸化バナジウム薄膜を製造することができ、汎用ガラスなどの低融点材料に成膜することが可能な二酸化バナジウム薄膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の二酸化バナジウム薄膜の製造方法は、二酸化バナジウム前駆体に、炭素数2~10のカルボン酸及び炭素数5~11のβ-ジケトンからなる群より選択される少なくとも一種の安定化剤、及び、溶剤を添加して二酸化バナジウム薄膜形成用原料溶液を調製する工程1と、前記二酸化バナジウム薄膜形成用原料溶液を基材上に塗布して膜を形成し、不活性雰囲気下に250~350℃で仮焼成を行う工程2と、前記工程2に続いて、水素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気下に、450~650℃で本焼成を行う工程3とを有することを特徴とする。
【0007】
前記工程3において、混合ガスは水素及び窒素の混合物であり、かつ、該混合ガスの圧力が0.5~2気圧であることが好ましい。
前記工程3において、水素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気下に、450~500℃で本焼成を行うことが好ましい。
前記工程1において、二酸化バナジウム薄膜形成用原料溶液中に、さらにニオブ、タンタル、モリブデン、ジルコニウム、ハフニウム及びクロムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属カチオン種を添加し、前記金属カチオン種の含有量は、二酸化バナジウム前駆体に対して、原子換算で1~3mol%であることが好ましい。
【0008】
本発明の二酸化バナジウム薄膜形成用原料溶液は、二酸化バナジウム前駆体と、炭素数2~10のカルボン酸及び炭素数5~11のβ-ジケトンからなる群より選択される少なくとも一種の安定化剤と、ニオブ、タンタル、モリブデン、ジルコニウム、ハフニウム及びクロムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属カチオン種とを含有し、前記金属カチオン種の含有量が、二酸化バナジウム前駆体に対してチタン原子換算で0.1~3mol%であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、二酸化バナジウム薄膜形成用の原料溶液に金属カチオン種を添加し、かつ、水素及び窒素の混合ガス雰囲気中、0.5~1.5気圧で450~580℃で焼成することにより、化学量論組成を有する二酸化バナジウム薄膜を製造することができる。このため、二酸化バナジウム薄膜を汎用ガラスなどの低融点材料に成膜することが可能となる。
本発明に係る二酸化バナジウム薄膜を調光ガラスに応用することで、環境温度に応じて、断熱性や紫外線遮断などの性能を持つ多機能ガラスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1は、有機金属分解(MOD)法による二酸化バナジウム(VO
2
)薄膜の成膜プロセスを示す。
図2は、本焼成温度を400℃、450℃、500℃、550℃及び580℃をとした場合に、c面サファイア基板上に形成したVO
2
薄膜の粉末X線回折(XRD)により得られる回折パターンを示す。
図3は、二酸化バナジウム薄膜形成用原料溶液(Nb不添加)に対して、本焼成温度を450℃、500℃、550℃及び580℃とした場合に、c面サファイア基板上に形成したVO
2
薄膜のX線光電子分光(XPS)分析結果を示す。
図4は、本焼成温度を450℃とした場合に、c面サファイア基板上に形成したVO
2
薄膜(Nb不添加)のサーモクロミック特性を示す。図4aは相転移前(30℃)及び相転移後(90℃)の透過率変化を示し、図4bは、図4aのグラフにおいて、波長1600nm時の相転移温度が約65℃であることを示す。
図5は、二酸化バナジウム薄膜形成用原料溶液(Nb不添加)に対して、本焼成温度を450℃、500℃、550℃及び580℃とした場合に、ガラス基板上に形成したVO
2
薄膜の粉末X線回折(XRD)により得られる回折パターンを示す。
図6は、Nbを0mol%、1mol%、2mol%及び3mol%添加し、本焼成温度を450℃とした場合に、ガラス基板上に形成したVO
2
薄膜の粉末X線回折(XRD)により得られる回折パターンを示す。
図7は、Nbを0mol%、1mol%、2mol%及び3mol%の範囲で添加した場合のX線光電子分光(XPS)分析結果であり、ガラス基板上のVO
2
薄膜に含まれるバナジウム(V)及び酸素(O)の化学エネルギー状態(図7a)と、ニオブ(Nb)の化学エネルギー状態(図7b)とを示す。
図8は、本焼成温度が450℃である場合に、ガラス基板上に形成したVO
2
薄膜のサーモクロミック特性を示す。図8aは相転移前(30℃)及び相転移後(80℃)の透過率変化を示し、図8bは、図8aのグラフにおいて、波長1600nm時の相転移温度が約68℃であることを示す。
図9は、金属カチオン種としてNbを0mol%、1mol%、2mol%及び3mol%の範囲で添加した場合のX線光電子分光(XPS)分析結果であり、r面(1-102)サファイア基板上のVO
2
薄膜に含まれるバナジウム(V)及び酸素(O)の化学エネルギー状態(図9a)と、ニオブ(Nb)の化学エネルギー状態(図9b)とを示す。
【発明を実施するための形態】
(【0011】以降は省略されています)

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