TOP特許意匠商標
特許ウォッチ Twitter
10個以上の画像は省略されています。
公開番号2024056826
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-04-23
出願番号2024018658,2022077983
出願日2024-02-09,2014-10-02
発明の名称がん特異的突然変異に対し抗原特異性を有するT細胞受容体を単離する方法
出願人個人
代理人個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人
主分類C12N 15/12 20060101AFI20240416BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】がん特異的突然変異によってコードされる突然変異アミノ酸配列に対し抗原特異性を有するTCRを単離する方法を提供する。
【解決手段】それぞれの遺伝子が、突然変異アミノ酸配列をコードするがん特異的突然変異を含有する、患者のがん細胞の核酸中の1以上の遺伝子を同定すること;患者の自己APCを、突然変異アミノ酸配列を提示するよう誘導すること;患者の自己T細胞と、突然変異アミノ酸配列を提示する自己APCとを共培養すること;自己T細胞を選択すること;及び選択された自己T細胞から、TCRをコードするヌクレオチド配列を単離することを含み、TCRは、がん特異的突然変異によってコードされる突然変異アミノ酸配列に対し抗原特異性を有する、方法が開示される。また、関連の、細胞集団を調製する方法、細胞集団、TCR、医薬組成物、及びがんを治療又は予防する方法が開示される。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
がん特異的突然変異によってコードされる突然変異アミノ酸配列に対し抗原特異性を有するT細胞受容体(TCR)又はその抗原結合部分を単離する方法であって、
それぞれの遺伝子が、突然変異アミノ酸配列をコードするがん特異的突然変異を含有する、患者のがん細胞の核酸中1以上の遺伝子を同定すること;
患者の自己抗原提示細胞(APC)を、突然変異アミノ酸配列を提示するよう誘導すること;
患者の自己T細胞と、突然変異アミノ酸配列を提示する自己APCとを共培養すること;(a)突然変異アミノ酸配列を提示する自己APCと共培養されて、且つ(b)患者によって発現される主要組織適合性複合体(MHC)分子の関係で提示される突然変異アミノ酸配列に対し抗原特異性を有する、自己T細胞を選択すること;及び
選択された自己T細胞から、TCR又はその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列を単離することを含み、TCR又はその抗原結合部分は、がん特異的突然変異によってコードされる突然変異アミノ酸配列に対し抗原特異性を有する、方法。
続きを表示(約 1,300 文字)【請求項2】
患者の自己APCを、突然変異アミノ酸配列を提示するよう誘導することが、突然変異アミノ酸配列を含むペプチド又はペプチドプールでAPCをパルスすることを含み、プール中の各ペプチドは異なる突然変異アミノ酸配列を含む、請求項1の方法。
【請求項3】
患者の自己APCを、突然変異アミノ酸配列を提示するよう誘導することが、突然変異アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列をAPCに導入することを含む、請求項1の方法。
【請求項4】
自己APCに導入されるヌクレオチド配列がタンデムミニ遺伝子(TMG)コンストラクトであり、各ミニ遺伝子が異なる遺伝子を含み、各遺伝子が突然変異アミノ酸配列をコードするがん特異的突然変異を含む、請求項3の方法。
【請求項5】
腫瘍の複数断片を患者から得ること、該複数断片からの自己T細胞のそれぞれを別々に、突然変異アミノ酸配列を提示する自己APCと共培養すること、及び複数断片のそれぞれからのT細胞を、突然変異アミノ酸配列に対する抗原特異性に関して別々に評価することを更に含む、請求項1~4のいずれか1項の方法。
【請求項6】
突然変異アミノ酸配列に対し抗原特異性を有する自己T細胞を選択することが、突然変異アミノ酸配列に対し抗原特異性を有する自己T細胞を選択的に増殖させることを含む、請求項1~5のいずれか1項の方法。
【請求項7】
突然変異アミノ酸配列に対し抗原特異性を有する自己T細胞を選択することが、プログラム細胞死1(PD-1)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン3(TIM-3)、4-1BB、OX40、及びCD107aのいずれか1以上を発現するT細胞を選択することを含む、請求項1~6のいずれか1項の方法。
【請求項8】
突然変異アミノ酸配列に対し抗原特異性を有する自己T細胞を選択することが、(i)突然変異アミノ酸配列を提示するAPCとの共培養に際して、ネガティブコントロールによって分泌される1以上のサイトカインの量と比較して、より多くの量の1以上のサイトカインを分泌するか、又は(ii)突然変異アミノ酸配列を提示するAPCとの共培養に際して、1以上のサイトカインを分泌するネガティブコントロールT細胞の数と比較して、少なくとも2倍の多さの数のT細胞が1以上のサイトカインを分泌するT細胞を選択することを含む、請求項1~7のいずれか1項の方法。
【請求項9】
1以上のサイトカインが、インターフェロン(IFN)-γ、インターロイキン(IL)-2、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)、顆粒球/単球コロニー刺激因子(GM-CSF)、IL-4、IL-5、IL-9、IL-10、IL-17及びIL-22を含む、請求項8の方法。
【請求項10】
がん細胞の核酸中の1以上の遺伝子を同定することが、がん細胞の全エクソーム、全ゲノム、又は全トランスクリプトームを配列決定すること含む、請求項1~9のいずれか1項の方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
電子提出された物件の参照による組み込み
本明細書と同時提出され、且つ、以下の通り識別されるコンピューター可読のヌクレオチド/アミノ酸の配列表が、参照により、本明細書中にその全体が組み込まれる:2014年9月15日付ファイル名「718291ST25.TXT」、29,577バイトのASCII(テキスト)ファイル1件。
続きを表示(約 7,800 文字)【背景技術】
【0002】
発明の背景
抗がん抗原T細胞受容体(TCR)を発現するよう遺伝学的に操作された細胞を用いる養子細胞療法(ACT)は、一部のがん患者において有益な臨床反応をもたらし得る。それにもかかわらず、がんや他の病気を、TCRを操作した細胞を使用して、首尾よく広範に治療することへの障害が残っている。例えば、がん抗原を特異的に認識するTCRは、同定すること及び/又は患者から単離することが困難であり得る。従って、がん反応性TCRを得る方法の改善についてのニーズがある。
【発明の概要】
【0003】
発明の要旨
本発明の一実施形態は、がん特異的突然変異によってコードされる突然変異アミノ酸配列に対し抗原特異性を有するTCR又はその抗原結合部分を単離する方法であって、それぞれの遺伝子が、突然変異アミノ酸配列をコードするがん特異的突然変異を含有する、患者のがん細胞の核酸中の1以上の遺伝子を同定すること;患者の自己抗原提示細胞(APC)を、突然変異アミノ酸配列を提示するよう誘導すること;患者の自己T細胞と、突然変異アミノ酸配列を提示する自己APCとを共培養すること;(a)突然変異アミノ酸配列を提示する自己APCと共培養されて、且つ(b)患者によって発現される主要組織適合性複合体(MHC)分子の関係で提示される突然変異アミノ酸配列に対し抗原特異性を有する、自己T細胞を選択すること;及び選択された自己T細胞から、TCR又はその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列を単離することを含み、TCR又はその抗原結合部分は、がん特異的突然変異によってコードされる突然変異アミノ酸配列に対し抗原特異性を有する、方法を提供する。
【0004】
本発明の別の実施形態は、がん特異的突然変異によってコードされる突然変異アミノ酸配列に対し抗原特異性を有する、TCR又はその抗原結合部分を発現する細胞集団を調製する方法であって、それぞれの遺伝子が、突然変異アミノ酸配列をコードするがん特異的突然変異を含有する、患者のがん細胞の核酸中の1以上の遺伝子を同定すること;患者の自己APCを、突然変異アミノ酸配列を提示するよう誘導すること;患者の自己T細胞と、突然変異アミノ酸配列を提示する自己APCとを共培養すること;(a)突然変異アミノ酸配列を提示する自己APCと共培養されて、且つ(b)患者によって発現されるMHC分子の関係で提示される突然変異アミノ酸配列に対し抗原特異性を有する、自己T細胞を選択すること;選択された自己T細胞から、TCR又はその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列を単離すること(TCR又はその抗原結合部分は、がん特異的突然変異によってコードされる突然変異アミノ酸配列に対し抗原特異性を有する);及び単離されたTCR又はその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列を末梢血単核細胞(PBMC)に導入し、TCR又はその抗原結合部分を発現する細胞を得ることを含む、方法を提供する。
【0005】
本発明のさらなる実施形態は、関連する細胞集団、TCR又はその抗原結合部分、医薬組成物、及びがんを治療又は予防する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1Aは、3737-TILと、OKT3、又は緑色蛍光タンパク質(GFP)RNA若しくは表示したタンデムミニ遺伝子(TMG)コンストラクトをトランスフェクションした樹状細胞(DC)との、20時間の共培養後に、インターフェロン(IFN)-γ酵素結合免疫吸着スポット(ELISPOT)アッセイによって測定した、1x10

(1e3)細胞あたりのスポット数を示すグラフである。「>」は、1×10

細胞あたり500超のスポットを示す。モックトランスフェクションした細胞は、核酸の添加なしで、トランスフェクション試薬のみで処理した。図1Bは、OKT3或いはGFP RNA、TMG-1、又は表示した野生型(wt)遺伝子ALK、CD93、ERBB2IP、FCER1A、GRXCR1、KIF9、NAGS、NLRP2、若しくはRAC3をトランスフェクションしたDCとの共培養後の、OX40+である、CD4+の3737-TILのパーセンテージを示すグラフである。モックトランスフェクションした細胞は、核酸の添加なしで、トランスフェクション試薬のみで処理した。
図2A~2Cは、何もなしでか、又は表示したHLA遮断抗体(MHC-1、MHC-II、HLA-DP、HLA-DQ、若しくはHLA-DR)と前培養していた、TMG-1をトランスフェクションしたDC(A)又は624-CIITA細胞((B)及び(C))と共培養した3737-TIL(A)、DMF5T細胞(B)、又はT4T細胞(C)について、20時間目において、IFN-γELISPOTアッセイによって測定した、1×10

(1e3)細胞あたりのスポット数を示すグラフである(A~C)。図2Dは、DMSO、突然変異(mut)ALK又はmutERBB2IPの25アミノ酸(-AA)長ペプチドで一晩パルスした、自己DQ-0301/-0601B細胞(灰色の棒)又はHLA-DQ05/0601遺伝子座(黒色の棒)若しくはHLA-DQ-0201/0301遺伝子座(斜線なしの棒)において一部適合する同種異系EBV-B細胞と共培養した3737-TILについて、20時間目においてIFN-γELISPOTアッセイによって測定した、1×10

(1e3)細胞あたりのスポット数を示すグラフである。ETGHLENGNKYPNLE(配列番号53);図2Eは、mutERBB2IPの25アミノ酸ペプチドTSFLSINSKEETGHLENGNKYPNLE(配列番号73)又は表示した、切断型mutERBB2IPペプチドFLSINSKEETGHLENGNKYPNLE(配列番号30)、SINSKEETGHLENGNKYPNLE(配列番号31)、NSKEETGHLENGNKYPNLE(配列番号32)、KEETGHLENGNKYPNLE(配列番号33)、ETGHLENGNKYPNLE(配列番号53)、TSFLSINSKEETGHL(配列番号34)、TSFLSINSKEETGHLEN(配列番号35)、TSFLSINSKEETGHLENGN(配列番号36)、TSFLSINSKEETGHLENGNKY(配列番号37)、若しくはTSFLSINSKEETGHLENGNKYPN(配列番号38)で一晩パルスした自己B細胞と共培養した3737-TILについて、20時間目において、IFN-γELISPOTアッセイにより測定した1×10

(1e3)細胞あたりのスポット数を示すグラフである。
図3Aは、生きている、CD4+(陰影付き)T細胞又はCD8+(陰影なし)T細胞にゲートしたフローサイトメトリーによって測定した、3737-TIL中の様々なTCRVβクローン型のパーセンテージを示すグラフである。図3Bは、3737-TILの養子細胞移入0日目(矢印で表示)前後の、表示した日数で測定した、患者3737の血清サンプル中で検出したIFN-γ量(pg/ml)を示すグラフである。エラーバーは平均の標準誤差(SEM)である。図3Cは、細胞移入0日目(矢印で表示)に対する、表示した月数での全腫瘍負荷(丸)(前処置基準の%として測定)又は肺(三角)若しくは肝臓(四角)における腫瘍負荷を示すグラフである。図3Dは、フローサイトメトリーによって測定した、CD4+Vβ22-OX40+の3737-TILにおける、種々のTCRVβクローン型のパーセンテージを示すグラフである。
図4A及び4Bは、3737-TILを用いた養子細胞移入前後(細胞移入前の腫瘍(菱形)及び細胞移入後の種々の腫瘍(Tu-1-Post(四角)、Tu-2-Post(▲)、及びTu-3-Post(▼)))の様々な時点で、患者3737の血液(丸)中の、2のERBB2IP突然変異特異的TCRβ-CDR3クローン型、Vβ22+(A)及びVβ5.2+(B)の頻度を示すグラフである。陰影付きの棒は、移入細胞(3737-TIL)における2のERBB2IP-突然変異特異的TCRβ-CDR3クローン型、Vβ22+(A)及びVβ5.2+(B)の頻度を示す。「X」は「検出なし」を示す。図4Cは、3737-TIL(T細胞)及び種々の養子細胞移入前(Tu-Pre)及び後(Tu-1-post、Tu-2-post及びTu-3-post)の腫瘍における、ACTBと比べたERBB2IPの発現を示すグラフである。図4Dは、細胞移入(矢印で表示)に対する、表示した月数における全腫瘍負荷(丸)(前処置基準の%として測定)又は肺(三角)若しくは肝臓(四角)における腫瘍負荷を示すグラフである。
図5Aは、同定した、突然変異した6アミノ酸残基(そのN-及びC-末端に、両側の12アミノ酸が隣接する)を含有するポリペプチドをコードするタンデムミニ遺伝子(TMG)コンストラクトの一例の模式図である。突然変異KIF2C配列は、DSSLQARLFPGLTIKIQRSNGLIHS(配列番号57)である。
図5Bは、自己メラニン細胞又はHLA-A

0205及びTMGコンストラクトRJ-1(図9Aに示す構造)、RJ-2、RJ-3、RJ-4、RJ-5、RJ-6、RJ-7、RJ-8、RJ-9、RJ-10、RJ-11、RJ-12、若しくは空のベクターを共トランスフェクションしたCOS-7細胞と一晩共培養したTIL2359T細胞によって分泌されるIFN-γ量(pg/mL)を示すグラフである。
図5Cは、HLA-A

0205及びRJ-1変異体をトランスフェクションしたCOS-7細胞と共培養したTIL2359によって分泌されたIFN-γ量(pg/mL)を示すグラフである(表中、「wt」と表示した遺伝子を、WT配列に再変換した)。KIF2C WT配列はDSSLQARLFPGLAIKIQRSNGLIHS(配列番号65)である。
図5Dは、HLA cDNAコンストラクト(左から右の各棒で特定される):HLA-A

0101(陰影なしの棒)、HLA-A

0201(灰色の棒)、又はHLA-A

0205(黒色の棒)と共に、空のベクター、KIF2C WT、又は突然変異KIF2CのcDNAコンストラクトをトランスフェクションしたCOS-7細胞と共培養したTIL2359によって分泌されたIFN-γ量(pg/mL)を示すグラフである。
図5Eは、種々の濃度(μM)のKIF2C
10-19
WT(RLFPGLAIKI;配列番号58)(グラフ中の下の線)又は突然変異KIF2C
10-19
(RLFPGLTIKI;配列番号59)(グラフ中の上の線)でパルスした、HLA-A

0205を安定に発現するHEK293細胞と一晩共培養したTIL2359T細胞によって分泌されたIFN-γ量(pg/mL)を示すグラフである。
図6Aは、自己メラニン細胞又は、空のベクター若しくはDW-1~DW-37から成る群から選択されたTMGコンストラクトをトランスフェクションした、HLA-C

0701を安定に発現するHEK293細胞と共培養したTIL2591T細胞によって分泌されるIFN-γ量(pg/mL)を示すグラフである。
図6Bは、TMGコンストラクトDW-6の構造を示す模式図である。突然変異POLA2配列は、TIIEGTRSSGSHFVFVPSLRDVHHE(配列番号64)である。
図6Cは、HLA-C

0701及びDW-6変異体をトランスフェクションしたCOS-7細胞と共培養したTIL2591によって分泌されたIFN-γ量(pg/mL)を示すグラフである(表中、「wt」と表示した遺伝子を、WT配列に再変換した)。POLA2 WT配列は、TIIEGTRSSGSHLVFVPSLRDVHHE(配列番号66)である。
図6Dは、HLA cDNAコンストラクト(左から右の各バーで特定される):HLA-C

0401(陰影なしの棒)、HLA-C

0701(灰色の棒)、又はHLA-C

0702(黒色の棒)と共に、空のベクター、POLA2 WT、又は突然変異POLA2のcDNAコンストラクトをトランスフェクションしたCOS-7細胞と共培養したTIL2591によって分泌されたIFN-γ量(pg/mL)を示すグラフである。
図6Eは、種々の濃度(μM)のPOLA2
413-422
WT(TRSSGSHLVF;配列番号67)(グラフ中の下の線)又は突然変異POLA2
413-422
(TRSSGSHFVF;配列番号68)(グラフ中の上の線)でパルスした、HLA-C

0701を安定に発現するHEK293細胞と、一晩共培養したTIL2591T細胞によって分泌されたIFN-γ量(pg/mL)を示すグラフである。
図7A~7Fは、突然変異反応性細胞の第2回投与の前(A~C)及び6ヶ月後(D~F)に撮影した、患者3737の肺のコンピューター断層撮影(CT)スキャンである。矢印はがん病変を指す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
発明の詳細な説明
本発明の一実施形態は、がん特異的突然変異によってコードされる突然変異アミノ酸配列に対し抗原特異性を有するTCR又はその抗原結合部分を単離する方法を提供する。本発明は多くの利点を提供する。例えば、本発明の方法は、患者の全MHC分子拘束性の多数の突然変異を、一度に迅速に評価し得、患者の突然変異反応性T細胞の全レパートリーを同定し得る。更に、本発明の方法は、免疫原性がん突然変異を、(a)がん特異的サイレント突然変異(突然変異アミノ酸配列をコードしない)及び(b)非免疫原性アミノ酸配列をコードするがん特異的突然変異と区別することにより、TCR又はその抗原結合部分によって標的とされ得る1以上のがん特異的突然変異アミノ酸配列を同定し得る。更に、本発明は、患者に特有のがん特異的突然変異によってコードされる突然変異アミノ酸配列に対し抗原特異性を有するTCR又はその抗原結合部分を提供し得、それにより、患者のがんを治療又は予防するのに有用であり得る、「個人向け」のTCR又はその抗原結合部分を提供する。本発明の方法はまた、例えばcDNAライブラリーを用いるもの等の、がん抗原を同定する従来の方法における固有の技術的バイアスを回避し得、それらの方法よりも時間と労力が少ない場合もある。例えば、本発明の方法は、T細胞と、特に上皮がん(例)に関して作製が困難であり得る腫瘍細胞株とを共培養することなく、突然変異応答性T細胞を選択し得る。特定の理論又はメカニズムには縛られないが、本発明の方法は、正常な非がん性細胞の破壊を最少化又は回避し、それによって毒性を低減又は除去しつつ、がん細胞の破壊を目的とするTCR又はその抗原結合部分を同定及び単離し得ると考えられる。従って、本発明はまた、例えば、化学療法単独、外科手術又は放射線等の他のタイプの治療に反応しないがん等のがんを、首尾よく治療又は予防するTCR又はその抗原結合部分を提供し得る。
【0008】
該方法は、それぞれの遺伝子が、突然変異アミノ酸配列をコードするがん特異的突然変異を含有する、患者のがん細胞の核酸中の1以上の遺伝子を同定することを含み得る。がん細胞は、腫瘍細胞又はがん細胞を含有するか、又は含有することが予想される患者由来の任意の身体試料から得られ得る。身体試料は、血液、原発腫瘍から若しくは転移腫瘍から得られた組織サンプル等の任意の組織サンプル、又は腫瘍若しくはがん細胞を含有する他の任意のサンプルであり得る。がん細胞の核酸は、DNAであってもRNAであってもよい。
【0009】
がん特異的突然変異を同定するために、該方法は、正常な非がん性細胞のDNA又はRNA等の核酸を配列決定し、がん細胞の配列を正常な非がん性細胞の配列と比較すること
を更に含み得る。正常な非がん性細胞は、患者又は異なる個体から得られ得る。
【0010】
がん特異的突然変異は、突然変異アミノ酸配列(「非サイレント突然変異」とも言われる)をコードし、がん細胞において発現するが、正常の非がん性細胞ではしない任意の遺伝子における任意の突然変異であり得る。本発明の方法において同定され得るがん特異的突然変異の非限定的な例としては、ミスセンス、ナンセンス、挿入、欠失、重複、フレームシフト及びリピート伸長変異(repeat expansion mutation)が挙げられる。本発明の一実施形態においては、該方法は、突然変異アミノ酸配列をコードするがん特異的突然変異を含有する、少なくとも1の遺伝子を同定することを含む。しかし、本発明の方法を用いて同定され得る、かかるがん特異的突然変異を含有する遺伝子の数は限定されず、1超(例えば、約2、約3、約4、約5、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約20、約25、約30、約40、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約150、約200、約400、約600、約800、約1000、約1500、約2000若しくはそれ以上、又は上記の値のうちの任意の2つによって規定される範囲)の遺伝子が挙げられ得る。同様に、本発明の一実施形態においては、該方法は、突然変異アミノ酸配列をコードする、少なくとも1のがん特異的突然変異を同定することを含む。しかし、本発明の方法を用いて同定され得る、かかるがん特異的突然変異の数は限定されず、1超(例えば、約2、約3、約4、約5、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約20、約25、約30、約40、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約150、約200、約400、約600、約800、約1000、約1500、約2000若しくはそれ以上、又は上記の値のうちの任意の2つによって規定される範囲)のがん特異的突然変異が挙げられ得る。1超のがん特異的突然変異が同定される実施形態においては、がん特異的突然変異は、同一の遺伝子又は異なる遺伝子中に位置し得る。
(【0011】以降は省略されています)

この特許をJ-PlatPatで参照する

関連特許