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公開番号2023172879
公報種別公開特許公報(A)
公開日2023-12-06
出願番号2023029203
出願日2023-02-28
発明の名称積層体の製造方法
出願人AGC株式会社
代理人個人,個人
主分類B05D 7/24 20060101AFI20231129BHJP(霧化または噴霧一般;液体または他の流動性材料の表面への適用一般)
要約【課題】テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む、クラックの発生がない厚いポリマー層を形成できる、積層体の製造方法を提供すること。
【解決手段】耐熱性基材層に、平均粒子径が0.3μm以上10μm未満である熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と沸点100℃以上の液体化合物から形成される液状媒体とを含む分散液を塗工して、前記耐熱性基材層の表面に前記分散液からなる塗工層を形成し、前記塗工層を有する前記耐熱性基材層を、25℃以上、前記液体化合物の沸点未満かつ[前記テトラフルオロエチレン系ポリマーのガラス転移温度+10℃]未満である温度域にて最初の加熱を行い、続いて前記温度域より高くかつ前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度未満である温度域で第2の加熱を行って、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む層を表面に有する前記耐熱性基材層を得、さらに前記溶融温度以上の温度域にて加熱して、前記耐熱性基材層の表面に前記テトラフルオロエチレン系ポリマーを含むポリマー層を有する積層体を得る、積層体の製造方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
耐熱性基材層に、平均粒子径が0.3μm以上10μm未満である熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と沸点100℃以上の液体化合物から形成される液状媒体とを含む分散液を塗工して、前記耐熱性基材層の表面に前記分散液からなる塗工層を形成し、前記塗工層を有する前記耐熱性基材層を、25℃以上、前記液体化合物の沸点未満かつ[前記テトラフルオロエチレン系ポリマーのガラス転移温度+10℃]未満である温度域にて最初の加熱を行い、続いて前記温度域より高くかつ前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度未満である温度域で第2の加熱を行って、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む層を表面に有する前記耐熱性基材層を得、さらに前記溶融温度以上の温度域にて加熱して、前記耐熱性基材層の表面に前記テトラフルオロエチレン系ポリマーを含むポリマー層を有する積層体を得る、積層体の製造方法。
続きを表示(約 670 文字)【請求項2】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子が、機械的粉砕処理した破砕粒子である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーのガラス転移温度が、60~120℃である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度が、200~320℃である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、酸素含有極性基を有するテトラフルオロエチレン系ポリマーである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記液状媒体の表面張力が、45mN/m以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記液状媒体が、さらにノニオン性界面活性剤を含有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記液体化合物が、水、アミド、ケトンおよびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記液体化合物が水であり、前記最初の加熱の温度域が45~95℃であり、前記第2の加熱の温度域が100~150℃である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記液体化合物がN-メチル-2-ピロリドンであり、前記最初の加熱の温度域が45~95℃であり、前記第2の加熱の温度域が100~200℃である、請求項1に記載の製造方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含むポリマー層を有する積層体の製造方法に関する。
続きを表示(約 4,700 文字)【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の移動体通信機器における高速化、高周波化に対応するため、通信機器のプリント基板の材料には高熱伝導、低線膨張係数、低誘電率かつ低誘電正接である材料が求められ、低誘電率かつ低誘電正接であるテトラフルオロエチレン系ポリマーが注目されている。かかるポリマーを含む絶縁層を形成する材料として、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と液状分散媒とを含む分散液が知られている。
テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と液状分散媒とを含む分散液から塗工により基材表面に塗膜等の層を形成する場合、基材形状等の制約は少ない。その反面、厚い層を形成しようとすると、層にクラック(ひび割れ)が生じやすく、形成する層の状態の制御が難しいという課題がある。
特許文献1には、特定粒径範囲のテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子、非アルキルフェノール型ノニオン系界面活性剤及び特定のアセチレンジオール系界面活性剤を含む水性分散体である、被覆用組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
国際公開第2022/054762号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で提案される水性分散体は、さらにエチレングリコールを特定量配合すると好適とされるが、厚い層をクラックなく形成するには、なお改善の余地がある。また、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と液状分散媒とを含む分散液に結着剤や界面活性剤等を配合して、それから形成される層の状態を制御する手法は、有効な剤の選定が煩雑であり、かかる剤が層に残留して、層物性に悪影響を及ぼす場合がある。
本発明者らは、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と液状分散媒とを含む分散液の基材表面への塗工、及びポリマー焼成までの工程に着目して検討した。その結果、塗工から焼成までの状態を特定条件に制御すると、厚い層を形成してもクラックが発生せず、耐熱性及び電気特性に優れる積層体が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明の目的は、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む、クラックの発生がない厚いポリマー層を形成できる、積層体の製造方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記の態様を有する。
〔1〕 耐熱性基材層に、平均粒子径が0.3μm以上10μm未満である熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と沸点100℃以上の液体化合物から形成される液状媒体とを含む分散液を塗工して、前記耐熱性基材層の表面に前記分散液からなる塗工層を形成し、前記塗工層を有する前記耐熱性基材層を、25℃以上、前記液体化合物の沸点未満かつ[前記テトラフルオロエチレン系ポリマーのガラス転移温度+10℃]未満である温度域にて最初の加熱を行い、続いて前記温度域より高くかつ前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度未満である温度域で第2の加熱を行って、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む層を表面に有する前記耐熱性基材層を得、さらに前記溶融温度以上の温度域にて加熱して、前記耐熱性基材層の表面に前記テトラフルオロエチレン系ポリマーを含むポリマー層を有する積層体を得る、積層体の製造方法。
〔2〕 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子が、機械的粉砕処理した破砕粒子である、〔1〕の製造方法。
〔3〕 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーのガラス転移温度が、60~120℃である、〔1〕又は〔2〕の製造方法。
〔4〕 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度が、200~320℃である、〔1〕~〔3〕のいずれかの製造方法。
〔5〕 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、酸素含有極性基を有するテトラフルオロエチレン系ポリマーである、〔1〕~〔4〕のいずれかの製造方法。
〔6〕 前記液状媒体の表面張力が、45mN/m以下である、〔1〕~〔5〕のいずれかの製造方法。
〔7〕 前記液状媒体が、さらにノニオン性界面活性剤を含有する、〔1〕~〔6〕のいずれかの製造方法。
〔8〕 前記液体化合物が、水、アミド、ケトンおよびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、〔1〕~〔7〕のいずれかの製造方法。
〔9〕 前記液体化合物が水であり、前記最初の加熱の温度域が45~95℃であり、前記第2の加熱の温度域が100~150℃である、〔1〕~〔8〕のいずれかの製造方法。
〔10〕 前記液体化合物がN-メチル-2-ピロリドンであり、前記最初の加熱の温度域が45~95℃であり、前記第2の加熱の温度域が100~200℃である、〔1〕~〔8〕のいずれかの製造方法。
〔11〕 前記耐熱性基材が、ポリイミド、液晶性ポリマー及びポリテトラフルオロエチレンのいずれかの樹脂のフィルムである、〔1〕~〔10〕のいずれかの製造方法。
〔12〕 前記積層体が、前記耐熱性基材の両方の表面に前記ポリマー層を有する、〔1〕~〔11〕のいずれかの製造方法。
〔13〕 前記ポリマー層の厚さが25μm以上である、〔1〕~〔12〕のいずれかの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む、クラックの発生がない厚いポリマー層を形成できる、積層体の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の用語は、以下の意味を有する。
「平均粒子径(D50)」は、レーザー回折・散乱法によって求められる、粒子の体積基準累積50%径である。すなわち、レーザー回折・散乱法によって粒度分布を測定し、粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径である。
粒子のD50は、粒子を水中に分散させ、レーザー回折・散乱式の粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA-920測定器)を用いたレーザー回折・散乱法により分析して求められる。
「溶融温度」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定したポリマーの融解ピークの最大値に対応する温度である。
「ガラス転移温度(Tg)」は、動的粘弾性測定(DMA)法でポリマーを分析して測定される値である。
「粘度」は、B型粘度計を用いて、25℃で回転数が30rpmの条件下で分散液を測定して求められる。測定を3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
「チキソ比」とは、分散液の、回転数が30rpmの条件で測定される粘度η

を、回転数が60rpmの条件で測定される粘度η

で除して算出される値である。それぞれの粘度の測定は、3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
液状媒体又は液体化合物の「表面張力」は、表面張力計を用いて、25℃においてウィルヘルミー法で測定した値である。
ポリマーにおける「単位」とは、モノマーの重合により形成された前記モノマーに基づく原子団を意味する。単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって前記単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。以下、モノマーaに基づく単位を、単に「モノマーa単位」とも記す。
【0008】
本発明の製造方法(以下、「本法」とも記す。)は、耐熱性基材層に、平均粒子径が0.3μm以上10μm未満である熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマー(以下、「Fポリマー」とも記す。)の粒子(以下、「F粒子」とも記す。)と沸点100℃以上の液体化合物から形成される液状媒体とを含む分散液(以下、「本分散液」とも記す。)を塗工して、前記耐熱性基材層の表面に本分散液からなる塗工層を形成し、前記塗工層を有する前記耐熱性基材層を、25℃以上、前記液体化合物の沸点未満かつ[前記テトラフルオロエチレン系ポリマーのガラス転移温度+10℃]未満である温度域にて最初の加熱(以下、「最初の加熱」とも記す。)を行い、続いて前記温度域より高くかつ前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度未満である温度域で第2の加熱(以下、「第2の加熱」とも記す。)を行って、F粒子を含む層を表面に有する前記耐熱性基材層を得、さらに前記溶融温度以上の温度域にて加熱して、前記耐熱性基材層の表面にFポリマーを含むポリマー層を有する積層体を得る、積層体の製造方法である。
本法によれば、クラックを発生しない厚いポリマー層を有する積層体が得られやすく、かかるポリマー層はFポリマーに基づく耐熱性、電気特性(低線膨張係数、低誘電率及び低誘電正接)等の物性に優れる。その理由は必ずしも明確ではないが、以下の様に考えられる。
【0009】
F粒子を含む分散液から形成される塗工層の厚さが大きい場合、塗工層から液体化合物を乾燥で蒸発させる過程で、F粒子間で凝集に作用するラプラス力が、特に層の歪みの原因となると考えられる。換言すれば、乾燥過程におけるラプラス力が層のミクロ構造形成に影響し、ポリマー層を形成する過程において、その内部応力を緩和する作用が働いて、ポリマー層にクラックを生じさせる因子となると考えられる。
本法では、本分散液からなる塗工層から液体化合物を除去するために、所定の温度域での乾燥を段階的に行う。具体的には、最初の加熱では、塗工層中でのF粒子の拡散状態を維持しつつ、ガラス転移温度近傍で加熱して、F粒子自体の状態変化を少なくすることを優先させる。一方、第2の加熱では、塗工層から溶剤である液体化合物の拡散除去を優先させて、全体として歪みの少ない乾燥被膜であるF粒子を含む層を形成させる。そして、かかる乾燥被膜を焼成して、Fポリマーを含むポリマー層を形成させている。
この段階的な乾燥により、他の材料との親和性が概して低いFポリマー、特にサブミクロンレベルのF粒子を含む分散液を用いても、ラプラス力による層の歪みを抑制しつつF粒子の拡散と液体化合物の拡散とがバランスすることにより、Fポリマーを含む、クラックが発生しない厚いポリマー層を有する積層体が生産性良く得られたと考えられる。
【0010】
本発明におけるFポリマーは、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」とも記す。)に基づく単位(以下、「TFE単位」とも記す。)を含む、熱溶融性ポリマーである。ここで、熱溶融性のポリマーとは、荷重49Nの条件下、溶融流れ速度が1~1000g/10分となる温度が存在するポリマーを意味する。
Fポリマーの溶融温度は、200℃以上が好ましく、260℃以上がさらに好ましい。Fポリマーの溶融温度は、320℃以下が好ましく、315℃以下がより好ましい。この場合、本法で用いる本分散液が加工性に優れやすく、また、本分散液から形成されるポリマー層等の成形物が耐熱性に優れやすい。
(【0011】以降は省略されています)

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