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公開番号2024053848
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-04-16
出願番号2022160307
出願日2022-10-04
発明の名称転炉型精錬容器における溶銑の脱Si処理および脱りん処理方法
出願人株式会社神戸製鋼所
代理人安田岡本弁理士法人
主分類C21C 1/02 20060101AFI20240409BHJP(鉄冶金)
要約【課題】COガスの発生を抑制するとともにスロッピング発生頻度を低下させることで、歩留を向上させることができる転炉型精錬容器における溶銑の脱Si処理および脱りん処理方法を提供する。
【解決手段】本発明は、上底吹き方式の転炉型精錬容器1に装入された溶銑2に対して上吹きランス4から気体酸素ガスを吹き込むとともに上方から固体酸素である酸化鉄源を投入して脱りん処理を行う溶銑の脱りん方法において、固体酸素の脱Si反応速度定数を底吹きガスの流量から得られる撹拌動力密度を用いて予め求めておき、求めた脱Si反応速度定数と目標となる溶銑中[Si]濃度とを用いて脱Si処理に必要な気体酸素量を算出し、算出した気体酸素量の気体酸素ガスを上吹きランスから吹き込み、脱Si処理中の溶銑中[Si]濃度が目標となる溶銑中[Si]濃度に到達した後に、脱Si処理から脱りん処理へ移行する。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
上底吹き方式の転炉型精錬容器に装入された溶銑に対して、上吹きランスから気体酸素ガスを吹き込むとともに上方から固体酸素である酸化鉄源を投入して、脱りん処理を行う溶銑の脱りん方法において、
前記固体酸素の脱Si反応速度定数を、底吹きガスの流量から得られる撹拌動力密度を用いて予め求めておき、
求めた脱Si反応速度定数と、目標となる溶銑中[Si]濃度とを用いて、脱Si処理に必要な気体酸素量を算出し、
算出した気体酸素量の気体酸素ガスを前記上吹きランスから吹き込み、脱Si処理中の溶銑中[Si]濃度が目標となる溶銑中[Si]濃度に到達した後に、脱Si処理から脱りん処理へ移行する
ことを特徴とする転炉型精錬容器における溶銑の脱Si処理および脱りん処理方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、上底吹き方式の転炉型精錬容器に装入された溶銑に対して、脱Si処理および脱りん処理方法に関するものである。
続きを表示(約 2,200 文字)【背景技術】
【0002】
高炉等で製造された溶銑には、鋼の性能を低下させるSi,P等が含まれており、溶銑段階で脱りん処理を実施している。転炉の操業においては、転炉型精錬容器内に溶銑を装入し、その精錬容器の炉口に配備した吹錬用上吹きランスから、溶銑に向けて酸素ガスを吹き付けるとともに、精錬容器の底部に配備されている底吹き羽口から底吹きガスを吹き込んで溶銑を攪拌する吹錬(脱りん処理)が行われている。その脱りん処理方法としては、例えば、特許文献1~3などに開示されているものがある。
【0003】
特許文献1は、溶銑中のSi濃度を調整するための操作を適切なタイミングで実施することによって転炉吹錬におけるりん濃度の制御性を向上させることを目的としている。具体的には、転炉で吹錬処理される溶銑に関する溶銑データを説明変数とする統計モデルを用いて溶銑の一次脱珪速度定数の推定値を算出する脱珪速度定数算出部と、溶銑の吹錬処理前のSi濃度および一次脱珪速度定数に基づいて吹錬処理中の所定の時刻における溶銑のSi濃度を推定するSi濃度推定部とを備える転炉吹錬制御装置が開示されている。
【0004】
特許文献2は、溶銑Si濃度を適正に調整することにより、溶銑P濃度を精度高く制御し、かつ、生産効率を向上させることを目的としている。具体的には、溶銑成分の初期濃度を含む初期溶銑データを取得するデータ取得し、上吹きランスから溶銑に供給された吹込み酸素と溶銑との酸化反応である火点反応と、火点反応が進行する領域である火点領域とは異なる領域において進行する溶銑とスラグとの界面における反応であるスラグメタル界面反応とが複合された複合反応モデルを用いて、溶銑Si濃度を逐次的に推定し、推定された溶銑Si濃度と目標溶銑Si濃度との差に基づいて、溶銑Si濃度を調整するための操作を行う方法が開示されている。
【0005】
特許文献3は、溶銑の脱珪処理において、気体酸素などの吹き込み条件の変化に応じて、脱珪量及びSiO

生成量の推定を適切に行い、脱珪スラグの組成のばらつきを低減することを目的としている。具体的には、搬送容器内の溶銑に、気体酸素を吹き込むか、精錬剤の粉体を吹き込んで溶銑を脱珪処理する際に、見掛けの脱珪反応速度定数Kを、精錬剤の粉体の溶銑1トンあたりの吹込速度、浸漬ランスの吐出ノズルの浸漬深さ、気体酸素の溶銑1トンあたりの吹込速度のうちの1つ以上を変数として含む関数式として求め、求めた関数式を用いて見掛けの脱珪反応速度定数Kを算出し、算出した見掛けの脱珪反応速度定数Kを用いて脱珪処理後の溶銑中珪素濃度を算出し、算出した脱珪処理後の溶銑中珪素濃度と脱珪処理前の溶銑中珪素濃度との差から脱珪量を算出し、算出した脱珪量に基づいてCaO系媒溶剤の使用量を決定することとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
特開2021-031684号公報
特開2018-095943号公報
特開2019-173050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さて、特許文献1は、脱Siおよび脱りん処理を行うにあたって、統計モデルの計算において、排ガスのデータやスラグのデータなどを踏まえて算出して計算する必要があり、排ガスのデータを取得する計器が不良である場合は処理演算を行えなくなる虞がある。また、統計モデルに用いる脱Si速度定数は、転炉吹錬におけるりん濃度の制御を踏まえて計算しており、歩留を踏まえた前提で溶銑Si濃度の推算をしていない。つまり、歩留を向上させるものとはなっていない可能性がある。
【0008】
特許文献2は、脱Siおよび脱りん処理を行うにあたって、排ガスのデータを用いて溶銑Si濃度を逐次的に推定する必要があり、排ガスのデータを取得する計器が不良である場合は、溶銑Si濃度の推定が非常に困難になる虞がある。
【0009】
特許文献3は、搬送容器(混銑車)の操業に関する技術であり、気体酸素ないしは、精錬剤の粉体を吹き込んだ脱Si処理操業を踏まえて、反応速度定数を推算している。本発明が対象とする転炉型精錬容器における脱Siおよび脱りん処理を行うにあたっては、反応効率の面や精錬剤の投入方法の違いから、同文献の技術を用いることができない。また、特許文献3は、主に脱Siスラグの組成のバラつきを低減することを目的としており、歩留を踏まえた前提で溶銑Si濃度の推算をしていない。つまり、歩留を向上させるものとはなっていない可能性がある。
【0010】
ところで、脱りん反応が進行する前に、脱Si反応が優先的に進行し、その後脱C反応と脱P反応が進行を開始する。このとき、スロッピング現象(溶銑中[C]濃度と酸素ガスが反応することで、COガスが発生し、溶銑やスラグを系外に押しのける現象)が生じやすくなる。すなわち、気体酸素ガスを溶銑に多く吹き込むと、脱Si反応時に脱C反応が始まるので、スロッピング現象に繋がるCOガスが発生する可能性があった。
(【0011】以降は省略されています)

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