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公開番号2024017180
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-02-08
出願番号2022119660
出願日2022-07-27
発明の名称溶鋼の真空脱ガス処理方法
出願人日本製鉄株式会社
代理人個人,個人,個人
主分類C21C 7/10 20060101AFI20240201BHJP(鉄冶金)
要約【課題】酸素Oや炭素Cが豊富に存在する溶鋼に対して、効率的な脱水素処理と突沸抑制の両立が図れる溶鋼の真空脱ガス処理方法を提供する。
【解決手段】取鍋内の溶鋼の真空脱ガス処理方法であり、真空脱ガス処理を行う溶鋼を収容する取鍋には、FeO、Fe2O3、及び、MnOを溶鋼1トンあたり0.4kg~2.0kg含み、かつ、CaO換算で溶鋼1トンあたり1.0kg~10kgのスラグが存在し、溶鋼は、0.4質量%以上の炭素を含み、フリー酸素濃度が30ppm~150ppmであり、真空脱ガス処理を行う際の大気圧から0.13kPaまでの減圧過程で、20.0kPaから13.3kPaまでの減圧に要する時間を3分以上とし、0.13kPa以下での脱ガス処理後に大気圧まで復圧する。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
取鍋内の溶鋼の真空脱ガス処理方法において、
真空脱ガス処理を行う前記溶鋼を収容する前記取鍋には、FeO、Fe



、及び、MnOを溶鋼1トンあたり0.4kg以上2.0kg以下含み、かつ、CaO換算で溶鋼1トンあたり1.0kg以上10kg以下のスラグが存在し、前記溶鋼は、0.4質量%以上の炭素を含み、フリー酸素濃度が30ppm以上150ppm以下であり、
前記真空脱ガス処理を行う際の大気圧から0.13kPaまでの減圧過程で、20.0kPaから13.3kPaまでの減圧に要する時間を3分以上とし、0.13kPa以下での脱ガス処理後に大気圧まで復圧することを特徴とする溶鋼の真空脱ガス処理方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、溶鋼、特に高炭素溶鋼の真空脱ガス精錬に係る真空脱ガス処理方法に関する。
続きを表示(約 2,600 文字)【背景技術】
【0002】
真空脱ガス精錬は、溶鋼中の炭素や水素をガス化して除去する精錬であり、用途に応じて処理する工程である。
ここで、例えば炭素は、溶鋼中の炭素Cと、溶鋼中の酸素O(介在物となっていない溶鋼に溶存している酸素。以下、フリー酸素とも記載)及びFeO、Fe



、MnO(スラグ中の低級酸化物)の酸素Oとが反応してCOとなり、溶鋼外へ排出されて溶鋼中のC濃度が低下する。水素Hは、溶鋼中の溶存H同士が反応してH

となり、溶鋼外へ排出されるが、当該反応はCOが生成する圧力よりも低い圧力で起こるため、脱水素処理(脱H処理)する際は脱炭素処理(脱C処理)も起きる。
【0003】
このため、脱水素処理する際は不可避的にCOが生成するが、突如多量のCOが発生する場合があり、当該事象を突沸と称する場合がある。突沸は、溶鋼の飛散を招くため発生を防止する必要がある。
また、脱水素処理は、例えば雰囲気圧力が0.13kPa(1torr)程度かこれ以下で行う必要があり、突沸を回避しながら処理を行う必要がある。
例えば、特許文献1には、転炉出鋼時の成分から突沸発生の目安となる基準CO分圧を定め、真空脱ガス処理においては、真空度(雰囲気ガス圧力)の調整により、脱ガス処理時のCO分圧と基準CO分圧の比率を所定の値以下に制御して突沸を防止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開平10-30117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1記載の方法により、一定レベルの突沸は抑制することができる。
しかし、例えば、弱脱酸(例えば、フリー酸素濃度が30ppm以上150ppm以下)であり、低級酸化物を所定量含むスラグが存在する溶鋼のように、溶鋼中のOや溶鋼上のスラグのO濃度がある程度高い溶鋼であって、しかも、溶鋼中の炭素C濃度が0.4質量%以上のような高炭素溶鋼である場合、酸素Oや炭素Cが豊富に存在するため突沸が発生し易い。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、酸素Oや炭素Cが豊富に存在する溶鋼に対して、効率的な脱水素処理と突沸抑制の両立が図れる溶鋼の真空脱ガス処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した通り、特許文献1記載の方法では、0.4質量%以上の炭素を含む弱脱酸溶鋼であって、FeO、Fe



、及び、MnOを溶鋼1トンあたり0.4kg以上2.0kg以下含み、かつ、CaO換算で溶鋼1トンあたり1.0kg以上10kg以下のスラグが取鍋に存在する溶鋼を真空脱ガス処理する場合、突沸発生を抑制できない。
そこで本発明者らは、真空槽(脱ガス槽)の槽内圧力が2.7kPa(20torr)で突沸が発生するといわれていることから、この値よりも高い圧力に設定して所定の保持時間の処理を実施すれば突沸を防止できると考え、4.0kPa(30torr)から26.7kPa(200torr)までの間の種々の値に保定して処理を試みた。
その結果、20.0kPa(150torr)以下で所定時間以上の処理を行えば突沸は抑制、更には防止できるものの、脱水素処理時間の効率化(短縮)は困難な場合があることが判明した。
本発明は、以上の知見をもとになされたものであり、その要旨は以下の通りである。
【0008】
前記目的に沿う本発明に係る溶鋼の真空脱ガス処理方法は、取鍋内の溶鋼の真空脱ガス処理方法において、
真空脱ガス処理を行う前記溶鋼を収容する前記取鍋には、FeO、Fe



、及び、MnOを溶鋼1トンあたり0.4kg以上2.0kg以下(以下、0.4~2.0kg/t-steelとも記載)含み、かつ、CaO換算で溶鋼1トンあたり1.0kg以上10kg以下(以下、1.0~10kg/t-steelとも記載)のスラグが存在し、前記溶鋼は、0.4質量%以上の炭素を含み、フリー酸素濃度が30ppm以上150ppm以下(以下、30~150ppmとも記載)であり、
前記真空脱ガス処理を行う際の大気圧(約101kPa:760torr)から0.13kPa(1torr)までの減圧過程で、20.0kPa(150torr)から13.3kPa(100torr)までの減圧に要する時間を3分以上とし、0.13kPa(1torr)以下での脱ガス処理(脱水素処理)後に大気圧まで復圧する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る溶鋼の真空脱ガス処理方法は、取鍋に、FeO、Fe



、及び、MnOを0.4~2.0kg/t-steel含み、かつ、CaO換算で1.0~10kg/t-steelのスラグが存在する、フリー酸素濃度が30~150ppmで炭素を0.4質量%以上含む溶鋼であっても(炭素Cと酸素Oの供給源があっても)、真空脱ガス処理を行う際の減圧過程で20.0kPaから13.3kPaまでの減圧に要する時間を3分以上とすることにより、従来よりも突沸を抑制、更には防止できる(即ち、突沸の課題を解決できる)。
また、20.0kPaから13.3kPaまでの減圧に要する時間を3分以上とするので、溶鋼を貯留する鍋(取鍋:溶鋼鍋)内壁に付着するスラグ量が減少し、その後の脱水素処理時に水素供給源となるスラグの溶鋼への落下量を減少できるため、脱ガス処理(脱水素処理)時間を安定的に短縮できる(即ち、脱水素の課題を解決できる)。
従って、効率的な脱水素処理と突沸抑制(更には防止)の両立が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
溶鋼を真空脱ガス処理する際の鍋壁へのスラグ付着状況を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
(【0011】以降は省略されています)

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