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公開番号2024031722
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-03-07
出願番号2022145668
出願日2022-08-26
発明の名称南関東及び富士火山地域の地殻活動をシュミレーションする方法
出願人黒田総合技研株式会社
代理人
主分類G01V 1/00 20240101AFI20240229BHJP(測定;試験)
要約【課題】富士火山に限れば、噴火の様式は多様で、どうしてそういう差が生じるのかなどの理論的な解説は見られない。ほとんどの火山では、噴火が発生しても、噴火の形式や噴出量などの解説で終わってしまい、どういう機構でその噴火が発生し、どういう理由で噴火が終了したのかの解説がなされるケースは少ない。現状の手法では噴火してみないと分からない状態が継続してしまう。
【解決手段】南関東地域の地殻活動をシミュレーションする際に、富士山の下にメルトによる浮力が働いていること、西相模湾断裂が存在しないものとすることを前提条件とし、伊豆半島北端から北西方向の地殻の弱線の開き具合を計算することで富士火山の噴火の様子を調べること、及び東京湾北部地震の直前予測として、伊豆半島の体積ひずみ計の拡張の速度と、東京湾周辺の地震活動の分布を用いることを特徴とする南関東及び富士火山地域の地殻活動をシミレーションする方法により成す。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
南関東地域の地殻活動をシミュレーションする際に、富士山の下にメルトによる浮力が働いていること、西相模湾断裂が存在しないものとすることを前提条件とし、伊豆半島北端から北東方向の地殻の弱線の開き具合を計算することで富士火山の噴火の様子を調べることを特徴とする、南関東及び富士火山地域の地殻活動をシュミレーションする方法。
続きを表示(約 310 文字)【請求項2】
東京湾北部地震の直前予測として、伊豆半島東部の体積ひずみ計の拡張の速度と、東京湾周辺の地震活動の分布を用いることを特徴とする南関東及び富士火山地域の地殻活動をシュミレーションする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の地殻の弱線の開き具合を予測するにあたり、静岡県内のGPSによる地殻の動きを用いることを特徴とする南関東及び富士火山地域の地殻活動をシュミレーションする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の地殻の弱線の開き具合を予測するにあたり、千葉県北部の地震活動とGPSによる地殻の動きを用いることを特徴とする南関東及び富士火山地域の地殻活動をシュミレーションする方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
近年、富士火山の噴火についての危惧が高まり、非特許文献1にあるように令和3年3月26日に富士山火山防災対策協議会からハザードマップの改訂版が発行された。富士山(以下、富士火山という)は、前回の宝永噴火から320年も噴火が発生しなかったため、膨大な量のマグマを蓄えていると考えられている。一方、火山の研究においては、データに基づかないと論文化が難しいことから、議論が可能な深さ30km以内の活動についての議論が主に行われている。一方で沈み込み帯のマグマ生成は、深さ100km前後で含水鉱物が相転移して発生した水が起源であることが判っているが、深さ30~100kmの間の挙動は解像度の低い地震波を用いたトモグラフィーなどに頼ることになり、議論が難しい問題がある。富士火山や箱根火山に関して言えば、その直下のプレートの深さは極めて浅く、マグマの起源も明らかでないため、観測可能なマグマだまりを中心とした議論になってしまう。そのため、どういう原因で噴火が発生するのか、噴火の規模やタイプに違いがでる理由についての予測機構が立てにくく、仮説の仮説のような議論が発生してしまう。
続きを表示(約 3,100 文字)【0002】
本発明人は、非特許文献2にあるように、火山灰が雪のように圧密しない特性を持つこと、容易に流動して低いところに溜まる特性から避難所のピロティ部分が火山灰の荷重に負けて避難所を閉鎖しないといけないような事故が発生しやすいこと等を報告した。また、桜島火山の火山灰中のナノ粒子の定量と安全性との関係について非特許文献3で報告するなど火山灰に興味を以て研究を行ってきた。
【先行技術文献】
【0003】
富士山ハザードマップの改訂について https://www.pref.kanagawa.jp/documents/74008/siryou1.pdf (2022年8月24日検索)
黒田章裕,渡邊朗子「火山灰の流動特性が建物に与える影響」,日本建築学会 日本建築学会大会学術講演梗概集(2014)
黒田章裕,杉林堅次,藤堂浩明,伊藤公紀,雨宮隆,安部隆,宮城磯治,天然の無機系ナノ粒子―火山灰中のナノ粒子とその安全性―, 日本化粧品技術者会誌,51,4,317-325(2017)
HIROSE Fuyuki’s HP フィリピン海スラブおよび太平洋スラブ上面のコンター https://www.mri-jma.go.jp/Dep/sei/fhirose/plate/PAC.html(2022年8月24日検索)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
火山はマグマを火山灰として放出することもあれば、溶岩として放出することもある。富士火山に限れば、噴火の様式は多様であり、どうしてそういう差が生じるのかなどの理論的な解説は見られない。有珠山のように経験則が成立し、予測が可能な火山はごくわずかであり、ほとんどの火山では、噴火が発生しても、噴火の形式や噴出量などの解説で終わってしまい、どういう機構でその噴火が発生し、どういう理由で噴火が終了したのかの解説がなされるケースは少ない。すると、火山噴火に関する限り、現状の手法ではどこまで行っても全ては噴火してみないと分からない状態が継続してしまう。これでは行政上、産業上の対策がとりにくく弊害が大きいことから、本発明人は南関東及び富士火山地域の地殻活動をシミュレーションする方法の検討及びそれに関係する地殻活動の予測を実施した。
【課題を解決するための手段】
【】
南関東地域の地殻活動をシミュレーションする際に、富士山の下にメルトによる浮力が働いていること、西相模湾断裂が存在しないものとすることを前提条件とし、伊豆半島北端から北西方向の地殻の弱線の開き具合を計算することで富士火山の噴火の様子を調べること、及び東京湾北部地震の直前予測として、伊豆半島東部の体積ひずみ計の拡張の速度と、東京湾周辺の地震活動の分布を用いることを特徴とする南関東及び富士火山地域の地殻活動をシミュレーションする方法により成す。
【発明の効果】
【0005】
南関東及び富士火山地域の地殻活動をシュミレーションし、経験則と合わせることにより、災害時の人的、産業的損失を減らすことができる。また、シュミレーション通りの結果が得られた場合では、火山の噴火システムや地震の発生機構についての科学的理解が進む効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0006】
非特許文献4の図1として記載された大平洋プレートとフィリピン海プレートの沈み込み深さを示した図
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明で使用する用語について決めておく。上述のように、プレートの深さ100km付近で含水鉱物が相転移して発生した水とマントルが反応して初生マグマを生じる。この初生マグマの液体部分を以後メルトと言う。そして、火山直下のマグマだまりに蓄積されているマグマを以後マグマという。
【0008】
非特許文献4から引用した図1にあるように、北緯36度50分付近から北では、大平洋プレート由来のメルトは北米プレート上に火山を形成している。一方。北緯36度50分付近より南側では大平洋プレート起源の火山は富士、箱根火山まで存在していない。これは太平洋プレートと北米プレートの間にフィリピン海プレートが入り込んでいるためにメルトがフィリピン海プレートを透過できないためである。東北地方における大平洋プレートの火山の位置の周期性を考えれば、北緯36度50分から富士山までの緯度の差があれば、本来であれば火山が4~5つ生成していてもおかしくない。この火山4~5つ分のメルトはどこに行っているかと考えると、
1.フィリピン海プレートに貫入してやわらかい岩脈を形成。
2.比重差によりフィリピン海プレートの底面を伝ってフィリピン海プレートの浅い部分に移動
していることが想定される。割合としては1が多いのではないかと思われる。
フィリピン海プレートは伊豆半島(や丹沢ブロック)の衝突によりプレートの進行が妨げられる結果、プレートにうねりが発生し、伊豆半島から北側にやや浅い構造を形成しているため、メルトは最も浅い富士火山、箱根火山の深部を目指して横方向から移動しつつ上昇してくることが想定される。
【0009】
富士火山と箱根火山付近のプレートのゆがみを見ると、富士火山側により傾斜が急となっていることから、富士火山へのメルトの供給が優先されると思われる。尚、昔は箱根火山の方がプレートの傾斜の頂となっていたと思われるので、箱根火山の方に主にメルトの供給があったと思われる。将来的にはフィリピン海プレートの進行方向に変化がなければ、伊豆半島の北進に伴い富士火山よりも北西側に火口が移動していくことが想定される。尚、浅間山の近くから富士火山までは距離があるので、富士火山から距離が遠くなるほど上記1にメルトはとられ、実質的に富士火山に供給されるメルトは富士火山に比較的近いところから供給されるものが主になると思われる。これは富士火山の山体の大きさが、伊豆弧に存在する火山体と極端には違わず、もし遠距離からのメルトの供給が潤沢にあるのであれば、もっと大きな山体を形成していても良いと考えられるためである。
【0010】
フィリピン海プレートは伊豆半島の東西で進行速度が異なることから、伊豆半島北端から北西側に速度差を埋めるための断裂または断層帯が存在していることが想定され、断裂が開いた時にメルトが上昇してくるものと思われる。フィリピン海プレートの厚さは30km程度と見積もられ大平洋プレートと比べて薄く熱いため、断裂と弱線を通じてメルトの上昇が可能である。もしこれが厚く冷たい太平洋プレートであれば、プレート内でメルトの上昇は止められてしまう可能性が高い。断裂が開く要因としては、東海地震や関東地震およびその前駆活動、フィリピン海プレートの進行方向等が挙げられる。メルトの供給量については、火山直下近傍に貫入し、かつ火口に出口を見つけたメルト以外にも、関東フラグメントの影響や海溝型地震およびその前駆活動の影響により北米プレート下に潜り込んだフィリピン海プレートに何等かのストレスがかかった場合、プレート内部に貫入していたメルトが押し出されて追加供給されるケースが想定される。尚、上記の弱線は位置的に北米プレートの端に当たっている可能性があるため、昔の古傷が開いている可能性もあるが定かではない。
(【0011】以降は省略されています)

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