TOP特許意匠商標
特許ウォッチ Twitter
10個以上の画像は省略されています。
公開番号2024056397
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-04-23
出願番号2022163240
出願日2022-10-11
発明の名称摺動部材およびその製造方法
出願人大同メタル工業株式会社
代理人弁理士法人サトー
主分類C22C 9/06 20060101AFI20240416BHJP(冶金;鉄または非鉄合金;合金の処理または非鉄金属の処理)
要約【課題】工数の増加を必要とすることなく、溶接時におけるFe系の基材へのCu系の合金の差し込みを低減し、強度のさらなる向上を図る摺動部材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】摺動部材10は、Feを主成分とする基材11と、基材11に積層され、Niを6~12質量%、Snを3~9質量%を含むCu基合金からなる合金層12と、を備える。合金層12は、本体層15と中間層16とを有する。本体層15はCu基合金で形成され、中間層16はCu基合金を由来とするNi、Sn、Cuに基材11を由来とするFeを含む合金からなる。合金層12は、厚さ方向に切断した任意の観察断面において、厚さ方向の中間で分割して基材11側を下側領域とし、反対側を上側領域と設定したとき、下側領域の観察断面に占める硬質相17の合計の面積の割合を1とすると、上側領域の観察断面に占める硬質相17の合計の面積の割合は、1.2~3.0である。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
Feを主成分とする基材と、
前記基材に積層され、Niを6~12質量%、およびSnを3~9質量%を含むCu基合金からなる合金層と、
を備える摺動部材であって、
前記合金層は、
前記Cu基合金で形成される本体層と、
前記Cu基合金を由来とするNi、Sn、Cuに前記基材を由来とするFeを含む合金からなる中間層と、を有するとともに、
前記Cu基合金を由来とするNi、Sn、Cuの化合物からなる硬質相、ならびに前記硬質相および前記Cu基合金のマトリクスを含むフレーク相を有し、
前記合金層の厚さ方向に切断した任意の観察断面において、前記合金層の厚さ方向の中間で分割して前記基材側を下側領域とし、前記基材と反対側を上側領域と設定したとき、
前記下側領域において前記観察断面に占める前記硬質相の合計の面積の割合を1とすると、前記上側領域において前記観察断面に占める前記硬質相の合計の面積の割合は、1.2~3.0である、
摺動部材。
続きを表示(約 370 文字)【請求項2】
基材と親和性の高い添加元素を含む溶接材料を、前記基材に溶接して溶接層を形成する溶接工程と、
前記溶接工程と同時に、前記溶接材料に含まれる前記添加元素および前記基材を形成する基材元素を含む中間層を、前記溶接層の前記基材側の端部に形成する中間層形成工程と、
前記中間層を含む前記溶接層を形成した後、前記溶接層に熱処理を加えて、合金層を生成する時効工程と、
を含む、
摺動部材の製造方法。
【請求項3】
前記基材は、Feを主成分とし、
前記溶接材料は、Cu-Sn-Ni合金である、
請求項2記載の摺動部材の製造方法。
【請求項4】
前記時効工程は、温度を370~430℃とし、時間を4~10時間とする、
請求項2記載の摺動部材の製造方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本実施形態は、摺動部材およびその製造方法に関する。
続きを表示(約 2,500 文字)【背景技術】
【0002】
高い負荷が加わり、かつ起動と停止とを繰り返す過酷な条件では、回転軸を支持する摺動部材は高い強度と耐久性とが要求される。このような摺動部材では、強度および耐久性の確保のためにFe系の基材が用いられ、その表面に軸受のための合金層としてCu系の合金層が積層される。
【0003】
一般に、Cu系の合金は、Fe系の基材に対して固溶限が低いという特性がある。そのため、過大な溶込みによってCu系の合金にFeが固溶すると、Feが溶出しやすく、Fe系の基材にCu系の合金層を形成する場合、割れや剥離が発生しやすいという問題がある。特に、Fe系の基材にCu系の合金を溶接する場合、Cu系の合金が基材へ差し込む現象が生じ、基材と溶接層との境界における割れや剥離の原因となる。従来は、このCu系の合金の基材へ差し込みを低減するために、基材と合金層との間に他の金属または合金からなる中間層を形成している(特許文献1、2など参照)。中間層を形成することにより、Cu系の合金の基材への差し込みの低減が図られている。
【0004】
しかしながら、中間層の形成は、Fe系の基材にCu系合金を形成する工程に加え、別途の工程を必要とする。特に、大型の機器に適用される摺動部材のように、製造コストの低減の観点から溶接で合金層を形成する場合、中間層を形成するための工程の増加を招くという問題がある。また、中間層は、これら基材や合金層と異なる材料を必要とすることから、取り扱いも煩雑となるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開昭56-179020号公報
特開昭62-267078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、工数の増加を必要とすることなく、溶接時におけるFe系の基材へのCu系の合金の差し込みを低減し、強度のさらなる向上を図る摺動部材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために一実施形態の摺動部材は、Feを主成分とする基材と、前記基材に積層され、Niを6~12質量%、およびSnを3~9質量%を含むCu基合金からなる合金層と、を備える。
前記合金層は、本体層と中間層とを有する。本体層は、前記Cu基合金で形成される。中間層は、前記Cu基合金を由来とするNi、Sn、Cuに前記基材を由来とするFeを含む合金からなる。前記合金層は、前記Cu基合金を由来とするNi、Sn、Cuの化合物からなる硬質相、ならびに前記硬質相および前記Cu基合金のマトリクスを含むフレーク相を有する。前記合金層は、前記合金層の厚さ方向に切断した任意の観察断面において、前記合金層の厚さ方向の中間で分割して前記基材側を下側領域とし、前記基材と反対側を上側領域と設定したとき、前記下側領域において前記観察断面に占める前記硬質相の合計の面積の割合を1とすると、前記上側領域において前記観察断面に占める前記硬質相の合計の面積の割合は、1.2~3.0である。
【0008】
合金層は、本体層と中間層とを有している。これらの本体層と中間層とは、合金層を溶接によって形成するとき、同時に形成される。すなわち、溶接の際に基材に被着されたCu基合金は、基材のFeとの界面において、Cu基合金を由来とするNi、Sn、Cuと基材を由来とするFeとから中間層となる合金を生成する。一方、合金層と基材との界面を除く領域では、Cu基合金から本体層が形成される。このように、本実施形態では、合金層を溶接するとき、本体層に加え、基材との界面に中間層が同時に形成される。Cu基合金に含まれるNiは、基材を形成するFeとの親和性が高い。そのため、Cu基合金に含まれるNiと基材に含まれるFeとは、合金層と基材との界面に、合金層となるCu基合金とは異なる組成の中間層を形成する。すなわち、中間層は、合金層の溶接と同時に形成される。これにより、溶接時におけるFe基材へのCu系の合金の差し込み現象が中間層によって阻止され、割れや剥離を低減することができる。
【0009】
また、一実施形態では、合金層は、下側領域において観察断面に占める硬質相の合計の面積の割合を1とすると、上側領域において観察断面に示す硬質相の合計の面積の割合は、1.2~3.0である。硬質相は、合金層を構成するCu基合金のマトリクスよりも硬い。そのため、合金層と相手部材とが摺動するとき、硬質相は合金層の摩耗の低減に寄与する。一方、硬質相は、基材と合金層との接着力を低減する要因となる。そこで、硬質相の分布割合を下側領域と上側領域とで異ならせることにより、上側領域において合金層の摩耗の低減が図られるとともに、下側領域において基材と合金層との剥離が低減される。
したがって、中間層を形成するための工数を必要とすることなく、強度のさらなる向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
一実施形態による摺動部材の構造を示す模式的な断面図
一実施形態による摺動部材の合金層における硬質相およびフレーク相の組織を示す模式図
一実施形態による摺動部材の構造を示す模式図
一実施形態による摺動部材を回転軸部に適用した模式図
一実施形態による摺動部材の合金層を基材に溶接する溶接装置を示す模式図
一実施形態による摺動部材の試験片を示す模式図
図6の矢印VII方向から見た模式図
一実施形態による摺動部材の焼付試験および摩耗試験を行なう試験装置を示す模式図
試験装置に装着された試験片を図8の矢印IX方向から見た模式図
焼付試験の試験条件を示す概略図
摩耗試験の試験条件を示す概略図
実施例および比較例の試験結果を示す概略図
【発明を実施するための形態】
(【0011】以降は省略されています)

この特許をJ-PlatPatで参照する

関連特許