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公開番号2024056178
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-04-23
出願番号2022162900
出願日2022-10-11
発明の名称硫酸ニッケル水溶液の製造方法
出願人住友金属鉱山株式会社
代理人弁理士法人山内特許事務所
主分類C01G 53/10 20060101AFI20240416BHJP(無機化学)
要約【課題】粗硫酸ニッケル溶液に含まれる鉄と亜鉛を充分に除去できる硫酸ニッケル水溶液の製造方法を提供する。
【解決手段】不純物として鉄および亜鉛を含む粗硫酸ニッケル溶液に硫化剤を添加して亜鉛の硫化物沈澱を生じさせ、固液分離により硫化終液と硫化澱物とを生成する硫化工程S2と、硫化終液に空気を吹込むと共にアルカリを添加して、酸化中和反応により鉄および亜鉛を含む沈澱物を生じさせ、固液分離により中和終液と中和澱物とを生成する中和工程S3とからなり、硫化工程S2において、硫化終液の鉄と亜鉛の比率を亜鉛/鉄の重量比で0.6~10に調整した上で、中和工程S3において、硫化終液である粗硫酸ニッケル水溶液のpHを5.5~6.0にする。亜鉛を含む沈澱物が生成されやすく、亜鉛濃度の低い硫酸ニッケル水溶液が得られる。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
不純物として鉄および亜鉛を含む粗硫酸ニッケル溶液に硫化剤を添加して亜鉛の硫化物沈澱を生じさせ、固液分離により硫化終液と硫化澱物とを生成する硫化工程と、
前記硫化終液に空気を吹込むと共にアルカリを添加して、酸化中和反応により鉄および亜鉛を含む沈澱物を生じさせ、固液分離により中和終液と中和澱物とを生成する中和工程とからなり、
前記硫化工程において、前記硫化終液の鉄と亜鉛の比率を亜鉛/鉄の重量比で0.6~10に調整した上で、前記中和工程において、前記硫化終液である粗硫酸ニッケル水溶液のpHを5.5~6.0にする
ことを特徴とする硫酸ニッケル水溶液の製造方法。
続きを表示(約 280 文字)【請求項2】
前記中和工程において、前記粗硫酸ニッケル水溶液を直列に接続された複数段の反応槽に順に流し、最前段の前記反応槽から最後段の前記反応槽にかけて前記粗硫酸ニッケル水溶液のpHを段階的に上昇させ、最後段の前記反応槽における前記粗硫酸ニッケル水溶液のpHを5.5~6.0にする
ことを特徴とする請求項1記載の硫酸ニッケル水溶液の製造方法。
【請求項3】
前記硫化終液の鉄濃度は200~800mg/L、亜鉛濃度は200~8000mg/Lの範囲内である
ことを特徴とする請求項1または2記載の硫酸ニッケル水溶液の製造方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、硫酸ニッケル水溶液の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、鉄および亜鉛を含む粗硫酸ニッケル溶液から亜鉛および鉄を除去した硫酸ニッケル水溶液を製造する方法に関する。
続きを表示(約 2,500 文字)【背景技術】
【0002】
硫酸ニッケル水溶液の製造方法として、以下の方法が知られている(例えば、特許文献1)。まず、ニッケル原料を溶解、浸出するなどして、粗硫酸ニッケル溶液を得る(溶解・浸出工程)。この溶解・浸出工程では、例えば、銅製錬の副産物として得られる粗硫酸ニッケル結晶を水で溶解する。こうして得られた粗硫酸ニッケル溶液を加圧容器内で硫化剤と反応させ、亜鉛を硫化物沈澱として除去する(硫化工程)。つぎに、中和反応により粗硫酸ニッケル水溶液に含まれる鉄を水酸化物として除去し、中和終液を得る(中和工程)。最後に、溶媒抽出により中和終液中のニッケルを抽出、逆抽出して硫酸ニッケル水溶液を得る(溶媒抽出工程)。
【0003】
特許文献1の硫化工程では粗硫酸ニッケル溶液に含まれる亜鉛とともにニッケルの一部が難溶性の硫化物沈澱(硫化澱物)となり、ニッケルロスに繋がる。硫化剤の添加量、滞留時間を増やすと亜鉛の除去が進むが、ニッケルも硫化物沈澱を生成してロスする。すなわち、亜鉛を完全に除去するために硫化反応を促進させると、ニッケルも硫化物を生成しやすくなるため、硫化澱物量が増加し、硫化澱物中のニッケル含有率も上昇してしまう。なお、硫化澱物は、硫酸ニッケル水溶液の製造プロセスから系外に払出されて、硫化澱物中の銅の回収等の後処理に供される。
【0004】
一方で、硫化工程後の中和工程(脱鉄工程)でも鉄とともにニッケルが水酸化物として沈澱するが、後工程においてこの沈澱物は酸溶解され、大部分のニッケルは溶解濾液として系内に繰り返されるため、系外に払出されるニッケルロスを増加させることは無い。そこで、硫化工程ではニッケルロスが極端に増えない程度に亜鉛の除去を行って、硫化後液中に亜鉛を残留させ、残留した亜鉛はその後の中和工程において完全に除去することができれば、ニッケルロスを最小化でき、この観点からは望ましい形態となる。しかしながら、中和工程後の中和終液に亜鉛が残留すると、残留した亜鉛は、その後の溶媒抽出工程で中和終液から抽出されるものの、溶媒抽出工程の負荷を上昇させ、亜鉛の逆抽出に係る薬剤使用量を増加させる等の理由で好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開2020-158381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、粗硫酸ニッケル溶液に含まれる鉄と亜鉛を充分に除去できる硫酸ニッケル水溶液の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の硫酸ニッケル水溶液の製造方法は、不純物として鉄および亜鉛を含む粗硫酸ニッケル溶液に硫化剤を添加して亜鉛の硫化物沈澱を生じさせ、固液分離により硫化終液と硫化澱物とを生成する硫化工程と、前記硫化終液に空気を吹込むと共にアルカリを添加して、酸化中和反応により鉄および亜鉛を含む沈澱物を生じさせ、固液分離により中和終液と中和澱物とを生成する中和工程とからなり、前記硫化工程において、前記硫化終液の鉄と亜鉛の比率を亜鉛/鉄の重量比で0.6~10に調整した上で、前記中和工程において、前記硫化終液である粗硫酸ニッケル水溶液のpHを5.5~6.0にすることを特徴とする。
第2発明の硫酸ニッケル水溶液の製造方法は、第1発明において、前記中和工程において、前記粗硫酸ニッケル水溶液を直列に接続された複数段の反応槽に順に流し、最前段の前記反応槽から最後段の前記反応槽にかけて前記粗硫酸ニッケル水溶液のpHを段階的に上昇させ、最後段の前記反応槽における前記粗硫酸ニッケル水溶液のpHを5.5~6.0にすることを特徴とする。
第3発明の硫酸ニッケル水溶液の製造方法は、第1または第2発明において、前記硫化終液の鉄濃度は200~800mg/L、亜鉛濃度は200~8000mg/Lの範囲内であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、硫化工程において、硫化終液の鉄と亜鉛の比率を亜鉛/鉄の重量比で0.6~10に調整しておき、中和工程において、粗硫酸ニッケル水溶液のpHを5.5~6.0にするので、亜鉛を含む沈澱物が生成されやすく、亜鉛濃度の低い硫酸ニッケル水溶液が得られる。また、硫化工程では亜鉛の沈澱を多くする必要がないので硫化剤の添加量を減少させ、その結果ニッケル沈澱物も多くしないようにしてニッケルロスを減少させることができる。
第2発明によれば、中和工程において、粗硫酸ニッケル水溶液のpHを段階的に上昇させるので、急激なpH上昇操作に伴う局所的な過度のpH上昇を抑えることができる。その結果、中和工程においても、中和剤の添加量を減少させ、ニッケル沈澱物を多くしないようにすることができる。
第3発明によれば、硫化終液の鉄と亜鉛の比率に加えて、鉄濃度、および亜鉛濃度を調整することにより、より亜鉛を含む沈澱物が生成されやすくなり、亜鉛濃度の低い硫酸ニッケル水溶液が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の一実施形態に係る硫酸ニッケル水溶液の製造方法を示す全体工程図である。
中和工程S3から溶媒抽出工程S4までの工程図である。
中和工程S3の設備図と溶媒抽出工程S4の工程図である。
Zn‐H

O系におけるZnの状態図である。
亜鉛と鉄の重量比と中和終液の亜鉛濃度の関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
(製造方法の全体工程)
図1に示すように、本実施形態の硫酸ニッケル水溶液の製造方法は、溶解・浸出工程S1、硫化工程S2、中和工程S3、溶媒抽出工程S4を順に実行するものである。
(【0011】以降は省略されています)

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