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公開番号2023172968
公報種別公開特許公報(A)
公開日2023-12-06
出願番号2023135300,2023083949
出願日2023-08-23,2023-05-22
発明の名称湿式紡糸法を用いて製造された綿形状の骨再生材料、及び湿式紡糸法を用いて綿形状の骨再生材料を製造する方法
出願人国立大学法人 名古屋工業大学,国立大学法人 長崎大学,ORTHOREBIRTH株式会社
代理人個人
主分類D01F 6/62 20060101AFI20231129BHJP(天然または人造の糸または繊維;紡績)
要約【課題】
人の体内に埋植して早期の骨形成が得られる綿形状の骨再生材料を提供する。
【解決手段】
PDLLGA樹脂を50~80重量%、β―TCP粒子を50~20重量%含む湿式紡糸法で製造した生分解性繊維で形成された綿形状の骨再生材料であり、前記PDLLGA樹脂の分子量は7~15万であり、生分解性繊維の外径は80~200μmであって、骨再生材料の綿形状は、生分解性繊維が互いに付着せずに堆積することによって形成されている。PDLLGA樹脂とβ―TCP粒子をからなる生分解性繊維を紡糸する手段として、改良された湿式紡糸法を用いる。
【選択図】図5
特許請求の範囲【請求項1】
改良された湿式紡糸法を用いて製造された綿形状の骨再生材料であって、前記綿形状の骨再生材料は、
PDLLGA樹脂を50~80重量%、β―TCP粒子を50~20重量%含む湿式紡糸法で製造した生分解性繊維で形成された綿形状の骨再生材料であり、
前記PDLLGA樹脂の分子量は7~15万であり、
上記生分解性繊維の外径は80~200μmであり、
前記骨再生材料の綿形状は、前記外径を有する生分解性繊維が互いに付着せずに堆積することによって形成されている、
前記改良された湿式紡糸法を用いて製造された綿形状の骨再生材料。
続きを表示(約 2,000 文字)【請求項2】
前記PDLLGA樹脂は、PDLLAとPGAを重量比75:25で共重合して製造されたものである、請求項1に記載の綿形状の骨再生材料。
【請求項3】
前記PDLLGA樹脂の分子量は約10万である、請求項1又は2に記載の綿形状の骨再生材料。
【請求項4】
前記生分解性繊維は長さが10cm以上である、請求項1又は2に記載の綿形状の骨再生材料。
【請求項5】
前記生分解性繊維の断面は略円形状又は楕円形状である、請求項1又は2に記載の綿形状の骨再生材料。
【請求項6】
前記綿形状の骨再生材料は、β―TCP粒子とPDLLGA樹脂を重量比50-80:50-20の割合で混合した混合物を混合容器に投入し、
前記混合物に対して所定の量のアセトンを前記混合容器に投入し、前記PDLLGA樹脂を前記アセトンに溶解させて攪拌することによって、前記β―TCP粒子が溶液中に分散した紡糸溶液を調製し、
前記調製した紡糸溶液を湿式紡糸装置のシリンジに充填し、
前記シリンジに充填された前記紡糸溶液を入射針の吐出口から垂直下方向に押し出して所定の高さを有する筒形状のコレクター容器中に出射し、前記コレクター容器には、エタノールと水が上下二層になって満たされており、
前記吐出口から押し出された紡糸溶液は、自重により前記コレクター容器中の前記エタノール中に繊維状に入射し、前記エタノールの液中に繊維状に入射された紡糸溶液の表面は前記アセトンの脱離と前記エタノールの侵入の相互拡散によって固化され、
次いで、前記表面が固化した紡糸溶液は、自重により前記コレクター容器の前記エタノールの下に満たされた水の中に連続的に入射し、
前記水の中に入射した前記紡糸溶液は、前記水の中で前記アセトンの脱離と水の侵入の相互拡散を紡糸溶液内部まで進行させることによってさらに固化して繊維化され、前記固化した繊維は水中で繊維同士が接着することなく連続的な長繊維となって前記コレクター容器の底に綿状に浮遊堆積し、
前記コレクター容器の底に浮遊堆積した繊維を前記コレクター容器から取り出して乾燥させる、という工程によって製造されたものである、請求項1又は2に記載の綿形状の骨再生材料。
【請求項7】
改良された湿式紡糸法を用いて綿形状の骨再生材料を製造する方法であって、前記方法は、
β―TCP粒子とPDLLGA樹脂を重量比50-80:50-20の割合で混合した混合物を混合容器に投入し、
前記混合物に対して所定の量のアセトンを前記混合容器に投入し、前記PDLLGA樹脂を前記アセトンに溶解させて攪拌することによって、前記β―TCP粒子が溶液中に分散した紡糸溶液を調製し、
前記調製した紡糸溶液を湿式紡糸装置のシリンジに充填し、
前記シリンジに充填された前記紡糸溶液を所定の径を有する入射針の吐出口から垂直下方向に所定の押出速度で押し出して所定の高さを有する筒形状のコレクター容器中に出射し、前記コレクター容器には、エタノールと水が上下二層になって満たされており、
前記吐出口から押し出された紡糸溶液は前記コレクター容器中の前記エタノール中に繊維状に入射し、前記エタノールの液中に繊維状に入射された紡糸溶液の表面は前記アセトンの脱離と前記エタノールの侵入の相互拡散によって固化され、
次いで、前記表面が固化した紡糸溶液は、前記コレクター容器の前記エタノールの下に満たされた水の中に連続的に入射し、
前記水の中に入射した前記紡糸溶液は、前記水の中で前記アセトンの脱離と水の侵入の相互拡散を紡糸溶液内部まで進行させることによってさらに固化して繊維化され、前記固化した繊維は水中で繊維同士が接着することなく連続的な長繊維となって前記コレクター容器の底に綿状に浮遊堆積し、
前記コレクター容器の底に浮遊堆積した繊維を前記コレクター容器から取り出して乾燥させる、
前記改良された湿式紡糸法を用いて綿形状の骨再生材料を製造する方法。
【請求項8】
前記無機フィラー粒子と生分解性樹脂の混合物に対して加える良溶媒の量は、前記シリンジ内で無機フィラー粒子が溶液中に沈んでしまうことなく均一に拡散し、尚且つ紡糸溶液を前記注射針から貧溶媒中に押し出すことによって貧溶媒中で繊維化することができる量に調整されている、請求項7に記載の骨再生材料を製造する方法。
【請求項9】
前記PDLLGA樹脂は、PDLLAとPGAを重量比75:25で共重合して製造されたものである、請求項7又は8に記載の綿形状の骨再生材料を製造する方法。
【請求項10】
前記PDLLGA樹脂は分子量が約10万である、請求項7又は8に記載の綿形状の骨再生材料を製造する方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式紡糸法を用いて製造された綿形状の骨再生材料、及び湿式紡糸法を用いて綿形状の骨再生材料を製造する方法に関する。
続きを表示(約 2,200 文字)【背景技術】
【0002】
近時骨再生医療の分野では、ポリ乳酸をマトリックスとして用いてリン酸三カルシウム粒子と複合し、電界紡糸法により繊維化して綿形状化したものが骨再生材料として用いられている。骨再生材料は一般にブロックや顆粒形状で用いられることが多いが、この方法で紡糸した生分解性繊維からなる綿形状の骨再生材料は、手術時の成形性が良く、目的部位からの移動・脱落の懸念を解決できる優れた特長を有している。本発明の発明者等は、電界紡糸法を用いてノズルから出射された生分解性繊維をエタノールを満たしたコレクター容器で受けて、エタノール液中に浮遊する繊維を回収・乾燥することで綿形状化することに成功している(US8853298)。
【0003】
電界紡糸法により紡糸される生分解性繊維のマトリクス樹脂としては、ポリ乳酸の他、PLGAが用いられている。PLGAはポリ乳酸よりも生体吸収性が高く、尚且つFDAで安全性が承認された優れた生分解性樹脂である。そこで、近時はPLGAをマトリックスとして用いてリン酸三カルシウム粒子と複合し、電界紡糸法により繊維化することが行われている。PLGAは、乳酸とグリコール酸を共重合することによって合成されるが、乳酸とグリコール酸の比率を調整することで生分解性を制御することが可能である。乳酸85%:グリコール酸15%のPLGA(85:15)と、乳酸75%:グリコール酸25%のPLGA(75:25)では、PLGA(75:25)の方が、分解性が高い。ポリ乳酸の乳酸には、結晶性のL体と光学異性体であるアモルファス性のD体とが存在し、D体を含むPDLLAは、D体を含まずにL体のみであるPLLAよりも結晶化しにくく、分解されやすいことが知られている。そこで、D体を含むPDLLAとPGAを共重合することによって、D体を含まないPLGA(PLLGA)よりも分解性が格段に高いPDLLGAを合成することが可能である。
【0004】
電界紡糸法は、骨形成因子となる無機フィラー粒子を紡糸溶液に含有させて繊維化することができるので、生分解性繊維からなる骨再生材料を製造する方法として一般に用いられている。しかし、電界紡糸法は高電圧をかけた紡糸溶液をノズルから出射させて電場を飛行させて繊維化するものであるため、繊維の形状を維持するためには電場を飛行する過程で無機フィラー粒子が樹脂によって結合(bind)されていることが必要であり、分子量が低い樹脂を用いると繊維形状の維持が困難になり、その結果生分解性繊維の紡糸が困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
米国特許番号8853298号特許公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これまでインプラント治療目的に用いられる骨補填材は,顆粒状の形態のものが多く用いられてきた。顆粒状の骨補填材は細部への材料の填入が可能である一方で,操作性に問題が有り、上顎洞底挙上術の際においても、顆粒状の骨補填材が散乱してしまうことがあった。そこで、顆粒状の骨補填材料に替えて、β―TCPとPLGAを主成分とする生分解性繊維からなる綿形状の骨補填材料を用いることが提案されている。しかし、この形態の骨補填材料は操作性には優れているが、長期の骨造成期間を必要とし、かつ材料が長期にわたって患部に残存するという欠点が指摘されている。この問題を解決する方法として、マトリクス樹脂としてPLGAよりも生体内における分解性が高いPDLLGA樹脂を用いることが考えられる。しかし、PDLLGAはPLGAよりも分子量がかなり低いため、電界紡糸法を用いて複合繊維を紡糸して綿形状化することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の発明者等は鋭意検討し、湿式紡糸装置のコレクター容器に溶解度の異なる2種類の貧溶媒を上下二層にして満たしたものを用いることによって、湿式紡糸法を用いてPDLLGA樹脂とβ―TCP粒子を複合化した繊維からなる綿形状の骨再生材料を効率的に製造できることを発見した。
【0008】
上記発見に基づいて、本発明者等は湿式紡糸法と装置の改良を重ねた結果、改良した湿式紡糸法を用いて製造された綿形状の骨再生材料であって、前記綿形状の骨再生材料は、
PDLLGA樹脂を50~80重量%、β―TCP粒子を50~20重量%含む湿式紡糸法で製造した生分解性繊維で形成された綿形状の骨再生材料であり、
前記PDLLGA樹脂の分子量は7~15万であり、
上記生分解性繊維の外径は80~200μmであり、
前記骨再生材料の綿形状は、前記外径を有する生分解性繊維が互いに付着せずに堆積することによって形成されている、
前記湿式紡糸法で製造された綿形状の骨再生材料、という発明に到達した。
【0009】
好ましくは、前記PDLLGA樹脂は、PDLLAとPGAを重量比75:25で共重合して製造されたものを用いる。
【0010】
好ましくは、前記PDLLGA樹脂(PDLLAとPGAを重量比75:25で共重合)の分子量は7~15万であり、さらに好ましくは約10万である。
(【0011】以降は省略されています)

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