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公開番号2024044688
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-04-02
出願番号2022150378
出願日2022-09-21
発明の名称光ファイバ母材とその製造方法
出願人信越化学工業株式会社
代理人個人
主分類C03B 37/014 20060101AFI20240326BHJP(ガラス;鉱物またはスラグウール)
要約【課題】ガラス微粒子堆積体の透明ガラス化に要する工程時間をなるべく短くしながら、また透明ガラス化工程で供給する焼結ガスの流量をなるべく小さくしながら、溶け残りによる不良部分が少なく、かつ線引きして得られる光ファイバの伝送損失に問題のない光ファイバ用ガラス母材を得ることができる光ファイバ母材とその製造方法を提供する。
【解決手段】自らの中心軸を回転軸として回転する出発材に、ガラス微粒子合成用バーナから生成したガラス微粒子を吹きつけてガラス微粒子堆積体(スート)を製造し、ガラス微粒子堆積体を炉心管内に吊り下げて加熱し、透明ガラス化する焼結工程において、ガラス微粒子堆積体のある箇所が炉心管の加熱領域で加熱されている時間(min)と、炉心管内を流れる焼結ガスの線速度(m/min)との積が15.5(m)以上であることを特徴とする。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
自らの中心軸を回転軸として回転する出発材に、ガラス微粒子合成用バーナから生成したガラス微粒子を吹きつけてガラス微粒子堆積体(スート)を製造し、該ガラス微粒子堆積体を炉心管内に吊り下げて加熱し、透明ガラス化する焼結工程において、前記ガラス微粒子堆積体のある箇所が前記炉心管の加熱領域で加熱されている時間(min)と、前記炉心管内を流れる焼結ガスの線速度(m/min)との積が15.5(m)以上であることを特徴とする光ファイバ母材の製造方法。
続きを表示(約 690 文字)【請求項2】
前記ガラス微粒子堆積体(スート)のある箇所が前記炉心管の加熱領域で加熱されている時間(min)と、前記炉心管内を流れる焼結ガスの線速度(m/min)との積が17.6(m)以上である、請求項1に記載の光ファイバ母材の製造方法。
【請求項3】
前記ガラス微粒子堆積体(スート)のある箇所が前記炉心管の加熱領域で加熱されている時間(min)と、前記炉心管内を流れる焼結ガスの線速度(m/min)との積が21.7(m)以上である、請求項1に記載の光ファイバ母材の製造方法。
【請求項4】
前記ガラス微粒子堆積体(スート)を透明ガラス化する焼結工程において、前記ガラス微粒子堆積体を炉心管内の加熱領域を通過させることで加熱する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光ファイバ母材の製造方法。
【請求項5】
前記ガラス微粒子堆積体(スート)を透明ガラス化する焼結工程において、焼結ガスとしてヘリウムガスを供給する、請求項1に記載の光ファイバ母材の製造方法。
【請求項6】
自らの中心軸を回転軸として回転する出発材に、ガラス微粒子合成用バーナから生成したガラス微粒子を吹きつけてガラス微粒子堆積体(スート)を製造し、該ガラス微粒子堆積体を炉心管内に吊り下げて加熱し、透明ガラス化する焼結工程において、前記ガラス微粒子堆積体のある箇所が前記炉心管の加熱領域で加熱されている時間(min)と、前記炉心管内を流れる焼結ガスの線速度(m/min)との積が15.5(m)以上で製造されてなることを特徴とする光ファイバ母材。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、線引きされることで光ファイバとなる、光ファイバ母材とその製造方法に関する。
続きを表示(約 2,500 文字)【背景技術】
【0002】
光ファイバと同じように、光ファイバ母材の中心部は周辺(クラッド部)より屈折率が高くなっており、これをコア部と呼ぶ。一般的な通信用光ファイバの主な構成成分はSiO

であるが、コア部は屈折率を高めるために、ドーパントとしてGeO

が添加されている。光ファイバ母材の製造方法として、気相軸付け法(VAD法)、外付け気相成長法(OVD法)などの気相合成法で製造したガラス微粒子堆積体(スート)を加熱し、透明ガラス化する方法がある。このようにして製造した光ファイバ用母材を加熱・線引きし、細径化することで光ファイバとされる。
【0003】
VAD法は、回転しながら鉛直方向に上昇する出発材に、バーナの火炎中で生成したガラス微粒子を吹き付け、堆積させてスートを製造する方法である。すなわち、四塩化珪素のような珪素塩化物などを酸水素火炎中に供給して起こる火炎加水分解反応および高温熱酸化反応によって生成されるガラス微粒子を出発材に付着・堆積させている。堆積して得られたスートは、真空または不活性ガス雰囲気中で加熱し焼結することにより脱水・透明ガラス化して、光ファイバ母材とされる。
【0004】
脱水と透明ガラス化をおこなう加熱炉は、炉心管とその周囲を覆う加熱ヒータを備え、炉心管内は外気と遮断されている構成を持つものがある。ヒータは、断熱材の充填された加熱炉体内に取り付けられ、炉心管を介してスートを加熱するように構成されている。ある構成では、炉心管の長手方向中央付近にヒータを取り付け、炉心管内に吊り下げられたスートがヒータの加熱領域を通過することで脱水と透明ガラス化が行われる。またある構成では、炉心管の長手方向全域にヒータが取り付けられ、スートは炉心管内で移動せずに脱水と透明ガラス化が行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、光ファイバ母材の製造コストを低減することが望まれている。母材製造のコスト高要因として、ヘリウムガスに代表される焼結ガスが挙げられる。焼結ガスは、スートを脱水や透明ガラス化する際に使用されるガスである。透明ガラス化の際に、スートはヒータによって外側から加熱されてその表面から透明化が進むが、透明化の進行につれ、スート内に含まれる焼結ガスや大気の逃げ道がなくなることがある。このようにしてスート内に閉ざされたガスがガラス中に吸収・溶解されずに残ることがある。そのような部分は透明化せず、溶け残りという不良部分として判断される。そのため、溶け残りの発生は抑制されるべきである。供給する焼結ガスの流量が大きいほど、また透明ガラス化工程の時間が長いほど、溶け残りの発生は起こりにくくなる。しかし、このような対策はコストの上昇要因となる。
【0006】
本発明の課題は、透明ガラス化に要する工程時間をなるべく短くしながら、また透明ガラス化工程で供給する焼結ガスの流量をなるべく小さくしながら、溶け残りによる不良部分が少なく、かつ線引きして得られる光ファイバの伝送損失に問題のない光ファイバ用ガラス母材を得ることができる光ファイバ母材とその製造方法を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、上記課題を解決するために、供給する焼結ガスの流量及び透明ガラス化に要する工程時間の最適なバランスの検討を行った。その結果、溶け残りを低減するために炉心管の断面積当たりのHe流量と、スートがヒータ面から加熱される時間との積に下限を設けることが有効であることを突き止め、本発明に至った。
【0008】
本発明の光ファイバ母材の製造方法は、自らの中心軸を回転軸として回転する出発材に、ガラス微粒子合成用バーナから生成したガラス微粒子を吹きつけてガラス微粒子堆積体(スート)を製造し、該ガラス微粒子堆積体を炉心管内に吊り下げて加熱し、透明ガラス化する焼結工程において、前記ガラス微粒子堆積体のある箇所が前記炉心管の加熱領域で加熱されている時間(min)と、前記炉心管内を流れる焼結ガスの線速度(m/min)との積が15.5(m)以上であることを特徴としている。
前記ガラス微粒子堆積体(スート)のある箇所が前記炉心管の加熱領域で加熱されている時間(min)と、前記炉心管内を流れる焼結ガスの線速度(m/min)との積は、17.6(m)以上とするのが好ましく、より好ましくは21.7(m)以上である。
なお、前記ガラス微粒子堆積体(スート)を透明ガラス化する焼結工程において、前記ガラス微粒子堆積体を炉心管内の加熱領域を通過させることで加熱するのが望ましい。また、前記ガラス微粒子堆積体(スート)を透明ガラス化する焼結工程においては、焼結ガスとしてヘリウムガスを使用するのが望ましい。
【0009】
本発明の光ファイバ母材は、自らの中心軸を回転軸として回転する出発材に、ガラス微粒子合成用バーナから生成したガラス微粒子を吹きつけてガラス微粒子堆積体(スート)を製造し、該ガラス微粒子堆積体を炉心管内に吊り下げて加熱し、透明ガラス化する焼結工程において、前記ガラス微粒子堆積体のある箇所が前記炉心管の加熱領域で加熱されている時間(min)と、該炉心管内を流れる焼結ガスの線速度(m/min)との積が15.5(m)以上で製造されてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、透明ガラス化工程の工程時間をなるべく短くしながら、また透明ガラス化工程で供給する焼結ガスの流量をなるべく小さくしながら、溶け残りが少なく、かつ線引きして得られる光ファイバの伝送損失に問題のないガラス母材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
(【0011】以降は省略されています)

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